2020/07/01 のログ
平和田 竜彦 > 「じゃあ、街に着くまでの間ご一緒しますね。」

なんだか恐縮されっぱなしで声を掛けにくいです。
ちゃんと話はできますし、後ろを着いてくれていますので案内はできるのですが。
多分、僕の顔には戸惑っているのがはっきりと出ていると思います。

「実際に説明するより、見たほうが早いでしょうし。
今日は電車に乗ってみましょう。 慣れると歩かなくてもよくなりますよ。
あ、学校ってのはここで暮らしていく為の知識などを教えてくれる所です。
僕もお二人と似た様な境遇だったのですが、学校で教わることで今はなんとかやっていけてます。」

僕は電車の説明をするために行き先を駅へと変えました。
高速列車の駅は公園からも割と見える場所にあります。何せ、常世環状線が見える方角へと向かえばいいのですから。
歩いている間、シャーリーさんに学校のことも話します。この時、僕は少し表情が明るくなっていたと思います。

「そうだシャーリーさん、喉は渇いていませんか?
ジュースとかありますけど。」

駅に向かう途中で自動販売機を見つけましたので、指さして二人に声を掛けます。
ここまで歩いてきたとのことなのですが、自販機はご存じでしょうか?
わからないようでしたら無難にお水のペットボトルを買って渡しましょう。

シャーリー >  少年の顔に滲む困惑の顔。とても見慣れた表情だ。自分の事を扱い兼ねている顔。どんなに優しい人でも、少女の性格を考えれば致し方の無い事だ。それだけ少女は面倒くさい性格をしている事を、少女自身も自覚しているだけに、声を掛ける事が憚られた。

「わ、わかりまし、た……。あ、お金は……後日、お返しします、ね……」

 すぐにでも返したいところではあったが、手に職も無いし稼ぎ方も分からない今の状態で返す充てが無く、後日と言葉を濁す他無く頭を下げる。

「……そ、そのような、と、ところ、が……す、す、すごい、です、ね……。たた、たのしそう、です……」

 そのガッコウという所に行けば自分の悩みも解決するのだろうか、と少女はぼんやりと考える。だがふとある事に気付いて、少女は珍しく、恐らく初めて少年に視線を向けた。

(そういえば、この人……ヒーちゃんの事、も、数えてくれてる……)

 先ほどから出てくる「おふたり」という言葉に気付いて、少しだけ嬉しそうににへらと笑った。後ろを歩いていた為、少年は気付かなかったかもしれないが。
 そもそもが魔物である為、彼女を一つの個体、人格、対話できる存在として扱ってくれる事はそれほど多くは無かった。皆、恐れるか、よくてペット扱いだった為、友人としては嬉しくてしょうがなかった。その為、一人でにやついていた。
 学校の事を話している時の少年も楽し気で、きっとこの人は凄く優しい人なんだと思った。

「……え?え、えっ……そ、そんなっ。だ、大丈夫、ですっ……さ、さっき、血を飲み込んだのでっ……」

 吐血した際に口の中の血を飲み込んだりした、というスプラッタな回答をしつつ首を左右に振って少女は遠慮したものの、差し出されてしまう水のペットボトル。此処まできたら受け取らない方が流石に失礼だと思い、両手で受け取る。

「……あ、ありがと、う、ご、ございま、す……」

 また頭を下げてか細い声で礼を言った。またお礼する事が増えてしまったと思った。
 その後も少女から話題を振る事は無く、少年に話しかけられれば答えるという程度の会話をしながら、駅に着いたらその人混みの多さにまた怖気づいて足止めを食らったとか―――
 果たして少女は無事に送り届けられたのか、それは当人たちのみぞ知る……

ご案内:「常世公園」からシャーリーさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から平和田 竜彦さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
日ノ岡 あかね > 親子連れなどで賑わう昼時。
先日のように昼食のサンドイッチを食べながら、スマートフォンをいじる。
例の計画の報告書などである。
おおむね予想通りの報告だけが連日あがる。
 
「まぁ、そんなもんだろうとは思ってたけど」

目を細めて笑いながら、BLTサンドを控えめに齧って。

「もうちょっと、なんか『面白い事』になってほしいわね」

そう、身勝手な希望を述べる。
クスクスと笑いながら。

ご案内:「常世公園」にエインヘリヤルさんが現れました。
エインヘリヤル > 【彼女】はだいたいよくこの辺に現れる、と報告で聞いている。
それほど急ぎの用ではないのだから、たまに眺めて確認すればいい。

それに、せいぜいするのは確認ぐらいの話。
すこし掘り込んだら面白いことが起きれば、というくらい。

そんな感じで世間話でもしに、わざわざ並んで買ったフルーツサンドを片手にエインヘリヤルは現れた。

「……隣、よろしいかしら?」

ツインテールを揺らしながら、いつもの調子で。

日ノ岡 あかね > 「ええ、勿論よ。私は誰かと喋るの大好きだから」

嬉しそうに笑って、荷物を退かして隣を空ける。
初夏に差し掛かった常世島の風が、微かに公園を吹き抜けた。

「確か、『話し合い』の時に好意的な反応くれた子よね? あの時はありがとね」

思い出すように目を細めてから、BLTサンドを一つ食べ終える。
ゆっくりと咀嚼して飲み込んでから、ペットボトルのレモンティーで喉を潤した。

「お陰で計画は順調よ。手伝ってくれる子も結構おおいしね」

くすくすと、あかねは楽しそうに笑う。

エインヘリヤル > 「ありがとう、ならお邪魔させてもらうわ。
 私も話好きな方でね」

礼と会釈をしつつ、スカートの裾を整えつつ上品に座って。

「ええ、とても楽しそうな計画だったし。
 そして、ともすれば似た事を考えてるかもしれないと思ってね。
 だから、どこまで図面を引いてるのか、すごく気になっていたの」

カフェで買った、特製フルーツサンドの紙袋を開け、中身を取り出しつつ。
いちご、オレンジ、キウイなどの入った色とりどりの様子に、ああ、やっぱり可愛くて綺麗などと言いながら。

「自分のことは自分でやる……素敵でいい話よね。
 文句があるならやれば良い、そういう自己負担システム。

 だって、泳げる子は自力で助かるけれど、アレって沈む子は沈むでしょう?
 ……自責だもの、泳げない子に浮き輪が支給される仕組みでもなさそうなのが面白くて」

くすくすと。
人としてあまり言ってはいけないことを、言った。

日ノ岡 あかね > 「浮き輪は自分で取るものだからね」

クスクスとあかねは笑う。
色とりどりのフルーツサンドに比べれば若干色彩に乏しいBLTサンドを摘みながら、楽しそうに。

「元々、『それすら出来ない人たち』は本来入島していない筈だし、『理由があって出来ない』なら引き上げ審査で優遇を受けられる。そのどちらでもないのなら、多くの場合はただの怠慢か惰性の筈。此処が普通の国だったら、難民問題なんて解決するわけもないんだけど……此処はあくまで学内。しかも、不法入島でない限り、一度は『自分の意志でルールに同意して』此処に来ているはず。違反部活生は確実にそうだし、二級学生だって裏口入学とはいえ一度はそれに同意しているのだから……あとは『言い訳』を準備するだけでどうにでもなるわ」

実際のところ、これで落第街全体がどうにかなる事なんてありえない。
落第街からしてある程度は『意図的に』上から見過ごされているのだ。
上にとっても……落第街が無くなることは不都合な筈。
つまり、最初から『統治するつもりなどない』と言い換えることもできるわけで。

「でも、その『言い訳』すら突っぱねて残るなら……よほどの理由や信念でそこにいる人達のはずよ」

そう、最初から望んで落第街に自分の意志で居る者達。
なら、それの選別をすれば……結果的に、双方の為になる。
浮足立った『半端者』は裏と表の両方に食いつぶされ、表は戦力が増強され、裏側はさらに地下へと潜る。
だが、地下に潜ってくれればくれるほど……一般からは遠ざかる。
そのほうが、治安維持も楽だ。それこそ、表も裏も。

「楽しみね、誰もが『自分自身の在り方』について考えてくれると思うと……本当にね」

結論が出なくてもいい。考えることを放棄してもいい。
だが、一度は「その機会」を作ったのだ。
出来れば、生かしてくれた方が『面白い』。
あかねは……嬉しそうに笑った。

エインヘリヤル > 「ええ、【考える必要】を作るシステムだというのはわかった上で。
 【そもそも考える能力がない】人たちもたくさんいるもの。

 この間だって【浮き輪の支給】について質問する人たちばかりで滑稽。
 そう思うなら自分で配ればいいのにね?」

ラップを開くと、上品に口に運んで。
幸せそうに食べる……甘味が好きなのが見て取れる。
女子なら大抵はそうだと思うのだけれど。

「取り敢えず、話が最初からそのつもりならありがたいわ。
 だって、芯から人類の自律を信じてるような狂信者じゃないもの、話が通る。

 それはそれとして、後始末がどうなってるか聞きたいと思ってね」

この計画、最初から【みんなを海に突き落とす】という計画だ。
多少の猶予はあるけれど、泳げる泳げないに関わらず、それを強いる。
とすれば、溺れて文句をいう連中の粛清じみた物が必要になる可能性が高い。

で、最初からトップに立っている彼女はスケープゴートにされやすい。

気になるのはそこ。
破滅の代わりに次の世代を望んでいるのか、それともまだ材料があるのかどうか。

「だってコレ、最初からどうやったって大量削除する話でしょう?
 私が【協力する】と言ったのはその辺の話もあるの」

表に立つのは別に彼女だけじゃなくてもいい。
溺れる連中を沈められるなら、そのために尽くすのは悪くない

日ノ岡 あかね > 「そんなことにはならないと思うわよ。なったら『面白い』けどね」

楽しそうにあかねは笑う。
肩を竦めて心底可笑しそうに。

「みんな揃ってこの計画を大事に捉えすぎなのよね……大したことはないわよこれ? だって要約すれば『二級学生や違反部活生を仕方なくやってる人達を拾う新しい枠を作ります。興味ある人はこっちきてね。文句あるなら手伝うか無視してね』ってだけだし……言ってしまえば、公安とかが定期的にやってる二級学生引き上げ審査の別枠ができました程度のもんよこれ?」

やっていることは『望まず其処に居る生徒の引き上げ』以上でも以下でもない。
通常の引き上げ審査枠から零れた奴でも『滑り込める可能性がある』だけだ。
 
「溺れて文句を言う奴は通常の引き上げ審査に零れた時点で最初から文句を言っている奴で、それは今までと変わらない。新規枠の拡張で文句を言う奴なんだから、公安の引き上げ審査の枠が変わるたびに文句言ってるって事でしょ、そいつら。いつも通りじゃない。確かに血を見る事には多少なるでしょうけど……最初から血にまみれた公安風紀が気にするほどの量じゃないわ。むしろ、そこまで大事になってくれたら私は感心するわよ」

揶揄するように、あかねは笑って。

「『まだ』そんなに『浮き輪も拾えないくせに暴れる気力だけはある奴らが残ってたんだ』って」

彼等は既に……海になんて『とっくの昔から』突き落とされている。
浮き輪だってとっくに公安委員会や生活委員会から放り投げられている。
そこに今度は風紀委員会からも新しい浮き輪が放り投げられただけのことで……むしろ、前より多くの浮き輪が放り投げられているのだ。
餌が減って文句が出るなら分かる。だが、今回むしろ餌は増やしている。
餌が増えた事で、それでもその餌にもあり付けない奴に……果たして、まだ『溺れて文句を言えるだけの気力と度胸』など残っているのだろうか?
余りに今更。余りに些事。
通常業務の範囲内でしかない。

「それなりに『そういう連中』はでるだろうけど……大した数にはならないと思うわよ? 出たところで、それこそ威力運用試験部隊の『試し切り』に使うだけ……ま、私の予想でしかないけどね」

あかねは、溜息を吐いて苦笑しながら。

「それでも、コケて大不祥事になんてなるようなら、私が『切られる』だけのことで、大したことじゃないでしょ。博打なんだから、負ける時は負ける時。その時の覚悟も準備もあるにきまってるじゃない」

そう、涼し気に呟いた。

エインヘリヤル > 「なるほどね、そういう。
 新参の私としては、割と大ごとにしたいのだけど」

彼女の言うには、【コレが日常で、普通】
よくある出来事でコレと言って別段なにも変わらない。
それにプラスアルファ程度でしょ、と。
そういう話。

ただ一つだけ彼女が見逃しているとすれば、すでに大ごとになり出している点だ。
単にそれは【大ごとだとみんなが思っている】から、それを多くの人が望んでいる。

「だってほら、暴れたり文句言うのが仕事っていう人と、それを利用したい人達がいるでしょう?
 浮き輪の出どころそのものを仮想敵に設定しちゃったから、引くわけには行かない連中とか」

彼女の言うのはすごくよくわかる。
ただ、私からすると、愚かというのは予想以下だから愚かだと思っている。
そして、会議でもそうだったように、正しさを振りかざしたい人たちがたくさんいて。
その正しさで殴り合いたい人たちはたくさんいるし、それはひどく愚かしく楽しく。

平和を望んでるくせに、乱したくて仕方ない。
そういう点では私もその一人。

「個人的には、まだ人間扱いし過ぎに思ってるかしらね。
 まあ、日常的にそうだというならその部分は理解するけれど。

 ただ、それでも博打と言われてしまうとそれはそのとおり。
 それでも、ハイローラーに対して、追加出資くらいは出来るといいなって。

 自分でも割とタカ派だと思うもの、私」

まるで不祥事を起こしたがっているかのようでもある。
端的に言って血を望んでいる。そういう赤み。

フルーツサンドにはない甘味。

日ノ岡 あかね > 「それこそ、望むところじゃない」

楽しそうに。
嬉しそうに。

「暴れて文句を言う事そのものが仕事の人たちは『自分の考えで悪を成す』人達、それを利用したい人たちも『自分の考えで悪を成す』人達、餌を貰っても誇りだの矜持だの意地だので引くわけにいかない人たちも……『自分の考えで悪を成す』人達」

あかねは、強かに笑う。

「最初から『そういう人たち』を選り分けるのが目的なんだから」

その『愚かしさこそ』が見たい……と、言わんがばかりに。
日ノ岡あかねは……楽しそうに笑う。

「そんな人達と一緒に暴れたい人達もいれば……そんな人達を一緒に叩き潰したい人達もいる……ほら、お互いの為に、『お互いの敵』が見える様になったわよ? 手に触れられない何かでも、目に見えない不安でもない。目で見て、触れられて……『殺せる実在の敵』よ」

大事にしたいならすればいい。
したい奴らだけがすればいい。
元々、『無視したいなら無視すればいい』といっているのだ。
それは逆に言えば……『大事にしたいなら大事にしてもいい』ということでもある。
大事にしたところで、島ごと揺るがす騒乱になどなるわけないというだけで。
この島は……そこまで狭くない。

「私はね、みんながみんなのしたい役割(ロール)を再確認できるなら……それでいいのよ。それだって、別に無視してもいいっていってるんだから」

あかねは笑う。
ただ、笑う。
目を細めながら……目前に立つ騒乱を望む誰かを、愛おし気に見つめながら。

「手伝ってくれるなら、嬉しいわ……それなら、私からアナタにするお願いはたった一つ」

嬉しそうに。
楽しそうに。

「アナタのしたい役割(ロール)をして。それだけでいいの。それだけで……十分私の『手伝い』になるからね」

日ノ岡あかねは……静かに笑った。

エインヘリヤル > 「ふふ、なら願ったり叶ったりだわ。
 ……みんなが自分の責任ということは、乱して選別したがることも自己責任でしょう?

 でなければ、わざと煽って判断を狂わせ、急進的な話で熱狂させる必要はなかったし」

昼食の話としてはだいぶ物騒なのだけど。
これで、フルーツサンドの甘みが増すのだから仕方がない。

この議題は、普段何を考えているかが問われる、そういう性質の問い。
即断即決、そして実際の行動以外は全て後手に乗せられる、そういう話だもの。

「あなたが煽ってみんなが乗った。
 そういう祭りよ、コレは。

 だから……神輿に担ぎたいだけ」

そして、彼女は、みんなの神輿でいられる間は安全。
そういうイベントだ、コレは。

「そして、みんな自分なりの理由で好き放題したい。
 あなたの名を借りて、ね……それが自分の意志であるかのように勘違いしたまま。
 そういうのすごく可愛い。捻り潰したくなるくらい。私も溺れていいくらい。

 だから、私としては、担ぎ上げて長持ちさせたい側。
 大好きよ、そういうの」

屈託なく、年相応の笑顔で微笑んだ。
目だけが獲物を狙う目で。
金十字の目は嬉しそうに歪んでいる。

日ノ岡 あかね > 「ふふ、最初は『誰かを言い訳や盾にしていい』のよ。それで動き続ければ『手遅れ』になる。そこまでいけば『言い訳出来ない』から」

誰かの意見に最初相乗りするだけでもいい。
誰かの言葉に最初扇動されるだけでもいい。
実際、多く人間がそうであるはずだ
最初は嫌悪する何かを遠ざけるために、憧れる何かに近づきたいために、自分の自分らしさを自分で選んだと『見せかける』ために……先人のそれらしい思想や言葉を『借りる』など、発達上普通の事だ。
カッコつけや意地でやったことだって、続けてしまえば引っ込みがつかなくなる。
そして、それが『自分自身の意志である』と自分自身を『騙せるまで』になれば……それはもう、『自分の意志』に他ならない。
そこまでいけば真贋など……誰にも見分けがつかないのだから。

「だから、『私のせい』にしていいから……アナタも好きにしてね? それが私の責任の取り方。アナタが『私のせい』で何かして私が糾弾されても……それは仕方がない事。それは受け入れる準備があるし……躱す準備もあるわ。お互い、立場がないわけじゃないしね」

クスクスと笑う。
別にあかねは「あかねのせい」にされることは大したこととは思わない。
それで動けるのなら、それで何か成せるのなら。
……むしろ、女冥利に尽きるというもの。

「口を開けてるだけじゃあ餌はもらえない。少しでもそう思う人が増えてくれたら……幸いね」

最後のBLTサンドを食べる。
口端についた真っ赤なトマトを親指で拭って……あかねは味わうように舐めとった。

エインヘリヤル > 「きっかけはなんでもいいっていうことよね。素敵な話。
 ふふ……にわかでも歓迎って、良いジャンルだわ?」

他人に熱狂させられるのも、自分で熱狂するのも。
自分で知らないうちに溺れに行くのもあり。

人は知らず識らずのうちに望んだことをする。
最終的には、その責任を自分で取らされるだけの話でしかない。
その理由が自分であろうが、借り物だろうが、怠惰だろうが、逃避だろうが、溺れてワラを掴んだだけだとしても。

……結局、選んだのは自分。

「くすくす……口を開けてるだけじゃ、なんてよく言うわね?
 餌を撒いて、放し飼いでひよこから育てようってくせに。
 しかも、なんだかんだで丸鶏に詰め物までして食べる気満々じゃない」

まあ、ギャンブラーなんてそんなものだけど。
投資した分ぐらいはできれば美味しくいただきたい、ってね。

「ところで。
 甘い話の後にはこう、なにかスイーツがあると嬉しいのだけれど。
 興味あるかしら。

 ……なんならそれくらいは出すわよ?」

しっかりと、【たっぷりフルーツサンド】を完食しておきながら。
まだ食べる気らしい。

日ノ岡 あかね > 「美味しく食べられるなら勿論そうしたいけど……そこまで期待はしてないわよ? そうなったらいいなぁと思っていることは……嘘じゃないけどね?」

投資が返ってくる保障など心配するなら、博打など最初から打ってはいけない。
博打は常に負けの目があるから博打。負けまで含めて勝負。
それを飲み込めないなら……最初からそんなことはしてはいけない。

「そう、きっかけは何でもいいの。最初は些細な事でもいい。ちょっとしたことでいい……自分で選んで、自分で歩けるきっかけになるならそれでね」

あかねは笑う。
既に、賽は投げられた。
その波紋は広がっている。
それだけでも……投資は既に回収できているともいえる。
それ以上は全ておまけ。
だが、仮にその回収分がすべてなくなるだけの負債を負う事になったとしても……その時はその時。
粛々と負けを受け入れるだけだ。

「お誘いは嬉しいけど、私もこれから用事があるから」

そういって、鞄から報告書をチラリと見せる。
日ノ岡あかねが毎日の提出を義務付けられているそれ。

「これ、出してこなきゃだからね。また今度……楽しみにしてるわ」

そう、静かに笑って……あかねは歩いていく。
野良猫のように足音もさせず。
まるで尻尾でも揺らすように後髪を揺らして……去っていった。

ご案内:「常世公園」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
エインヘリヤル > 「あは……振られてしまったかしら?」

サラリとかわされた。
必要以上に深入りしないとか、馴れ合わないとか。
もしかするとそういった話かもしれない。

単に気分や用事かもしれないけれども。
これも【縁】っていうやつなので、仕方がない。

出会いはガチャみたいなものだもの。
望むなら回数をこなすしかない。

それに挨拶は【また今度】だ。
振られてしまったけれど、袖にされたわけでもない。

「……もっとも。
 私は、自分の足で歩ける人なんて、見た目より多くないと思っているのだけれどね」

歩いている気になる人は多いと思うけれど。
実際は動く歩道に乗っている人のほうが多い。

そして気づかないまま、それに慣れてしまえば。
あっという間に歩かないことを前提にしたアイデンティティのできあがり。
それさえも自責なのだけれど、それを認められず、有事に壊れる人も少なくない。

「でもあかねさん?
 ……慣れってね、案外抜けられないものよ?」

一度そうだと結論を出してしまったものに修正を加えるのは、なかなかに難しい。
人はそれを才能と呼ぶくらいに。

知っていれば出来る科学的解法なのだけれど。
人は科学よりも感情論にすがりたい。

そして感情論は愚かで身勝手で、歩いていないのに歩きたい。

「そういう連中を集めて始末できればね、それでいいのよ、私」

だから、船を沈めてみんなを溺れさせるのは賛成。
叩くのは私の役目でもある。ただ、目印がいるだけ。

とりあえずスイーツの上に乗るのはいちごである必要があるだけで。

「しかたない、この間、神代くんに教わった店でも開拓しますか」

すっかりスイーツ部に片足を突っ込んだまま。
赤いツインテールを揺らしつつ、必要な話が終わったその場を後にした。

ご案内:「常世公園」からエインヘリヤルさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に三椏 そにあさんが現れました。
三椏 そにあ > 「今日は雨が降ってなくて良いお天気ですわっ」

ピクニックバッグ片手に、ぴょこぴょこと公園にやってきた少女が一人。
久しぶりの晴天に浮かれて、お外でランチタイムを嗜みに来たのだ。

ベンチにぽすっと腰をおろすと、ピクニックバッグを横に置き。楽しげに蓋を開ける。中にはお母さん特製の色とりどりのサンドイッチ(ミニサイズ)と、デザートのぶどうが4粒はいったタッパーが入っている。隙間を埋めるようにパステルカラーの布と、うさぎのぬいぐるみも一緒だ。

三椏 そにあ > 「おかあさま、そにあは美味しく残さず頂きますわ」

サンドイッチのタッパーを膝に乗せて、手を合わせる。

「頂きます」

そう言ってから、蓋を開け
ハム、チーズ、レタスの挟まったサンドイッチを手に取って、一口。
もぐもぐ…美味しい!
誰も近くにいないのをいいことに、んん~と至福の声を上げている。花まで飛んでそうな笑顔だ。

三椏 そにあ > 「おうちピクニックも楽しかったですけれど、やっぱりお外で食べるサンドイッチが一番おいしいですわね~」

んふふ、と口元に手を当てて笑う。
元々外で日向ぼっこをしたりすることも好きだったので、相当に梅雨の晴れ間が嬉しいのだった。

「おにーさまにも、今度つき合っていただきませんと…たまには、ゆっくりすごすことも必要だと思いますわ」

何かにつけて怪我をして帰宅する兄のことを思い出して、ちょっとだけ不満げな声を上げる。
本人の自発的な行動でないにせよ、見えていない以上心配になってしまうのだ。

もぐ。また一口。小さいので2口ほどで一つ食べ終えてしまうだろう。美味しい。

三椏 そにあ > 「…のどかですわねえ…先日は、何やら学園の方々がばたばたしていたようですけれど」

少女は風紀委員でもなければ、落第街のような場所にも近寄ったことがないので縁がない話ではあるのだが。
慌ただしくしていたことや、何かがあったことくらいは察していた。

「もうきっと落ち着いたのですわね、良い事ですわ。
風を感じて、おひさまの下でぼんやりと何となく過ごす時間がもっともっと増えるとよいと思いますけれど」

そうあってほしいな、と願う程度だけれど。
彼女は誰かを救うものでもなければ、何かを作り替えるものでもない。

ただの、呑気な村人Aなのだ。
お気楽で、夢見がちな一般人。今までも、これからも。

三椏 そにあ > その後は、たまごサンドを食べて。
ぶどうを一粒ずつ摘まみながら、辺りを見ていた。

公園を通り過ぎる人、寄っていく人。
駆け足で何処かへ向かっていく人。スマートフォンを見ながら歩いている人。

穏やかな日常を過ごす人々の姿を眺め、ふふ、と楽しそうに笑った。

そうして過ごしていれば、満足した頃。ピクニックバッグの中身をきちんと戻して、公園を後にするだろう。

今日も楽しいピクニックでした。

ご案内:「常世公園」から三椏 そにあさんが去りました。