2020/08/06 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエさんが現れました。
ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「済まない、一人だ」

そう言ってカフェに入る講師一人。
連日連夜研究を行っていたため、気分転換である。

「あー、肩凝る……ねっむ……」

許されるのならばスカッと眠ってしまいたいのだが、そうもいかない事情があった。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「迂闊した……講義詰めるの忘れてた……」

言いながら、がりがりと紙に脳裏に浮かぶ内容を雑多に書き留めていく。
それを後で整理する、と言うのがジェルヴェーズの基本的な思考のまとめ方だ。

「調合錬成と接触錬成に共通する『組成の把握方法』も教えないといけないし、当然接触錬成に行く生徒がいるなら錬成陣の造り方なんかも教えないといけない……そもそも素材の選び方、素材に出来るもの出来ないもの、それぞれどういったものが得手不得手か……」

ガリガリガリガリ。
優雅にふるまっていればそれが板につく美人であるはずだが、今はぱっと見でも結構台無しである。徹夜は美容の敵。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「――私は、何をしているんだろうな」

ガリガリとペンを走らせる手をふと止め、小さく苦笑する。
自分の本来の目的は、ここで教鞭を執ることじゃない。それは手段……ですらない、言ってしまえば必要悪的なものだ。
当初は、教師という職を舐めていたのもある。親友が師匠という立場を軽くこなしていたので、出来るものだとなんとなく思ってしまっていた。
だが、実際は難しい。何をどうどんな手順で教えればよいのか、と言うのをしっかり理論立てて考え、実現する必要がある。
それはまるで、錬金術のようでもあり。

「(教師としては、岩石以下の位階かな、私は)」

ふぅ、と溜息を吐く。だが、重要なのはそこではない。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「(こんなもの、適当に流してしまえばいい)」

自分の目的は、もっと別のところにあり、教師として活動するのはその目的の達成にほぼ寄与しない。
研究を続けるための、もっと言えば生きていくための基本的な資金を稼ぐための手段でしかないのだから、それなりに流していけばよいだけなのだ。
時間は有限だ。ましてや、自分に区切った時間はもっと短い。
こんなことに真面目に時間を費やしてはいられないはずなのだ。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「(流せばいい。生徒たちが弟子になる可能性は低く、まして弟子になったとして役に立つ可能性まで行くと更に低い。こんなことを真面目にやるのは時間の無駄だ)」

そう思い、ペンを置こうとする。
必要なのは休息だ、ペンを置いて、コーヒーの一杯でも呷って、帰って寝ればいい。それだけだ。

――それだけ、なのに。

「ああ、くそ」

置こうとすると思いだされる、あの場での高揚感。
自分の理論を伝える。それを生徒が受け取り、疑問を返してくる。
それに自分なりの答えを返す。教師が教え、生徒が学ぶ。そして、生徒によっては満足げに教室を出ていく。

――それは、新鮮な楽しさがあった。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「(お前は、こんな気持ちで私に教えていたのか?)」

自分にレイピア術を教えた親友を思い出しながら、ペンを置かずに走らせる。
この気持ちには抗えない。というより、これをふいにしてしまったら、きっと目的を達成した時に叱られてしまう。
これはきっと、言い訳なのかもしれないけれど。

ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 『そっちの方が、似合ってるんじゃないか?』

そんな言葉が、聞こえた気がした。
今度はそれを、振り払う気にはなれなかった。







その後、コーヒー一杯で3時間は粘り、店員にジト目で見られ、慌てて食事を注文したのはまた別の話。
粘る行為は迷惑になるから……やめようね!!

ご案内:「カフェテラス「橘」」からジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエさんが去りました。