2020/07/05 のログ
ご案内:「常世公園」に修世 光奈さんが現れました。
修世 光奈 > 「はふぅーーー……」

何日かかけて、依頼対象を一通り脚で探し。
流石に頭が熱くなってきたため、休憩する目的で公園へ。

適当に設置されているベンチに深く腰掛けて息を吐く。

「…ぅー…、わたし、でもこんなに苦戦するとは…ふふ…」

疲労の声をあげるも、不満な様子はなく。
むしろ、楽しそうに口角は上がっている。

眼を閉じて、日差しに身を任せながら思考を整理しつつ。
まるで眠っているかのようにすぅすぅとベンチでゆったりしている。

修世 光奈 > そしてそのまま、うっかり眠りに堕ちそうになり。
は、と目を覚まして、またどこかに消えていった…

ご案内:「常世公園」から修世 光奈さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にアルン=マコークさんが現れました。
アルン=マコーク > 水が油滴を弾くように。
昼下がりの公園で、金髪の少年がのんびりと過ごす人々に避けられている。

「こんにちは。あなたは『悪』をどう思いますか」

……むべなるかな。
怪しげな宗教の勧誘か、学生のおふざけか。
演劇の衣装のような、紅いマントを羽織っているのがなおのこと、彼を『まともではなく』見せている。

いつも彼が掃除をしている落第街であったなら即座に因縁を付けられそうなものだが、治安の良いここ学生街では、胡散臭そうな視線を向けられ、距離を置かれるだけだ。

「こんにちは、少し聞かせてほしいのですが。あなたは『悪』についてどう思いますか」

迷惑そうに避けられていることに気付いているのかいないのか。
それとも不屈の精神を持っているのか。
少年は諦める気配を見せることなく、問い続ける。

しかし、一つも答えが返ってくることはない。
場合によっては、風紀委員を呼ばれているかもしれない――

アルン=マコーク > 「だめだな。こちらの世界でも、人々は『悪』に興味がない」

アルンはため息を吐いた。
彼が無視されているのは、人々が『悪』に興味がないからというわけでは決してないのだが……

「しかしそれは、良いことでもある。『悪』に興味がないのなら、『悪』に誘引されることもない――はずだ」

思い返すのは、雨の中出会った風紀委員、リンカの言葉。


『善と悪は光と闇…この世界の人の心に等しく在るものだよ』


そして目を閉じると、ゆっくりと首を横に振った。

(いや、間違えてはならない。僕の世界では有り得なかった『悪』との同居が、この世界ではあり得るんだ)
(ならば、彼らが僕の話を聞こうとしないのは、内なる『悪』が僕――光の勇者を恐れているから、か?)

まあある意味では、その勇者然とした振る舞いや、紅いマントのせいという面もあるのだが。
ともあれ。
勇者は諦めるということをしない。
何度無視されようとも、元気よく人々に尋ね続ける――

誰か、彼に答えをくれる者が現れるまで。

ご案内:「常世公園」にツァラ=レーヴェンさんが現れました。
ツァラ=レーヴェン >  
「おにーさんなーにしてるのっ?」

誰もが遠巻きにアルンに不審者を見るような眼を向ける中、
真後ろから不意に声がかけられた。

彼の近寄り難さなどまるで気にしないように。
周りからは全く気付かれていないかのように。

そこにはいつの間にか少年が立っていた。

赤いマントに金髪紅眼のアルンとは正反対。
白髪に蒼眼が興味深そうにそちらを眺めていた。

もしアルンの能力である現象への耐性が幻術にも対応できるなら、
青い蝶が周囲を舞い、少年の本来の姿を隠しているのが分かるかもしれない。

アルン=マコーク > 「やあ、こんにちは」

気配もなく背後に立った少年に、気負いもなく振り返り、挨拶を返す。
白髪蒼眼の少年に、というよりも、身に纏う幻術の気配に僅かに眼を細める。

「なにか魔法を使っていますか。身を隠す、あるいは守るような」

しかし、その看破までをできるわけではないようだった。
その魔法に敵意を感じ取らなかったのか、特に警戒することもなく質問に答える。

「僕は光の勇者アルン。この世界での『悪』について、聞いていました」

ツァラ=レーヴェン >  
「わーお、おにーさんブエンリョってヤツだねー!」

自分の術にあっさりと気付かれれば
きょとんとしてアルンをまじまじと見つめた後、
にししと笑ってそんな返答を返す。

否定も肯定もしない。
ただ看破出来ないまでも気付いたことを真正直に話す彼に、
少年は可笑しくてたまらないといった様子だ。

「ゆーしゃ? 何それ。
 『悪』? なんで悪について聞くの?
 悪者とかそーいうのを探してるんじゃなくて?
 なんでそんな曖昧なモノを聞いてるの?」

ぴょこぴょこと落ち着きなくアルンの周りをくるくる。 

アルン=マコーク > 「ブエンリョ……無遠慮? ですか? すいません、あまり『遠慮』というものを、僕はよくわかっていません」

頭の中にしまい込まれていた記憶を探るように、視線を上に向けて、勇者は素直にそう答えた。
目の前の少年が幻術を解かないことにも特に警戒することなく、矢継ぎ早に浴びせられた質問について、顎に手を置いて考え始める。

「勇者は……『悪』を滅ぼす者です。僕は勇者なので、『悪』を滅ぼさなくてはならないのですが、この世界の『悪』は、僕のいた世界の『悪』とは違うらしいんです」

落ち着きなく周りを動き回る少年に、視線を合わせるようにアルンもその場で回る。

「なので、『悪』について知る必要があると考え、聞いていたのですが……あまり効果は出ませんでした。人々の内なる『悪』が、僕の質問を嫌ったのでしょうか」

そんな自分の推測を、大真面目に語った。

ツァラ=レーヴェン >  
「あはは! 面白いなぁー。
 おにーさん見た目よりも結構若いの?
 この世界の『悪』ってことは、君"も"別の世界から来たのかな?」

ともすれば不審者にも見られそうな青年は少年と話している。
通行人はそんな彼らを特に気にすることなく、過ぎていく。

アルンが話しかけて遠巻きにされていた時よりも、自然にだ。
これは少年の幻術のせいだった。
周囲に自分達がただの風景と思わせているのだ。

「『悪』を滅ぼすのが勇者? なんで君は勇者なの?
 こんなところでそんなヘンなこと聞いてたら、"君が悪者になっちゃうかもよ?"
 他のヒト、明らかにおにーさんの事、変な人って見てるもん。」

というか本当に無遠慮なのはこの少年なのだが。
そんなツッコミをするモノが…いないのであった。

アルン=マコーク > 「そうですね。僕はこの身体の持ち主、閂悠一くんに喚ばれて、別の世界から来ました。ですが、僕のほうが生きてる時間は長いですね」

どうして『若さ』について言及されたのか、僅かに首を傾げながらも、向けられた質問には律儀に答えていく。
答えながらも、周囲に視線をやる。視線が――アルンに向けられていた、敵意や、恐怖、警戒の感情が減っている。
どうやらこの少年は、よほど周りに見られたくないのだと納得しながら、更に向けられた質問に意識を向ける。

「僕が勇者なのは、選ばれたからです。僕のいた世界で」

それから、訝しげに眉を顰めて尋ね返す。

「確かに僕はこの世界では異質ですが……異質なものは『悪』なのですか?」

それは、アルンの考える『悪』とは、あまりに違う。
そして、その違いが決定的ならば、アルンは――

アルン=マコーク > この世界そのものを滅ぼさなくてはならなくなる。
ツァラ=レーヴェン >  
「ふーん。君の身体はそのー、かんぬきゆういち?って、別の人なんだ?」

少年が何故自分の姿を幻とするか。

少年はまだこの世界に来たばかりだ。
まだまだ見たいモノがいっぱい、知りたいコトがいっぱいある。
誰かに見つかって拘束されてしまうと面白くないのだ。

まぁ、見つかってしまえばそれまで。

それまでは、自分が気になるコトを見たい。

「あはは、怖い顔してるなぁー。
 あちこち見て回ったけど、この世界ってぐちゃぐちゃだよ?
 ここは一応ちょっとは整理されてるみたいだし、そのせいでおにーさんが浮いて見えるんだろうケド。

 『悪』なんて流動的じゃん?
 これが絶対『悪』そのものだーって、そんなモノ全然ないよ?
 神様だって、他の神様を信じてる人からしたら悪い神様になるもん。」

それにさぁー、と、その場でくるりと一回転した後。

「おにーさんはそれで、"幸せなの?"」

アルン=マコーク > 「失礼。威圧の意図はなかったんですが」

眉を顰めただけだ、と思っていたのに。
頬を両手でぐにぐにと触り、確かめる。

「僕の世界では、『悪』は流動的なものではありませんでした。勇者である僕にはそれは明確に感じられるものでしたし、こちらの世界にも同じような『悪』は見られたので、滅ぼしたのですが」

つまりそれは、こちらの世界で既に殺しをしているという告白だったが、アルンは特に感慨もなくさらりと言ってのける。

「……『悪』が流動的なら、こちらの世界では『悪』を裁くことはできなくなる。しかし、『悪』はある。依然として」

アルンは、笑顔の少年に真顔で問いかける。

「僕は勇者なので、幸せを感じる機能がないです。ですが、この世界の人々は、幸せを謳歌している」

ちらと、公園をゆく人々のほうを見やる。
のんびりと空を眺める人。ジョギングで道をかける人。
皆、穏やかな表情で時間を過ごしている。

「定まらない『悪』を放置したままでは、皆が幸せを分かち合う世界にはならないのではないですか?」

ツァラ=レーヴェン >  
「あはは、『悪』が決まってるモノだったら、
 すごくラクな世界なのかもねー。ああでも、それじゃー僕みたいなのは生まれないのかな。」

表情を戻す様が可笑しくて少年はころころと笑う。
後ろ手に手を組んで、スキップしそうなぐらい、面白そうに。

「んえ、幸せ感じないの???
 美味しくないなぁーおにーさん。疲れないの?
 少なくとも僕の暮らしてた『日本』では皆が皆幸せって訳じゃあなかったかなー。
 あちこち見て回ってここも似たようなもんかなーと思ったけど、もっと混沌としてる。

 日向よりも日陰が濃くて、あの世とこの世がとっても近い。

 皆が皆幸せになんて無理だろーね。それじゃーただの機械だもの。」

アルンに見えているであろう蝶の一匹を両手の平に乗せて、
それから――ぐしゃりとそれを潰した。

「悪を絶対定義したら、悪だと言われた側はどうなると思う?

 "君の行いが悪だと言われたらどう思う?"」

そう言いながら笑う少年は、本当に少年か。