2020/07/17 のログ
ご案内:「常世公園」に227番さんが現れました。
227番 > 深夜の池の前のベンチに少女がやってくる。

ちょっとばかり寝すぎた。お腹いっぱい食べたからかも知れない。
とにもかくにも、ほぼ日課の星見をしに来た。
保護者にも公園まで行ってくると声をかけてある。

ベンチに腰掛け、空を見上げる。

227番 > 昨日と似ているようで、少し違う星空が広がっている。
大きな星――月のことである――の位置も違えば、小さな星の見え方も違う。

まだ"あまのがわ"も見える。短冊の説明をしてもらったときに、教えてもらったもの。
モヤのようにみえるが、あれはみんな星らしい。

どれだけ沢山の星があるのだろう。途方も無い数だ。

227番 > 今日も星空をじっとみて、記憶に残す。

そういえば、"あまのがわ"の説明を聞く時、確か……星座というものの話をしていた。
ひときわ目立つ星をつなぎ合わせて、何かに例える、だったか。
それの詳細は教えてもらえなかった。これも誰かに聞いてみることにしよう。

227の今の日課は、道を覚えるのと、この星見の2つとなっている。
もともとごみ漁りのルートを無学でルーチン化するぐらいには
道を覚えるのが得意だったので、マッピングも難なく身についている。
星見については、落第街に居た頃に思いを馳せるように見ていたら、
毎日少しずつ変わる綺麗な空にハマってしまった。

227番 > 首が疲れてきたので、視線を落とそう。

そういえば、昨日見つけたビー玉は……まだ落ちていた。
拾い上げて、また街灯に透かしてみる。

ガラス玉を覗き込むことで見える世界。
覗き込んだ時にしか見えない世界。

「……?」

少女が見ていたガラス玉の窓の向こうの街灯が、一瞬だけ翳る。
不思議に思って直接街灯を見ても何も変わらない。

「っ……!」

この感覚は、覚えがある。
自分だけに見える……、周りに何の影響もない……。

怖くなってきた。今日は、帰ろう。
ビー玉を元の場所に落として、走りだした。

ご案内:「常世公園」から227番さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にマディファ=オルナさんが現れました。
マディファ=オルナ > 晴れた昼下がり。
常世公園にマディファは居た。

「この世界の人の子は実に食へのこだわりがすごいのう。
 抹茶オレなどと、そんな合うまいと思っておったのじゃが」

ベンチに座って抹茶オレを飲んでいる。
ぐいっと顔を上に向け、缶に残った液体を飲み干す。

「うむ、実に美味」

言って、本来の身体の屑鉄回収機構部分に空き缶を仕舞い込む。
この空き缶は破砕・再構成されてマディファの体の一部となっていくことだろう。

マディファ=オルナ > そして、今度は収納スペースからあるものを取り出す。
ドラゴン用ちゅるちゅる。
犬用・猫用のおやつから派生し、今や様々な種族に対応した最高のおやつ。
先日も妖精用のもので騒動があったらしいが別の話。

「……なんの変哲もないのう」

個包装を検分する。
見た目は他の菓子類の個包装とあまり大差ないとしか言えない。
センサー類も何一つ異常を認めない。
良くも悪くも、最高のおやつと言うには名前負けではないかという平凡さだ。

マディファ=オルナ > だがこうして眺めているだけでは、ちゅるちゅるが最高のおやつであるかの解は出ない。
故に、マディファは封を開けた。

「……はっ!?」

意識が飛んだ。
気づけば、ちゅるちゅるの開け口を口にしている。
幸い、まだ中身は吸っていない。
指がちゅるちゅるの開け口を圧迫して塞いでいる。

(馬鹿な……何が起こったのじゃ!?)

狼狽するマディファの理性。
手を離そうとするが離れない、いや離せば即座に吸おうとする竜の概念。
原因不明の意識の途絶を警告する機械センサー。

マディファは詰んだ。
その圧倒的さはナイトの移動範囲を併せ持ったクイーンに盤面端に追い込まれたキングのごとく。
そんなチートな駒に対応できるかこの野郎。

マディファ=オルナ > さあどうする。

己に息衝く竜の概念はちゅるちゅるを離そうとしない。
その強固さはまるで自分が格上の竜に無策で挑むかのような難局だ。

己に搭載されたセンサーは何一つ異常を認めない。
寧ろ解析のためにサンプルを要求してくる始末、助けにはならない。

唯一この後の醜態を予期し抵抗する儚い理性。
前門に崩壊する尊厳、後門に己の竜の概念。
二進も三進も行かず耐えるしか出来ない。

(ボスケテ。
 いやボスケテってなんじゃ、誰か助けておくれ)

マディファ=オルナ > だが彼女を助けに入るものは居ない。
彼女の窮地を知るものは居ない。
平穏な日常で、彼女が唯一必死に堪えているとは誰にもわからない。
っていうかなんで平穏な日常の中でひとりこんな死闘を繰り広げているのか。

(いかん。
 もう無理)

理性が負け。
指で抑えていた少し下をもう片手の指で抑えて少し食べる。

マディファ=オルナ > 幸福の奔流。
ヘヴン状態。
マディファの理性が押し流されそうになる。

「ふ、ふおぉぉ……♡」

人間態の犬耳が、尻尾が、ぴーんと立っている。
通行人は何事かとマディファを見るが、ちゅるちゅるの袋を見てそういうことかと日常に戻る。
孤立無援である。

「い、かん……♡
 これ、は……我慢が、効かぬ……♡」

手は既に次のひとくちを開放しそうな勢い。
竜の概念が理性にもっとよこせとしがみついている。
慌てて分析センサーに問い合わせる。
違法薬物・添加物一切なし、合法です。
馬鹿ないくら黄金比で組み合わせてもこれほどの幸福は得られんが実際合法です一切違法はありません。

マディファ=オルナ > もうそこからは早かった。
竜の概念がまるで大好物を見つけた犬かのように貪り。
己に搭載されたセンサーは冷静にそのさまを分析し。
理性はそのさまをぼろぼろになって眺めるしか無い。
そんな心象風景。

「……なるほど、最高のおやつ……♡」

竜の概念がまだあるだろうもっとよこせと訴える。
だが駄目だ、こればかりは鋼の意志で抑えねばなるまい。
本当に麻薬成分が何一つないのかセンサー類に問い合わせる。
違法成分麻薬成分一切なし、全方向から一切の隙なく合法です。

「買ってよかったが……買って後悔したのもあるのう……」

完全合法異種族のおやつ、ちゅるちゅる。
その破壊力を思い知ったマディファであった。

純人間向けが発売されない理由がわかったと自惚れるが純人間向けのブレンドが開発されていないだけですよろしくおねがいします。

ご案内:「常世公園」からマディファ=オルナさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 何時もの常世公園、何時ものベンチ、何時もの黄昏――周囲は色々あっても、ここは特に変わらない。
ベンチの一角に座り込んで咥え煙草をしながら、右手に持った缶コーヒーをゆらゆらと手で弄ぶ。

「……んーー…頭を使い過ぎたかな」

何せ前期期末試験の真っ最中。止むを得ない理由とはいえ、1年留年しているダブりとしては。
流石に、ここを落とすと後で地獄を見るのでそれなりに真面目にやってはいる。
お蔭様で、今の所は特に可も無く不可も無く…別に天才でも秀才でもなく、平均より少し高め程度くらいの学力だが。

「――公安の仕事もまぁ、ぼちぼち慣れてはきたけど…。」

ボス、というか配属された部署が意外と緩いのは流石に読めなかった。
話には少し聞いていた気もするが予想以上だ。自分としてはやり易くて助かるが。

「…いや、しかし…取り敢えず補習だけは勘弁願いたいものだね、まったく」

煙草の紫煙をゆっくりと燻らせながら僅かに辟易した面持ちで呟く。
緩い無表情にもその程度の感情が見え隠れするくらいには、期末考査はしんどかったらしい。

鞘師華奈 > ――未だに、自分は”物語”を始められていない。そこに至るまでの一歩をやっと踏み出した…その程度。
3年の月日は自分を傍観者にさせるに足る年月だったのだろう――そのツケを今痛感している。

「……昔の私はどうだったんだろうかね…。」

思い出す幾つかの光景、幾つかの情景。どれもこれも全て、総て、凡て炎の中に消え失せて戻らない。
僅かに赤い瞳を細めて宙を睨む様に見つめながら、ゆっくりと煙草を蒸かす。

「…駄目だね、どうも。あまり考えを巡らせるとロクな事にならなそうだ」

思考の停滞は良くないが、思考の巡らせ過ぎも良くは無い。
それに、前期期末試験を潜り抜けた後なのだ…少しは気を抜きたい。
片手でゆらゆら揺らしていた缶コーヒーを口元に運んで一口。再び煙草を蒸かす。
――我ながら女らしくない有様だが、それが己が望んでいる事だからしょうがない。

「…試験期間が終わったら打ち上げでもやりたいものだね―――うん、一人で」

我ながらぼっち志向というか友達殆ど居ないなぁ、と赤い目がちょっと死んだ。いや、まぁ、うん…。
数人友達は確かに居るのだが、そういう時に気軽に誘えないのは自分が臆病なのかどうなのか。

鞘師華奈 > 「―いやいや、こういう所も怠惰になってはいけないだろう私。…中々直せないもんだなぁ」

一人なのを言い事に訥々と独り言を漏らして。グイっと缶コーヒーの残りを飲み干して一息。
そのまま、手首のスナップだけでそちらを見向きもせずに見事に缶専用のゴミ箱にシュートを決める。

再び煙草を緩やかに燻らせながら、疲れたように一度肩を首をコキコキと鳴らす。
…ちょっと凝っているかもしれない。まぁ、公安の仕事は調査などがメインだ。
荒事にあまりならない分、足を使うし同じ場所で長時間張り込むのも珍しくない。

「…やっぱり鈍ってるんだろうね、これは。ぼちぼち鍛えなおさないと」

自分の手を眺める。緩く拳に固めるが、拳打そのものはあまり用いなかった気がする。
ジィッ、と己の手を赤い瞳で見つめる。炎の如く鮮やかなそれも、その奥には未だに燻る残り火が再燃する日を待っている。

(まぁ、そもそも体の為にも煙草を止めろって話になりそうだけど、ね)

喫煙を始めてからそろそろ3年。すっかり吸い方も手馴れたものになってしまったか。
すっかり私もニコチン中毒者だなぁ、とか他人事のように思いながら淡く苦笑じみた表情を浮かべて。

鞘師華奈 > と、そんなこんなでぼんやりしていたら中々に良い時間だ。
公園にある時計台へと視線を向ければ、気だるそうに軽く伸びをしてから立ち上がろうか。

「さて、と。報告書も上げておかなきゃいけないし、一先ずは――」

帰ろう。そのま、ゆったりとした足取りで常世公園を後にするのだった。

ご案内:「常世公園」から鞘師華奈さんが去りました。