2020/07/13 のログ
ご案内:「浜辺」にエコーさんが現れました。
■エコー > 「うーみーだー!」
ドローンが一基、浜辺を飛び回っている。その気になれば海に飛び込み込もうとする衝動を必死に抑え、水上を浮遊するにとどまる『彼女』は悠々と飛び回っている。モニターに映し出されたエコーの姿は夏気分真っ最中である。水に浸かる事が出来ないからと、せめて水着姿で気分を味わおうと精一杯の水着姿ではしゃぎまわっている。
■エコー > 「ホログラフィックを海に投影できれば私の姿も泳いでる風に演出出来るかな~~でもむつかしいよねっ。常に動き回る壁を相手にテクスチャを貼るの面倒臭いしっ。
ドローンをいっぱい持ち出さないといけないし、予算が足りなくなるもん!」
それではあまりに周囲が煩くなってしまう。現状このモニターにいる己でさえ煩いということはさておき。
水面ギリギリを超高速で動き回りながら90度にした機体でプロペラに海水を当ててチキンレースなぞをしている。
■エコー > 「あ……」
縦軸にして高速移動をやりすぎた。みんなは絶対真似しないようにしよう。
鳥のように滑空しながら翼で水を跳ね上げて水浴びするような体勢で飛び回っていたが、水を叩きつけた勢いで翼が反動で回転し、ドローンがぐるぐると回転し始めた。
「あ~れ~~???」
二、三度水に叩きつけられプロペラ部分が着水する度に激しい水しぶきが巻き起こる。何度か回転しながら海面を弾け飛び、熱した鉄板の上で身悶える人のように規則的にパシャ…パシャ…と機体が飛んでいる。
というかもはや制御が効かず暴走していた。
「せかいがまわるぅ~~~~???」
ご案内:「浜辺」にスピネルさんが現れました。
■スピネル > 勝利の余韻に浸るべく、夜のスラム街を抜け出したスピネル。
既にチンピラ達は先ほどの一件で大人しく建物に籠っており、折角呼び出したスケルトンナイトの戦馬の後ろに跨り
夜の島を駆け巡った。
「なんだあれは。」
飛行する機械の類をあまり見たことのないスピネルは仰天する。
スラムではドローンのような高級機材が飛び回ることは無く、こんなものまでこっちの世界ではあるのかと感心していた。
だが、どうやら様子がおかしい。
海水に叩きつけられ、不規則に飛ぶさまは機械に疎いスピネルでも何かあったのかと察せられた。
スピネルはスケルトンナイトに指示を出すと、浅瀬迄馬を進ませる。
包帯を巻いた右手でナイトの背中に抱き着いたまま、左手だけで飛び回る機械をキャッチしようと試みる。
■エコー > 夜の海に輝くアラートを知らせる赤と青のネオン。旅客機によく灯るサインは次第に回転数を高めてこのまま水没するかなぁと呑気に思ったのは一瞬。
「きゃー! ぶつかる!? 折れる!?」
いよいよもって己の機体が相手と衝突事故を起こしてしまうのかと思った。
嗚呼、相手の戦馬って自動車保険と生命保険入ってるんだろうか。己は入っていなかったから云千万支払うのかなあと絶望した。
この危険運転が終わったら、ちゃんと保険に入るんだ。走馬燈の如きエコーのバックアップ領域が流れたのもつかの間。
「あら……?」
滅茶苦茶な動きで着水とバウンドを繰り返していたドローンは彼の手によって無事にキャッチされ、その動きはプロペラの回転と共に次第に収まった。
「あ、ああ。どこの誰とも知らないけどありがとう。このまま溺れるところだった!」
キャッチした機械の背面にあるモニターから、水着姿の少女のアバターがスピネルに謝り倒す光景が見えることだろう。
■スピネル > 回転するプロペラ部分は上手く避け、胴体部分だけをキャッチする。
今日は流石に掌を切られるのは御免だとばかりに。
「フハハハハ、我の名はスピネル。
誰ぞや知らぬが危ないとこ……なに!?」
女性らしき声に対し、いつもの高笑いをするものの、突如止まってしまう。
キャッチした機械にはなんだかよく分からない映像を映し出す部分が付いていて。
何故か水着姿の女性がこちらに謝っているのだ。
「お、お主! そこの中に居るのか?
いや、これは映像! 映像だな!?」
眼を丸くし、自己紹介も済んでないうちからまくしたてる。
馬が浜辺迄辿り着き、静止した所で右手の指でモニター部分を突いてみる。
魔力を感じないのに映像が映っているとはどういうことだ?
キカイだとは分かっていてもスピネルの頭では理解が追い付かなかった。
■エコー > 彼の手に収まったドローンは小さな画面越しに『おお』だなんて素っ頓狂な声を上げた。顎に指を当てながら考える仕草。
「広義的には映像で間違ってないかも。
私はこのドローン――機械の中に住んでいる電子生命体:エコーでーっす。
キミは見ない顔だけど~~情報学は受けてる? 私、情報技術の先生なんだ~学園のモニターで見た事もない?」
溌剌として明瞭な声で友達感覚で喋る女の声と姿を映し出した機械は、見慣れない妙齢の包帯の男子にはてと首を傾げた。
現在オフの格好真っ最中だが、これでも常世学園の先生である。先生の証である教員免許をびしっと見せびらかしながら得意げな顔をする。
相手は不法入島者なのだけど。
「ともあれスピネル君! 君は私の命の恩人。10万もする機体を救ってくれた恩人だよぉ~。 何か御礼をしてあげないとっ。
ね、ね、ね。スピネル君は何か欲しいものとかある? 危ない所を助けて貰ったお礼にさ~?」
■スピネル > 映像の中の女性は色々と動き回る。
どういう仕組かわからないが、こちらの姿が見えているようだ。
スピネルはなんで動くんだ?とでも言いたげにモニターを凝視している。
「デンシセイメイタイだと? 機械の中に住んでいるのか。
情報学だの言われても我は知らんぞ。我は学園の生徒ではないからな。」
モニター越しに教員免許を見せられると、実物を見るのは初めてだったのでしげしげと覗いている。
謎の機械やデンシの教員と、スピネルにとっては頭を金づちで殴られたかのような衝撃だった。
とにかく、直接モニターの中に居るわけではないのだろうと思ったので、指で触れることは止めた。
「急に言われてもな…。」
不法入島者であり、最近ではスラムの王を目指さんとしているスピネルに取ってはこの申し出には即答できなかった。
ここに来て直ぐの頃なら迷わず学生証をくれと言う所だったが、今となってはせっかく作った新生スピネル護衛団のメンバーを見捨てることは出来ない。
それに10万が大金であることはスラムで暮らしているうちに理解してきたが、なんでも要求して良いような金額でもないことも分かっている。
「そうだな、我が学園の図書館を出入りできるよう取り計らえるか?」
■エコー > 相手の考えなどつゆ知らず。教師を自称する女はわたわたと動き回っている。
小道具を引っ張り出したり画面のあらゆる方角から顔を出したりと実にシュールでギャグチックな動きが目立つ。
「あ、そうなんだ~、生徒じゃないんだね。親御さんの勧めで体験入島した子なのかなぁ」
などとのんきな事を言う始末。相手の見た目が15歳前後であることも相まって、気高きヴァンパイアなどと思いもよらぬとばかりに平和ボケした回答をする。世界に革命がおこったと錯覚しそうな彼女の在り方を見たスピネルに反して、どこまでも通常通りに接する。
触ろうとしたらしたらで指紋で汚れて見えなくなると怒った結末があっただろうか。
「んっん~~図書館かぁ。
……え、学生じゃないんだよねぇキミ。私の権限でそっちに入れるようにするってなると~~セキニンモンダイとかがあるしぃ、コーテツされたりサセンされたりするしぃ~~」
悩まし気に頭を抱えてから、古き良き電球のマークが彼女の頭にポップアップされた。画面に映る情報は割と自由らしい。
「じゃあちょっとズルいけどこの図書券を上げます! 商店街の本を買えるようになるチケット! 学院への立ち入りは出来ないけど、これで好きな本をどこでも買えるようになるから。
……ごめんそれで許して、まじで。ワイロとかじゃあないから!ほんのお気持ち、ココロヅケ!」
内緒にしてね~。という言葉と共にドローンのサイドがぱかっと開く。
バネ状のロボットアームが数万円分の図書カードを持ってスピネルへと差し出された。賄賂ではない。
■スピネル > 魔術的な映像では流石にここまで小道具が出てくるのは無かったので。
少年はエコーの目まぐるしい動きをポカンと眺めていた。
「何を言っておる。 転移荒野に突然呼び出されたわ。」
自分の事を見た目通りの少年だと思っているようなので、口をとがらせた。
結局、指で触れる前にエコーが怒ったので直接触れることは無かった。
この辺りは見た目通りの子供そのままである。
「なんだ、学園の教師だからと言ってなんでも許されるわけではないのか。
今度は光ったぞ!」
更迭だの左遷だのは元の世界でもよく聞いたことなので理解できた。
なので無理強いするでもなくうんうんと頷いていたら、突如頭の上が光るエコー。
電球を頭の上に載せるとはどういうことだと首を傾げた。
「おお!? 何やら不思議なカードが出てきたな。
しかしこんな薄いカードが数万円分の価値を持っているのか。
こっちの世界は進んでいるな。」
機械部分から突然金券が出てきたので、スピネルは驚きと同時にカードを受け取る。
図書カードをまともに使える店となると学生通りの方になるだろうか。
「今度は貰い過ぎではないのか?
黙っておくのは構わんが、お主の懐が痛むだろう。」