2022/01/24 のログ
ご案内:「常世公園」に暁 名無さんが現れました。
■暁 名無 > 「ハイ今日も一日お疲れさんでしたー!……っと」
夜の常世公園。寒さの所為か人気が無い公園の片隅のベンチに腰掛けて、俺は空元気気味に声を上げる。
例によって仕事らしい仕事と言えば資料制作とバイト用の論文まとめくらい。まあ補助要員だからねしょうがないね。
とはいえ社会人として仕事をしないわけにもいかず、毎朝出勤してはこうして日が暮れてから帰路についてるってわけ。
「最近の楽しみはもっぱら帰りがけに買うコンビニスイーツになってるしな。
はーあ、学生の俺が見たら絶望すんぞこんな未来。」
落胆しながらも新商品のプリンを取り出す。
期間限定塩プリン。え、塩?プリンなのに?塩?と興味本位で買ってみたわけだが、はたして。
■暁 名無 > 「コンビニスイーツってさ、
どういうわけか前に売ってた商品もある程度期間を置いてまた新商品!って売り出すけど、
あれってどういう理屈なんだろうな。
バイトでもしてみりゃ分かるんだろうか。」
小さなプラスチックスプーンを探しながら独り言。
正直独り言でも言ってないとやってらんない。寒いし、人居ねえし。でも家帰っても状況変わらんし。
昔から冬場って人恋しくなるよねー、と特に返事も期待せずに投げかけてから、スプーンを見つけたので塩プリンの封を開ける。
「んー……見た目は至って普通のプリン。
さてさてどんな味なんだろか……いっただきまーす。」
お馴染みの黄色くてふるふるの憎めない奴をスプーンで一掬いして口へ運ぶ。
………。
…………。
………………茶碗蒸しじゃねえこれ……?
「め、めっちゃ柔こくて、ちょっと甘い茶碗蒸し……しかも具無し……。」
■暁 名無 > ……美味いか不味いかで言えば、美味くはない。不味く……もない。
けれどプリンだと思って食えば裏切られるし、茶わん蒸しだと思って食っても裏切られる。
舌当たり滑らかな食感に、口いっぱいに広がる出汁のしょっぱさ。
そしておまけ程度についてくるバニラエッセンスの香り。
「何でこれを売りに出せると思った!?
商品開発部寝てないのか!?企画段階でストップ掛けらんなかったんか!?
どうして……どうしてこんな悲しいモンスターを……!」
でも一口食べたからには勿体無いので全部食べましょう。
二口、三口と食べても変わらない茶碗蒸し感。スイーツ感無し。
まあでも酒のアテとして食うならこういうのもありなのか……いや、甘さが邪魔だ。
……甘さが邪魔だ、なんて少年漫画のライバルキャラみたいな感想出るか?プリン食っただけだぞ?
「ううっ、うう……何で、何で塩大福はあんな美味いのに……」
気が付けば嗚咽を漏らしていた。
いい歳の大人が夜の公園でプリンつつきながら泣いてるの、かなりヤバイ絵面でしょう。
■暁 名無 > 頬を伝い落ちるのは、きっとコンビニスイーツという魔境で無謀な賭けに出た代償。
寒さに身を震わせながら、星空を眺めて食べるプリン。
それは少し、涙の所為か、塩辛かった。
「――――元からだよ!!!!!!」
このプリンが塩辛いのは元からだよ!涙関係ねーよ!
でもお出汁の塩気だからマイルドな感じはする。温めて飲んだら多少マシになるかなあ……
とか思いながら食べ進めていたら底のカラメルにぶち当たった。
え、嘘だろ。カラメルは普通にカラメル……じゃない。
「…………甘口出汁醤油?」
カラメル特有の甘さもほろ苦さも無く、ただただ醤油のコクが口の中で甘じょっぱいプリンと溶け合う。
え……なにこれ……スイーツとは何ぞや、という問答か何かです?
なーんで俺仕事終わりに公園のベンチで不毛な問答と向き合ってんの……?
ご案内:「常世公園」にフィールさんが現れました。
■暁 名無 > 「いや待て、落ち着いて考えてみよう。
卵とお出汁と醤油、見た目がプリンである事を除けばほぼほぼ溶き卵になるのではなかろうか。
一番除いちゃいけねー要素がデカ過ぎんだよ!!
ああ、(Fワード)!!もう絶対コンビニスイーツで冒険なんてしねえ!!」
ぐるぐるぐるぐる、スプーンでプリンを掻き混ぜながら数刻前の自分を呪う。
冬場って自分でも気付かないうちに汗かいて塩分減ってるらしいからねー、とか感心しながら手に取った俺の馬鹿。ばかちん。
ぐじゃぐじゃにして一気に流し込んだ塩プリンは、ほんのりとTKGの味がした。白米をくれ。
「ううっ……大人しく大福買えば良かった……」
これが後悔先に立たず。みんな勉強になったかな?
■フィール > 「………なにしてるんですか?」
買い物帰りに公園を通っていたところ…何やら奇声を上げながらスイーツを食べている珍妙な人物を見かけて、思わず声を掛ける。
その姿は、刺青こそ無く、服装もドレスとは違ってジャケットを羽織ったラフな格好だが…閉鎖区画で見かけた盲目エルフの少女と瓜二つだ。
目を見開いて、興味深そうに眺めている。
■暁 名無 > 「アッハイ、ゲテモノプリン買った自分にキレ散らかしてマシタ……」
空になった容器を握り締めながら涙が零れそうになるのを堪えようと天を仰いだ矢先。
不意に声を掛けられ、俺は思わず我に返る。え、まさか一部始終見られてた?
慌てて声のした方を見やれば、以前落第街にて言葉を交わした少女……いや、よく似てるけど違う?
「あー、うーん、えーと……どこから見てた?
あ、この場合のどこから、ってのは場所の事じゃなくて俺の行動タイミングのことで……」
最初からだったらいいお笑い種だ。いや、どこから見られててもお笑い種だ。
じゃあどこからでもいーか!……良くない。
■フィール > 「声は少し前から聞こえてましたけど、姿を見たのは…一気に口に流し込んでたところから、ですかね?」
前から聞こえていた、ということはそれだけ遠くからでも奇声が聞こえていた、ということだろう。
「ゲテモノって、どんなの買ったんですか………あ、口直しに飲みます?」
そう言って水筒から水を注いで差し出す。少なくとも笑っている様子は無く、むしろ興味深そうに見ている。
■暁 名無 > 「そう……か……」
まあ自分でも人目を憚らず喚き散らした自覚はある。
自覚はあってもこうして実際に人に見られてたとなるとちょっと恥ずかしいね。ちょっとどころじゃないね。
小さくため息を吐き、一度頭を振って気を取り直す。
「塩プリン、ってちょっと塩っ気のあるプリンだと思って買ったんだけどね……
プリンというか茶碗蒸しというか、茶碗プリンみたいな感じの……悲しきモンスターだったよ。
あ、大丈夫大丈夫。自前のがあるから。」
そう言って自分の水筒を取り出して見せる。
中身は最近すっかり飲み慣れてしまった自分で淹れた紅茶だけど。
■フィール > 「おっと、これは失礼しました。塩プリン…あれ、どこかで聞いたことが……塩プリン……………?」
差し出した水筒を下げ、少し思考に耽る。
そして、ハッとする。ガサゴソと買い込んだ買い物袋の中身を漁って………そして一つのゲテモノをとりだした。
「………もしかして、これのことです?」
同居人と一緒に食べるために買った、安売りのスイーツ……塩プリンだ。
■暁 名無 > 「いやいや、お気遣いどーもね。ありがとさん。」
とはいえ喉が渇くほどしょっぱかった訳でも無いので水筒は脇に置いておく。
そして塩プリンという商品名に思い当たるフシがあったらしい少女を、まさか、と見やる俺である。
嘘だろ、そんな、まさか
「………その塩プリン、その辺のコンビニで買った?」
よく似たパッケージのスイーツ(仮)が出てきた。
俺が買ったのは定価だったけれど、もしかするとスーパーとかにも卸されているのかもしれない、と。
それよりも別物であって欲しい、と。切に、切に願わずにはいられなかった。
だって、その、あんまりにもあんまりだろ、それは。
■フィール > 「…そうですね……コンビニで割引シールが貼られてたんですよ」
もう一つ、塩プリンを取り出して。二人で食べるつもりだったので2個買ったのだ。
その蓋には50%引きの割引シールが貼られていた。
どうやら同じもののようで、違う点といえば割引シールと消費期限ぐらいだろうか。
「成程、叫ぶほどの代物だから、安かったと…そういう訳ですか」
仕方ない、とばかりに付属のスプーンを取り出して、この場で開けて食べようとする。
■暁 名無 > 「マジで……もう値引きされてんの……」
流石に見切られるのが早過ぎる気がしないでもない、が。
まあ実際食ってみた身としては然もありなん、と言わざるを得ない。
だってスイーツじゃねえもん、プリンじゃねえもん、卵焼きにする前の溶き卵だもん。
しかしそんなものを定価で……俺は……定価……ううっ
「あーあーあー、ちょいと待った!
確かにスイーツとして食うとアレがソレだけど、おかずの一品として食う分にはそこまででもないから。
ここで食うよりも、ほら、ぐずぐずにして温めてご飯にかけるのが良いと思う。」
正直、食ったばかりで目の前で同じもの食われると味を思い出しそうで止めて欲しい。
そんな気持ちを最大限オブラートに包んでエアキャップでぐるぐる巻きにしたのち丸めた新聞紙をぎゅうぎゅうに詰めてお出しする俺だった。