2020/08/04 のログ
ご案内:「ジェルヴェーズの部屋」にジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエさんが現れました。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「…………」
うーん、と首をひねっているジェルヴェーズ。
その手には、常世学園で観測されている異能の一覧を記した紙がある。
「色々とあるが……はてさて、戦闘に応用が利きやすいものが多く見えるのは、学生という多感で影響を受けやすい立場に依るものなのか偶然なのか」
ぱら、と資料を捲りつつ、しかしそれらの異能にはほとんど目を向けない。
一部でぴた、ぴたと視線が止まるも、首を傾げるのみ。
「サイコメトリー……ううん、これはあくまで記録視か?霊体の実体化……エーテルをマテリアライズする理論に応用できそうだが、根底の問題は解決しないな……。死霊の軍勢を影から呼び出す能力……面白いが、どうにも怪しくもある。可能性はあるが……」
もっと詳細なデータが欲しいところだ、とボヤきながら、何度も首をひねり、メモ書きを増やしていく。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「巫女……霊媒師か。当たってみる価値はあるかな。そういえば、イタコという霊媒師がいるのだったか。そちらも当たれたらいいが」
言いながら、候補となる異能に印をつけ、いくつかの見解をメモしていく。
「しかし、んんー……アプローチが難しいな。そもそも、研究に使いたいから異能を見せてくれ、と言われて頷く人間がどれだけいるか」
とはいえ、目的のためには、なんとしても異能者の研究をする必要がある。
そのために、この学園にわざわざ来たのだから。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「一足飛びに行ければいいが……そううまくはいかないだろうな」
ぱさ、と資料を置いて嘆息。
異能というものは、カテゴリとしてはとにかく大きく大雑把だ。
だからこそ、通常の、体系だった『技術』としての超常では到達できない境地に、一足飛びで到達しているものもいくつかある。
言ってしまえば、魔術や錬金術などの『術』は学問であり。
そして、『異能』というものは一つの才能なのだ。
尋常の道では至れぬ頂に一代で飛ぶことすらある異能。その可能性に賭けたわけだが……。
「雑多すぎる。おまけに、当然と言えば当然だが未解明部分が多すぎる。全く、想定しておくべきだったな」
固有性が高いがゆえに、研究深度がまちまちで、しかも一代で途絶えることが多いため深く掘り下げづらい。
異能学園というものの存在を知った時は、これで目的への手掛かりを得られるかもしれないと舞い上がったものだが、現実は甘くなかった。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > はぁ、ともう一つ溜息。
人生の目的と定めたものは、かも困難である……などと浸る余裕なんぞあるわけがない。
老境の果てに至っても遅いのだ。自分が若く、まだ時間のあるうちに到達しなくては、意味がない。
「――しかし、ひどい教師もいたものだな。教えると言いつつ、本心では研究のことばかり考えているとは」
とはいえ、錬金術師と言うのは大抵そういうものだ。
なまじ『位階』なんてものがあるから、弟子の研究すら盗んで自分の研究を進めようとする術師もいると聞く。
――わからないでもない。位階はどうでもいいが、もし自分の目的に合致する成果を挙げている弟子が自分にいたとして、その成果の簒奪を堪えれるかどうか。
まあ、弟子なんていないわけだが。
「弟子、か」
弟子。そういうと自身の下位互換に感じられるが、弟子と言えど一人の人間であり、術師である。
つまり、別の視点を持つ存在。研究を進めるには、助かる存在なのかもしれない。
以前は、弟子に教える時間、というものがひたすらに面倒くさく思え、取ろうとも思えなかったが……。
「案外楽しいんだよな、教えるの」
先日の講義を思い出す。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 物を教え、それに生徒が反応し、理解を示す。
あれはなかなかに楽しかった。きっと、彼ら彼女らが術師として何かを為せば、自分も嬉しく思うのだろうと思う程度には。
「とってみるかー?しっかしなー……」
とはいえ、あれは単位を前提とした講義だ。
実際に、錬金術を本格的に学ぶとなれば、食いつく生徒はいるかどうか。
「うーん……考えても仕方ない、のかな」
言いつつ、くいっと置いておいた酒を呷る。
「……まっず」
これが楽しみで生きている、と言っていた友人の気が知れない。
気が知れないが、とりあえず飲み干すことにはする。
「…………いやまっず」
だめだこれ。口に合わない。こればかりは、きっと分かり合えないのだろう。まずいもん。
グラスを置いて、襲ってくる酔いに身を委ねる。
嗚呼……これはちょっといいかもしれない。ふわふわとして、あの世へでも行けそうな気がする。
そのために必要な過程がちょっと苦痛なのはいただけないが。
■ジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエ > 「はぁ……ふぁ」
溜息の後、欠伸。
飲み慣れてないからか、この程度でも眠くなってきた。
それにあらがう気も起きず、ベッドにぽてんと横になる。
「……いつか。いつか、必ず。だから、待っててくれ……」
呟きながら、手を伸ばす。
『――待ってないぞ。そんなこと、私は望んでない』
そんな声が、聞こえた気がした。
言い返そうとする前に、意識が落ちる。
「(わたしは、のぞんでるんだ)」
そう、口には出しきれずに心の中で呟いて、意識は睡魔に呑まれていった。
ご案内:「ジェルヴェーズの部屋」からジェルヴェーズ・ジスレーヌ・アルヴィエさんが去りました。