2019/02/03 のログ
史乃上咬八 > 「…………そうしてやらねェとビビられンだよ。ツラも、怖ェから」

一言だけ、口調を崩して見せた。確かに顰め面でこんな口調では、相手の人格を解っていても怖いものはきっと怖いだろう。

筆記用具やノート類、相手のものは無事なのを確認して、少しだけ安堵したようだった。
……随分とチーズを掛けている。気持ちは分からなくもないが、見ている顔は少し真顔気味に。

「……ゆっきー、つのは、ちょい、恥ずいンで。勘弁してくれやせンか」
……相手は異性だ。あまり馴れ馴れしくも出来ない、という姿勢。
というか、先の一件もあり、距離を取るような話し方と、何時までもやや横斜めに逸れ気味の視線があった。

「……史乃上空真咬八(しのがみ そらざね かみや)。長ェッスから、まァ……あァ、適当に、呼んでくだせェ。かみやンってのは、ちょい恥ずい、ッスけど。
……概ね、あまり良い噂じゃねェでしょうが。そう受け取ってくれても、良いスよ。手ェ出した事は、多いンで」

織機雪兎 >  
くっく、少なくとも僕の前ではそうかしこまることはないよ。
かみやんが顔と見た目に反して結構純情で恥ずかしがり屋で優しくて誠実でちょっぴりスケベなただの男の子だって言うのはわかってるからさ。

(さっきのテーブルの下での反応と、戻ってきたときの表情を見ればそれはわかる。
 きっと見た目よりずっと普通の男の子なのだろう。
 パンツくらいサービスしてあげればよかったかな、なんて考える程度には、彼のことは怖くなくなっていた。)

僕が女性だからと言うのはあまり気にしなくて良いよ。
僕がそう呼ばれたいと言っているのだし、なによりちょっと怖めなかみやんが恥ずかしそうにゆっきーと僕を呼ぶのはちょっと見てみたい。
だからほら、ゆっきーって呼んでごらん。

(テーブルに肘をついて手の甲に顎を乗せ、片目を瞑る悪戯っ子な笑顔。
 完全に弄って楽しんでいることを隠しもしない表情だ。)

うん、そんな名前だった。
一応僕はこれでも風紀委員でね、しかもそれなりに真面目な風紀委員だ。
だからかみやんが殴った相手は殴られて当然ぐらいの悪いやつだってことはわかっているし、それで助けられた人もいるってことは知ってるよ。

史乃上咬八 > 「……初対面にそういう評価をする人は少ないと思いまスけど」

随分と自分への評価が変な方へ転がり出している。修正を図るべく、訂正の前にワンクッションを置いていた。
……そう思われるようなことをしていたわけではなく、当たり前の反応だけを示していただけだと。

「……普通、動揺しやせンかね。覗きかけたら。それに、俺は思う程の中身、してませンから」

――すっかり恐怖が抜けてくれていたようだと、差し出されていたピザの切れ端をつまむ。勉強しに来ていたことはやや忘れ気味に、相手の提案に、ぐしゃりと顔とピザを顰めた。

「………………ゆ、……っきい」
ゆっくりとしたドップラー効果気味に発音し、顔が横へそれていった。褐色の肌に朱が伺える。

――けれど、そんな様子を払拭するように、ドスの滲む声で、顔は逸したまま。

「――……それでも、手ェ出してンスから」

"危害がそこにあったなら、その行為が当たり前であってはならない。"
それだけを強く告げていた。

……店員が運んできた、自分の注文のカルボナーラが届けば、それをつまみ始めた。

織機雪兎 >  
そりゃあ道を歩いていていきなりスカートに頭を突っ込まれでもすれば動揺の一つや二つや三つや四つもするけれどもね。
君はそういうつもりじゃなかったんだろう。
大体人の中身なんてものは誰にもわかりゃしないよ。
それこそ、僕は君が思うほどの中身をしていないってことさ。

(別にパンツぐらい見られても、と言うわけではないが。
 それでも実際に見られたわけではないし、多少の恥ずかしさはあるけれど、逆に言えばその程度のことだ。
 ハンバーグを切って口へ運ぶ。)

んっふ。
ごめん聞いてなかった、もう一回。

(あまりの純情っぷりに思わず吹き出しかける。
 にっこり笑ってわんもあ。)

僕からすれば出せる手がある、って言うのは羨ましい限りだけどねぇ。

(ケンカも弱いし格闘技経験もない、ついでに運動神経もからっきし。
 そんな自分からすれば、出そうと思えば手が出せる彼のことは羨ましいと思う。)

なんなら風紀にでも入るといいんじゃないかな。
悪者に手を出して褒められる世界だし、なんならついでに僕とコンビを組んで守ってくれると嬉しい。

史乃上咬八 > 「…………あまり逞しく語られても、俺には、雪兎さンは一端の異性ッスから」

「恥ずい事は恥ずいスよ」と、横目だけがそちらを見た。


「……………………、ゆっきー」

重ねた、今度は俯き加減にだ。肘をついた片手が顔を抑えており、ついた肘はカルボナーラをカタカタと震わせる程に力んでいた。
「もう勘弁してくだせェ……」と、細く絞り出される程度に、中々堪えているようだった。


「…………風紀に眼ェつけられてンスから、風紀に入るのは難しいことでしょう。"覆水盆に返らず"、盆からあぶれた汚水の俺が、盆を持つ風紀員の手にァ、どうあったってなれやせンから」

俺には俺の相応しい場所もありやすよ。と、
……割と早いペースにカルボナーラを食べ終えていた。ピザもだ。
それなりのガツガツな食事ペースに対し、口調は終始穏やかに、威圧感は見た目ばかり。
ただただ"狗"のような、他に警戒を与えるまでもなく、相手を認めれば警戒もしない。
素直が伺える在り方はどう映ったものか。

織機雪兎 >  
まぁ、深くは気にしないことだよ。
少なくとも私にとってはそこまで気にしない事ではあるし。

(ハンバーグを一切れ食べて、再びカルボナーラに戻る。
 取り皿に取って、粉チーズをかけて、もふもふ。)

んっふふふ。
かみやんは素直で良い子だねぇ。

(年上を捕まえてこれである。
 堪えきれない、と言った様子で肩を震わせて。)

風紀も色々あるみたいでね、とにかく戦闘力の高い連中を揃えて犯罪者への抑止力にしよう、ってところもあるみたいなんだ。
風紀的に考えても、下手に野放しにしておくよりは首輪をつけておいた方が安心、ってこともあるかもしれないよ。
と言うか僕が不良なんかに襲われたら一瞬でボロ雑巾になるから、かみやんが風紀に入って是非僕をガッチリ守ってほしい。

(私利私欲丸出しである。
 そもそもモテるために風紀に入ったのだ。
 不良に乱暴されるために入ったのではないのだから、彼みたいな腕利きとコンビを組めたらしばらく安泰だと思う。)

史乃上咬八 > 「…………気にするしないの物差しは、人の数、異性の数だけ在りやすよ。一概に、雪兎さンみてェにいられるやつも、多くは無いでしょう」

空になった皿を横に退け、手拭きで口元を拭う。
……ちらりと見える犬歯。どうも口を閉じてから、唇を上から抑え顰め面をする。何か歯に挟まったのか。
手拭きを口元に当てたまま。

「……恐縮、ッス」
そう答えるのが恐らく無難と考えたらしい。評価は素直に受け止めつつ、やや流し気味に。
……玩具にされているのは自覚の上で、是非を問うこともなく。
逞しい異性もいるなと、細めた眼を向けた。

「…………俺を選ぶなら、雪兎さンが推薦してくだせェ。その方が、認めてもらえるンじゃないスかね」

俺個人じゃ、カチコミと思われやすから。と、席をゆっくりと立つ。濡れたノートは鞄にも入れられないと、鞄を肩に掛けてから、ノート、そして。

「……スカウトってなら、請けて構いませンから。手ェ回すのは、雪兎さンに任せやした。そン時は、雪兎さンの御身、隻腕にて護らせて頂きやす」

――伝票を持っていった、二人分。

「……では、失礼」

に、と犬歯を見せた笑み。挟まっていたものは取れたんだろう。皺のない顔は、怖い見た目さえなければ精悍な青年のそれ。
怖いという印象の抜けた後のやたら仁義に堅そうだった青年は、唖然とする店員に伝票と丁度の代金を置いていき、
――もう一度店員、そして貴女に会釈をして、店を出ていった。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から史乃上咬八さんが去りました。
織機雪兎 >  
普通の女の子なら、そうだろうね。
でも今日君が覗きそうになったのは僕だから、何も問題はない。

(結局のところ、彼がやらかした相手は自分なのだから。
 だから自分が問題ないなら何も問題はないのだ。)

いやこちらこそ。

(くっくっと笑いながら返礼。
 こういう純朴な青年をからかうのは楽しい。)

了解したよ。
新米風紀委員とは言え、僕はそこそこに真面目な風紀委員だから、もし何か言われてもねじ込んでおくよ。
何よりも僕の平穏のために。

(とにかくそれが大事だ。
 夜の巡廻とか怖くて仕方がない。)

は、へ?
――しまった、あんなイケメンが隣に居たら僕より彼の方に女の子が寄ってきちゃうじゃないか。

(ごく自然にこちらの伝票も持って行ってしまった。
 それを呆然と見送り、彼の姿が見えなくなった後、そんなことをぼやいてしまう。
 自分にとっては、それはとてもとても大事なことなのだ――。)

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から織機雪兎さんが去りました。