2020/10/04 のログ
エルザ > 「ふふ……」

文字を書き連ねていて、不意に笑いが溢れる。
ノートに書かれた文字を見てニンマリとした顔をした。

「随分と達筆な字を書けるようになった」

習字などの講座のお陰のような気もするが、この世界に住みはじめてそれなりの月日が流れたのだ、と自覚させられた気もした。
しかし、それはこの世界における自身を創り上げているが故の変化。
彼女は自身のそういう変化を楽しんでいる、ヒトらしく。

「……状況やこれまで経験としては、学園祭までに安全は確保されそう」

自画自賛をし終えて、改めて状況を再確認してそう結論を自分の中で出す。
ならば、後は現場の人を信じよう。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
芥子風 菖蒲 >  
「はぁ」

カランカラン。ファミレスの戸が開くと共に、疲れ切った溜息一つ。
つい先ほど仕事を終えて、運よく"程なくして帰れた"次第だ。
流石に衣服はさっと変えてもらったし、必要な手当ては済んだ。
じっとしているのは苦手だ。何よりも、お腹が空いた。
帰るついでに、寄った次第だ。

「……まだちょっと焦げ臭いかな。……ん」

自分の袖を嗅いで顔を顰める一方
ふと、視界の端に見えたにやけ面。
此の時間、人が少なければ余計に目立つ。
何してるんだろう、あの人。好奇心のままにふらりと、勇み足。

「ねぇ、何笑ってるの?あ、ついでに隣良い?」

少年の声が、訪ねる。
口元一文字の無表情。

エルザ > 自分の世界に浸っていた彼女は声をかけられるまでそちらに気づくこともなかったが、
声をかけられれば驚く様子もなく挨拶から始める。

「こんばんは、お隣は別にいいですよ」

そう応えては身振り手振りでどうぞ、と席を示す。
万年筆は手にしたまま、ややインクが飛びそうに成るが気づいて一度ノートに線を引く。

「そうですねー、何と言われると言葉に悩みますが、
 日々の私の成長を喜んでいたところ……かな」

ちょっと疑問形。
他人に問われると少しそうかな、と悩む。アレヤコレヤ。

「よければどうぞ、ここのご飯はハズレがないので」

と別に要らない補足情報を口にしながら、ジョークメニューが多い方のメニュー表を敢えて上にしてそちらの席の前に置く。

芥子風 菖蒲 >  
「ありがと」

許可されれば短くお礼と会釈。
それなりに礼儀は弁えている。
遠慮なく向かい側の席へと付けば、早速メニューを開いた。
すっかり腹ペコだ。とりあえず、何食べようかな。

「成長?もしかしてそれ、成長記録とか?」

メニュー目を滑らせながら、青空のような瞳がノートを一瞥した。
そう言えば、人によってはテスト勉強とかに使うらしいが
あれはその類ではないらしい。手に持った万年筆に、自然と目が行った。
煌びやかな装飾。何処となく高級感はあるけど、嫌味っぽい感じの煌めきじゃない。

「綺麗だね、それ。記念品?」

少年は実に表裏無く素直だ。

「うん。こういう時に何頼むか悩んじゃうけど、とりあえず……」

ポテトとドリンクバー。無難な学生セット。
特に深夜のポテトの背徳感は折り紙付き。

エルザ >  
若い子にしては素直、とか考えて一瞬斜め下を眺めるように視線を泳がせた。
――いや、私も若いし。

「コレ自体は、ちょっとした暗号みたいな情報かな。
 書いた字が私の成長ってところかな」

直接的な表記はされちゃいないが、元素記号や英語などに詳しければ気づくかも知れないアルファベットの羅列と補足情報のように書かれる日本語。
払う、止める、跳ねる。 それらがしっかりとされている文字は見ていて気持ちいいほどの綺麗さがある。

「そして、コイツに目をくれるとはいい目利きになれるよ。
 これは私がいた『世界』を生み出した神器――という設定にするとなんか有り難みがありそうでしょ?
 故郷のものではあるよ」

あー、やだやだ運動してるし若いから太らないって悪に手を染めるような注文。

「同じのも一つで~」

間髪入れずに彼の注文に追加一つ。

芥子風 菖蒲 >  
「暗号?なんだか、小難しい事言うんだね。アンタ。
 オレにはよくわかんないけど……アンタ、字が下手だったの?」

生憎必要最低限の学力しか持っていない少年。
外国の文字、アルファベットの羅列を見ても珍紛漢紛。
暗号と言われれば素直に頷く位には理解不能。
だが、それはそれとしていわれると綺麗な文字だった。
自分よりも万倍綺麗だ。

「綺麗だね、確かに」

素直に感心した。
実に読みやすく、見やすい。

「さぁ、ありがたみとかよくわかんないし、綺麗なものは綺麗だと思ったから。
 それに、神器って言っても、オレにはただのペンにしか見えないよ。世界でも書き出せるの?」

抑揚抑え気味な声音は歯に衣着せぬ物言いだ。
何よりユーモアのセンスには少々欠けるようだ。
相変わらず眉一つ動かさずに、不思議そうに尋ねた。

「後オレ、ステーキ一つ。分厚い奴」

ファミレスの定番、ステーキ。
夜だろうと容赦なく油を食える若者の特権。
先んじてやってきた程よい塩加減の二人分のフライドポテトを手に取り、エルザの方を見やる青。
何処となく、此処の一つじゃない綺麗な見た目だな、と思った。

エルザ >  
「公共の場では、一応、建前的に機密情報としておくべき時には
 なんらかしらの暗号っぽくしてないとイケない内容っていうのもあるのよ」

それをカッコイイと思ってしまうのも妙に捻ったように使うのも俗にいう厨二病と言われる悟りを開かねば不治の病。
カッコイイ/厨二病は綺麗な字からも得られる、彼女はソレに気づいてしまった哀れな無自覚の患者だ。
故に、褒められればしたり顔で、でしょーと笑う。

「ペンは剣よりも時に強し、とか昔の人は言ってたらしいから多分、書き出させるよ?
 契約書に署名も出来るし、書類仕事も一筆すればことごとくを消失出来る――これは神の御業……
 悪徳商法の宣伝文句みたい?」

自分で言っておきながら、どうなんだろうと首を傾げた。
特注品には違いない一品ではあるが、この世界じゃ『大したモノ』じゃない。

とそんなところに、だ。
信じられない言葉が聞こえた。

――『後オレ、ステーキ一つ。分厚い奴』

「    」

語彙消失、思わずこの世界で知った汚い罵倒言葉が幾つか漏れそうになった。
音と口を動かさなかった自分を褒めたくなる自制心だった。
涼し気な瞳でこっちを見る相手に――野郎、やろうっていうのか?!と驚きに固唾を呑んでから、口角を上げた。

「フライドポテト、美味しいねー」

現実、を 逃避する。
人には人の適切な食事量!だよ……と。

芥子風 菖蒲 >  
「そういうもんか。オレにはよくわかんないな。
 わざわざ小難しくして、伝わるの?」

結局そう言うのは伝わらないと意味ないんじゃないだろうか。
割と少年は効率厨かつ肉体派。THE・脳筋。
ちゃんと褒めはするけど疑問もすぐ口にするタイプ。

「剣よりも強いんだ。便利なんだね、それ」

言葉のままありのままに呑み込んでしまった。
即ち是、手中に収まる暗器に等しく凶器也。
……壮絶な勘違い。万年筆の事を何だと思っているんだ、コイツ。

さて、そうこうもさもさとポテトを口に運ぶ、運ぶ。
食べるスピードは速い。腹ペコ効果もある。
もそもそとやや食べ方には意地汚さみが見える。

「ん、美味しい」

それには同意だ。
こくこくと頷く一方で、ドン!と少年の前に現れたのは、分厚いお肉。
鉄板の上で音を立てて油が跳ねる。安っぽい奴じゃなくて、雑に厚い。
ファミレスにあるまじき肉塊の存在。しかも、丁寧にサイコロカットだ。
鉄板で焦げる香ばしいソースの香りが肉の存在感を際立て、湯気香る。

「いい匂い。いただきま……」

一切れフォークに刺して、口に運ぼうとした最中
何か言いたげな金色。……理解したぞ……!

「食べる?」

ずぃっと差し出される肉の誘惑────!

エルザ >  
「これは自分のためのメモみたいなものだからね、
 誰かに伝える必要もないの」

ふふーん、と笑い器用に箸で掴んだフライドポテトを振りながら語る。

常用外漢字を多用して、生み出される漢字のみの必殺技名なのに読み方はクリムゾンなんちゃらだったりと英単語の組み合わせだったりドイツ語、フランス語だったりするアレでないだけマシではあるが、いつか彼女は卒業すべき黒歴史は日々進化中。
閑話休題。

なんか納得したような様を見て、

「ま、強いのは社会という枠組みの中……ってそういう話は面倒だからいっか。
 私のペンは、世界の破壊者ってことにしておこう」

真面目に語ろうとして一瞬でやる気が消失した。
何故か、彼の前に肉が来たからだ。

知っているか、食後でも美味そうなモノが来るとちょっと涎が出る。

「た、食べないよ!」

思わず、強めに否定してしまった。
心にフレンズ落ちつこう私、と内心で動揺する思考を抑えようとする。
ちらりとテーブルを見ればフライドポテトがまだあるのが確認できる。

――いける手応えを感じた。

芥子風 菖蒲 >  
「……それ、要するに見られたら恥ずかしいって事?」

自分にしか読めないならつまり後ろめたい事でもあるんだろうか。
勿論なーんにもわかってない。"なんとなく"、即ち勘。
今は眠れるブラックヒストリーもいつの日か開かれる時が来るのだろう……。

「世界の破壊者、か……」

綺麗な何とかには、棘があるらしい。
煌びやかな万年筆を一瞥すると、薄ら口元が緩んだ。

「いいね、それ」

畢竟少年は少年。
かっこいいの大好き。

「そう?でも、涎出てるよ」

それはそれとして、肉は未だ引っ込めない。
何故って?食べたそうに見えるから(菖蒲視点)
揺らすことなく突きつけられた肉に滴る油。
焼け目の色付きもさることながら、絶妙な赤身部分が食欲を沸かせて来る。
その腸に抱えたケモノなフレンズを刺激する。食え・・・食え・・・!

「オレのはいっぱいあるし、いいよ少し位。遠慮しなくても」

無垢な善意が更に後押ししてくる────!

エルザ >  
「……」

恥ずかしい……?

「普通にカッコイイんじゃないかな……?」

そう思い込んでるヒトに今、羞恥はない。
カッコイイだろ、と信奉する『教え』がそんな事があるわけがない――この日のこの解答をそう遠くない未来に悔いることになる。

彼女の琴線にも触れる取り敢えず強そうな単語に共感を得れば、
水を得た魚、散歩に行くと分かってはしゃぐ犬かコイツというテンションが一瞬見える。

「でしょー!
 君には才能がある―――」

指摘を受けた涎など言おうとした言葉を止めてでも拭ったので、ない。
淑女は涎など出さない。

「……」

鉄の意志……!
諦めない心……!
誰の意志にも従わぬ叛逆者……!


「よろしければ、二切れ下さい」

フライドポテトを器用に寄せてスペースを作った皿を持って、
淑女、懇願……!

――私、素直な自分が好き♥

恥じ知らぬ、鋼の心であった。

芥子風 菖蒲 >  
「はい、どうぞ」

綺麗に空いたスペースにトン、と乗せられる二切れの肉。
たった二切れなのにやたら厚い。デカい。説明不要。
油と肉汁が滴るデカ肉は最早冒涜、ファミレスに居ていい存在じゃない。
何より今は、深夜……!肉とポテト。若者の黄金コンビ。
この油油&油としたコンビはまさに、罪の味────!

「まぁ、オレに才能があるかは置いといて、カッコいいと思うよ」

実際少年センス、そのよくわかんない記号や単語。
無駄にブラックヒストリーから開かれた単語は心が躍る……!

「そう言えば、名前なんだっけ。オレは芥子風、芥子風 菖蒲。
 一応風紀委員やってる。アンタは何かしてる人?」

主に肉と病によって開かれる胸襟。
自己紹介の後に豪快に肉に噛り付いた。
この歯ごたえと肉汁の旨味。かなり罪。

「うま……」

エルザ >  
「……ありが、とう」

ズドンと来る、そんなパワー/圧力が肉にはある。
肉厚 x 匂い x 見た目 = 破壊力(我慢できない)。

女子は甘いものしか食べないなんて言うのは幻想である。
肉、好きだよ。 でも、誰かの前ならお洒落……したいじゃん、なんていう見栄と我慢によって幻想は真実であると思い込む純真無垢な男子の多いことである。

「はぁーうまっ」

冒涜的だ…!うますぎる…!
染み込んでくる…深夜に…!くっ…頬が溶けそう…!
本当にやりかねない……深夜の時間に……暴飲暴食だって……!

「……ん、ああそういえば、互いに名乗ってなかったわね」

一度、箸も置いて紙ナプキンで口周りを拭くと
役を作る。 雰囲気をお仕事モードにこの瞬間だけ切り替える。

「名乗るが遅れましたが、私は式典委員会所属のエルザ・エルザ―ドリィ・エルザス。
 風紀委員会には、十一月の学園祭では色々ろ警邏とか警戒巡回なんかを依頼させてもらうのでお世話になると思うわ。

 どうぞよしなに、芥子風君」

姿勢を正して、少し表情を堅めにして声の抑揚を平坦にするだけで先程までとは違うヒトのように化けた。


挨拶が済めば、箸を再び手にして肉汁を吸ったフライドポテトを口へと運ぶ…。

「犯罪的……!」

元に戻った。

芥子風 菖蒲 >  
「ん」

どういたしまして。お礼も良いけど肉が美味い。
もくもくと口へと運んでいく。腹が減ってるからしょうがないじゃん。男の子だもの。
でも、特に恋愛に興味ない系男子。まだ厨二の時期。
女子に幻想を抱くはずも無い、純一無雑って大事だね。
此処にエルザの幻想は守られた……。

「おいひいよほね、ほれ」

食いながらしゃべるな。
でも美味しいから仕方ない。ゴクン。

「……ん?」

不思議そうに小首を傾けた。

「今、なんかエルがいっぱい無かった?」

何だか名前×3みたいなのが羅列された気がする。
世の中、変わった名前もままあると言うけど、今の本当に名前なのか?

「式典委員会って、イベント考える人たち……だっけ?
 ああ、うん。その辺は大丈夫。警備とかそう言うののが、オレ楽だし」

余り聞き馴染みないが、話し程度には聞いている。
要するに、縁の下の力持ち、だったはず。

「結構頭使うの大変そうだよね。エルザ、頭いいんだね」

実に単純な思考だった。今の食い方に知性は感じないけど。
それ所か、なんかおいしそうだから真似をする。
鉄板に広がる肉汁にポテトをつけて、いざ実食。

「…………あ、美味い」

エルザ >  
「聞き間違いではなくってよ?」

んんっ、と喉の調子を整えるヒトみたいに喉を鳴らす。
肉の美味しさに口調がお仕事モードと被った。
自分を甘やかす犯罪はヒトの理性を溶かす。
そんな状態で品性を求めるなど絶望的だ。
ステイ、クール。

「……エルザ・エルザ―ドリィ・エルザス。
 世界からそう在れかし、と与えられた名前よ」

式典委員会、自他ともに認める生徒会主催イベントの雑用係とも言える存在だ。
たまーに生徒たちから自主的な催し物に協力したりする程度はあるが、
それは、大体上級生が楽しむために仕事を持っていったりすることが多い。
式典委員会は、生徒会または財団がこの島でなにか公になっている催し物をする際に動き回ってる。

―――適度にサボりながら。


「そうそう、見えないけど企画運営は大変なんだよ」

公式イベントは場所の用意をする手配とかそういう事前準備で、
後は全部生徒会とか上の人たちがやってくれるので式典委員会的に忙しいとは書類一枚来ても仕事中。
二個以上の企画がカレンダーに見えたらそれはもう多忙を極めているとか言っちゃう。
※ごく一部の式典委員会の構成員の感覚です。

「風紀委員会は大変だよねー、体張ることもあるだろうし」

などとサイコロステーキを更に分割して食べる、ここまで来てもまだ最低限の女子らしさは捨てない諦めの悪さ。

芥子風 菖蒲 >  
聞き間違いじゃなかった。本当にエルが三つ。

「ヘンな名前。けど、覚えやすい。特徴的?って言うのかな」

そこまで不思議と並んでれば、返って覚えやすいかもしれない。
そう、彼女の名前を呼ぶなら……。

「じゃぁ、エルだ」

それが呼びやすい。
世界からそう呼べと呼ばれている気がする。

「うん、そう言うのって大変だと思う。オレ、頭いい訳じゃないし
 大変でしょ?見えない所で色々頭使ってさ。何時もお疲れ様」

それこそ自分には不得手な事だ。
人間、自分に出来ない事は単純に"凄い"と思うものだ。
特に単純明快な少年の頭では、尚の事そう思える。
誰かを楽しませる、笑顔にする素敵な仕事。
歯に衣着せぬ故の、純粋に、交じりっ気もない労いの言葉。
コップに注がれていたオレンジジュースを口に含み、肉汁を洗い流す。

「そうかな?周りはどうか知らないけど、オレにはあってると思うよ。
 オレに出来るのは、それこそ体を張る事位だし。それで皆の安全が護れるなら十分だよ」

自虐でも謙遜でもなく、淡々と事実を述べる。
ある種の割り切り、達観とも呼べる物言い。
少年は、己の能力を弁えている。だからこそ、風紀にいる。
分割するエルザとは裏腹に、豪快に一切れ口に頬張った。

「へきふぁいふぇきほ?っへ、いうの?……ングッ、悪くないと思ってるよ。こういう生活」

エルザ >  
「そこは芥子風君の好きに呼べばいいよ」

呼び名に関しては特に気にした様子もなく、了承。
今彼女は、犯罪行為/食事に夢中である。

体重?
   ――知るか、そんなこと。

「もっと式典委員会を褒めていいんだよ。
 名前からしてちょっと大事そうでしょ、そういう委員会だからね」

式典、大きめの行事とか式、儀式とかそういう意味。
捉え方は人それぞれだが、
なんか式典って響きは強いカッコよさがある気が彼女はしている。

「へぇ、私は逆に無理かな……。
 彼女――私も名前と昔、映像で見た活躍しか知らないけど、
 風紀のラムレイさんとかみたいのは私には出来ないから。
 誰かのために身体を張れるって方が凄いよ」

いつだかに街頭モニタに映し出された風紀委員会所属のレイチェル・ラムレイが戦っている映像。
風紀委員会の人はああいう風に前線にいるのだとしたら――それ以前の個人的な問題はあるが、
自分には無理だと素直に感謝の意も込めて称賛する。

「君が自らその場所を選ぶのであれば、私は尊重するよ」

素晴らしいことだと、自分のことのように、
君が店内に入った時に見た笑みを再び浮かべてそう告げた。

「この世界の創作物では、よく出てくるからね――"未来は自分の手で切り開くもの"ってね」

片目を閉じて、如何にもっぽく言うが、
その手にする箸が肉を掴んでなければよかった。

芥子風 菖蒲 >  
「好きにする」

勿論、と頷いた。

「皆必要なんじゃないの?オレが決めたわけじゃないけど
 この学校が必要だから作ったんだから、どの委員会も大事なんだと思うけど」

小難しい事はよくわからない。
ただ、必要だからそこにある。
ものに単純な考え方だ。何かを贔屓する事は無い。
言葉のまま、評価のままだ。

「けど、目立たない分蔑ろにされてるのは嫌だよね。
 鉄道の人とか、結構頑張ってると思うけど……ん……」

「バレットタイムの人、だっけ?刑事課の人でしょ。知ってるよ、名前だけ」

実物を見たわけじゃない。
確か少し前に前線で活躍してた人と言う事は知ってる。
外部の人間にもその活躍は行き届いてるらしい。
伊達に二つ名が付いているわけではないらしい。
侮りこそしないが、大して憧れも興味も抱いてはいない素気ない態度だ。

「…………」

肉を頬張り、数回噛んで飲み込んだ。

「未来とか、正直そこまで先の事は考えた事は無いよ。
 今日は生きてる。けど、明日は死ぬかもしれない。
 オレは人の妄想に出てくるような英雄じゃないし、そんな大層な志も無いよ」

「けど、"自分で選んだ"。オレが体を張れば、誰かが楽できる」

「だったら、オレはそうするよ」

如何にも、とは言うけど夢を見れる程の情熱は無い。
冷たく冷めきった年に不相応の諦観的姿勢。
感情の起伏にも起因するが、決してそれは諦めたわけじゃない。
自分なりに考えて出した結論、割り切り。誰に何と言われても
畢竟、誰かの為になることだ。だったら、選択の余地は無い。
自分に出来る事で、誰かが楽になるならそれでいい。
それだけは昔から変わってない。

「ねぇ、所でさ」

芥子風 菖蒲 >  
「こんな時間にそんなに食べてていいの?」

─────余計な一言─────!

エルザ >  
後にエルザ・エルザ―ドリィ・エルザスはこう供述する。

いや、学年はタブン一緒なんですけど、
長年"常世"に居る身としては、なんかちょっと綺麗なこと言ったらカッコイイじゃんって。
年下から恵まれる肉は美味かったとか、
フライドポテトに肉汁とか油に油――つまり、ラブラブな訳で気分は良かったんですよね。

その時の私ってばきっと女神か何かだったと思っちゃったりしちゃって、
ってか、今思えば私不老なんでヒトっぽい生活はするんですけど成長とか変化ってないんですよね。
気にする必要って本来ない訳なんですよ。

でもね、キちゃうんですよ。
ソレまでの会話の流れとか今日出会ったばっかりとか関係なく。

なにがって、そりゃあ―――こんなんでも女性なんで、
《余計な一言:タブー》。


言われちゃあ、笑顔でそりゃあもう。
 

エルザ >  
「グーでなぐっていいかしら?」

もう殴る直前で許可なんて求めてなかった。
反省はしても、後悔はない。

――気持ちのダイエットは明日からします、と。

芥子風 菖蒲 >  
「なんで?」

素朴な疑問でお答えします。
反省も後悔もましてや悪気も無い。
殴る直前でも呑気に目をパチクリ。
純一無雑、デリカシーは涅槃の向こう。無防備────!

エルザ >  
最適化された師範代の見本技と言われても納得可能な
構えから放たれるまでの挙動がなかったようにも見える正拳突き。
無防備な眉間を襲う拳だが、挙動、速度は完璧ではあるが威力は見た目通りの威力だ。

しかして、人体の急所、まともに入ったなら威力はなくとも危ういかも知れない。

「たった一つの簡単なアンサーだ。

 ――お前は、私を怒らせた」

芥子風 菖蒲 > 「うっ」

恐ろしく速い正拳突き。俺でも見逃しちゃうね。
まともに受けた頭部が大きくのけ反り、脳内が一発娯楽へ招待。
上下左右に脳<セカイ>が揺れる。
朧車級の一発に意識も涅槃へ真っ逆さま。
ぐわんぐわん揺れる意識の中、少年は思う。

「……式典委員会……怖っ……」

がくっ。

エルザ >  
がっくりと逝った彼を見て、勝利の美酒に酔う。

「支払いは、私が持つか……」

伝票を二つ持って、店員に渡しつつ言う。

「連れは死ぬほど疲れてるから、
 起こさないでやってくれ」

その時の微笑みは同性でもちょっとキュンと来るものだったという。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」からエルザさんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から芥子風 菖蒲さんが去りました。