2021/12/12 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にアガートさんが現れました。
■アガート >
本日は晴天――というほどでも無いが、風が比較的暖かい。
曇天にもならない晴れの昼下がりとなれば、冬であろうがカフェテラスは魅力的なものだ。
それは、この宗教家にも言える事である。
日当たりの良いテラス席に着けさせてもらい、店員へ注文を渡す。
「……穏やかですねえ。ええ、本当に良いところだ」
誰かに話しかけるように、低い声がつぶやく。
独り言だが、独り言でもない。
長く下がった彼の髪の間から、白蛇の尾がするると上がっていく。
化けもしなければ喋りもしないただの白蛇だが、逃げ出すことも威嚇することも無く、
アガートの傍で、彼の言葉を聞き流していた。
■アガート >
それにしても。
お腹が減ったなと思いながら時計を無視していたら、もうおやつの時間も近いじゃありませんか。
昼を抜いてしまったのは不覚です。この時間にガッツリ食べると、夕飯を作る気持ちに差支えが出てしまう。
とはいえ私、本来ならば本日は安息日を取っているはずなんですけれども、
常世島へ入島してまだ間もないため、手続きやら日用雑貨を買いつけに行く店探しやら、
あれもせねばこれも確認せねばと小忙しい日々を続けておりまして。
今週の安息日は返上して全て済ませてしまおうと躍起になった結果が、お昼忘れです。
お腹空いちゃいました、ほんとに。
今ならバラの葉に塩かけただけでも食べれます。
アガートはとめどなく心の声で言い訳しつつ、静かに席に座っている。
髪に隠れるようにしてアガートの傍に居続ける白蛇がそれを察することはないが、
たまに首元から顔を出し、赤い瞳をきゅるきゅるさせて辺りを観察していた。
有り難い事に、先に熱い珈琲が届く。
砂糖を入れるか数秒悩み、本日は入れることにした。
■アガート >
「…これは流石に貴女へ分けるわけにはいきません」
お水なら良いですよと、白蛇の顔へ冷水のグラスを傾ける。
白蛇はのどが乾いていたわけでは無かったようで、ただただ水面を見つめる間があるだけだった。
アガートは珈琲で温まった指先を白蛇に向け、その小さな口の先から頬骨へ続けて、優しくなでる。
■アガート >
白蛇とイチャイチャ戯れて空腹を紛らわせていると、店員の声と共にプレートが届く。
アガートお待ちかねの、遅れに遅れた昼食だ。
温かな湯気と共に現れた骨付きチキンも、きらきら輝いて見えるというもの。
「冬は骨付き肉が多くなるのがメリットのひとつですね…」
思わずフフフと微笑んでしまう。
紙おしぼりで手を軽く拭って、食事に感謝の言葉を唱えてから―――
――お肉にかぶりつきたいのを抑えて、スープを一口飲んだ。
これは自分を抑えるための大事な一口目なのである。がっついてしまうのは、流石に避けたい。
しかしこの、チキンの皮が黄金のような色づきで、こんなにもカリリと香ばしく出来上がっている。
大変耐えがたい。少なくとも、今のアガートには蠱惑的にすら見えてしまう。
その芳しい誘惑にもうひとつ耐えて、フォークでサラダを突く。
(ん?ん??)
(レモン…じゃなくて、ユズと言うのでしたっけ。なじみのない柑橘類の香りがしますね)
メニューの詳細を思い出しながら、本国の方ではお目にかからなかった風味に若干面食らう。
が、この大きく主張しないほろ苦さは嫌いではない。
実物を見てみたいなと興味を抱きつつ、いよいよチキンにかぶりつく。
■アガート >
骨付きチキンを食べる為のナイフとフォークは、この際無視だ。
両手で持ち、いざ、いざ、と肉に噛みついた瞬間、
パリっとした鶏皮の出迎えから、ジューシーな噛み応えの肉部分すら歯触りで楽しみ、
そのまま骨までガリンと断ててしまう。パキ、ポキ、と硬い音を立てながら、じっくりと旨味に浸る。
肉厚な鶏肉に塩と黒胡椒のシンプルな味付けだが、これがまた食欲をそそられる塩梅で実にうまいのだ。
「はぁ~……染みますねぇ~~…」
ただ、骨は一般人が齧れる硬さではない。普通の骨付き肉だ。
アガートが頬を膨らませてボリボリ咀嚼しているのが、ちょっとおかしいだけで。
骨の中部を断たれた骨付き肉から歯で、肉を削ぎかじり、ぱくぱくと食べ進めていく。
■アガート >
結局、勢いは止まらず。
骨付きチキンの肉どころか骨の一片も残さず、ぺろっと平らげた。
指についた脂を紙おしぼりで落し、残りのサラダとスープ、バケットを頬張っていく。
最後にプチデザートとしてついてきたヨーグルトを味わい、珈琲をすする。
「…あ~~~~……、やっと落ち着きました」
しっかり食べてしまった。
何も残らないプレートに向かって食事終わりの挨拶をし、珈琲のお代わりを頼む。
今度はミルクを入れて飲もうか。
一服済んだら、今度は通りを一本変えて、店を調べて……。
ご案内:「カフェテラス「橘」」からアガートさんが去りました。