2020/06/29 のログ
ご案内:「常世公園」に雪城 氷架さんが現れました。
雪城 氷架 >  
午後を少し過ぎた頃
今日は比較的涼しい風が吹く中、日差しはやはり初夏の様相

木漏れ日爽やかな公園に入ってくる制服姿の女子が一人
すたすたと木陰のベンチへと腰掛けた眼を見張るような美少女のその脇にはコンビニ袋が3つ

まあ、買い食いは学生の嗜みということで
問題その袋の中身だ

山盛りの肉まん
山盛りの肉まん
山盛りの肉まん

そう、山盛りの肉まんだ

雪城 氷架 >  
細く華奢で背も小さい
ぱっと見れば中学生くらいか、と思える少女が食すにはやや多い
否、ややという言葉には語弊がある
絶対多い

と、誰が見ても思いそうな量の肉まんが詰め込まこれたコンビニ袋から一つそれを掴みだして、手元でぽんぽん、と跳ねさせてからぱくり

尚当然これだけの量の肉まんが蒸されているはずもなく、店員に申し付けて順番に蒸させたという事実がある
当然最初のほうのはやや冷めてしまっていたが、問題ない

一口かじった後に、じーっと手の中の肉まんを眺める
すると、瞬く間に肉まんからはほかほかと湯気が上がり始めた

雪城 氷架 >  
こんなことに異能の力を使うのはいかがなものだろう
と、思わなくもないが、あるものを使わないのも不自然な話だし、
乱暴な使い方をするわけでもないなら、まぁ誰にも文句は言われないだろうと思う

ぺろりと1つ目を平らげる
もしこの光景を誰かが見ていたら
『いつの間にか1個消えてた』
と表現するだろう
だが別にこの少女の早食い大食いに関しては異能は全く関係ない

雪城 氷架 >  
買い食い食べ歩きは学生生活の華である
だが女子一人で、なおかつ肉まん3袋を公園で喰っている光景はあまり見るものではない

食べる量については兎も角として、少女は外見に反してどこか目つきも悪く、ベンチに座る姿勢もやや粗野な少年のようである
かつ内面的には無愛想でぶっきらぼうという要素を持ち合わせている、ようするに友達が多いわけではない

試験前にこうやって昼からの講義をサボって買い食いして帰っている程度には不真面目でもある

本人はそういった自身のことをやや斜に見ているところもあるが、どうにも性分というのは変えがたいもの
周囲に心配をかけたくないという気持ちも、あるにはあるけれど

気がつくと一袋目が空になっている
くしゃくしゃに丸めて、ポイと放り投げる
丸められた袋は空中で何かに2、3度弾かれるような奇妙な挙動をとり、ゴミ箱へとシュートされた

雪城 氷架 >  
おもむろに自分の制服のポケットを探る
手に何も当たらないのを確認すると、小さな溜息
そういえば午後に講義の予定があったっけ、と思いつつ

「まーた括流に小言もらうかな…」

最近ちょっとサボりが多い
試験前で座学が増えてきたのもあるけれど、
このままだと試験でよい成績を取ってギリギリ単位取得ができる感じ、だろうか

そんなことを考えつつ二袋目をオープン

ご案内:「常世公園」にエインヘリヤルさんが現れました。
エインヘリヤル > 例の……昔の事件の資料にあった娘だ。
まあ、様々な要件が重なっていろいろあったと。そういう人物。

そして本人はともかく、家族構成をたどってみればそちらも面白い。
特に父親など、まるで尻尾を見せないあたりが。
例の事件との関係において、関連がなさすぎて、逆に色々と問題のあるレベル。
どう考えても状況的には色々あったと見るべきだが手を汚す気がないのだろう。

……まあそういった前情報はさておき。

本人は特にどうということもなく、つつがなく暮らしてはいるみたい。
さてどこまで利用してどこまで荒らすべきか。

などと昼下がりの公園に似つかわしくないことを想像しつつ、ツインテールと外套を揺らして近づく。

「隣、よろしいかしら?」

ただ、一人で食べられなさそうな量の肉まんは意味が良くわからない。

雪城 氷架 >  
「…ん?」

声をかけられ、視線を向ける
相当に近寄って、声をかけた上でなければそちらには気づかなかった
鈍いというよりは一般の人間的…といえるかもしれない

「…ああ、どうぞ」

やや面倒臭げ、笑顔を見せることも別段せず、少しベンチの横にズレてスペースを空ける
無愛想な感じは否めないが、別に攻撃的、排他的といった雰囲気もない

「(見ないカオだな)」

一方で、心中ではそんなことを考える
その姿や物腰から、昼間の公園にぱっと現れるようなタイプには見えない、というのが本音
この常世の島にはいろいろな人間がいるので、それについてはやや警戒する

エインヘリヤル > 「最近この辺に来たばかりでね……色々と散策して歩いてるの。
 なにか、面白そうな……この辺で、興味ありそうなことを探しているわ。

 例えば甘いものとか。ちょっとした事件とか」

上品にベンチに座ると、誰にともない調子で、きれいな声で。
とつとつと話す。

彼女を見る限り、取り敢えずはあんな事件に巻き込まれたとは思えないような雰囲気には見える。
特に心理的外傷などにはなってないような。
流石に直接ほじくり返したらわからないけれど、一見、変に壊れたりはしてなさそうで。

事件、という単語では、どうなるだろうか。
まあ実際、初対面でいきなり話すべきではないかもしれないが。

それはそれとして、どういう態度を取るのかには興味はあった。
最悪本人が知らないうちに利用するかもしれないのだから。

そして。
やはり肉まんの袋が土産でもなさそうなのに大量においてあるのかは不明だった。

雪城 氷架 >  
「ふーん…生徒?ってわけじゃなさそうだもんな」

言いつつ、はむっと肉まん(二袋目)を口に
手元にあった時にはやや冷めていそうだったそれが、口元に辿り着く頃には湯気の立つホカホカに

「甘いもんなら橘ってカフェは結構人気あるけど。
 私も意欲的にそのへん調べてるわけじゃないからなー……事件、ってのは物騒だなぁ…」

事件という単語にはやや眉を顰めた
あの事件当時はただ眠っている間に過ぎた出来事だった
そしてその後のクロノスが引き起こした事件には、ほぼ関与していない
故にトラウマを想起させるほどのものではない、のだが

「あんまり変なコトに首突っ込まないほうがいいんじゃない?
 この島、治安のイイトコはいいけど悪いトコは悪いし、異能悪用するバカもいっぱいいるから」

この会話に至るまでの間に肉まんは5つほど消えた

エインヘリヤル > 「なるほど? 橘には行ったことあるのだけれど、まだパンケーキのみね。
 案内してくれるなら、食事代くらいは出すけれど」

……ある程度はファミリアたちが案外あちこち行っているので情報はそこそこ集まってくるのだが。
橘といえば、神代とやらと話し合ったところだ。
まだ1品しか制覇していない、おのれ。
故に、もう一度行くのもやぶさかではない

「事件はまあ、仕事もあるもので。
 特殊異能調査機構っていう組織で、異能を調査していてね。
 そのせいで必要があれば物騒でも何でも出向いてみるわ?」

と、素性はあっさりバラす。
隠すようなものでもない。

肉まん……熱操作?
でも熱操作なら蒸した感じになるかどうか。
電子レンジ的なものかもしれない。

まあ、その辺にはあまり興味ないのだけれど。正直熱でもそうでなくてもどっちでもいい
実際に事件が起きてエネルギーの塊なり何なり的なことがわかっていれば、取り敢えずはそれで。

肉まん5つ……奢るとは言ったけれど、実際にいったらかなりすごいことになるのかもしれない。

雪城 氷架 >  
「や、いいよ。これから帰るトコだし。会ったばっかりの人間に奢られるのも気が引ける」

おやつもあるし、と肉まんをぱくり
案外つれない…というよりはマイペースのようだ

「橘、他にどんなメニューあったっけなぁ、まぁ味は悪くないよ」

氷架が特定のメニューを覚えていないのには原因がある
注文が基本的にメニューのページ単位だからだ

「(特殊異能調査機構…?)」

パンピーには聞き慣れない名前だった
異能の研究をしている父親なら、知ってるのかもしれないなーなんて思いつつ

「ふーん…ただの女の子にしか見えないけど、凄いんだな」

まぁこの島では見た目は全く当てにならない
わかっていつつも、マジかーといった感じだ
危険な目に遭うことに、仕事だからといって割り切れるのは…年端も行かない学生から見れば凄いことだから

そして肉まんの二袋目が空になっていた
一瞬でも目を離すとそのスキに消えていっているかのように

エインヘリヤル > 「ふふ、ありがとう。
 すごい、という言い方をされたのは初めてだわ」

賛辞を素直に受け取る。

だいたい敵意か妬みか警戒、そういうポジションだ。
神鳴などがいい例。
そもそもが、あまり人と相容れるような性格でもなければ、細かい嫉妬などは気にしない性格で。
ともすれば簡単にえぐってしまう。

さらっとそういう感想が出る時点で性格の素直さがにじみ出ていると言っていい。

「素直な子は好きだわ。素敵だもの。
 仕事柄、疑われたり嫌がられる方が多いもの。

 よかったら今後とも宜しくしていただけると嬉しいわ」

にこやかに。
警戒されなかったというのはその時点で称賛していい。

例の事件みたいなものがあったらもっと歪んでいてもいい。
それがあってなお日常を普通に過ごせるという意味だもの。

「エインヘリヤル。
 特殊異能調査機構、特別顧問よ」

手を差し出す。

肉まんについては謎が多いので一時保留

雪城 氷架 >  
「そう?普通の感想だと思うけどな…少なくとも私にはそんなことできないし」

氷架の考える普通の人間、一般人は危険には近寄ろうとしない
そういう仕事を避けるのは当然で、危険を伴う仕事は熟練者や大人のやること…と考える
あくまで島外で生きてきての常識だ。通用しないこともあるのかもしれないけれど

「…まぁ特別ひねくれてるって自覚もないよ。
 みんな異能もってるヤツって大体不安とセットだし、そういうのの現れなんじゃないか?」

疑ったり、毛嫌いしてみたり
そういうのはきっと不安の裏返しだ
自分にもそんな時期があったので、なんとなくそう思う

「エインヘリヤル……なんだっけ死した英雄の魂?とかそういう意味だったっけ…。
 あ、私は雪城氷架。まぁ、よろしくな。 …肉まん食べる?」

完全にゲーム知識でしかないけど聞いた名前にそんな意味があったっけーなんて思いながら、
お近づきの品、というほどでもないが肉まんを一つ取り出して差し出す
折角なので異能を行使、見つめる先の対象の水分、その分子を高速で振動させる──

みるみるうちに肉まんからほかほかと湯気が出始めた

エインヘリヤル > 「その普通っていうのが得難くなるから、異能っていうんじゃないかしらね?
 それに案外、普通にはなりたくてもなれないものよ?」

そんなもんでしょ、と。肩をすくめて見せて
実際、それで壊れるものだって少なくない。

いやがおうにも意識する

「せっかくだからいただこうかしら」

目の前で異能。
しかも温めて

警戒ナシに見せつけてくれるあたり、これはやはり育ちなのだろう……熱っつ!?
たしかに便利かもしれない……スイーツでも使えるのだろうか……

雪城 氷架 >  
異能を見せつける、という意識があるわけではなく
肉まんは温かいほうが美味しいだろう…ただそれだけ
そういうことに役に立つなら、別段力を使うことに忌避感はないようだった

「ま、コンビニのだからめちゃくちゃ絶品、ってワケじゃないけどなー。
 アツアツで食えれば結構イケると思うぞ」

熱がってる様子に、少しだけ口元に笑みを浮かべた…かもしれない

「そりゃ、ヘンな力を持っちゃったらなかなか普通には見てもらえないよ。
 でも大半のヤツはやっぱり、それを持っちゃっただけのフツーの子供な気もする」

学校にいって、色々勉強して、たまにはサボって、怒られて

「危ない部活や委員会で命のやり取りしてる連中もいるけどさ、
 私はどーもそういうのは別の世界の出来事に思えちゃうんだよな」

件の事件の中核にいたとは思えないような言葉を漏らす
けれどそれが少女の本音なのだろう
あの事件以降、自分の異能と向き合おうと異能の勉強に熱心に取り組んではいるが、人間としての性分までは変わらないのだ

エインヘリヤル > 「なるほどね……」
はふはふ。熱い。

「普通っていうけれど。
 それを望む人は大概、自分の理想を口にすることが多いと思っているわ。

 そういった理想をぶちまけていい理由として【普通】というもの」

つまり、普通とさえ言っておけば浅ましい個人欲求を正当化できるので
悪い話だ。

「そこで自分を見つめ直す。出発点を確認して、変わってしまったた自分と
そうでない部分を確認する。

 それは優秀である証拠よ」

実際問題、そこで壊れたり逃げる場合がほとんどで。
ふつうなどはそもそも存在しない。
自分だって部下がファミリアだ。見直すもなにもない。

「別の世界って言うけどね、多くは目の前のそれが普通っていうことだと思うわ」

にこやかに。
そういう素直なスタンスは悪くない。そう思う。
代わりに、なんでも受け入れてしまう、という可能性もあるけれども。

あと肉まんも悪くない

雪城 氷架 >  
「はは、まぁ使い方次第だよな、言葉って」

良い意味でも悪い意味でも使える、理想を誇示することにだって使えるだろう
いつの間にか空になっていた3つ目のコンビニ袋をくずかごへぽいっと放り投げる
パチンパチン、と2、3回弾けるような音が響いて、やや遠くのくずかごへと辿り着く
空気中の水分の分子運動を停止させた後に加速、氷の粒が弾ける衝撃でコントロールする…
これは学園でトレーニングしたからこそ出来るようになった、細やかな異能の制御だ

「まぁでも私の言う普通っていうのは当たり前の学生生活だよ。
 朝学校にいって、勉強して、昼飯喰って、たまにはサボって買い食いして帰って、遊んで、課題やって、寝て。
 そんな日常の中で人の生き死にを常に意識なんてすること、まずないよ私」

現実に目の前にあったら受け入れる必要はあるだろうけれど、
それを受け入れる覚悟のできる子供がそんなにいるのかな、などと考えたりもする

「エインヘリヤルみたいな仕事してると、そうもいかないんだろうけど」

エインヘリヤル > 「確率論の話ね」

あたりまえ、ね。
なんと儚い言葉だろうか。

「……事故、病気、事件。
 別に異能なんて言うものの有り無しに関わらず。
 いつだって、10秒後に心臓発作や脳卒中で倒れないとは限らないわけで」

目の前で展開される、熱の異能、氷の異能。
同時にできるとすれば、それは温度変化などになる。
例の事件のあとでこうやって見ず知らずの私に見せることが出来るというだけで十分すぎるほど優秀だ。

「逆に言えば、普通というのは本来、非日常の上に成り立っているわ。
 こんなふうに」

金十字の瞳が怪しく光る。
……10%の獣。

彼女の異能への返礼でもある。
10%の異能が【制御を失う】
別にだからといって暴走するでもなければ、効果が落ちるわけでもない。

ただ、異能を含めた体調が10%、よくわからなくなるだけだ。

「日常というのは、常にどちらにも転ぶことを踏まえておくのが日常でもあると思うわ。
 これはお礼。
 ……辛かったら言って、止めるわ」

雪城 氷架 >  
「そりゃあもちろん。
 でも普段からそんなの全部に気を払ってたら生活していけないじゃん」

特に事故なんて、外に出ることもできなくなってしまいそうだ

「こんな、って…?」

突然怪しげな光を帯びた瞳に思わず意識を吸い込まれるように、見入ってしまう──そして

「えっ…ちょっと…なんだよ、今の……?」

10%…その不調がどんな程度のものか
やや身体が気怠い?調子が出ない?…といったようなものだろうか

エインヘリヤル > 「なるほど……あなたの場合、早めに止めておいたほうが良さそうね?」

10%といえば、一見大したことないように思えるかもしれない。

だけど、歩幅が1割変わったら?
目分量が1割変わったら?
呼吸の深さが、血液の速度が1割変わったら?

そういうモノだ。

相手の割合に影響する、極めつけに珍しい異能。
抱えてる荷物が大きい場合、あふれるモノだって洒落にならないこともある。

例の事件のことも考えれば、本当にさわりだけにしておいたほうがお互いに良さそうだ。
暴れる獣を早々に引き上げる。

「肉まんのあとだし、吐かないうちに止めておくわ。
 素性をあらわにしている私の目の前で、それを見せてくれた礼と思ってもらえればいいわ。

 ……もしかすると、利用することになってしまうかもしれないから」

ゴメンね、せっかく肉まんまで貰っておいて。
だけど、こんななけなしの誠意でクソみたいな律儀さでも。

今のうちから嫌われるぐらいのことはしておいていいと思ったから。

雪城 氷架 >  
「──何か、したんだな?」

ほんの少しだけ、呼吸浅く
元々身体が頑丈なほうではない
異能を少し使いすぎると、それだけで心臓にすら負荷がかかる
少し前に軽くとはいえ、マクスウェル・コードを行使した直後だ
ややその顔から血の気が失せたようにすら、見えたかも知れない

「……よくわかんないな。他人を利用しようとするようなヤツが、
 ご丁寧に自己紹介までして、素性を明かして近づいて来るなんて」

おそらくは彼女のもつ異能の力なのだろうか
止めておく、という言葉の後にふわりと身体が軽くなったように感じた

エインヘリヤル > 「私も頂いてなければもう少しやっても良かったのだけれど。
 ……もったいないでしょう?」

なにかしたか、と言われれば素直に笑顔で頷く。

「たとえば。
 友人同士というのは利用されあう関係だわ?
 人は利用し合うために仲良くしていると言ってもいいもの。

 納得していないときだけ騒ぎ立てるだけでしょう?」

コミュニティはそうやって成り立っている。
自分ができないことを他人にやらせるし、他人が出来ないことを自分がやる。
そういう関係だわ。

ただ、納得しているかいないか。
それが違うだけ……。

だから。

「これだけ素性を明かしているというのに警戒もせず、むしろ色々と披露してくれたお礼よ。
 内容的には、あまり嬉しくないでしょうけれど、コレも仕事だし……ね?

 だって、できれば協力してほしいけれど、たぶん嫌がると思うから」

これは別に優しさではない。
宣言してから顔を踏むほうが嫌な場合だってある。

「それでも手伝ってくれるなら歓迎するけれどね。
 命のやり取りとかだから」

嫌なんでしょう、そういうの。
とは付け加えなかった。
聞く必要もなかったから。

雪城 氷架 >  
「……あのさ」

乱れかけた呼吸を落ち着けて、まっすぐ蒼い瞳がエインヘリヤルを見据える
やや湿った、季節柄な風が二人の横顔を撫でてゆく

「逆だろ。名前も名乗ったし素性も明かした。だから私だって隠さない。
 やましいことなんかないと思ったからだ。そのお礼が今の…よくわかんないナニかだってのは、なんでだってなるけどさ。
 手伝うも何も、話まで聞いてないじゃん」

一息にそう言うと、小さく肩を竦めて見せる
その小さな動作が細い肩を強調し、より華奢な印象を強くさせる

「お前が困ってて、私が手伝うことで手助けになるなら、そのまま見過ごすほど薄情でもないし、
 何より顔と名前を知ってる相手が生き死にの問題に足突っ込んでるなら余計にだろ」

自分が手伝うことをしないばっかりに、死んでしまった…なんて夢見が悪いにも程がある
当然そんなものに関わらないのが一番なのは間違いないけれど、こうやって名前を聞いて、素性を聞いてしまった
確率論、先程少女の使った言葉
こうやって、平穏な日常は色を変えていくのだ

エインヘリヤル > 「やましいことなんてなにもないわ。だから命を奪える……そういう話よ。
 もともと、世界平和のための話ではあるのだし」

そういう意味では正しく狂ってる、とも言える。
エインヘリヤルはそういう女だ。

「自販機の話って、知ってる?
 自販機を壊す人がいないから、自販機は存在できるっていうヤツ。

 で、そういう、どうしようもなく社会に迷惑を掛ける人っていうのは世界の2%でね。
 ただ単に迷惑を掛ける人のためだけに世界が混乱に陥ってるの。

 それがいなくなればいいって、そう思ってるから」

そのためなら、泥だってかぶる。
それだけのこと。
端的な話、迷惑客がいなくなればいい、ただそれだけの話なのだから

「でもあなた……そういうの止める側でしょう?」

さっきの話からするに、彼女はそういうのも認めてしまう側だと、そう思う。

雪城 氷架 >  
「うーん、まぁ止める側っていうか……」

例えに出された内容に視線をやや下げ、困ったように頬を掻く
言っていることはなんとなく理解はできる
その2%っていうのがどう算出されたものなのか、は置いといて、難しい話はわからない

「別にいなくしなくても考えを変えさせればいいんじゃないか?
 自販機壊す困ったヤツには自販機壊すなーって言えばいいよ。
 言って聞かなきゃ…まぁなんだっけ…器物損壊…?だかで、風紀委員呼べばいいと思うけど…」

なんだろう、反省すえばすむ話で命を奪われるのは何かいきすぎているような、とは思うものの
それをうまく言葉にするのが難しいようだった

エインヘリヤル > 「ええ。それで、反省しないから壊すのであって。
 簡単なところでは、スーパーの袋持っていっちゃったり、氷持って行っちゃったり。
 要は、あいつらがズルしてるから俺らはめちゃくちゃしていいんだって言う人達がいるの」

たとえ話だから、今の話は軽いけども、と言って。
じゃあ命の取り合いなら、という話をする。

「自分らは虐げられている、故に、迷惑をかけていい……そう思ってる連中よ。
 だから、落第街の犯罪は物理的になくならない、そういうものでしょう。
 そして、まともな活動をしている風紀や公安が死んだりする。
 真面目な彼らはどうして死ぬ必要があるの? そうは思わない?」

100歩譲っても、彼らのために誰かが死ぬ必要はあってはいけないはずでしょう、と。

「自業自得であるべき。
 だから、始末したい……それだけのことよ。

 悲しいけどね、反省では、何も直らないし誰も帰ってこないわ?」

まあ、本音はそこなのだろう。
話が狂っているだけだ

雪城 氷架 >  
「…まぁ、なんとなく言いたいことはわかる。
 要するにそういう不条理がまかり通ってるのが許せないってコトだろ?」

お勉強の苦手な氷架にはやや難しい話にはなってきたが、
なんとなく言いたいことは伝わってくる
確か何かでみた、テレビのアニメだったか…
大衆を俯瞰で見れる視点を持つ者が辿り着きやすい結論

「でもわかんないことが一つあるんだけど…
 それ、私に手伝えること何もなくないか?
 私なんかが手伝ったところで風紀委員がやめろーって出てきたらそれでおしまいだぞ」

エインヘリヤル > 「不条理というか。
 本来捕まるか自業自得になるべき連中の安全のために誰かが死ぬのは、どこかおかしいんじゃなくて?」

単に、世の中がもう少し良くなればいいという。
ただそれだけの話。

そこにそいつらを含めないだけ。

「そうね……じゃあハッキリ言うわ」

ココまで真摯に対応してくれたのなら、こちらもハッキリ言うべきだろう。

「あなたの有り余った行き場のないエネルギーを、便利に使いたいだけよ。
 まあろくな事にはたぶん使わないでしょうし。

 ……それ、協力しろって言えないでしょう?」

自嘲するように。
あーあ、もっと嫌われると思っていたのだけれど。
思っていた以上の食いつきようだ。

こうやって前の事件が膨らんだのだろうな、というのも何となく分かる。

雪城 氷架 >  
「…ああ、何だ。私の異能のことは最初から知ってたんだ」

特殊異能なんたら、ってそう言えば言ってたっけ、と

「悪いけどそんな便利なもんじゃないよ。
 炎の巨人事件…みたく言われてるんだっけ?
 あれでの何かを期待してるんだったら、とんだ期待はずれになること請け合いだから」

言いつつ、ベンチの背もたれに体重を預けて空を仰ぐ

「あれは公安の…なんてったっけな、ちょっとえらいやつ。
 その女の人の異能で私の異能を制御してたらから出来たんだよ。
 私の出来の悪い脳みそじゃ一瞬で知恵熱、悪けれりゃ心臓破裂でおじゃんだよ」

何かと便利に使えるほど、単純なものではないと一応の説明をする
単純に出力に対して発射口となる氷架の肉体が全く耐えきれないのだ、と

「お前の思ってるような助けにはならないんじゃないかな」

それはそれとして、人を殺すようなこともさすがにゴメンだけど、と付け加えた

エインヘリヤル > 「ま、噂程度だけれど。詳しくは知らないわ、ほら、資料も検閲かかってるでしょう?」

……と。
当事者でもなければ当時の事件の細かい部分なんて知らない。
それでも暴走と力の大きさについてくらいは、調べればでてくるだけの話で。

それに、それほど過去をほじくり返すつもりもない。

「逆に言えば。
 ……方法さえあればどうにかなるっていう話でもあるんじゃないかしら?

 ああ、いえこれは普通に親切心からの話ね。」

それきっと、おそらく別の場所でそういう制御の話が進んでるわよ……そういう予想を。
まさか自分がそのための一部として作られ、もし可能ならと送り込まれていることは知らないまま。

そういう、滑稽な人形。

「やれやれ。
 もう少し嫌われると思っていたのだけれどね。

 でもたぶん、方法なら存在すると思うわよ」

ひどい方法ならいくつか思いつく。
ファミリアにコピーし並列処理させるとか。
場合によっては、多少劣化してでもデータだけ貰えればありかもしれないとか。

だってそうだ。
資料を見る限り、半分以下でもおそらく色々便利に使えるはずだもの。
それに、本人が特別なにかする必要もない。

もっとも、それは喜ばなさそうだとも思いながら

雪城 氷架 >  
「や、そのへんは知らないんだけどさ」

資料とかちゃんと残ってるんだな…と逆に思うくらいだ

「…それは…あるんじゃないかな。
 実際に、前の時は…私は眠ってたから全然覚えてないんだけどさ」

公安委員、西園寺偲は自らの異能ガウス・ブレインによって、
氷架の異能のステージ段階を跳ね上げ、行使したのだという
それは結果として天を衝くような炎の巨人を生み出し───

知っているのは、聞かされた話だけだが
その可能性は…当然ないわけではない

「別に、嫌う理由はどこにもないし…むしろそういう信念っていうか、そういうのがあるのって凄いと思うからさ。
 私なんて目先の試験すらどう乗り越えようかって感じで、将来のことなんてなんにも決めてもいないんだぞ」

やれやれ、と大きなため息
学生なんてそんなものかもしれないが、将来やりたいことや自分の進もうと思う道すら定まっていないのである

「ま、でも人を傷つけることに使うならダメ、NGだ。
 私が直接やんなくても私の異能が誰かを焼き殺すとかそんなのは気分悪いからな」

エインヘリヤル > 「そう、ありがとう……でも、そういうと思ってたわ」

多少の無理があっても、出来ることならする性格で。
それでも、最後の一線は超えないタイプ。

そして、私はそれをやすやすと踏み越えるタイプだ。

「じゃあ、そういうことで。

 ……よろしく」

だから言ったのに、利用するって。
そうでなければ別に今じゃなくても良かったのに。

滑るように、自然な動作で。
当て身から気絶を狙いに行った。

雪城 氷架 >  
「? いや、だからダメって──」

元々、そういうのに疎いとか
多分そういうことはあんまり関係なくて
こんな、昼間の公園でそんな事件が起きるなんて考えてもいなかったし
──まぁ、そういうのはその一瞬で浮かんだ言い訳で
思えば最初にベンチに隣り合って座った時点で、異能を使って逃げるなんてことも、出来るわけがなかっだな、なんて

刹那の中で色々と考えだけが浮かんで、すぐにそれは闇に沈む
鋭い?鈍い?よくわからない痛みに身体を貫かれたと思った時には、甘い痺れが身体と、頭の中に走って

そのまま崩折れるようにして、少女は意識を手放すだろう

エインヘリヤル > 「あら、どうしたんですか? これは大変ですね」

気を失った彼女を、介抱する。
そう、何故か【ちょっともつれて倒れた拍子の事故】なんだから仕方ない。

ぐったりした彼女を、姫のように抱えると、何処へともなく公園をあとにした。

……きっと、しばらくすれば何事もなかったかのように。
氷架は解放され、いつの間にかベッドに寝ているだろう。

ご案内:「常世公園」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からエインヘリヤルさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に緋嗣紅映さんが現れました。
緋嗣紅映 > 夜更けの公園は意外に人が居る。家に帰る途中なのかもしれないし、ぶらっと散歩しているだけかもしれないし、デートかもしれないが、狐娘は特に目的も無いが公園の遊歩道を歩いているうちの一人だった。

「ハー……なんか面白い事ないかナー……」

もうすぐ期末試験が始まるのだが、そう言うものに一切馴染みの無かった獣には当然危機感などある訳が無く。
公園をブラブラとあても無く歩きながら周りに視線を巡らせては、何かないかと探して彷徨う。
例えば今此処に怪獣が現れて人々を襲い始めるとか、例えばとてつもなく大きい猫が現れて人々をその肉球で押し潰し始めるとか……
一歩間違えなくとも阿鼻叫喚な訳だが、果たしてこの島の人間はそれくらいで驚くだろうか。今のところ、狐娘の住んでいた世界の基準で、そんな真っ当な反応を見せるような人間に出会っていないのだが……

「……怪獣でロー。」

小さく呟きながら近くの小石を蹴飛ばした。

緋嗣紅映 > 結局何も面白い事は起きない。早々そんな傍迷惑な事が起きて堪るかという話なのだが、狐娘はそれでは満足出来ない。
となればもっと面白い事が起こりそうな場所に行くしかないと思い、少し足早になりながら公園を出るのだった。

ご案内:「常世公園」から緋嗣紅映さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
日ノ岡 あかね > 「平和ねぇ」

昼時。
購買で買ったサンドイッチを食べながら、セミロングのウェーブの女……日ノ岡あかねは笑っていた。
親子連れやカップルで賑わう常世公園。
ボートもちらほら浮いている池を眺めながら、サンドイッチをゆっくりと味わっている。
温かい日差しは心地よく、微かに吹く風も丁度いい具合。
昼休みを満喫するには、絶好のロケーションだった。

ご案内:「常世公園」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 > 昼時の公園にふらりと立ち寄ったのはくびれたコートを身に着けた男。
何時もと違う点を上げるとすれば、額、腹部、体の一部に負傷痕と思われる包帯が何重にも巻かれていると言う事。
静かな足取りで、穏やかな風と共に少女の後ろから男は近づいて声を掛ける。

「……失礼。隣、宜しいかな?あかね。」

日ノ岡 あかね > 「あら、コンギクさんじゃない。勿論よ」
 
そう笑って、嬉しそうにぺしぺしとベンチの隣を平手で叩く。
穏やかな涼風に、微かに横髪が攫われた。

「また無茶したみたいね」

軽く横髪を片手で直しながら包帯を一瞥して、満身創痍といった体の剱菊に微笑む。
食べかけのサンドイッチを一つ食べ終えて、指先についたマヨネーズを舐めとった。

紫陽花 剱菊 > 「忝い……。」

静かに一礼すれば、隣へと静かに腰を下ろした。
凛と背筋を伸ばした佇まい。
武芸百般、礼儀も重んじるのは必然。

「……戦場と成れば、是非も無い。此れは互いの……そうさな……。」

「男同士、"意地の張り合い"とでも申しておこう。」

志のちょっとした相違により始まった、個人同士の大戦。
今でもあの宵闇を照らす業火の戦果は、脳裏にしっかり照りついている。
……そう語る男の口元が緩んでいるのは、其の"意地"とやらのしょうもなさにか。
或いは、戦そのものにか……────。

「……失礼を承知で申し上げるが、其方にも少女らしい嗜好はあったようだな。」

「立夏の薫風に髪を靡かせ、平穏を見守る姿。良い絵になっていたよ。」

なんて、少しばかりからかうように言ってのけた。

日ノ岡 あかね > 「ふふ、ありがと。でも当然よ。私は何処にでもいるダブりの女子高生なんだから」

剱菊の笑みに、あかねも笑みで合わせる。
とても好ましそうに。
それこそまるで、公園で遊んでいる子供でも見る様に微笑みながら……サンドイッチをまた一つとって、小動物のように食べ始めた。

「リオ君と一悶着あったんですって?」

そして、昨日の天気のことでも話すようにそう切り出して。

「男の子の意地の張り合いって私好きだけど、死なない程度にしてくれると嬉しいわね。これは私のワガママだけどね」

くすくすと……小さく笑った。

「友達が二人まとめて死んじゃったら、寂しいわ」

紫陽花 剱菊 > 「留年、か……其れは、やはり例の違反活動が原因か。
 失礼ながら、職務故に、色々調べさせて頂いた。」

「たおやかな女人の過去を探るのは大変破廉恥と思われるが、どうか……。」

男は何事にも真面目に取り組むような男だった。
かつての違反活動組織、事件、そして
現在公安が目をつけるような存在も、一通り目を通した。
そこに彼女も例外ではないが、個人の情報を漁る後ろめたさが無いわけではない。
馬鹿正直と言えばそうだが、それを打ち明け、頭を下げた。

「……既に、耳朶に音は届いていたか……。」

あれだけ派手にやれば、少しは情報網があれば届くのもうなずける。
相変わらずの仏頂面のままだが、表情には憂いが帯びる。

「…………無論、私とて好き好んで人は斬らん。だが、世の中には"斬らねばならない"人種は、確かにいる。」

自らを悪と定める者。
そこから抜け出そうとしない、混沌と破滅を呼ぶ跳梁跋扈。
物の怪ではなく、人の身でそこにいるものに
最早言葉が届かぬのであれば、斬るしかない。
人……否、"刃"と定めた心故の、考え。

「…………。」

一幕。間を置いた。

「────其れは、我等二人が其方の"居場所"に在るべきと、定めているからか?」

男は静かに、問いかける。

日ノ岡 あかね > 「ふふ、『居てくれるなら』嬉しいけど……単純に心配なだけよ。男の子って、突っ走ったら死んでも止まらないから」

同級生の危ない遊びを心配するような口調で、そうあかねは笑った。
人慣れした鳩が歩く歩道を眺めながら……あかねは呟く。

「私の留年についてはその通りだし、調べればわかる事だから気にしないでいいのよ? 調べなくたって知ってる人は結構いるし」

カルト系違反部活。
トゥルーサイト。
真実の視界。
別に隠しているわけでもない。
積極的に、語らないだけ。

「むしろ、私を知ろうとしてくれたんでしょ? それは女冥利に尽きる事だから、謝られるような事じゃないから安心してね。むしろ……私に興味を持ってくれるなら、私とっても嬉しいわよ?」

小首を傾げながら、剱菊の顔を覗き込む。
相変わらずの夜の瞳が、そこにはあった。

「気になる? 私の過去」

あかねは、笑って尋ねる。
恋話に花を咲かせる少女のように。

紫陽花 剱菊 > 「…………其れについては、否定はしない。」

男とは須く、心根に"矜持"を抱えている。
其れの為に容易く命を投げうる考えは強く理解出来た。
自分がその一人だからだ。

「……私のような、太平の世を望まんとする刃を望むなら……」

「其方の言う、『日ノ岡 あかねの居場所』に居座るのも吝かでは無い。」

此の身、人を斬る事知らぬ。人に非ず、刃也。
さすれば其れは、噎せ返る程の血を纏った男である。
其れでも尚、人々の安寧を案じ、太平の世を望む。
その志は暖かな太陽の匂い。"それ"を居場所におく覚悟があれば
男は、ある程度の提案は許容する心算であった。

「……其方は本当に口達者だな。気を悪くするかも知れぬが、宵闇の魔性。惹かれぬ男のが少ないやもしれん。」

……少なくとも、初めて出会った自分がそうだった。
相変わらず、夜の様に深い黒。
宵闇の底に、月明りすら見えぬ黒を
あの時とは違い、光の宿った黒の双眸が見つめ返した。

「────……然り。」

静かに男は、頷いた。

「……紙上の語りだけならば、如何様にも台本は用意出来る。
 が、真と在れば……其方への罰則も、些か酌量の余地在りと見えた。腑に落ちん。」

確かに彼女は違反部活に所属していたかもしれない。
だが、秩序の者が駆け付けた時には既に事は終わっていた。
全ての責任を押し付けるかのような、そう、まるでそれは……

「……人柱か?」

そう、形容するに相応しい。
目前の奥の奥、広がる夜を見据えて────。

「……教えてくれ、其方の過去を、其方自身を、『日ノ岡 あかね』とは如何なる人物だったか、其方の口から全てを語る事を所望する。」

深い夜に、踏み込んだ。