2022/04/17 のログ
ご案内:「常世公園」にイェリンさんが現れました。
イェリン > 時刻は3時を過ぎて、月が完全に満ちるまでもう少し。
濡羽色の髪に月の光を受けながら、日曜日にかこつけて夜更かしをする影がひとつ。
桜の時期ももうじき終わるのだろうか、緑の色が混じる淡い桃色のカーテンを見上げて息を吐く。

「……少し冷えるわね」

唸るように零しながら黒い手袋でタンブラーを傾ける。
中身は砂糖たっぷりのミルクティー。
飲み下すとお腹の底から温まってはぅ、と吐く息は白くなって空に溶けていく。
桜と桜の花びらの隙間から見上げる月の色。
白とも黄色とも言い難いその色を眺めながら、胸元のペンダントを撫でる。
遥か遠く、頭上に輝く月は傍目に見るからには綺麗な円形に見えるものだけれど、
それでも真円では無いらしい。
時間になると肌で感じられるほどに”変わる”から、だからまだなのだと感覚的に理解できる。
色でも無ければ見え方でも無い。
その変化が感じ取れるのは魔術師としての才覚なのか、はたまた隣人の恩寵かしら。

イェリン > アッサムの濃厚な香りと風味を殺してしまわない量の牛乳で作ったミルクティー。
香りをより際立たせるための自分の好みの分量の物を、パックに詰めたチョコチップのスコーンと一緒にベンチで頂く。
お花見には遅すぎるし一人で出歩くにも不用心な時間。
それでも月に一度の満月、あるいは年に一度のピンクムーンは魔術師にとって見上げるだけの価値がある。

(あっという間だったわね)

島を訪れてもう半年になる。
3月には卒業式で島を発った人もいた。であれば4月は出会いの季節だろうか。
狭い村の出なせいだろうか、多種多様な人の入り混じる島に上手く馴染めている自信は持てず。
少しずつ、少しずつ。アルバイトや講義を通して感覚を慣らしていく日々。

(……笑顔)

自分の頬を両の手の指先でむにりと引っ張り上げて作る、笑みとも言えない表情。
難しいわ。と呟きながらまた一口ミルクティーで舌を湿らせる。

イェリン > 「あっ……」

来た。月が満ちた。
合図があった訳でも無いし時計を眺めていた訳でも無い。
見た目には大きく変わったようには見えないけれども確かに今"満ちた"。

タンブラーとスコーンを傍らに置いて、ブーツの踵を鳴らして開けた場所に出る。
桜越しに見る月も綺麗だけれども、こればかりは遮る物など無い方が良い。

「――複写〈ディーリェ〉」

短く呟く簡易符術の起動式。
唱えつつ指の先に摘まんだ手のひら大の羊皮紙を宙にかざす。
拭うような乱雑さは無く、空に浮かんだ月をソッと掬い上げるように写し取る。

羊皮紙には焼けたように、小さな痕が付いていた。純粋な『満ちた月』の映し姿を収めた証拠。
これで立派な魔術触媒のできあがり。
特定の使用用途がある訳ではないけれど、意味を持たせて使えばしっかりと役割を果たしてくれる。
とはいえ、使うつもりもあまり無いのだけれど。
月に一度の月の映し姿の蒐集。
はじめは魔術の鍛錬として始めた物だったけれど、今では立派な趣味のような物。

イェリン > 「……うん」

満足、そんな言葉を吐く間も無く"満ちている"時間は終わってしまった。
花火の後の静けさのような、心の中にだけ高揚感が残っているような感覚。

不意に吹き抜けた風が頬を撫でる。
暦の上では春になるというのに日によっての寒暖差が酷く、気を抜けば風邪でも引きかねない。
散らかしたままにするつもりも無いのでベンチの荷物を回収して家路に付こう。

地面に落ちた桜と、頭上を覆う桜と。
その間に挟まれて、最後に一口だけミルクティーを飲み下す。

『……綺麗』

誰も理解する事も無いであろう母国の言葉でそう呟いて。
黒いブーツで地面に溜まった桃色の花びらを遊びながら、真っ直ぐに帰路を歩んでいく。

ご案内:「常世公園」からイェリンさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に皇 真納さんが現れました。
皇 真納 >  【休日のお昼。
 
 そう、なんてと言っても、今はお昼である、正午である。
 
 故に、買ってきたサンドイッチとブラックの珈琲を手にしている。

 しかも、コンビニのサンドイッチではなく、有名店のヤツ。 

 たまたま買ったのではなくいつも買っているヤツ】


 【それを手に、適当なベンチに腰を下ろす。もちろん、ランチするためだ。
 一人でだけど。今の所。】

皇 真納 >
 【サンドイッチをパクリと頬張る。
 うん、いつも通りの、美味。
 ちょっと焼いたパンはまだホクホクであり、
 挟まっているのは、こんがり焼いたベーコンだし、チーズも程よくとろけている。
 レタスや野菜も、シャキシャキで新鮮だ。
 ハーブの香りがする謎のソースも、良い働きをしている。

 割と一食はお高いが、もはや真納には、サンドイッチと言えばこれしか考えられない。
 たまに女性陣に混じって、居心地悪そうにおじさんが買いに来ているのも頷ける味だ。

 一つをペロリと平らげ、もう一つを手に持つ。

 おもむろに空を見上げる。

 【うん、
 天気も悪くないし気分も悪くない。


 何の変哲もない、静かで普通の休日のお昼だった。

 ただちょっと肌寒いので、珈琲はホットにしてある】

皇 真納 >  > 
【サンドイッチはすべて平らげた。
  
 包み袋をベンチそばのゴミ箱に放り込む。

 そして――ちょっと申し訳ない気分になる。 
 ――なぜなら、残念なことにコレっぽっちも栄養にならないのだから、大変申し訳ないが。

 これは、確定事項だ。
 毎日の生活の中で、割と早く気付いたことだった。

 でも、飲食は今まで通り行っている。

 まだ、自分は人間であると思っていたいのだ。
 それに、美味しいのは間違いないのだから。

 ずずずーと、最後にストローで珈琲をすすり上げ

 そのゴミもゴミ箱へ】


 「さぁてと」


【軽く背伸びをして……ちょっと腹ごなしに公園を歩きますか】

ご案内:「常世公園」から皇 真納さんが去りました。