2021/05/28 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 ロビー」にアンジェさんが現れました。
アンジェ > 「……ここまで雨が長続きするとは、やはりここは異世界なのだな……」

ロビーの窓際に置かれた椅子に腰掛け、憂鬱な表情で降り注ぐ雨を眺める学生がいた。
赤茶色の髪を気を紛らわすように指で弄びながら、彼女は窓の向こうを仰ぎ見る。

「雨だけならまだいいが、それに妖精の類まで来るとは…」

そう言って彼女は目の前のテーブルに置かれたそれを悲しそうに見つめた。
そこに置かれていたのは商店街で評判の菓子店で買った箱詰めシュークリーム3個、その残骸。
帰り道に雨に釣られてやってきた妖精たちの悪戯に惑わされ、迷ったあげく転んで菓子を潰してしまったのだ。

「せっかくの菓子がこれでは、なぁ…」

潰れてカスタードクリームがはみ出たそれを前に、勇猛果敢な騎士は一人落ち込んでいた。

ご案内:「常世寮/女子寮 ロビー」にセレネさんが現れました。
セレネ > この時期は憂鬱だ。
月光浴もままならないお陰で魔力の回復もできない。
外に出かけようにも服が濡れるのは嫌だし、髪もきちんと決まらないのが更に拍車をかけている。

しかし買い物には行かなければならない。
食堂での食生活では流石に料理の腕も鈍ってしまいそうだから
バッグと傘を持っていざ買い物に、と意気込んだは良いものの。

「…やっぱり嫌だなぁ。」

思わず本音が洩れた。
せめてもう少し雨脚が収まるまで待とうかしら、と思っていた所。
ロビーの窓際の椅子に座っている人影が視界の端に映った。

乱れのない制服に右腕の籠手、そして女性にしてはかなり大きな身体。
すぐに誰だかピンときた。

「お久し振りです、アンジェさん。
……覚えていらっしゃいますか?」

彼女の元へと歩いて行きながら、挨拶を一つかけてみよう。

アンジェ > 空を覆う雲の色ほどに落ち込んだ彼女の耳に、聞き覚えのある声が届く。
声の主が持つ艶やかな白髪は銀の輝きにも似て、その蒼い瞳はどこまでも透き通った色をしている。
潰れてしまったシュークリームがするりと頭から抜けていき、赤茶色の髪を持つ女性は静かに振り向いた。

「……セレネ、か?」

数少ない見知った顔との再会に、思わず彼女の顔はほころんだ。
すぐさま立ちあがり、挨拶を返していく。

「久しぶりだ!あれから私も色々学んだが、やはり君が最初に教えてくれたことが一番嬉しかったよ」

手を取ってぎゅっと握手したかと思うと、ポケットから取り出した携帯端末の画面を見せる。
そこにあるのは、学園内のSNSで紹介されている『今週のベスト菓子TOP10!』という記事。

「おかげで人気の菓子を買えたんだが……あぁ…」

テーブルに置かれた、無残に潰れたシュークリームに振り向いて彼女は再び思い出してしまう。
もしセレネが聞くなら、彼女は事情を最初から最後まで丁寧に説明するだろう。

セレネ > 己に気付いた彼女は少しの間の後、名を呼んでくれた。
あぁ良かった、と安堵しては己の顔も綻ぶだろう。

「覚えててくれたようで何よりです。
あら、随分と扱い方もマスターしたようですね。教えた甲斐がありました。」

立ち上がった彼女を見上げながら再会の握手を交わす。
そして見せてくれた端末には、お菓子のランキング記事。
出会った頃と比べてかなり扱いにも慣れたようだし、この世界にも慣れたのだろう、と思いを馳せていれば
落ち込んだ声を上げる相手と共、
蒼を数度瞬かせて意気消沈してしまっている理由であるシュークリームに視線を落とす。

「これは…見事に潰れてしまってますね…。
何故こんな事に?」

しっかりしている彼女なら、繊細な物が入っている箱を雑に扱う事はしないだろうし。
何か理由があっての事かと考えると一から十まで丁寧に事情を説明してくれる彼女に相槌を打ちながらしっかりと耳を傾けて。

「…もう一度買いに行く、にしてもこの雨ですしお値段も張りますから難しいですよね。」

一つではなく三つとなると、猶更。