2022/10/31 のログ
■エイン >
つまり、どこからどう見ても中二病じみた外見だし。
なんというかこう、ゴスとかコスプレとか、そっち系に分類されたりなんかするような格好だった。
格好については、もしかするとエインヘリヤルの頃の好みが残っていたのかもしれない。
ただ、兎にも角にも、いい意味でも悪い意味でも素晴らしく目立っている。
なぜって、本人が気にしすぎているせいで。
■エイン >
「んんんんん……?」
どうしよう、すごく目立っている気がする。
いいや待て待て待て、もしかするとただの自意識過剰かもしれないし。
というか、この格好普通だよね? 普通でいいんだよね?
研究室の人たちの言われるままにしただけなんだけどおかしくないよね?
だってほら、ネクタイもしてるしちゃんと学生っぽいよね、ね、そうだよね?
イヤでも洞図書委員とかってなんか怪しい本とバトルしたりとかあるらしいとかなんとか言う話だし。
防護服みたいなものは必要だと思うし。
そうなるとこういうカッコになるのはしかたないし、必然による当然の結果といいますかなんというか。
■エイン >
(コスプレじみた中二病のやたら決め切った可愛い女が、目をぐるぐるさせて真っ赤になって悩む様子はどうしても目立っていた)
■エイン >
「あああ、そういえば!」
突然、びくーんと背筋を伸ばす。
なぜなら、重大な事実に気づいたからである。
「メニュー頼んでない……」
ここまでリアルタイムで30分が経過していた。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に蘇芳 那由他さんが現れました。
■エイン >
「す、すいませぇん……ベルギーチョコココアひとつお願いします……」
明らかに、格好に似合わない極甘な注文だった。
格好からすると紅茶やブラックコーヒーなどになりそうなのに。
■蘇芳 那由他 > 一人の少年が茫洋とした表情でカフェテラスへと入ってくる。
物珍しそうに店内を見渡す姿は、まるで初めてこういう店に訪れたかのようで。
そんな姿を認めたか、店員の一人が接客スマイルを浮かべながら声を掛けてくる。
「……あ、どうも…すみません、こういう店に入るのが初めてなもので…。」
落ち着いた、抑揚の無い淡々とした言葉は機械のようで、けれど確かに人間味もあって。
一先ず、店員の案内に従って案内された席は……どうやら相席、という奴らしく。
確かに、それなりに人の入りもあるようだから、こういう他人同士が相席も珍しくは無いのだろう。
「…すみません、相席大丈夫でしょうか?店員さんにこの席を案内されまして…。」
何やら懊悩しているようにも見えたが、不思議と店内でも目立つ格好をした金髪眼帯の少女に相席の伺いを立てる。
■エイン >
「え? ああええと、ああああ相席ですね相席、だいじょぶです、よろしくおねがいします」
大丈夫だがいろいろ大丈夫そうではなかった。
格好の割に明らかに挙動不審だった。
■蘇芳 那由他 > 「…どうもありがとうございます。……大丈夫ですか?」
何やら、凄い挙動不審…少年から見ても一目瞭然なくらいに慌てる少女の姿。
不思議そうに緩やかな真顔で小首を傾げながらも、許可は頂いたので「失礼します」と、改めて断りを入れてから少女の向かいの席に腰を下ろし。
「……これがメニューで……。」
明らかに、こういう店に慣れていないややぎこちない仕草でメニューを手に取る。
何を頼もうかと思案の間――正直、そこまで空腹と言う訳でもなく。
「…すいません、ブラック珈琲を一つお願いします。」
丁度、店員さんが通り掛かったので、呼び止めつつ飲み物だけを注文しておく。
そうして、メニューを元の場所に戻して一息。改めて少女へとそこで意識と視線を向ける。
「…あの、しつこいかもしれませんがお邪魔ではありませんでしたか?こういう店は初めて来たので、不慣れなもので。」
お互い沈黙しても気まずいかもしれない、とこちらから何となく言葉を掛けてみる。
■エイン >
「いやいやいや、じゃまではないです、ええまったく」
慌てて全力否定する。
うむ、邪魔ではない。むしろ自分が邪魔。
こんな奴が席を占領していいのかまである。
「それに私も初めて……うん初めてって言ってもいいよね、めちゃくちゃ不慣れなものでして」
エインヘリヤルの頃にはよく来ていたらしいが。
今はそもそも店の記憶もないし、よくわかってないので初めてと言ってもいいだろう、いいはず、いい気がする。
正直、色々不慣れすぎて、街のマップもどこになにがあるのか、まだよくわかってなかったりする。
■蘇芳 那由他 > 「…そうですか、なら良かった…誰かと同席して食事、という経験が無いので助かります。」
例えば、学園の食堂などは例外としても…こういう、外の店で誰かと相席、というのは初めての経験だ。
少なくとも、過去の記憶を丸ごと失っている少年からすれば、新鮮そのものの体験。
「…そうなんですか?それは奇遇と言いますか…では、お互いフォローしつつ周りに失礼の無いように、という事で。」
彼女の事情を知らぬのもあり、一先ずは邪魔では無い事と、彼女も初めて訪れたらしい店という事が分かれば十分。
ふと、悪気無く自然に少女の服装や容姿へと意識を向けて。
「…左眼に眼帯をされているみたいですが、それは怪我をされているんですか?もしくはファッション、なんでしょうか?」
意外と切り込んでいく少年だが、本人に悪気も無ければ裏も無くて。
純粋に、眼帯姿の女性が珍しかったから、というのもありそんな質問を一つ。
そうこうしている間に、互いに注文した飲み物――ベルギーチョコココアとブラック珈琲を店員が持ってくるだろう。
■エイン >
「あ、自分もです、あらためてよろしくお願いします」
お互い記憶がない同士だということも知らないので、そもそも外食自体、初経験のようなものである。
ただこう、エインヘリヤルの足取りをたどればなんかあるかもしれないと思っただけの話であって。
「ええとその、なんかよく知らないんですが左目見えないんですよねえ……?」
うーんと考え込む。
自分でも良くわかっていない。
なんでか知らないが左目だけ回復しない。
別に左目が見えないからと言って、なにか支障があるわけでもないのだが。
エインにとって、片目であることは別に視野の妨げにならない。
自分ではまったく理解していないのだが。
■蘇芳 那由他 > 「…こういう時は一応自己紹介もするべきでしょうか?常世学園の1年生、蘇芳那由他といいます。ナユタで構いません。」
偶然会った見知らぬ誰か、それでも会って話して名前を交わすのも変では無いと思う。
あくまで、少年の中ではそう思うだけ、だから少女の方はどうだろうか?
こちらの質問に、どうやら何らかの事情で視力が無い状態…盲目だと察したのか緩く首肯する。
普通なら大変ですね、などと労いの言葉を投げ掛けるのかもしれない。
だが、少年は気遣いなのか空気が読めていないのか――理由が分かれば納得したように。
「…じゃあ、その服装の方がファッション…という感じですか?結構店内でも目立つ格好のようですが。」
矢張り空気が読めていないタイプなのか、今度は服装についてストレートに質問をしていく。
少年としては、見慣れない目立つ格好を彼女がしていたので純粋に疑問に思っただけで他意は無く。
店員が運んできたブラック珈琲のカップを受け取り、ベルギーチョコココアのカップを少女へとそっと差し出す。
■エイン >
「あ、エインです、どうぞよろしくお願いします」
へこへこと名乗る。
聞く人が聞けばモロバレの名前ではあるのだが。
ただ、あまりにも印象が違うので、名前が出てもむしろ堂々としすぎていて繋がりが薄いように思えるやつでもある。
「え、目立つんですかこれ……やっぱり?
うああもしかしたらそうじゃないかと思ってたんですよぉ……なんかみんなこっち見る気がするし」
身なりとしておかしいわけではないのだが、どちらかというとゲームキャラのような格好でもある。
更にやたら美人なだけあって、余計に目立っている。
目立たないようなというコンセプトはどこへいったのだろうか。
■蘇芳 那由他 > 「はい、こちらこそよろしくお願いしますエインさん。」
金髪や服装などからして、外国やいわゆる異世界の人なのかな…?と、ぼんやり思う。
勿論、少年は彼女の事を全く知らない文字通り、偶然会った赤の他人同士。
ただ、こうして出会った事もそのうち何か意味が生じる時が来るかもしれないし、こないかもしれない。
「…いえ、あくまで僕の印象といいますか。ただ、先程からエインさんに周囲からちらちらと視線が向けられていたようなので。
…えーと、一応補足しておきますとですね。…僕個人としては、エインさんには似合っていると思いますよ。」
単純なフォロー…と、見せ掛けて単なる率直な印象を語る。似合う/似合わないで判断するなら間違いなく似合う。
「…あと、多分エインさんの容姿が整っているから、服装と相俟って更に目立つのかな、と。」
真顔で恥ずかしげもなくそう更に補足する。記憶が無いせいか、若干天然でもあった。
■エイン >
「え。似合……ああいやあのその。ええと……ありがとうございます?」
何故か疑問形だった。
受け取ったココアを飲んで赤くなるのを誤魔化そうとするがごまかせていない。
とにかく、本人と研究班がお互いにあれこれドリームを詰め込んでしまったため、どう考えても容赦なく美人である。
目立たないように地味にする、という当初の予定は全くもって満たされていなかった。
しかも用意されていた衣装は、確実に都会の最先端で着るかコスプレに近かった。
似合っているという意味では、ボディに合わせて用意された衣装なので似合っていて当然なのだが。
■蘇芳 那由他 > 「…あ、はい…どういたしまして…?」
そう、受け答えする少年側も何故か疑問系になってしまっている。
顔を赤くしてココアを飲んでいる少女を見つつも、こちらも珈琲を口に運び
「…あっつ…。」
少々猫舌だったらしい。軽く冷ますように息を吹きかけてから改めて一口。
彼女の容姿や格好は、おそらく街中でも一定数の人目を惹くだろうなぁ、という少年の内心の感想。
それが、店内という限られた空間の中で人もそれなりに居るのだから、尚更に目立つだろう。
(…むしろ、平凡な容姿の僕の方が若干気まずい気もするなぁ。)
そんな少年の思いは兎も角、店内の男子の視線が何故かこちらに恨みがましく向けられているような。
傍から見れば、謎の超美少女とお茶をしている光景だから無理もあるまい。
■エイン >
「あ……」
余計なことにだけは気付く。
なぜって無意識なくせに優秀過ぎて、周囲の状況把握だけは高感度な故。
「も、もしかしてその……そのですよ? もしかして、のifで仮定ですよ?
かっぷる、とかに見えちゃったりとかなんとかしちゃったりなんかしてたりしてなかったりするんですでしょうか?」
言った、言ってしまった。
自分で言いながら真っ赤になりつつごまかすようにココアを飲んでごまかせていないまま。
周りから見たら、更にいろいろと初々しい感じにしか見えないのだった。
■蘇芳 那由他 > (…何だろう?周囲の空気の温度が下がった…ような…?)
ちらり、と視線を周囲に向ける。何人かの見知らぬ男客と目線が交錯する。
何となく『死ねリア充野郎』やら『何であんな凡人みたいな奴に』と言われているような気がする。
これは僕の自意識過剰かもしれないな、と反省しながら視線と意識を改めて少女に戻し。
「……いや、そんな事は無い……筈…なんですが…。」
記憶がなく、若干の天然もあり、感情の一部が欠落していても。
場の空気の変化にはそれなりに気付くし、少年もそこで今の状況を何となく察したか。
(…もしかして、周囲からは僕とエインさんはカップルに見られている…?そんな馬鹿な…。)
今さっき相席した初対面同士なのに、何でそんな勘違いをされなければならないのか。
少し落ち着こう、と熱い珈琲をまた口元に運ぶ。少年は別に感情全て欠落している訳では無い。
動揺もするし困惑もする。ただ、『恐れ知らず』の一点のみが人を外れているだけ。
「…まぁ、その…何と言いますか…多分、僕の考え違いでなければ、周囲からはそう見えていてもおかしくない…のかなぁ。」
自惚れではないだろうか?と、自問自答を己に課しながらも。
図らずもそれで余計に初々しい感じが助長されて、周囲の温度がまた下がったような。
■エイン >
単なる相席なのだし、相席で相席なのだが。
周囲から見れば、待ち合わせに見えたかもしれないわけで。
「あああすいません、なんか私みたいなのと変に思われるのは申し訳ないというかなんというか」
エインからすれば、変に目立つ格好の女が謎のカップルじみた状態に思われるのを申し訳ないという気持ちで一杯なのだが。
超絶美少女が真っ赤になって恥ずかしがりながら初々しい対応をしているようにしか見えなかった。
本人にもちろん自覚はない。
■蘇芳 那由他 > 「……?いえ、僕はエインさんと知り合えて普通に嬉しいですし変とも思いませんが。
…僕、理由は分からないんですが、昔の記憶が綺麗さっぱり無いので…友達も話し相手も殆ど居ませんし。
なので、今さっき知り合ったばかりではありますが、エインさんが気に病む事は無いですよ。
むしろ、僕の見た目がコレなのでこっちが申し訳ないです。」
己の服装や顔を指差して。学生服姿に、黒髪黒目で特に特徴も無い容貌。
肌がやや色白である事を除けば、そこらの普通の男子と然程変わりは無いだろう。
「…重ねて言いますが、エインさんの容姿や格好が変とは僕は思いません。」
相手が一方的に申し訳なく佇んでいる様子は気分がよろしくない。
なので、敢えて言葉を重ねてしっかりと念押しをしておく。
”貴女は変ではない”と。
少年も少年で、中々に恥ずかしい台詞を述べているのだが、こちらも自覚は無い。
■エイン >
「え、と、その、なんだか申し訳ないことを言わせてしまった感じで?」
記憶がないとか友達いないぼっちとか見た目が平凡だとか色々と申し訳ないことを言わせている気分しかない。
いやまあ自分も記憶が無いのだが、それを言うと色々不味いかもなのでとりあえずそこはスルー。
「あとこう、なんかフォローまでしていただいて、ありがたいというか」
周囲から目立ってしまっているのはその通りなので。
悪目立ちしている以上、申し訳無さのがどうしても先に立つ。
いやこう、人類最高の叡智をつぎ込んで美少女をつくるなどしたもんだから当然目立って当たり前なのだが。
前のエインヘリヤルならわかっただろうが、今のエインにはその辺の差異というか機微は、微妙によくわかっていなかった。
だいたい、女子感覚だと、美形の感覚は自分ではなかなかわからないのだ。
■蘇芳 那由他 > 「――いえ、全然。記憶が無いのはしょうがないですし。」
しょうがない、と綺麗サッパリとは行かないが割り切りはもうそこは出来ている。
失われたものを幾ら求めても手元に戻らないのなら、切り替えて前を向くべきだろう。
…そもそも、ぼっちだとか容姿が平凡というのも別に間違いではない事実なのだし。
「…いや、フォローといいますか…変に注目されるのはエインさん嫌だと思いますから。」
何となくそういう空気は察した…まぁ、目立ちたくないのは自分も同じだから。
そんな二人の目立ちたくない方針とは裏腹に、周囲は会話があまり聞こえないのを良い事に勘違いしたままな気がするが。
「…むしろ、エインさんの容姿だと、街中とか出たらナンパとか後を断たない気が…。」
目立ちたくない、と少女が思っていてもその容姿と服装がそれを許さないだろう。
本人の希望とは真逆の事態、というのも皮肉ではあるが。
■エイン >
「ナンパ……?」
は?
言われて、なんとなく驚いた顔をする。
いやいやそれはない、流石にそれはないでしょう、と思う。
少なくとも、整ってはいても、いくらなんでもそこまでではないと思うし。
実際は、ナンパなどがないのは、むしろ容姿が良すぎて逆に声をかけづらい状態になっていただけであって。
そして今のこのやり取りが。
周りから見たぶんには、告白なり何なりされて慌てているかなんかしているようにも見えたりだとかなんとか。
■蘇芳 那由他 > 「……?」
ん?と、内心で引っ掛かる。驚いた彼女の表情からして、もしかしてナンパされた経験が無い?
僕みたいなのでも間違いなく美少女と断言出来る容姿なのに?と、思っていたがふと気付いた。
(…あ、もしかして…『高嶺の花』みたいな感じ、なのかな)
つまり、容姿が整い過ぎていて、本人はそういうつもりじゃなくても周りが声を掛けづらいという。
相応に度胸と思い切りがなければ、ただのナンパ目的程度の男では敷居が高過ぎるのかもしれない。
そして、本人達の意思を差し置いて周囲の勘違いは加速しているという図式。
「まぁ、そこは兎も角。僕はエインさんと知り合えて良かったです。
友達どころか知り合いも殆ど居ないので…僕の昔の事を知ってる人も一人も見付かりませんし。」
別にぼっちが好きな訳ではないし、知人が増えたのは素直に嬉しい。
事実、先程まで茫洋とした無表情ではあったが、その表情は薄めではあるが微笑んでいて。
■エイン >
少なくとも。
今のエインはおろか、エインヘリヤルの頃であってもナンパというものを受けたことはなかった。
もっともエインヘリヤルの場合、物理的にそんなものを許すような雰囲気でもなかっただけなのだが。
「あ、いえこちらこそ。私みたいなのと話し相手になってもらって、ありがたいといいますか」
しどろもどろに答える様は、告白に対してまず友達から始めましょう的にも見えるかもしれない。
見た目とは裏腹に、エインの自己評価はかなり低い。
そもそも、別段自己主張そのものがなく、遠慮がちで合わせがち。
しかも、外見設定も適当に盛ったら、更に盛られてしまっただけでもある。
どちらかと言えば、ほぼバニラの人格設定のため、メイドロボやその辺の感覚に近い。
しかも優秀とは言えやや旧式のAIが最新鋭の機体に放り込まれたことで、どうしていいか機能を持て余している面もある。
なにより、表層人格がいくつかの基本動作をうまく把握できていないため、色々取り戻すにはまだだいぶ時間がかかる。
とは言え、少女の表情はよく色々と変わるし、みていて飽きないのは確かだった。
■蘇芳 那由他 > 「…エインさん、私”みたいな”と言いますけど、ちょっと自分を下げすぎでは…。」
初対面の美少女に大変失礼だとは分かっているし、自分が彼女の事をどうこう言うのは間違いだが。
流石に、ちょっとだけ気になったのか、やんわりとそう口にしてみるけれど。
そして、周囲からは何やらホッとしたような空気を感じる。よく分からない。
彼女の外見や表情の変化も、精巧な上に自然体だ。故に彼女がアンドロイドとは勿論気付かない少年。
むしろ、おそらくは触れても気付かないレベルであろうくらい。
おまけに、彼女の謎の…少年からすればそう見える…自己評価の低さ。
少年も自分を凡人と割り切っているから、多少なり似てはいるけれど。
思い出したように、珈琲の残りに口を付けて一息。少なくとも――
(エインさん、表情の変化が多彩で見ていてなんか飽きないっていうのかなぁ…)
茫洋とした無表情が常の少年からすれば、それはとても新鮮に見えたりもする。
ふと周囲の気配に視線を向ければ、何か生暖かい視線やら女性客からの『頑張れ』的なジェスチャーが…
(…いや、どういう事なんだろう?もしかして、また変な勘違いをされていないかな?)
あー…と、一度天井を見上げてから思案。視線をゆっくりと彼女に戻して。
「……エインさん、提案なんですが。そろそろお店を一度出るのはどうでしょう?」
別に一緒に出る必要はないだろう。むしろ、それでまた変な憶測や勘違いが加速する。
が、そこまでは流石に男女の機微に疎い彼の気が回るはずもなかった。
そして、軽く彼女を手招きして耳打ち、とまでは行かないが若干顔を寄せて小声で。
「…えぇと、多分僕ら…カップルか告白して玉砕したように見られている空気がしますので。」
■エイン >
「下げてるつもりはないのですがこう、最近はなにかと他人のお世話になりまくりでして……」
それはもう、怪我(損傷だが理解していない)の修復から立場の安堵まで、完全に周囲の世話になりまくりである。
自己評価の低さは、理由なく申し訳ないくらいの厚遇を受けてるせいでもある。
特に、何の理由もわからないまま、どうも正体を知られると色々マズイことになりそうなワケで。
その辺を考えると、本来、奉仕される側ではなく、人間に都合よく思考し奉仕する側としてのナチュラルな基礎人格としては、恐縮せざるをえないという部分も大きく作用していた。
「あー、そうですね、ちょうど飲み物もなくなっ……えええええ?」
カップルはともかく、玉砕とかどうしてそうなった。
ごまかせていないないがごまかそうとするとごまかせた気になるためのココアはすでに無くなっていた。
■蘇芳 那由他 > 「…なら、エインさんに余裕が出来たら、出来る範囲で誰かの助けやお世話をすればいいのかと思いますよ。」
自己評価の低さを責める気は無い。ただちょっと気になった故の指摘で。
だから、そんな助言をしてみるが…初対面の女の子に上から目線ぽくて、少し反省だ。
彼女の正体を知らないから、そういう気質の人なんだろうという少年の解釈。
勿論、仮に知る時が来ても大して態度や見方が変わる、といった事も無いだろう。
「…いや、僕らの会話までは聞こえて無いみたいですし、表情や態度から勘違いしたんじゃないかな、と。」
意外と周りを見ているのか、そんな推測を半ば勘もありながらそう告げてみつつ。
驚きの少女に、まぁまぁと宥めつつ伝票片手に立ち上がろうと。
「それじゃあ、行きましょうか…何か、長居すると更に変な解釈されそうですし。」
と、肩を竦めるような仕草をして微苦笑を浮かべてからお勘定を済ませに行こうと。
■エイン >
「あああもうホンっトすいませんありがとうございます、なんだか余計なご迷惑やお気遣い頂いたようで……」
自分みたいなの相手に色々と世話焼いてもらって申し訳ないことしきり。
優しい助言まで頂いてありがたいやらなんやら感謝感激雨あられ。
眼帯が強めなせいで、イメージからすると、とてもそんなキャラではないように思えるのかもだが。
エインは非常に最近の一般女子的な方向であった。
平たくいえばどこにでもいる普通。
ただ、外見や特殊な過去と能力のせいで、それを許さないのが、かえってギャップになってしまっているのだが。
ついでに言うなら、新しいボディの動作は、無意識にそういった視覚的効果を誘発しやすい仕様である。
無駄に人類の叡智を詰め込まれているため、そういった視覚行動学的な部分での性能が無駄に高かった。
「あ、お会計はこっちが持ちますっ!」
そして、伝票を取ろうとして手が触れ合うのだった。
ナチュラルに青春が弾ける高性能になっているとも言う。
■蘇芳 那由他 > 「あ、いえいえいえ…僕としては、誰かと話せて気晴らしにもなりますし。」
ぼっち故の悲しい現実。ともあれ、彼女がもうちょっと自分に自信を持てるようになれればいいな、と思いつつ。
ちなみに、口には出していないし態度にもなるべく出していないが。
当然ながら、彼女は格好と容姿の相乗効果で超美少女。少年も動揺が無い訳ではない。
ただ、表情の変化にややや乏しいのと、あまり取り乱さないから落ち着いているように見えるだけ。
(…多分、エインさんが控えめな性格だったりするから普通に話しやすいんだろうなぁ。)
眼帯やら服装で、どちらかといえば強気や高貴のイメージもあるが。
肝心の中身が控えめな性格という『ギャップ』。戸惑う人は案外多そうだ。
つまり、人類の叡智と無駄――革新的技術は非常に優れているという事。
…なんていう事は、勿論彼は知らないし、少女自身も知らないのだろう。
「え?いや、自分の分は自分で――…あ。」
思わず手が触れ合ってしまい、流石にちょっとだけ顔を赤くして戸惑う。
周囲の男子からそろそろ殺気が漏れてきそうなので、一先ずここは彼女の言葉に甘える事に。
伝票は彼女に預けつつ「と、とりあえず行きましょうか?」と、若干の動揺を声に出ていた。
■エイン >
「あ……い、一応、経費で落とせるらしいので……!」
一瞬お互いの時間が止まりつつ、それを隠すように会計に行く。
期せずして、色々な偶然と勝手な高性能のもとに、別方面でやたら能力を発揮しているのかもしれない。
しれないのだが、もちろん本人にその自覚はない。
ないのだが。
外見からすれば高嶺の花みたいなタイプなのに、上から優しくされるのではなく、むしろ腰が低くフレンドリー。
それでいて、だからといって物怖じするでもなく、保護してあげたくなるくらいの妙な一生懸命さと天然。
などという悪魔合体を果たしていた。
「そ、そうですね……」
動揺を出されれば、同時に照れ恥じらいみたいなのを感じてしまいつつ、一緒に店を出る。
それがまたこう、周囲の視線を色々と想像させることになるのだが、本人はそれどころではなく。
■蘇芳 那由他 > 「……経費?お仕事か委員会関係、でしょうか?」
ん?と、疑問に思うがそれより店から出ないと、自分の命が危ない気がする。
そして、少女の超高性能とギャップと、周囲の勘違いで店の人達にはそういう仲だと勘違いが固定されそうだ。
少年はある意味で悪魔合体的な被害者?なのだが、彼自身にそのつもりは無い。
少なくとも、知り合えた事は裏表なく素直に嬉しいし、底は問題にもならないのだ。
――あの店の客たちの勘違いを正せなかったのはまぁ、しょうがない。
ともあれ、会計を手早く済ませて慌てて出て行くボーイ&ガールの構図。誤解は解けそうにない。
「さて、店も出ましたし…えーと。」
このまま別れてお互い帰るのが妥当だろうか、と考えつつも少し名残惜しい気持ちはある。
かといって、あまりダラダラ付き合わせるのはただの我儘だろう。
「――エインさん、折角ですし、ちょっとだけ歩きながら雑談でもして帰りましょうか?」
と、そんな提案をするのに少しだけ勇気を動員したのは黙っておこう。
あと、どうにも彼女が危なっかしいというか放っておけない…それが彼女の超高性能悪魔合体の効果だとしても。
「…あ、エインさん。一応僕の連絡先渡しておきます。相談とか愚痴聞きくらいは出来ますので何かあれば。」
と、連絡先を取り出したメモ帳にペンで書き込んで手渡そうと。
勿論、受け取るも遠慮するも彼女次第で少年は無理に渡すつもりは無い。
■エイン >
「はい、委員会関連です。ちょっとだけ得ですね」
エインがにこやかに微笑むだけで、周囲の誤解は加速していく。
現実は非情である。
「そうですね、せっかくですから雑談でも!」
などと元気よく答えつつ。
ちょっとでも明るい顔を見せると、それだけでどことなく嬉しい気分になれるかもしれない。
「連絡先……ですか? SNSとかはやってらっしゃいます?」
今のエインに、軽い気持ちで連絡先を交換すると危険が云々、などという概念はない。
基本的に常に全力でまっすぐであり、能く応えるのだから。
そもそも下心もない提案ともなれば、断る理由もない。
那由他のほうがSNSなどやっているのなら、その場で素直に交換に応じるだろう。
■蘇芳 那由他 > 「…成程。まぁ話せない事もあるでしょうから、あれこれは聞きませんが…。」
気にはなるが、そこはそれ。善美気はきちんとしており。
彼女の笑顔も相俟って、誤解は加速してもう解くのは諦めた方がいいレベルだろう。
彼女の明るい笑顔に釣られたか、こちらも小さく笑いながら。
SNSについては、一応やってますと頷いて。まぁ殆ど活用さていない気もするけれど。
ともあれ、その場で連絡先の交換を済ませれば、彼女の了承もあり二人で並んで歩き出そう。
――道中、店の連中以外にも誤解を招いたかどうかは、謎のままである。
ご案内:「カフェテラス「橘」」からエインさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から蘇芳 那由他さんが去りました。