2020/12/01 のログ
リタ・ラルケ >  
「だからいいんじゃん」

 笑って言う。『普通の人』であることが、多分彼にとっての一番の強さなのだと、自分は本気でそう思っている。
 畢竟単純な力の強さだけでは得られない、単純な力の強さ以上に大きな強さ。

「……そう改めて言われると、なんかさー……」

 まっすぐにこちらを見つめてくる彼に、思わず気恥ずかしくなって俯く。
 自分があんまりこういうことに耐性があるわけではないのはそうなんだけど、彼の眼はとてもまっすぐで、正直だ。それ故に、純粋にそう言っているんだというのが伝わってくる。
 ……多分こういうところなんだろうなー。彼自身は自分のことを凡人と称しているけど、ことコミュニケーション能力については非凡なんだと思う。
 顔だって決して悪くないし。案外自己評価とは反比例して、彼のことを好いている――どういう意味でかは明言を避けるが――人は少なくないのではないか。というか急に呼び方変えてきた。そういうところじゃないかな。

 して五つ数えて、おもむろに顔を上げる。……ああ、多分ちょっとだけ赤くなってる。

「……それはもう、こっちから言いたいな。……よろしくね、雷鳥」

 だけれど、その言葉だけは、ちゃんと。

火光雷鳥 > 「そっか…まぁ、俺の唯一のポリシーみたいなもんでもあるしさ。
『非日常に慣れても凡人の視点や考え方は無くさない』みたいな。
俺は、これからもこの島に少しずつ慣れていくんだろーけど…そういう普通の感覚は無くしたくねーんだよな。」

勿論、それをずっと保ち続けるのはとても難しいだろうな、と彼自身はとっくに気付いている。
それでも、だ。どんな形であれ凡人であり続けたいと思うからこそ見えてくる『景色』がきっとある筈なのだ。そう思いたい。

勿論、裏表なんてこの少年にそんな器用な使い分けや真似は出来ない。
腹芸は苦手だし、隠し事をしても割と態度や顔につい出てしまうから。
当然、嘘も無い訳で言葉のまんま、本気で打算も下心も無く彼女と友達になりたいと思っている。
そして、彼女のこちらへの感想や評価は勿論少年は気付いていないので、俯いた彼女に不思議そうにしていたけれど。
あと、多分この自称凡人には意味深な含みあれこれが全く無い。清々しい程に無い!良くも悪くも単純だ。

あ、やっと顔を挙げてくれた……何か顔が赤く無いだろうか?熱でもあるのか?

「おぅ、改めてよろしくなリタ!やーー、やっぱ友達増えるのって嬉しいもんだな!!」

彼女の言葉に、素直に嬉しそうにケラケラと笑って。
凡人だから情けない所もあるし、ビビりもするし、年齢相応にスケベ心もあるけれど。
友達になりたい、そしてなれた…その事実には、ただ純粋に嬉しさと感謝を。

「あ、ついでに連絡先でも交換どうよ?まぁ、リタがよければだけど!」

――と、まぁこのようにコミュニケーション能力は彼女の見立てどおり地味に高いのかもしれない。

リタ・ラルケ >  
「それでいいと思うよ、うん」

 良くも悪くも奇抜な世界だ、そんな中で普通というものを保つのは大変なことだ。是非ともその意思を曲げないでほしいと、自分はそう思う。
 というか慣れすぎて奇抜側に入った雷鳥が想像できない。多分彼はこれからも凡人がゆえに弄られ続けるだろうか。うん、きっとそうだ。もしそうじゃなかったら他人の成り代わりと思うことにしよう。

「……そうだね」

 この様子じゃ多分、自分がどれほど心を乱されていたのかも気づいてはいまい。やっぱりそういうところなんだろうなあ。一人結論付ける。
 しかしながら友達が増えるというのは、もちろん自分にとっても嬉しい事なので。
 まあいっか、と。そう思うことにした。

「連絡先。連絡先、ね……ちょっと待って、今携帯出す……」

 それから、てしてしと。慣れない手つきで連絡先を送る。
 未だこういう精密機器の操作は、慣れそうにもない。そんな機械音痴の12歳である。

火光雷鳥 > 「あはは、まぁ、俺らしさって訳でもねーけどさ。今まで島の外…本土でふっつーの学生時代や少年時代送ってきたから、その感覚が抜けないんだよなぁ。」

島に来てまだやっと3ヶ月になろうかというのもある。この先、年月が経過して凡人らしさも薄れていくのかもしれないけれど…。
けれど、自分の凡人らしさを無くしたくない、という想いを新たな友達が良いと言ってくれたのは…正直有り難かった。

(…そりゃ、俺だってすげぇ能力とか魔術とか非日常的なあれこれに憧れや好奇心が無い訳じゃーないけどよ。)

でも、結局俺は凡人思考は抜け無いだろうから。ならば、それを俺らしさとしてこれからも出来る限り保ち続けたい。
そして、彼女の中で自分が弄られる側とほぼ断定されている悲しい事実に気付けていないのは仕方ないね。

「……???」

何だろう、歯切れが悪いというか。俺、おかしな事を言っただろうか?
とはいえ、不機嫌とか怒っているようには見えない…まぁ、いいか!…つまりこういう所である。

「おぅ、慌てなくていいからなー。」

こちらは人並みに電子機器の扱いは慣れているので、携帯を取り出しつつ彼女の準備が整うまで待っていよう。
慣れない手つきから、「あれ、リタって機械とか苦手?」と、尋ねつつも連絡先は無事に交換出来た。

リタ・ラルケ >  
「まあ、ね……こういうの、触ったこともなかったから」

 何せ連絡手段として伝令やら伝書鳩やらが使われていたような世界である。機械技術などそうそう発展してもいなかったから、初めてのときは連絡すらまともに取れなかったほどだ。幸い、友人の助けもあって最近は基本的な機能なら使えるようになったけれど、それでも苦手意識は拭えない。
 さて。何とか連絡先を交換し終えて、一安心と携帯をしまう。一段落したという油断か、途端に空腹感が己を襲う。

「……お腹空いた。そろそろ帰ろうかな」

 寮のある方角を仰ぎ見て、言う。

「雷鳥はどうする? 寮に帰るんだったら……ふふ、また案内してあげてもいいけど」

 冗談めかして。本土から編入してきたというときから、約3ヵ月。まさか未だここから寮までの帰り道が分からないとは言うまいが。

ご案内:「常世公園」に火光雷鳥さんが現れました。
火光雷鳥 > 「へぇ…でもまぁ、少しずつ慣れていけばいいだろーさ。何事も経験、というか場数というか。」

馬鹿にする事も無く、憐れむ事も無く、むしろ励ますように。慣れてないだけで少しずつ覚えていけばいい事だ。こういうのは兎に角慣れである。
別にいきなり機械に慣れろ!という訳でもないのだし彼女のペースで少しずつ、がきっと良いのだろう。

「お、もうこんな時間かーー俺も帰るかな…って、流石に寮の場所くらいもう分かるわ!!」

と、中々の切れ味?のツッコミを返しつつも、直ぐににやり、と笑って。

「あーーでも、友達なら寮の方まで仲良く雑談しながら帰るってのはおかしくねーよな?
と、いう訳で一緒に帰ろうぜ?」

と、こちらも冗談めかして返すが普通に雑談がてら一緒に寮の方まで帰る気満々である。
まぁ、彼女が了承してくれたなら一緒に、もうちょっと近況でも語り合いながら帰路に就くのだろう。

リタ・ラルケ >  
 やっぱりツッコミ役なんだよなあ。こちらの冗談に律義にツッコんでくれる雷鳥を見て、ますますそう思う。
 うん、彼にはずっと変わらないでいてほしい。その方が面白そ

 閑話休題。

「……ん。友達、だもんね。それじゃいこっか」

 そう言って、二人で寮の方面へと足を向ける。
 一人で帰る、いつもの放浪帰りとは――少しだけ、歩みが軽くなっていたのは。
 多分、気のせいじゃないんだろうな。

ご案内:「常世公園」からリタ・ラルケさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に火光雷鳥さんが現れました。
ご案内:「常世公園」から火光雷鳥さんが去りました。