2021/11/16 のログ
神代理央 >  
「……何と言うか。いや、前からそういう事も無い事も無かったが。
貴様、意外と気が利くのだな。いや、意外と…などと言うと失礼かもしれんが…」

店に顔を出すべきだ、と告げるマディファにぱちくりと、驚いた様な表情を浮かべた後。
少し可笑しそうに笑みを零すだろう。

「とはいえ、まあ…そうだな…。貴様の言う通り、少しは顔を出すべき、なんだろうか。"仕事柄"中々そういう場所に行く時間も、取れないんだがな」

この悩みは、マディファには伝わる…だろうか?
特務広報部という血生臭い任務を続ける自分が、今更日常の証の様な場所に顔を出しても良いのか、という煩悶。



「…まあな。彼女は戦闘面において優れた能力を持っている。
こんなちんちくりんな見た目だがな」

と、同僚の紹介にしては少しばかり失礼な言葉。それだけ信用しているのだ、ということだけは、涼子に伝わるだろうか。
とはいえ、そんな態度も笑顔で此方を見る少女の言葉を聞くまで。

「あー…まあ、そう、だな…。オーナーとして、店を放置しているのは、確かに問題だと思うんだけど…。
………お祭り?」

そう。常世学園の生徒なら誰でも心待ちにするお祭り。
しかし少年は、その事がすっかり頭から抜け落ちていた。
最初は、顔を出していない気まずさから困った様な表情で向けていた視線も。
次第に、それは不思議そうなものへ。小さく、首を傾げてしまうだろう。

「……む、これは…マドレーヌ、か?
お前の作った新作、とあれば…そうだな。一つ、頂こうか。
マディファも食べてみると良い。何、遠慮はいらないさ。
オーナーの私が、許可しているんだからな」

マディファ=オルナ > 「うむ、一人では伸ばせる手の範囲に限りがあるからのう。
 そのための部下、そのための助っ人じゃ」

これはマディファ自身もよく分かる。
前の世界ですら一機ですべての戦場を制圧できるわけではないから姉妹機が作られた。
この世界でも二度、不覚を取っている。

「じゃろー?
 機械じゃからそこら辺考慮してなさそうとか、まあ致し方ないのじゃが。
 オーナーが店から出頭を求められてるのならば、行ってやったほうが良かろう」

こう考えるようになったのは、やはり自分に魂が宿ったからだろうし。
少なくとも、それ以前の段階ならば、たとえこの場にいたとしてもこうは言わなかったのは間違いない。

「まあ、時間が取れぬのは仕方あるまい。
 じゃが、行けるときに行ったほうが良かろう。
 仕事ばかりやって無事なようには人の子はできておらんのじゃから」

言いたいことを何となく読み取り、その上で送り出す。
今は非常事態でもないのだ、そのくらいの休息ぐらい許されないでどうするか。
そんな輩がいるなら叩き潰してやるつもりだ。

「かっかっか、ちんちくりんとは言われたものじゃ。
 じゃが、信頼されるだけはあるがの」

特に怒ることもなく、理央の評を肯定する。
そんな言葉は言われなれたものだ。
そもそも、そう言われるがためにこの姿にしている節もある。

「ふむ、では遠慮なく。
 ……ほう、まるで高級店の代物じゃな。
 実にレベルの高い菓子じゃ」

マドレーヌのような菓子を受け取り、一口。
味覚センサーがかなりの高数値を叩き出している。
自分が人間であったら、あっという間に食べ尽くしてしまうだろう。

雪城 涼子 > うーん、相変わらず含みのある言葉。
それも向こうと話すとき。
よくないなぁ~、そういうの良くない。
とは思うものの、うん。あまり、そんなところを突いても仕方がない。
そこは大人の余裕とかいうやつで流しておこう。

だけど――

「おーまーつーり!常世祭よ、理央くん。
 厳かな儀式を見るもよし、出店にいくもよし、とりあえず色々見て回るだけでもよし。
 ……なんだけど、お店側として出店……とまではいかなくても、セールをやりたいわけね。」

わかってなさそうな顔をする理央くんに思わずにじり寄る。
ほんと、そういうのも忘れている辺り本格的に良くない。

「まあ、そんな事情は置いておいて……
 理央くん、ホント駄目よそういうの。
 お仕事忙しいのはわかるけれど、世間の動きも知っておかないと!」

本当に、本当に……島の性質上仕方ない部分はあるにしても、だ。
それにしても、遊びたい盛りの子がこんなことじゃよくないわ。
思わず、内心ぷんぷんとする。


「こうなったら、そうね。
 まずはお店に出てもらいます。出て、しばらくお勉強です。
 お店とか、お菓子とか、行事とか、経営とか、お客さんとか」

思わず畳み掛けてしまう。
言いすぎかな、と思わないでもないけれど、まあ、まあ。


「……とと。
 うん、そこはね。普通にお求めやすい価格でお気軽にお尋ねいただきたいお店経営ですが。
 それでも質は落としたく有りませんので。味の方はできる限りの努力はさせていただいています。
 お求めでしたら、予約式の高級品なども扱っておりますが。」

と、マディファさんに思わず営業トーク。
……あれ?

「……機械? お味、わかるんですか?
 高性能ですね……」

はー、と思わず感心する。

神代理央 >  
「出頭を求められている、と言われると…中々に堪えるものがあるが…。だが、まあ、そう言う事なのかな。
しかし……貴様達を置いて私だけ休暇を満喫するというのも…」

もごもご。
少し困った様な、悩んだ様な顔。
マディファも含めて、仲間達を置いて自分だけ日常を満喫して良いのか。
未だ自分には、硝煙と鮮血が纏わりついているのではないか。
そんな、悩み。普段、特務広報部の面々には見せない――特務広報部部長ではなく『神代理央』としての、悩み。

「時間があるなら、その分お前達の為に充てる事も出来るとは…思うんだが…」

と、煮え切らない態度が。機竜の少女に向けられるのだろう。


「あ…ああ、そうか。常世祭…もう、そんな時期か…。
そうだな、祭となれば稼ぎ時だろう。別に止める理由もない。
好きにすると良い。お金は出すから」

そうか、そうか…と、思い出した様に。
今年は、祭りの警備の為の会議にも参加していなかった。
何処でどんな催し物が行われているかも、頭に浮かんでこない。

と。取り敢えずお金は出すから――と話を拡げようとして。
次いで投げかけられた言葉に、固まる。

「……お店に出て、勉強?いや、経営学の類なら履修しているし……お客さん?お前まさか、私に接客させようというのか?」

流石に無理が無いだろうか。
ただでさえ、普段は愛想の悪い風紀委員だ。自覚はある。
そんな自分が…接客?何をすればいいんだ?

「いやいや、流石に無理があると思わないか。
なあ、マディファ、雪城?」

もぐもぐ、ごくん、と。
マドレーヌを頬張って、飲み込んで、ちょっぴり頬が緩む。
そんな表情のまま、営業トークを始めた少女と、営業トークを受ける少女に、首を傾げてみる。

マディファ=オルナ > 「構わん、構わん。
 普段からお主は良くしてくれておるんじゃ、たまの時間を店に使っても文句はない。
 文句を言うやつは儂がなんとかしよう」

言い訳をするな、と。
彼の悩みまでは完全にわかってはいないが、行かない言い訳を潰すように。
もちろん、文句を言うものなど特務広報部には居るまい。

そうして油断していると、涼子の営業トークがはじまった。

「これを、求めやすい価格で……?
 周辺の店との軋轢が生まれるのではないかとは思うのじゃが。
 出来る限りの努力など、これ以上は求めるのが野暮じゃと思うのじゃが。
 味が分かるのは、味覚センサーを搭載したからじゃな。
 とは言え、人の子ほどきちんと味わえてる保証はないがの」

まさかのお手頃さにびっくり。
美味しすぎて逆にその値段では心配になってくる。
尻尾もその心情を映し出している。

味覚センサーについては、自我を持ってから取り付けたものを、この世界で更新している。

「んー……シミュレートしてみたがの。
 それ相応の装いであれば、普段どおりの尊大な態度でも寧ろ集客は見込めよう。
 人の子の業は恐ろしいものじゃな」

言ってることと反して、笑ってしまう。
理央の言い訳を潰したいのもあるが、それ以上にシミュレート結果がそう出たのだから仕方ない。
前の世界では考えられない人間の趣味にはこちらに来てから驚かされてばかりだ。

雪城 涼子 >  
マディファさんの言葉を聞きながら、考える。
彼女の言い分、彼の言い分。

ふむふむ、貴様たちを置いて? お前たちのために?
文句の有無……
あるのは罪悪感? それとも他に何か……?

それに……妙に困った感じの顔をしているわよねえ。
ということで……


「いい、理央くん。
 この世界……この場合は、常世島って範囲になっちゃうかもしれないけれど。
 世界は、思ったよりも広くて。思ったよりもいろいろな人がいて。
 だから、なにもかも一人で背負ったところで全てをどうにかできるわけでもないし。
 そもそも、ちょっと休んだくらいで崩壊するくらいなら組織として体をなしてないでしょう?」

なんて追撃。ちょっと偉そうかな? と思わず思ってしまうが此れくらい言わないと動かせなさそうだし。


「部下さんたちのことが気になる?
 いっそまとめてお休みに……するにはちょっと多いなら交代とかでもいいから。
 そういう都合、つけてもいいんじゃない?
 なんなら、のんびりと交流の時間を作るとかでも?」

そんな感じで折衷案。
このままだと、また休まないとか、こっちにこないとかありそうだし。

「うーん、お値段は……まあ、高級店から見れば比較的安くはありますけれど。
 流石に、周りに被害を出すような阿漕な商売にまではならないとは……
 基本は技術と手間でカバーでの値段ですし。」

原価計算とかし始めるととてもめんどくさいのが、食品産業。
市場価格も見つつ、ある程度の適正価格をはじき出してはいる。
まあ高めのものも安めのものもないわけではない、けど。其処はバランスである。

「そういうのも含めて、お勉強です。
 風紀のお仕事以外にも、世の中には色々あることを改めて勉強してもらうの。
 無理? ううん、意外となんとでもなるものよ。
 やる前から無理なんて言わないの!」

接客自体は実は、そこまで考えていなかった。
お客さんを学んで、人を知ってほしい、という意味だった。
けれど。接客って自分から言ってきたんだし、それ採用、と思う。
その方が、より人を知れるしね。

神代理央 >  
「む…ぐ。それは…しかし……。
………分かった。それじゃあ、御言葉に甘えるとしよう。
休むのも仕事のうち、というしな」

文句を言う奴は自分が何とかする、と言ってくれたマディファ。
一人で何もかも背負ったところで、全てをどうにかできるわけでもない、と穏やかに告げた涼子。
二人の言葉に、悩み、悩み、悩んだ末に――白旗を、上げた。
困った様に笑いながら。それでも、その表情は穏やかなものだ。

「ではマディファ。連絡員として使って悪いが、皆に伝えてくれ。
暫く休みだ。落第街への対応は、私達に仕事を投げていた連中に任せよう。
また、各隊員についても生徒や職員など、島の住民と積極的に交流を図る様に、と」

そうと決めれば、動き出すのは早い。
動き出す様が、やっぱり仕事っぽいのは許して欲しい。

「ふん。向き不向き、というものが世の中にはあることを教えてやる。
この私が接客に立つ事で、どれだけ売り上げが下がるのか。
どれほどクレームが押し寄せるのか。
具体的な数字にすれば、お前も何とかなる、等とは言うまいよ」

「シミュレートはシミュレートだ。
人の感情など、機械で推しはかることなど………。
…相応の装いって、何だ?」

墓穴を掘った事に気付かぬ儘。
マイナス方向に自信満々、という様に二人に力強く頷いてみせる。
それ相応の恰好って何だろう、とはちょっと首を傾げてしまうけど。
普通の私服じゃ駄目なんだろうか?


「…まあ、兎も角。話が決まれば、動き出すしかないな。
マディファ、さっきの伝言は宜しく頼む。後で私もメールを送るから、会えた連中だけで構わない。
ああ、それと。私の店は『ラ・ソレイユ』だ。私が接客していない時間なら、何時でも来ると良い。歓迎しよう」

「それと涼子。素人である私が店に立てば、それなりの混乱もするだろう。
対応マニュアルを皆と相談して軽くで良いから作成しておけ。
後で私も目を通すし、改善すべきところがあれば口を出す。
しかし、基本的には全てお前達に任せる。期待しているよ」


無駄にさっさと指示を出すと。すくっ、と立ち上がる。
休むなら、休む前に済ませねばならない仕事もあるのだ。


「ではな、二人とも。何だか色々と言い含められた気もするが…。
まあ、方針が定まっただけ良しとしよう。
マディファは、是非店に来てくれ。奢ってやる。
涼子は、私が食べる分の菓子をちゃんと用意しておいてくれよ?」

「…それじゃ。あー……その。
……今日は、ありがと」

最後に、それだけ。小さな声で二人に呟いて。
何時もより少しだけ早足で。少年は公園から立ち去っていく。
言い慣れない言葉を告げた少年の表情は――

…まあ、それを知っているのは。公園の看板に止まっていた雀だけ。

マディファ=オルナ > 「ふむ、問題を起こしていないなら構うまい。
 心配性の老骨の言うことだと流してくれて構わぬよ」

流石に値段設定辺りはきちんと考えているか。
素人が口を挟むものではなかったなと軽く反省する。

「うむ、うむ。
 分かってくれればよかろう、連絡もしておこう」

どうにも新たな仕事に向かうように見えて仕方ない。
とは言え、彼のせっかくの気分転換になりそうなのだ、協力は惜しむ気はない。

「まあ普段の姿ではそうなろうな。
 じゃが可愛らしく着飾れば、寧ろ増える要因じゃよ」

つまりは女装である。
普段の装いではだめなのだ。

「『ラ・ソレイユ』じゃな……む?聞き覚えがあるのう……?
 まあ、機会があれば寄ることにしようかのう」

後になって、風菜が話に上げた店だというのを思い出すのは別の話。
とは言え、気分良さげに立ち去る彼の姿を見送って。
マディファの聴覚センサーは小声で漏らした言葉を聞き逃しはせず。

「どういたしまして、じゃよ。
 ……さて、涼子殿。儂もここで失礼しよう。
 先程頼まれたこともあるしの」

そう言って、マディファも公園を後にする。
涼子から見える後ろ姿は、満足げにしっぽを振っていることだろう。

雪城 涼子 >  
「可愛く、かあ……」

確かに可愛らしい顔だし、似合いそうではある。
いっそ、化粧もして本格的に……?
女性用の制服もあることだし。


「はい、喜んで。当店は、様々なお客様のご来訪をお待ちしております。」

マディファさんの言葉に答える。
新規のお客様は更に願ったり、である。


「むー、なんだか仕事っぽい言い方ねえ。
 もうちょっと、こう……まあ、おいおいでいいか……」

実際、仕事なのでやむを得ないのだけれど。
ちょっと思っているのとは違う。
もう少し肩の力を抜いて欲しいものだ。

「ちゃんときてよ―、理央くん」

去っていく姿に、小さく声をかける。
聞こえているかどうかは……まあ、彼次第。

二人を見送れば……自分は宣伝を兼ねての、お菓子を配り歩く作業に戻ることだろう。

ご案内:「常世公園」からマディファ=オルナさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から雪城 涼子さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から神代理央さんが去りました。