2020/07/16 のログ
■227番 > 「それでいい……そっか」
納得して、もう一度街灯に透かしてみた後…ぽとり、元の場所に戻した。
そして出てきたものは、また見慣れぬ物だ。
橙色のものの下に、棒が付いている。
棒はゴミの中で見たことはあった気がするが。
「オレンジの、あいす?きゃんでぃ?」
オレンジはわかる。こないだのアメの話で聞いた。
では、アイスキャンディとは。興味津々といった様子でじっと見る。
■雨見風菜 > 「持っていかないんです?」
こんな場所に落としたビー玉を、元の持ち主が拾いに戻るとは思わない。
だから227が持っていかないことに少し驚く。
「アイスキャンディ。
食べ物……お菓子です、冷たくて甘くて美味しいですよ」
と、アイスキャンディを227の手に握らせる。
■227番 > 「これは、わたしのじゃ、ないから」
誰かに貰った大切なモノかも知れない。
自分が貰って、それを落としたら、多分探して回る。
だから、持っていくことはしない。
「……??お菓子……」
握らされて、手に冷気が降りてくる。氷の仲間?
鼻を近づけて嗅いで見るも、ひんやりと冷たい空気が入ってくるだけだ。
数秒見つめて、小さく舐めると……甘さと程よい酸味が舌に広がる。これがオレンジの味。
「あま、酸っぱい?……おいしい……かも」
少し驚いた表情を見せた。
■雨見風菜 > 「そうですか」
きっと、227ちゃんとは考え方が違ったのだろうなと考えて。
次は、ビー玉を買ってあげようと思った。
さほど高い買い物ではないのだし。
アイスキャンディを食べてみた227の反応には。
「ふふ、良かった」
風菜には、喜んでいるように思えて。
■227番 > 「ありがと、ふーな……」
氷の仲間だとしたら、これは溶けてしまうものだろう。
ちょっと急いだ様子でちろちろと舐め。
「これ、噛むもの?」
食べ方が間違っている気がして、伺うように風菜を見る。
■雨見風菜 > 「噛む……そうですね、噛んだほうが早く食べれると思います。
ただ、これは良いんですけどとても硬いアイスキャンディもあるので、気をつけてくださいね」
とても硬いアイスキャンディ、小豆バー。
パイクリートだったかの技法でその硬さはサファイア並だとか聞いた気がする。
流石にこれは食べたことがあるので問題はないんだけど、一応注意はしておく。
■227番 > 「硬いの……気を付ける」
見ていると、これも結構硬そうに見える。
氷であるという先入観もあるが。
「……ゆっくり食べたい、けど、溶けそう」
夜だとは言え、季節の問題で気温は割と高め。
ゆっくり味わいたい気持ちを抑えて歯を立てると、
予想に反してさくっと齧ることが出来て、口の中に一気に味が広がった。
「……!」
この感覚は、アメの比ではない。
先程より驚いた表情で、そちらに視線を向ける。
■雨見風菜 > 「アイスキャンディは基本的に齧りやすくなってます。
齧り取れないなら、齧りついたままアイスを動かすと良いですよ」
そう言って。
227がかじり取ったところでの驚きの表情に。
「美味しいですか?」
あげてよかったと思いつつ。
こんな顔を見れるならいろんなお菓子を与えてみるのもいいかなとも思ったり。
女の子に貢いでるのってどうなのと言い出す客観性は意識の中で蹴り出す。
■227番 > 「うん。……すごく」
肯定して、また一口。
今度は顔を綻ばせる。傍から見てもわかりやすい。
噛むのも程々に溶けて無くなってしまうので、次へ次へと進んでしまう。
もちろん、その度にゆるい表情を見せる。
どんどんアイスは小さくなっていくだろう。
■雨見風菜 > ニコニコと、そのさまを眺める。
やはりこの顔を見るのに数百円は安いものだ。
だが毎度毎度あげては、何もあげなかったときに残念がられるだろうか。
まあいいや、そんなのどうでもいい。
「ふつなちゃんのために買った甲斐がありました」
甘やかそう。
227ちゃんは甘やかそう。
そう決めた風菜であった。
■227番 > 「うん、ありがとう、ふーな」
すっかり完食して、顔を見ながら屈託なくにこりと笑う。
相手がどう思ってるのかはよくわからないが、あまり気にしないことにした。
信頼している人だから。
それから、棒を持つ手がベタベタなので……舐める。
きっとその姿は、すごく猫っぽい。
■雨見風菜 > とても可愛い。
「いえいえ、どういたしまして」
健やかに育ってほしいと思いつつ。
あれこれじゃあ私ババ臭いのではともちょっと考えたがそれも意識から蹴飛ばす。
「ふつなちゃん、手を洗おうか」
と、手をなめ始めた227に水道を示して。
可愛いのは可愛いがちゃんと手を洗ったほうが良いだろう。
■227番 > 「あ」
言われてはっとする。つい癖でやってしまった。
《軽度獣化》と《悪食》の効果の関係で舐めることで
綺麗にはなるのだが……印象の問題はある。
促されるまま、手を洗いに行って、戻ってくる。
■雨見風菜 > 「ふつなちゃんは可愛いですね」
洗った手に付いてる水滴を『液体収納』で回収して即破棄。
流石に飲むほど変態じゃない。
いや変態だけどそっち方向の変態じゃない。
「さて、それじゃあ私はそろそろ帰ります。
ふつなちゃんにアイスキャンディもあげれたことですし。
ふつなちゃんも帰るのなら、送りますよ」
■227番 > 「……ありがと?」
よくわからないが、多分褒められているので、お礼を言っておこう。
「ぁ、えと……空、見て、帰るから、大丈夫」
もうしばらくはここに居るらしい。
■雨見風菜 > 「そうですか。
あまり遅くなりすぎないよう、気をつけて」
そう言って、風菜は公園を後にしたのであった。
ご案内:「常世公園」から雨見風菜さんが去りました。
■227番 > 去っていく姿を手を振って見送る。
「……?」
アイスを渡すために来たんだろうか?
そこまでしてくれるのも不思議だな、と思った。
……さて、今日も空を見よう。
昨日は見えなかった星。今日は見えない星。
いつのまにか、日課になっていた。
■227番 > 観察を続けて分かったことがある。
どうやら、あの大きな星のように、小さい星も動いているようだ。
移動の法則性などはわからないけど、この発見が出来ただけでも
少し賢くなったような気がして嬉しい。
そうして、しばらく眺めたことだし。……そろそろ、帰るとしよう。
今日はあのルートにしようかな。
そっとベンチを立って、歩き始めた。
ご案内:「常世公園」から227番さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にレナードさんが現れました。
■レナード > いた。
遊具の中でひっそりと静かに座っている様は、まるで蛇が巣穴に潜んでいるかのよう。
ここであれば不意の雨を凌ぐこともできるから、ぼんやりするには十分だった。
今日も少年は無意味に時間を浪費する。
■レナード > 「……風紀委員か……」
虚ろな眼を細める。
脳裏によぎるのは、あの会合。
日ノ岡あかねとかいう、風紀委員の独壇場だった。
政治家も真っ青な手腕で流れをコントロールしていた。
その意図が分からないまま、兵隊を集めていた。すぐに瓦解しそうな、即席の烏合の衆…
本物の悪がどうたらと抜かしていたような。
……そういえば、彼女も同じ風紀委員だったなと、頭の隅で線が繋がる。
屋上で会った、あの女。
すっかり落ちぶれた自分を、まるで探していたかのようだった。
…それでも奴の"勘違い"だったと、お眼鏡にかなわなかったけれど。
ひたすらに選択だの、意志だの、そういう言葉を並べて自分を取り入ろうとしていたっけ。
「……真理への戦いって言っていたけど、何へ誘うつもりだったわけ…?」
■レナード > 「……ああ、あの男も……そういえば……」
彼女が言っていたっけ。
うちノなンかデッカイの、だとか。
…同じ風紀委員ってことだろう。肉親なら、あんなぞんざいな説明はしない。
精神的にも肉体的にも疲弊しきってた上に、お腹もすいたし衣服もボロボロ、
必要最低限の電力だけで何とか生きてた自分の前に現れて、
…いきなり、意味の分からない顔をしてみせてきた。
ふざけるなって、そう思ったっけ。
だから、あれには一つ時間を費やして、口論したのだけど。
…最後に見せたあの表情は、僕を助けることを渋々誰かに譲ろうとした、そんな印象を受けた。
困っている人を助けようとしている自分の悪くない。悪いことをしたつもりはない、なんて、
まるで善性という皮を被った狂人みたいなやつだった。
「…………。」
胸の中で、火が燻ぶる気がした。
あの会合でやり玉に挙げられた二級学生や違反部活のメンバーたち、
そして偶然とはいえボロボロにされてしまった自分、
そんな弱いもの、弱くなったものを、まるで狙うかのように近づいてきたから。
……であれば彼らの犠牲になるのは、常に弱いものじゃないの?
そんな気がしてしまったから。
「なんで、風紀委員ってこんなに、弱いものを食い物にしようとするわけ……?」
■レナード > 「……………。」
本当は、自分の悩みに明け暮れて、いずれどうなるかもわからない末路を迎えるものだった…
そんな気がしていたのに。
これが当てつけなのは分かっている。
だけれども、自分の次の"生きがい"にできるかもしれないのだから。
だから、彼らには犠牲になってもらおう。彼らが、自分に対してやろうとしたように。
少し道が逸れるかもしれない。
崖っぷちの、隣へ。少し寄り道ができるかもしれない。
また目の前に崖が来るかもしれないけれども、それでも…このことを考えなくて済むようになるのなら。
「………風紀委員に、平和と安全を任せてはいられない。」
その結論に、至るしかなかった。
■レナード > 「………ただ…」
言葉を繋げる。
本当にその結論に至るのは、少し尚早ではないか。そう思ったから。
それは、元気溌剌で、純粋に人を助けようとしていた誰かがいたことを、しっかり覚えていたから。
自分は腰を砕かれかけたけど、…どこか爽やかに思えたから。
正直、あの時に悪い気はしなかったから。
「………少しだけ、見ていよう。
本当に駄目だと思ったら……その時は、僕が。」
少年の眼に、光が戻る。
■レナード > 「……………あぁ……
そうなればやれることは、沢山ありそうだし……」
自分という存在を、常世の平穏と安寧のために活かすこと。
となれば異能の研鑽、身体能力の向上、知識…軍略の類だって必要になるだろう。
そうなれば、憎々しいこの眼にさえ、大々的な使い道が見つかるかもしれない…
多少、自分の本来の悩みを、忘れさせてくれるかもしれない。
生き様を失っていた蛇は、自らの牙を研ぐことに決めた。
■レナード > 「彼らが本当に、この世界のためにならないというのなら………
奴らの代わりに、僕が虐げられた者たちを救わないといけない。」
常夜公園の遊具の中で繰り広げられる、壮大な絵空事。
…しかし、今の今まで死んだ目をしていた者が、次に見出した生きる希望足りえるそれにかける思いは、
きっと本物だったろう。
自分のひねり出した新たな妄執の出来に満足した少年は、ゆっくりと遊具の外へ這い出た。
「………空、……綺麗だな。」
■レナード > 少年はゆっくり、公園を後にする。
やれることは増えたのだから。
お陰様で、今は死ぬことなんて考えられない。
星の瞬く夜空を眺めることに満足した少年は、拠点へと足早に戻っていった…
ご案内:「常世公園」からレナードさんが去りました。