2020/09/13 のログ
ご案内:「常世公園」に御白 夕花さんが現れました。
御白 夕花 >  
今日のお散歩は、久しぶりに夜の常世公園に足を運ぶことにした。
この前は時計塔でうっかり寝ちゃったし、しばらく一人で行くのは控えよう。
これからどんどん涼しくなってくるし、風邪でも引いたら大変だ。
自販機にはまだ冷たい飲み物しか並んでいない。仕方なくお茶を買ってベンチに腰掛ける。

「ふぅ……」

上着があるとはいえ長居は禁物。少ししたら寮に戻ろう。

ご案内:「常世公園」に浦原真理さんが現れました。
浦原真理 > 夜の街を歩く。
相変わらず"あの男"は、何を考えているかわからない。

そういえば――
この間、なにか妙に楽しげだったけれど

"あの男"がすることに一々関知する気にもならない。


「……ん?」

ベンチに腰をかける少女が目に入る。
ただそれだけなら、別にどうでもいいことだけれど、それが数少ない見知った顔なら別だ。
あれは、同志だったはずの……

思わず、死ぬほど使いたくなかった首元のチョーカーに触れそれを起動する。

「……あなた、は……」

ばぢりっと首から電気が走るかのような痛みが広がる。
あの無能、こんな欠陥品を寄越して……ッ

御白 夕花 >  
夜空の星でも眺めようかと思ったところに人の気配。
上に向きかけていた目線を気配のした方へ移すと、見覚えのある女の子がいた。

「あっ……」

確か───そう、私と同じ『トゥルーバイツ』の一員だった人だ。
直接話したことはない。なんだか会話を避けているようだったし、私もそれどころじゃなかったから。
相手も私のことを覚えているような反応。名前、聞いたことあったかな……?
当時の記憶を遡ろうとした時、首元のチョーカーに触れた彼女が僅かに表情を歪めた。

「えっと……だ、大丈夫ですか?」

思わずベンチから立ち上がって駆け寄ろうとする。

浦原真理 > 「へいき、です……ええ、平気です」

ばぢり、ばぢり、と痛みが走り続ける。
しかし――
少女は満面の笑顔を浮かべる。

痛みをそのまま受け入れれば、苦痛の顔は"笑顔に変換される"。
あの無能の失敗作がこんなところで無駄な役立ち方をしている。

それにしても、彼女がこんなところに居るとは。
彼女も、クズのような人間に邪魔をされてしまったのか。
それとも、誰か優しい人に止められたのか。


「それより、も……あなた……私のことを、おぼえて、いますか?」

此処まできて、人違いなんて赦されない

御白 夕花 >  
すごく良い笑顔が返ってきた。あれ、意外と大丈夫そう……?
どこか有無を言わせないような感じがして、それ以上は追及できなかった。
差し伸べかけた手を引っ込めつつ、覚えているかと聞かれれば頷いて。

「はい……って言っても、最初に顔合わせしたくらいでしたよね。
 私は御白 夕花。あなたと同じ『トゥルーバイツ』の生き残りです」

辺りに人がいないのを確認してから、私達がいた部隊の名前を口にした。
そろそろ事件のほとぼりも冷めてきた頃とはいえ、あかねさんや『トゥルーバイツ』を良く思っていない人もいる。

「良かったら、あなたの名前を聞いてもいいですか?」

おずおずと訊ねる。
風紀や公安はともかく、同じ構成員だった人に顔を覚えられているとは思ってなかったから。

浦原真理 > 「御白……夕花……」

異能以外はただの少女でしかなかった私は、
戦う力を持った周りの人間が恐ろしかった。
だからトゥルーバイツではほとんど交流などしなかった。
あの場には交流を求める人が少なかったこともあるが……

そういえば、あかねさんと一緒に居たあの女の人は……いや
今はその話はどうでもいい


「私……私は。今は、浦原真理、と名乗っています。
 本名は……捨てました。」

痛みを"我慢せず"、不自然なほどの"笑顔を浮かべて"答える。

御白 夕花 >  
───また笑顔。
それ自体は別におかしな事じゃないはずなのに、違和感が拭えない。
歯にものが詰まったような落ち着かなさが顔に出ないよう、思考の隅に追いやった。

「真理さんですね。改めて、よろしくお願いします。
 ……それなら私と同じですね。私もその、本名ってわけじゃないので」

思わぬ共通点につい反応してしまう。
まぁ、知られても問題ないというか……本名が調べて分かるなら、むしろ教えてほしいくらい。
捨てたって言うくらいだから、そこは真理さんとは違いそうだけど。

浦原真理 > 「はい、よろしく、おねがい、します。」

相変わらず、話すたびに苦痛が走る。
あの男の趣味でこんな仕様になっているのではないか、と疑ってしまうくらいだ。

「お互い、事情が、あること、だとは、思うので……はい。
 本名など、忘れて、いいの、かもしれません。」

とはいえ……


「御白さん……失礼ですが、少し、聞きたく、て……
 あの……なぜ、あなたは、ここ、に……?
 なぜ、いきて……」

思わず、聞いてしまう。

御白 夕花 >  
「それもそうですね。深入りするつもりもないですし……」

本人が話したがらない限りは無理に聞き出したりもしない。
それに、せっかく手に入れた平穏を自分から壊すような真似はしたくないから。
───けれど、二人の間に共通する出来事となれば話は別で。

「どうして生きているか……ですか。えっと、情けない話なんですが……」

答えていいものか一瞬迷った。
きっかけはどうあれ、本気で『真理』を目指した人達に胸を張れる生き方は、まだできていない。
でも、彼女もこうして今ここにいるってことは『真理』には至らなかったということになる。
だったら話しても大丈夫かな……と口を開いた。

「……私、土壇場で怖気づいちゃったんです。
 デバイスを起動しようと思っても手が震えて、視界が霞んで」

あの時のことは今でも覚えてる。
結局は自分の命を捨てることができなかった弱虫が今の私。

浦原真理 > 「お互い……必要、なら……話す、で……はい。」

自分には隠すほどの秘密もない。
知りたければ教えてもいい。
けれど、お互いそんな根掘り葉掘りしてもいいことはないだろう。


「……ああ」

そうか、彼女は"踏みとどまった"人だったか。
私のように"つまらない妨害"が入ったわけではないのか。
それは――

きっと幸せ、なのだろう。

「"あきらめた"の、ですね。悪辣に、であった、わけでも、善に、であった、わけでも……
 そうですか。それは……よかったですね」

御白 夕花 >  
「あれでよかったのかな、とは今でも思います。
 でも、逃げるのもまた"選択"だって教えてくれた人がいて」

善人ではない。彼は私達の"デバイス(ねがい)"を砕いて回っていたから。
けれど、悪辣でもない。悪を裁く悪───それが彼の、彼らの信条。

「その"選択"を後悔しないために、いなくなった人達の分も生きていこうって」

私の"生きている理由"はそんなところだ。
もう一度ベンチに腰を下ろして、よかったら隣どうぞなんて促しつつ。
話し終えてから、ふと真理さんの口ぶりに引っかかるものを覚えた。

「……ひょっとして、真理さんは誰かに……?」

他者の介入を危惧していたような、そんな風に聞こえたから。

浦原真理 > 「なるほど。うん……それは、悪い、こと……でも、ない、でしょう」

進むしかなかった私とは大違い。
きっとそれはよいことなのだろう。
彼女は良い出会いをしたのだと思う。


「……私は……そう、ですね。
 最低、最悪な、男に……邪魔、されました。ええ」

相手が危惧していることは分かった。
それなら、喋ってもいいのだろう。

御白 夕花 >  
「さ、最低最悪……そこまで……?」

恨み節マシマシで、よっぽどその人のことが許せないんだと伝わってくる。
結果的には命が助かったのは良かったかもしれないけど……

「選ぶこともできなかった、ってことですか」

浦原真理 > 「ええ、はい……その男は、私を。
 いえ、私たちを……弄ぶだけの、男です。」

善意という名の何かを人に押し売りしてくる。
押し売りだけだから、それ以上に何の感情もない。
ただ、善意という名の気持ち悪い何かを、押し付けたいだけだ。
本当に、最悪の男だ。

「あなたは、あんな、男に……会わない、ことを……祈り、ます。
 あぁ……そうだ。」

ふと、思い出したように

「御白さん、は……武術、とか……そういう、の……
 得意、ですか……? できれば、実戦、的な……
 ええ。より、実戦的、なら、なお、いいです」

不自然な笑みは更に深くなっていた

御白 夕花 >  
「そんな人が……」

ふと脳裏を過ぎったのは、前にこの公園で声をかけてきた男の人。
得体の知れない悪寒を感じて逃げ出したのは英断だったかもしれない。
あの人が真理さんの言っている人かどうかは分からないけれど。

「……分かりました、私も気を付けます。
 真理さんも災難だったというか、辛かったですよね……」

皆が皆、色んな苦しみや悩みを抱えて臨んだ『真理』との対面。
それを土足で踏み荒らされる辛さは想像に難くない。

「私に何か協力できることがあれば……武術、ですか?」

同じ元『トゥルーバイツ』のよしみで、と言おうとしたら先手を打たれた。
実戦を想定した武術───格闘術なら"施設"にいた時に叩き込まれてる。
とはいえ、人に教えられるようなものじゃないし……なんとなく、その使い道が読めてしまう。

「……ごめんなさい。私、そういうのはあまり詳しくなくて」

笑顔から逃げるように視線を背けた。

浦原真理 > 「ええ、はい。私たち、は……立場を、考えれば、妙な人に、絡まれる、可能性は、あります。
 他にも、ああいう、悪魔のような、男が、いる、かも。
 私が、会ったのは……松葉、雷覇。ダサいバンダナの、金髪の、男、です。」

人の心配をする。
そんな心が自分に残っていたのはすこし驚きだ。
いや、違う。
自分たちを、もう二度と、あの男に穢されたくない。それだけのことだ。


「……そう、ですか。」

協力を願ったけれど、断られてしまった。
目的を察せられてしまったかもしれない。

この、心に宿る暗い  を。

「いえ、無理な、お願い、すみません、でした。
 御白さん、は……どう、ですか? なにか、私に、手伝える、こと、あります、か?」


つい、口にしてしまう。
ああ、偽善だ。本心ではそんなこと思ってないのに。

御白 夕花 >  
「松葉、雷覇……覚えておきます。
 ありがとうございます、こんな私のことまで心配してくれて」

記憶にある人物の特徴とは一致しない。別人だったみたいだ。
私が出会った人のことも伝えておこうかと思ったけれど、喫煙者ってことくらいしか分からない。
また見かけるようなことがあれば、特徴を覚えて注意喚起しよう。

「い、いえ。こっちこそ力になれなくて……」

実際、本格的に教えるとなったら私より適任はいるはず。
そういう意味では嘘なんて言ってないはずなのに、やっぱりちょっと後ろめたい。
もし訓練に付き合ってくれ、なんて言われたら断れる自信がないな。

「手伝えること……それなら、これからも私と仲良くしてくれませんか?
 その、元『トゥルーバイツ』としてじゃなくて……友、あ、いや、いち学生として!」

流石に気が早いかな、と思い直して言葉を選ぶ。
今の私がしたい事……"皆の分も生きる"というのを、これからは真理さんも一緒に、と。

浦原真理 > 「……私たちは、ろくに、話、して、ませんでした、けれど……
 それでも……仲間、でした、から」

心配するのは、当然。
そう、当然……の、はずだ。
……最近、そういう人らしい気持ちを失っている気もするが。

「いいん、です……わがまま、は……いえ、ません」

ほぼ付き合いがないも同然な相手に、いきなり頼む話ではなかった、と思う。


「……ああ、その点は……一つ、すみません。
 私は、もう、学生では、ないので……友だちで、お願い、します」

異能が完治しなかった時点で学生に戻る気は、少しもなかった。
だから、学生として、は……ひょっとすればもう二度とかなわないかもしれない。

御白 夕花 >  
「あ、そうなんですか……」

もう学生ではないと言われて肩を落としつつ、友達でいいと聞いて顔を上げる。
友達なら学生同士じゃなくたって問題ない。
気軽に会うのは難しいかもしれないけれど、気持ちが通じるなら───きっと。

「じゃあ改めて……仲間としても、友達としても、よろしくお願いします。真理さんっ」

仲間と言ってもらえたのが嬉しくて、笑顔で手を差し出した。

浦原真理 > 「はい、改めて……よろしく、お願いします」

結局、得られたものはなにもなかった。
せいぜい、彼女の名前と動向くらい。
それでも――

この無味乾燥な人生に、多少なりとうるおいがもどるのであれば
少し、考えて


「夕花、さん」

こちらも、手を差し出した

御白 夕花 >  
しっかりと握手を交わす。
連絡先を伝えて、真理さんさえ良ければ向こうの連絡先も聞いて。
これで私達は晴れて友達同士になった。

お互いマイナスからのスタートで、真っ当に生きていくのは難しいかもしれない。
それでも、私達が今を生きる意味はあるんだと証明するために───

「っと、もうこんな時間……今日のところはもう帰らないと」

ちょっとした気分転換のつもりが、思わぬ出会いについ長居してしまった。
やっぱり星には人と人を繋いでくれる引力があると思う。

浦原真理 > 握手を交わした。
連絡先は……教えても支障はないだろう。
むしろ、教えておけば何か情報が入るかもしれない。

名を捨てた自分は、まだ新しい交流に不安しか無い。
ここから始めるのもいいだろう。

「ああ、引き止めて、しまいました、か。
 ええ、それでは、お別れを。また、会いましょう」

これはきっと行幸。
あの男を  するきっかけになるかもしれない。

御白 夕花 >  
新しく連絡先の増えたスマートフォンを握りしめる。
……あれ? よく考えたら歳の近い友達ができたのってこれが初めて?
今まで小さい子ばっかりだったから逆に新鮮だ。

「はいっ、またいずれ!」

嬉しくなって、大きく手を振りながら公園を後にした。
今日はよく眠れそうな気がする。

浦原真理 > 「ええ……いずれ」

チョーカーに手を当て、スイッチを切る。

「……ああ、とても簡単な装置ですね。」
――まったく、本当に面倒くさい装置ですね


優しい笑み/不満の顔を浮かべて
浦原真理は公園を立ち去った。

ご案内:「常世公園」から御白 夕花さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から浦原真理さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にリタ・ラルケさんが現れました。
リタ・ラルケ >  
 ちょうど、今日は涼しい日だった。
 未だ残暑に悩まされはするものの、秋の心地が徐々に近づいてくる、ある日のことである。公園の一角、一人の少女が木漏れ日の当たるベンチでまどろんでいた。

「すー……」

 昼下がり、食事やら午前の用事やらを済ませて、一息吐き、そのまま眠くなるような時間帯。まして今日はぽかぽかと心地よい日和。
 公園で日向ぼっこをしようかと思い当たるのに、そう長い時間はかからなかった。

「…………」

 ゆったりとした時間が、流れていく。

リタ・ラルケ >  
 このところ、リタはこの公園に足を向ける頻度が多くなっている。
 理由は勿論、単純にこの場所が気に入っているというのもあるが――一番はやはり平和だから、であろう。
 大なり小なり事件――嫌なこととは限らず――が起きている街中は確かに退屈さとは無縁ともいえるが、かといってそればかりでは流石に疲れてしまう。
 ただ水の流れる音、葉擦れの音、鳥の鳴き声といった――街の喧騒とは違った音をBGMにした、長閑で平和な世界。

 それに、最近は色々な人と出会っている。勿論、知り合いが増えるのは嬉しいことなのだが――こうして一人静かに眠るという時間も、たまには欲しくなってくる。
 贅沢な悩みである、と。リタは思い始めていた。

 ――そうして、そんな静かな公園で、お昼寝中。
 自然に在る音以外、そこには何もない。

リタ・ラルケ >  
「……んぅ」

 しばらくして――リタは静かに、目を覚ます。
 目を覚ましてからも、リタはその場を動こうとはしない。

「…………」

 まだ半分ほど、寝ているような状態で。ベンチに座ったまま、目の前の景色をぼーっと見つめている。
 寝ていたのはだいたい一時間弱、だろうか。思考がまとまりきらない頭の中で、そんなことを考える。

「……ふぁ」

 一つ、小さな欠伸をしてから。固まった体を解すように伸びをする。
 目を覚ましてからも、リタの時間は、ゆったりと過ぎているようで。

リタ・ラルケ >  
 やがて、ただ景色を眺めるだけの時間も終わって。

「……そろそろ、行こっかな……」

 日向ぼっこも、もうそろそろ満足する時間。
 特に用事があるわけではないけれど――これからのことは、とりあえずここを出てから考えようか。

「……えへへ。ありがとうございました」

 誰にともなく、お礼を言う。そして、


「――纏繞、解除です」

リタ・ラルケ >  
 ――そもそもどうして自分が精霊纏繞をしていたのか、といえば。
 まあ一番の理由は、『木の精霊が退屈そうにしていたから、身体を貸してやった』――というのに尽きるだろうか。
 自然の中にいて、それぞれが自由気ままに暮らしている精霊といえど。
 何も変化のない日常に、退屈することはあるらしい。

「……まあ、平和といえばそれまでだけど」

 どちらがいいか、なんてここで論ずることはしない。

「……ま、いっか。どっか行こっと」

 自分は、自分の思うままに。
 公園を後にし、そのまま少女は誰にも――自分にも――行先のわからない、あてどない放浪を再び始めた。

ご案内:「常世公園」からリタ・ラルケさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にアーテルさんが現れました。
アーテル > やってきた。
今日は遊具にまっすぐ向かわずに、辺りをきょろきょろ。
そこからふらふらと公園内を彷徨い始めた。
まるで、何かを探すように。

「うーん、怪異なー………
 いや、まー俺もこいつニンゲンじゃねえなってのは分かるけどもー………」

この前ここで会った子が、ちらと言っていた怪異の存在。
ここに居たときにはそんな気配はしなかった気がする。
自分がこの世界でのんべんだらりとしすぎて察し損ねたのか?
或いは、自分でさえも気づかぬ程精密に気配を隠せる存在がいるのか?
…真偽はどうだってよかった。確かめるべくは、事実のみ。

自分がその怪異として見られてる可能性は、多分考えてなさそうだ。

アーテル > 「………んー。
 やっぱいねぇなあ。目で追っても厳しいかー………」

まずは目で以て探してみても、見当たらない。
であればと声を出して誘ってみることにした。

「…おーい、怪異~~~?
 怪異~~~っ、で~てお~いで~~~っ」

喋る猫が、公園内で叫んでいる。なかなか大きな声量だ。
仮に怪異がこんなところにいたとするなら、自分が近隣住民に今かけている迷惑に比べると、影響力がそもそも違うだろう。
故に、周辺への配慮はあんまり考えていないようだ。

ご案内:「常世公園」に宇津篠 照さんが現れました。
宇津篠 照 > 声があたりに響いてから少しして、空間が一瞬歪む。
見にくくはあるだろうが、人一人ほどの大きさはあり、目を凝らせばその一瞬に気が付くかもしれない。

「えーっと、ごめんなさい近所の迷惑だから大きい音は……って。」

歪みから出てくるのは茶髪の少女。

「……はぁ。ここだと思ったのだけど、逃げた後かしら。…ったく何だか知らないけど周りの迷惑だっての……。…あら?」

始めは優し気な表情と諭す様に丁寧な言葉遣いだったが、あたりに人がいないとみるや態度が変わる。
ただ部屋でゆっくりしたら煩い声が聞こえたので注意しに来ただったのだが相手がいないのならどうしようもない。
そうやって呟いていると、自分以外の存在に気が付く。……ネコちゃんだ。

「……野良かしら? にしては毛並みとか綺麗だけど……。……ねえ、このあたりで誰か見かけなかったかしら。……なんてね。はーっ。」

なんとなく興味が沸いて観察してみるが、野良というよりは誰かの飼いネコだろうか?
野良にしては毛艶もいい。かといって近くに飼い主らしき人は見当たらないが。
喋りかけておきながら、話すわけないのにねなんて自嘲してため息をつく。

アーテル > 「………ん。」

ほぼ、前触れもなく現れたその歪み。
気づかないわけもない、そちらに警戒はしていただろう。
だが、そこから現れたのは……怪異、でもなさそうな……?

歪みから現れた彼女は、こちらを見るなり話しかけてくる。
自分の声を聴いていたようだが、どうやら喋り主が自分とは思っていないようだ。

「なんだあ?お前さん。」

構うものか、こっちも言葉を返す。
それもめっちゃ饒舌に。

「ここには怪異が出るかもってハナシだぞー。
 お前さん、なんか知らねぇか?」

更に、とても馴れ馴れしく。
怪異を探していると、目の前の彼女に堂々と話しかけた。

宇津篠 照 > 「っ! どこ!?」

突然声がして思わずあたりを見渡す。周囲に人がいる気配はない。あるのは自身と目の前の猫。

「……まさか。」

いや確かにこの島であれば不思議ではない。というか、声の方向的にもそれしかない。
わざわざ認識阻害だとかの異能や魔術を使ってる人がこちらに話しかけている、なんてアホみたいな状況なら話は違うが。

「えーっと……その、聞きたいことは色々あるんだけど……とりあえず質問に答えると私は知らないかな。
あー、でもさっき何か大きな声が聞こえた……って。もしかしてさっきの叫び声はあなたが?」

とりあえず相手がこちらの言葉だとかを認識して喋ることができるという前提で、今更ではあるが性格を取り繕う。
くそ、誰もいないからと油断したのは失敗だったか。
とりあえず相手の問いかけに答えようと考えて……よく声を聴けばさっきの叫び声と似ている気がする。

アーテル > 「ま、そんなとこだ。」

叫び声の主は、自分。それは嘘ではない。
悪びれずに目の前で答えてみながら、尻尾がゆらり。

「煩いにしろ何にしろ、ここに怪異が居るかもしれねーって聞いてなあ。
 ま、お前さんは知らないってんならしょうがねえか……」

落胆を表すようにしゅん…と尻尾が下がった。
情報源となりそうだったが、まあしかたないだろう。

「まー…なんだ。
 そーいうことらしーから俺も調べてるわけだがー……
 どーにも見つからんでなあ。」

宇津篠 照 > 成程。目の前の……声的には彼だろうか? 彼が先ほどの騒音の原因らしい。
まあなんというか、注意する気力も失せたのでもういいのだが……

私が心当たりがないというと目に見えて悲しそうになった。尻尾がしゅんと下がる。
なにこれ可愛い。

「えっと、そのー……名前あったりする?
それでまあ、とりあえず喋れるって時点であなたは普通の猫じゃない……よね?」

怪異に心当たりはないといったが正確に言うならばさっきまではないだ。
いやだって、目の前にどうみても普通じゃない存在がいるのだけど……。
いやまあ使い魔だとか異邦……猫? だとかそういった可能性があるので断定できないが。

「それでまあ、さっきの怪異が出る情報は、あなたが直接見たってわけじゃなくて誰かから聞いたってことであってる?」

アーテル > 「名前はある、が………まあなんだ。
 名乗るほどのもんじゃあないってーことで、どーだ?」

名前はある、が、名乗ることには前向きじゃなさそうだ。

「それに、聞いただけの情報ってのもあってる。
 もっと情報が有ったらあんな手段はとらねーさ。」

さて、"普通の猫"ではないことについて問われていたか。
…どちらかというと、この猫はそちらの方に耳を傾けたようだ。

「まー言ったところでー?普通ってぇなんだっつーわけだがー。
 ……お前さんこそ、ただのニンゲンじゃあねえだろー?」

それは即ち、彼女に対するカウンター。
…どこから現れたか、それはしっかりと捉えていたらしい。
少なくとも、猫における"普通"に対して噛みつくなら、こちらも人間における"普通"に噛みつくと言ってのけた。

宇津篠 照 > 「……むー。まあ、そういうならネコちゃんって呼ぶしかないよね。」

猫? とはいえこちらも名乗ってない以上強く言うことはできない。

「んー、確かにここでは異能持ってる人間は比較的ありふれているけど……。
ネコちゃんの言う通りタダの人間ではないかもね。」

目線を近づけようとしゃがみ込んでから答える。
一瞬、そっちのことについて聞かれたのかと思ったが、異能の方かなと自己解決。
確かにこの前異能は疾患だとかいう発表もあったことだし普通と言い切ることは難しいかもしれない。

「……ねえ、触ってもいい?」

しゃがみこんで近くで見たがやはり見た目は普通のネコちゃん。普通の女の子としてはちょっと気になる。
言葉での意思疎通ができるのだから触っていいか聞いてみる。
……自分の考えだと恐らく目の前のネコが怪異なのだが、まあ大丈夫か。

アーテル > 「おー、今なら俺だってわかるもんなー?ゆるす!」

許してくれるらしい。
しつこく求めたりしなかった辺りが、機嫌を損ねたりはしなかったようだ。

「……そんなら、俺もただの猫じゃあない。
 それだけの、話だろー……?」

首を傾げて、にやあ、と笑う。
さも楽しそうに、猫にしてはやけに感情豊かであるような。

「ん。
 別に触ること自体は構わんがー。
 あんまりお腹の辺りとかさわるなよー?」

この前、その辺触られがちにとんでもないことをされたので。
まあ、喋って意思疎通できる辺り、その辺の意識はしてくれるだろうと期待はしながら。
ひとまず背中側なら…と、尻尾をゆらり。

宇津篠 照 > 「そうね。……ああそうだ、怪異の話だけど多分大丈夫だと思うなー。
根拠はないけれど。」

まあ、恐らく怪異な目の前のネコが襲い掛かる様子もないので、
間違っていなければ実害なしでそのうち噂も立ち消えるんじゃないだろうか。
ただまあ、にやりと笑う姿からはやはりネコ以外の何かなのではという思いも感じるのだが。

「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。」

とはいえ、目の前のもふもふを触らないのは女の子としてあり得ない(過言)のでそちらに意識を向ける。
地面のままだと撫でにくいので両手で軽く抱きかかえる。

「おおー、やっぱりきちんと手入れされてるのかなぁ。まあ、あなたなら一人でもできそうだけど。」

手始めに背中から軽く撫でてみる。ふわっとした毛はやはり手入れされているのだろうか?
そんなことを考えつつも猫を堪能する。嫌がってなさそうならその手は少しずつ上に上がり首を揉み始めるだろう。

「痛いところとかあったら言ってねー。…ふふ、もふもふだぁ。」

アーテル > 「んー?」

なんで大丈夫だと思ったんだろう。猫は首を傾げて訝しんだ。
まあ、それを否定しうる要素を今は持ってないので、それ以上言及することはなかったが。

「ん。」

自然なムーヴで抱きかかえられた。
遊具の上で寝転んでたわけでもなかったから、そのままでは撫で辛かったんだろうか。
そう思うことにして、大人しくしておく。
前足後ろ足がぷらーん、と重力に従ってしなだれるが、まあいい。
慌てず騒がす落ち着いて、こういう時はされるようにされた方が楽というものだ。

「だろー?
 ま、俺の日頃の努力のお陰ってーわけだ。」

特に何かしたわけではない、が。まあ、在り方は普通の猫とは違うので。
背中の辺りはさらさらと流れる様に、毛を立てる様に揉み込めば適度なふわふわが伝わるだろう。

「んんー……とくにい、だいじょーぶう………」

首元を揉み揉みされる。
その辺りは結構キくらしく、声色に覇気がなくなってきた。

宇津篠 照 > 「一人で手入れしてるんだね。偉いなー。」

よしよしとさらに適度な力加減で首をもむ。

「ふふ、じゃあこのまま続けちゃうね。
それにしても、体柔らかいんだねー。」

どうやら首は効くらしい、声に出ている。
しばらく首を堪能したらその手はさらに上、頭頂部へ。
もみもみもみもみ、マッサージするように手を動かす。
……気持ちよさそうなネコちゃんの様子を見ているとなんだか幸せな気分になる。
成程、こうしていると確かに普通のネコちゃんだ。

最後に、抱えてたネコちゃんを膝の上に置いて、顔を両手でほぐそうとする。

アーテル > 「んぅー……ん、んんー……」

ぽやぽやしてきた。どうにもマッサージには弱いというか、へにょへにょになるというか。
最初に見せていた猫なのに猫じゃなかったムーヴはどこへやら。
今はすっかりいい様にされてるネコチャンなわけで、大人しく膝の上に乗せられたりもするだろう。

「んにえー。」

のびーる、のびーる。ほおっぺたやら、喉元やら。
変な声が出たりしたけど、もう気にならない。

宇津篠 照 > 伸びる。猫は液体と聞いたことがあるがどうやら本当のようだ。
人差し指から小指までを顎の下を、残る二本の親指で耳元や頬などをムニュムニュと触る。

「ふふふー、ここが気持ちいいんだねー。」

気持ちよさそうな様子にまんざらでもない模様。
そうやって猫を楽しむ。

「はい。正直名残惜しいけど、あんまりやりすぎるとあれだからね。」

最後に一揉みして堪能すれば触るのをやめる。ずっとこうしていたい気分だがあまり拘束するのも酷だろう。

「触らせてくれてありがとうね。……何かお礼したいんだけど、欲しいものはあるかな?」

アーテル > 「んぁー……ぅー………」

すっかりとろとろにされてる気さえする。
猫は液体とはよく言ったものだ。今なら箱に入れれば溶けるだろうか。
耳元を触ればぴこぴこと、擽ったそうに耳が動いた。

「……ん。おう、なんだ…終わりでいいのかー?」

深追いは、しない。もう終わりとなれば、これでいい。
夢見心地な気分を掃う様に、そこでぷるぷると頭を振った。

「…ん。
 今は特にねーや。なんだかんだ、腹減ってねぇしな。」

流石に怪異と一戦構えるか、なんて状況になるかもしれない時に腹が減っては戦はできぬということで。
今は特に不足を感じないらしい。彼女からの施しは、この場は断っておくことにした。