2020/07/26 のログ
ご案内:「【イベント】海水浴場 浜辺」に修世 光奈さんが現れました。
■修世 光奈 > とある日の昼間。
太陽が燦燦と照りつける中、海水浴場の入り口で待つ姿が一つ
「……本当に来るかなあ…、一応約束はしたけど…まあ、来なければ来ないで普通に遊べばいっか」
端末をぽちぽちと弄りながら誰かを待っている光奈だ。
手提げかばんを持って、入口の石段に座っている。
今日、水着を選んでもらったワルガキと一緒に海で遊ぶ約束をしているのだ。
連絡先を交換し、約束は取り付けたものの…本人の性格を抜きにしても風紀委員は忙しそうだ。
本当に来るかなあ、と期待半分、不安半分で待っている。
ご案内:「【イベント】海水浴場 浜辺」にキッドさんが現れました。
■キッド >
コツ、コツ。わざとらしい位大きな足音だ。
スニーカーの踵をアスファルトで鳴らす仰々しい歩き方。
光奈が待っているそこに、何時もの様に白い煙が漂い始めた。
臭いの無い、白い煙。
「イイ男は見つかったかい?プリンセス。まァ、俺以上に色男はいないだろうがね。」
約束通り、キッドはやってきた。
何時もと変わらない様に見えるが、ちゃんと鞄を持ってきている。
中身は勿論、今日遊ぶための準備だ。
「此れでも超特急で片付けたんだよ。ウチの上司が仕事ほっぽりだして飛び出すから、大変だったぜ?」
■修世 光奈 > こつこつ、と足音が聞こえてくれば。
その音に慣れてきた耳が反応する。
そちらに視線を向けて…
「…だーかーら!プリンセスはやめてってば。コーナ!
大体、待ち合わせ放っておいて男探しなんてしないから!」
相変わらずの軽口に最初からプチ怒りだ。
何度言っても直らないからもう諦め気味だが。
「ワルガキでも、やっぱりちゃんと仕事してるんだ…。…ほら、まあ、あれだよ、着替えてこよ。
更衣室の前で待ち合わせね」
ちゃんとカバンを持ってきているから遊ぶ気は持ってくれたんだと嬉しく思いながら。
風紀委員は上司も破天荒なのかと情報が更新される。
そして、浜辺に作られた更衣室を指して歩き出す。
男子と二人という状況は初めてではあるが…、軽口が多いからか緊張することもない。
入口で手を振って更衣室で着替えよう。
■キッド >
「"探し物"が好きみたいだからな。
彼氏の一人位作ってるようなもんじゃないか?」
男漁りする女性が昨今珍しいとは思わない。
最も、そういうタイプに見えないからこそ言っている。
相変わらず元気の良い声に口元はにやけ面。
わざとらしく、両手を広げて『お手上げ』ポーズを作ってやるほどのクソガキっぷりだ。
「まぁ、特に最近は"色々"とな。俺ァ興味なかったんだが
土壇場でレイチェル……先輩が飛び出しやがったんでな。
おかげで、俺が事務仕事やるハメになって大変だったぜ。」
『トゥルーバイツ』、『真理』を求める者達。
キッドの弾丸が裁くのは『犯罪者』だけだ。
『自殺志願者』を撃つ無駄弾は装填していない。
だからこそ、此の件には関わらず静観を決めていた。
と、思えば身内が飛び出しててんやわんやだ。
やれやれ、と溜息交じりに煙を吐きだした。
「これで、"忘れ物"を拾い損ねたらぶち抜いてやるつもりだったが……ま、使う必要もなかったって事さ。」
事も無く、今やこの一連の流れも収束に向かいつつある。
だから、ふ、と口元がニヤけた。
「だから、今日はサボってやった。」
やはり、クソガキはクソガキである。
そのまま軽く手を振れば、男性用の更衣室まで一直線だ。
■修世 光奈 > 「それは、好きだけど…いや、なんていうか、そういうのはちょっと探せないかなあ…」
カレシ探してます、なんて…欲しいと言えば欲しいが、恥ずかしい。
「色々?…結構大変なんだ…。まあ、よかった、ね?」
平和に…庶民として暮らす光奈としては。
事件についてのニュースは中々届かない。
ただ、軽口ばかりを叩く相手が…軽くでも大変だというのなら。
それは、大変だったのだろう。
気遣うように言ってから、歩き出す
「…後で怒られそうだけど…、いっか」
仕事が済んだからと言って、サボっていいわけでもないだろうが。
…逆に言えばサボってでも来てくれた、と解釈することができる。
それに気づき、また喜びを覚えながら更衣室へと。
ワルガキが見繕ってくれた水着を着用し、使わない荷物を預ける。
ちょっとした小物を…手提げかばんの中に入れていた小さなかばんに入れて。
少し時間がかかってしまったから、きっと着替えるのはクソガキより遅いだろう。
「―――――――……、あ、あーごめん。お待たせー
パラソルとか、借りよっか」
白色を基準としたカラーに、ワンポイントのハイビスカスが刺繍された水着を着て。
感想を求めるのは流石に恥ずかしいのか足早にレンタルショップへと向かおうとする。
■キッド >
ある意味当然と言うべきか、男の方が着替えるのは早い。
そりゃ脱いで海パンを着るだけだし、泳ぐこと前提ならつける装飾品も其処までない。
キッドも然り、早々に着替えて更衣室の前で光奈を待っていた。
夏のキッドのファッションと言えば、シンプルな黒い海パン。
相変わらず銀色の拳銃が悪目立ちするが、麦わら帽子を目深にかぶり
タオルを首にかけた"夏小僧"である。
但し、拳銃以外にも生傷が耐えない、筋骨隆々の体は海でも良く目立つ。
煙草を咥えたまま、白い煙を吐きだして数分後……。
「フ、女を行儀よく待つのもイイ男の秘訣さ。」
光奈の声が聞こえたら、笑みを浮かべて其方を向いた。
「……へェ……。」
見立て通り、と言うべきか。
うん、此れは良い。
思わずさりげなーーーく異能を使って景色をスローに捉えて網膜に焼き付けておくことにした。
「良く似合ってるぜ、プリンセス?それ位綺麗なのがよく映える。」
明るい白に、明るい雰囲気がよく合っている。
異能を解除し、軽く指先で鼻柱を抑えた。
おおちゃくしたから、ちょっと目が痛い。
「そう慌てなくてもいいさ。海も俺も、逃げやしないぜ?」
くつくつと喉を鳴らして笑いながら、光奈の後ろをついていく。
■修世 光奈 > 時間がかかったのもあるが予想通り先に男が待っていた。
少し申し訳なさそうにしながらも…海パンと合わない拳銃に細目になる
「…海に銃って…壊れちゃうんじゃ…、別にいいけど」
そんな疑問を口に出しつつ。
光奈も光奈で…やっぱり年下とは思えない…鍛えられ、傷ついた筋肉に少し目を奪われる。
逆に相手の異能も知らない彼女は…ことさらにじっくり見られていたことには気づいていない。
健康的な肌と、明るい水着は確かに光奈の魅力を増すものだろう。
ただ、ぷい、と視線を逸らし。
貸しパラソルのある海の家付近に歩き出そうとすれば褒められてしまい、ぐ、と唸りながら足を止める。
「……ばーか。別に、他に誘う相手が居なかっただけだし」
いつも忙しくしているため、仲のいい相手でも誘うことは躊躇われているようだ。
男子とも海に来たことはあるし、視線が気になるほど初心でもないが。
言い訳がましくなってしまうのは仕方がないか。
「すいません、パラソルとシート1つずつ…。ありがとうございます。…はい!持って!」
ただ、少し軽くなった足取りでパラソルとシートを借りて。
ぐいぐいと男に押し付けよう。
■キッド >
16歳の肉体には不釣り合いと言えばそうだ。
逆に言えば、彼の16年間、如何に過酷な人生だったかを表すものでもある。
だが、キッドがそんな事に鼻を掛ける事は無く、寧ろ得意げに笑ってみせた。
「フッフッフ……俺に酔ったか?」
相変わらずキザったらしい台詞をかましていく。
煙と一緒で、ふわふわと夏の日差しに消えていきそうな台詞だ。
「なぁに、コイツは"特別性"さ。今の技術力ってのは、大したもんだな?」
耐水耐熱、何れも基準値以上をクリアした特注品。
例え海水に一念浸かってようが問題無く使用できる平和の使者。
トントン、と指先で拳銃を叩いた後、己の顎に指を添えた。
「…………。」
うん、いい、すごくいい。
色々気取っているがそう、"まだ16歳"である。
水着の女の子に興味が無い訳ないだろう。
寧ろ興味津々に決まっている。
うん、凄い健康的でバッチシだし、此れはいいな。
なんで常世学園ってこういう美少女がフリーなんだろうか。
もしかして、俺以外の男は全員EDキメてるのか?(当社比)(風紀委員非公式調べ)
そんなアホみたいな事思いながら、言い訳がましい台詞に肩を竦めた。
とてもいじらしい。
「……そう言う事に、しておくさ。」
言葉の合間に煙を吐きだし、ニヤけ面を維持しておいた。
さて、煙草を咥えながらやってきたレンタルショップ。
思えば、こうやってまともで海に遊ぶのも久しぶりかもしれない。
へぇ、と思いながら適当に目移りしているのは年相応。
不意に押し付けられたパラソルとシートを零さないように抱き抱える。
「おっと……はいはい。」
こう言うのは男の役目だと弁えている。
さぁて、良い位置はないものか、と適当に浜辺に目線をやった。
"目の良さ"には自信がある。
「あそこなんてどうだい?丁度空いてる。」
指差した先は程よく更衣室と海に近い少し隅側の砂浜。
綺麗な砂粒でしっかり平地になっており、あの辺りに立てておけば泳ぐも帰るも気楽なものだろう。
■修世 光奈 > その傷の理由を知りたくはあったが。
その考えは軽口に塗りつぶされる。
「ほんとに、ばーか。逮捕されないでよ?もう…」
こんな時でも仕事道具を持ち込むのは。
熱心な風紀委員に思えるが…逆に誰かに咎められないかが心配ではある。
そして…相手にどう思われているかも察せない。
それはそうだ。光奈から見て見ればいつも通りのクソガキなのだから。
ただ…光奈もまた、同学年にも…部活の手伝いなどでも見ないほどの『実戦的』な筋肉をちらちらと見ている。
興味津々なのは光奈も同じだ。
「そうしておいて、っと。……おー、ほんとだ。
…じゃああそこに引いて、セバスチャン。私、プリンセスなんでしょ?」
ニヤケ面に応えながら…選んでくれた場所に向かい。
相手が…何度言ってもプリンセスだと自分を呼ぶなら…それを利用してやろうと。
ただ、人を使うのに全く慣れていないため結局は少し手伝うのだが。
「よし、と……、…あ、あー先に遊んできていいよ。私も日焼け止め塗ったらあとから行くし」
そうしてパラソルのタンクに海水を入れてきたり。
シートが風で飛ばないようにかばんを置いたりして拠点(?)が設置し終われば。
小さなカバンから日焼け止めを取り出してシートに座る。
肌を保護するための行動だが…流石に塗っているところを見られるのは恥ずかしいのか先に行って、と。
…まあ、このクソガキが従うかはわからないのだが。
■キッド >
「寧ろ、俺がしょっ引く側なんだがねェ。」
やれやれ、と肩を竦めた。
確かに今やサマーシーズン状態、拳銃はいつも以上に悪目立ちする。
それでも気にしない、気にするわけがない。
"ろくでなし"なのだから。
「誰がセバスだよ。ワガママプリンセスはモテないぜ?」
もしかして、年下だからって顎で使う事覚えられたのか?
まぁ、ともかく力仕事は男の仕事。
文句を足れながらピシッ、とシートを引いてドッ、と力強くパラソルを立てた。
うん、バッチシだ。荷物を重し代わりに中央に置けば、これで大丈夫だろう。
さて、後は適当に彼女のリクエストに……。
「……、……へェ。」
成る程。成る程。
そらそうだ。女の子はスキンケアとか大変だもんな。
日焼け止めくらい塗るわ。
……あの白い肌に?
「…………。」
キッドは大変目がいい。
異能を抜きにしても、"銃撃戦"を制するために徹底的に鍛え上げた。
全ては、己の正義の為にこなした苦行だ。
だから、世界が"良く見える"。
ハッキリ言おう。正直16歳に此の女性の水着姿は中々"クる"。
普通に考えて可愛い女の子の水着姿だぞ?
しかもなんか結構親し気に接してくれるし、さっきから一々なんなんだ、そのいじらしさ。
おまけに日焼け止めって。確か、来る前に塗るんじゃないのか?
然程女の日常に興味がある訳じゃないしわからん……。
そう。
キ ッ ド は 悶 々 と し て い る 。
「……アー……。」
まぁ、一人で行ってもいいんだが、海。
そう言うの柄じゃないし、かといって待つのもあれだから。
「俺が塗ってやろうか?」
欲望に従っていった────!
■修世 光奈 > まあ、海の人に何か言われなければそれでいいのだ。
結局、この海水浴場もまたこの島の一部なのだから、怒られなければいい。
「あはは。お返しお返し」
散々プリンセスと言われた仕返しができたかと。
笑みを浮かべ、少し手伝いながらも…大部分はセバスチャンにお願いした。
そして、日焼け止めを塗っていなかった…というより『塗り直す』のは理由がある。
1つは、風紀委員で忙しいであろう相手が来るかどうかわからなかったこと。
もう1つは…出る前に塗ってきたため、少々効果が不安だったことだ。
更衣室で塗ってきても良かったが、人を待たせるのには慣れていないため、後回しにしていた。
更に、光奈側は特にその行為については平気だ。
友人…男女問わずそれらが多く、まだそれほどライフワークに精力的でなかった一年次にはそんなグループで遊びに来たこともある。
…その時は友人女子がバリケードを張っていたことなど、彼女は忘れてはいるが。
更に更に。
偏見ともいうべきものだが光奈は自分にそんな目を引く魅力があるとは思っていない。
おしゃれもするし、体重やスキンケアには気を遣うけれど。
それでも女というよりは男友達的な感じで接されることの方が多かった。
ただ、それでも。
「は、はぁ!?ちょ、ちょっと、何言って…、へ、へんたい!!変態キッド!!」
一先ずは罵倒が飛んでくる。
座ったままもう!!とあっという間に赤くなった顔で怒る。
周囲からはなんだなんだ、と視線を集めそうだが。
「せ、背中とかは塗りにくいけど!それでも、その、塗ってやろうかって…
あ、わかった!またからかおうとしてるんでしょ!!その手には乗んないからね!
………ささ、っと塗ってやる……」
男子特有の欲望に従っているだけなのに深読みする光奈
どうせここで頷けばこちらが変態扱いされるのだ、などと勘違い。
謎の決意をして、ぷりぷり怒りながら自分の手に日焼け止めを垂らし始め。
どうして日焼け止めって、ああぬるぬるしているものが多いんでしょうか。
相手の体質も、異能も知らない光奈は。
それを丹念に自分の腕に、肩に…届く範囲に塗っていく。
からかわれたり、見られているのならもういっそさっさと塗ってやろうという考えだが…
■キッド >
「何ィ……!?誰が変態だ!!」
思わず声を張り上げたが、普通に考えて変態だよ。
確かに恋仲の男女とか、もっと親しい人間なら多分通じる。
通じる気がする。良くて二人は友達だ。
「大体、アンタがさっさとぬ、塗ってくりゃ済む話だろ!?」
逆ギレだ。逆ギレしたぞこの男。
齢16歳渾身の逆ギレ。
そら男だから少しくらい欲だしたくなるし
そういうのに素直なのは変態で違いないけど
やっぱ男として素直に認めたくないよな~~~!
ギリギリと奥歯を噛んで、麦わら帽子の奥で碧眼が睨みつける。
頬はほんのり赤い。
「そ、そうだよ。塗りにくいと思ってコッチは親切心で言って……ハァ?」
今、何て言った。塗ってやる?
思わず素っ頓狂な声が漏れた。
そして、光奈の手に日焼け止めが垂れた。
しっとりとしたぬめりを持った液体が、少女の柔肌に塗られていく。
光沢とでもいうのか、健康的は肌に塗られて日差しを妙に乱反射するのは如何にも煽情的で
さっと塗ると言った割にはそれこそ丹念に、丁寧に塗っていく。
普通の目ではないキッドには、それこそ丹念に"コマ送り"で見えるからそらもう効果倍増よ。
ちゃっかり異能使ってるよまた。どんだけ見たいんだ。
そりゃ、男なら見たいわ。
「…………。」
思わず、ゴクリ、と生唾を呑み込んでしまった。
口元を抑えて、わざとらしく麦わら帽子を目深にかぶった。
■修世 光奈 > 「キッドだよキッド!まったくもう。ホテルとか言ったり、朝までーとか言ったり…
まさか、あーんな岩場に連れ込んでヤラシーことしようとか思ってたわけじゃないよね!
そ・れ・と!塗ってきたけど、落ちてて焼けたらヤだから塗ってるの!!」
じとーーーっ、とした目が向けられる。
ちら、と見るのは…人目に付かなさそうな場所にある岩場だ。
逆切れするキッドに返事しながらも…意外と子供っぽいな、なんて少し怒りが和らぐ。
そして、日焼け止めを丹念に塗るのは当たり前だ。
漏れがあってはせっかくちょっと良い日焼け止めも台無し。
これもまた、異能を使っているとは当然気づかない。
どうせからかわれ続けるのなら、塗ってしまおうという考え。
それに従って、ぬりぬりぬりぬり。
水着で隠れている場所は別として、お腹や太もももしっかり塗っていく。
背中には…瓶からそれを垂らして、手をヨガのポーズのようにして塗る。
しかし、それでは…届いていない箇所もどうしても生まれてしまう
そういえば、こういう時も…友人がやってくれてたっけ。
「……あーもう。キッド!何やってるの。
一回!一回だけ!上から下に塗って!ここだけ変な焼け方しちゃうから!」
しばらくそうしてもだもだしていてたが。
背中に変な日焼け跡ができるくらいなら、恥を忍ぼう。
背中を向けて、少し怒鳴る。
プレイボーイ(仮)の癖に、何をしているのか。
まさか恥ずかしがっている訳でもないだろうと勘違いしたまま。
どうせ、またからかう種を考えているに決まっている、なんて思っている。
■キッド >
「アァ!?アレはァー……だな。
…ヘッ、アンタ程度には十分な言葉の綾に決まってンだろ!?」
要するにただの軽口冗談である。
そう、"ろくでなしキッド"を『演じる』上で重要な要素である。
ニヒルでハードボイルドなカウボーイ。
人に嫌われ、己の信じた道を行き、口の軽いろくでなし。
それが、『キッド』だ。
その裏側と言えばそう、"ただの16歳の少年"。
幾ら鍛え上げようと、幾ら煙ではぐらかそうと
人の本質までは変わらない。
そう、少年の本質は実際紳士であり、裁きの対象で無ければ…此れは刺激が強すぎる。
そらもう大人げない位怒鳴り声出すよ。
売り言葉に買い言葉って知ってるか?知らないんだろうなぁ。
「ブッ!?……じ、自分の体省みていいな!アンタの体なんて、誰が見るかよ!」
確かに何処となく平坦で子供っぽいが……"女性の魅力がないワケじゃない"。
事実、さっきからガン見してたのは何処のどいつなのやら。
岩場なんて言われて思わず一瞥し、何時ものニヤケ面で反論したが……。
「…………。」
……言われると意識してしまった────!
確かに此処は比較的海岸の隅。
あの岩場へ行こうと思えば多分人目につかずに行ける。
そして、その健康的な男の目を引く肉体。
脳裏に焼き付いた二つの光景に、頭のなかのもやもやが更に肥大化した。
まて、落ち着けキッド。クールに行こう。
お前は風紀委員『刑事課』
悪を裁く、孤高のガンマン。
飽く迄彼女とは良くて友達だ。
良くないぞ、彼女をそういう目で見るのは。
良くない、よくな────
\一回!一回だけ!上から下に塗って!/
「ブッ!?」
煙草噴き出した。
確実にイイ感じに言葉の弾丸が胸を貫いた。
聞き間違いか?いや、違う。背中向けてるし、日焼け止めもそこにある。
何?本当に塗るのか?え、触るの?女性の肌に?
あんまりよろしくないんじゃないかな。
でも、塗るって言ったのは自分だし、女の子を待たせるのも忍びない。
……やるしか、ない……!!
「ンンッ。」
軽く咳払いし、日焼け止めを己の手に垂らす。
ひんやりした感触が右手一杯に広がった。
「……アー……、……失礼。」
何時になくしおらしい声音で、背中へと手を伸ばした。
この目で見た彼女の動きを真似するようにゆったり、ジェル状のそれを引き延ばす様に塗っていく。
キッドの手は、とても堅く、"歪"だ。
それは、少年の手とは言えない。
何度も何度も何度も、脱臼と骨折を繰り返し、歪んで、膨れ上がってしまった"戦う者の手"だ。
そんな感触が、光奈の背中を行ったり来たり。
そう、"行ったり来たり"。
一回と言われたのすっかり忘れてるぞ!
頭の中半分テンパってるから、そらもう入念に、優しく、さながら愛撫のように背中をさすっていく。
■修世 光奈 > 「そーですかそーですよねー。変態だもんねー
風紀委員とかいいながら女の子といっぱいそういうことしてるんだよねー
それなら、私の身体なんてどうってことないもんねー?」
べー、と舌を出す光奈。
やはり印象は正しかった、という気持ちは強まることとなる。
軽薄だし、軽口ばかりだし、セクハラも言いまくる。
そんな相手が、実は初心などと、どう信じろというのか。
今、岩場を見ているのもきっと図星だったから慌てているだけなのだ。
よかったよかった。先に楔を打っておけば無理矢理に連れ込まれる可能性は低いだろう。
幸い目つぶし程度なら近くで光奈も異能を使えば大丈夫だろうし。
「何よ。さっさとしてよ」
それにしても、そうだとするならどうしてこんなに慌てるのだろう。
自分はさっさと遊んだり海の家で色々食べたいだけなのに。
後を向いたまま振り返り、急かす。
中々、台詞も扇情的だ(?)
そして、塗るのは幻覚でもなんでもなく本当だ。
実際、急かすように光奈の方が揺れている。
このまま待っていればもしかして、と光奈に疑問が生まれていただろうが。
幸いかな、キッドくんの覚悟が決まったようだ。
「……ん。」
背中に当たるのは、硬い感触。
自分の手とは全く違う…生物としての柔らかさはあるが非常に硬い石のような手。
ぬるぬるした感触の上からでも、伝わってくるそれに性の違いを感じながら。
それが、一度自分の背を撫でる。
ぴた、とした感触に声が漏れてしまったが、これで終わりだ。
と、思っていたが……
「―――――――……キッド―……?、ほんっとーーーーに怒るよ!?一回だけって言ったよね!!」
何度も何度も。
それこそ、肌を味わっているように撫でられると。
流石に羞恥が勝ってくる。
光奈は、ば、と振り返って、怒りの声をあげる。
ぷくーーーーと膨れた頬がその怒りの度合いを表しており、身体の前面を隠して。
「変態…。ホック外したりしてないよね…」
ぱし、と片手を伸ばして日焼け止めを奪い取ろうとした後。
背中に手を回して水着を確かめる。
完全にじとめだ!
■キッド >
「さっきからヘンタイヘンタイ連呼するのやめねェか???
位置が位置でも目立つだろうが!アンタの体だって十分綺麗だし可愛いに決まってるだろ!?」
とは言え喧騒も喧騒の海開き。
こんな所で男女がわーきゃー騒いでも
精々「痴話喧嘩してるなー」位で関の山だ。
ぐぬぬ、と珍しくムキになっているぞ。
だからなんかこう、本音が無意識に飛び出た。
男の子だからそりゃ、意識するよね、しょうがないね。
当人は一切言った事に気づかずに無心にぬりぬりしてるけど、しょうがないね。
そりゃもうぬりぬりしていた。
怒られるのもしょうがない。
「オォッ!?」
怒鳴り声に吃驚して……振り返った直前に"不運にも小指の先がホックに引っかかった"。
「い、いや、違……!?大体濡れって言ったのアンタだろ!!そもそも、勝手なんてわかるか!!」
男用の日焼け止めを雑に塗るタイプなので
女の子相手なら一回で事足りるか……いや、単純に忘れてただけなんだけどね!
ほんのり赤い頬のまま怒鳴り返した。
心臓のドクドクと高鳴りが止まらない。
ああ、クソ。普段ならこんなことないのにな、と内心吐き捨てた。
二人の間に、夏の涼風が通り抜ける。
────背中に手を回すのが遅ければ、水着が風に攫われるかもしれない!
■修世 光奈 > 「変態は変態でしょ!?って、へ?今なんて――――」
これがグループであればまた違っただろうけれど。
二人で来てしまったものだから、ただの痴話喧嘩だ。
次いで、聞こえた言葉に聞き返そうとしたけれど。
どうせ聞き間違いだろうと飲み込んだ。
そう、キッドはもっとせくしーで可愛い人といちゃこらしているに違いないのだ。
自分の身体をどうこうしたいと思うわけがない。
「まったく!油断もスキもない…。はぁ?なんでわかんないの!」
むむむ、と眉をしかめつつ。
まだ小指の先がホックに引っ掛かった程度では致命的な事態は起こらない。
なぜなら、光奈が怒って体を隠したことで…光奈自身の手によって水着の前面が抑えられているからだ。
しかし。
しかしだ。
ホックを確かめようとすれば当然、その手は後ろに回る。
更に。
海風というのは鉄などを錆させ、更に時折強く吹くこともある。
離岸流などと合わせて事故の原因となることもある。
そんな要素が合わされば、当然――――
はらり、ひらひら。
擬音にするなら、そんな擬音か。
キッドが選んだ…光奈に似合うバンドゥビキニが…まるで紙芝居のように風に攫われていく。
当然その下に何か来ているはずもなく。
まるでモデルのようなポーズのまま、その事態は起こる。
光奈が、その事態を把握する数秒。
初心なキッド君の目の前には
小さいながら確かなふくらみと、その頂点g
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
酷い叫びの直後、光奈の周囲に光が生まれ、カッ!!!!と強い光を放つ。
見とれていたなら、キッドの眼にダメージを与えてしまうかもしれないが。
当の光奈はそんなことを気にする余裕もない。
光で自分を包みながら、その場で上半身を折って胸を隠して。
――水着はひらひら、と…シートの近くに落ちた―――
■キッド >
「な、何……?……ア……。」
言われて漸く、自分の言ったことに気づいた。
見惚れていた。そりゃそうだよ、同年代位の女子位
同じ位の男子なんだから、興味がわかない方がどうかしてる。
大きい小さいとかじゃなくて、可愛い女子が隣にいればそうもなる。
気まずそうな唸り声を上げて、目を逸らそうとした刹那────。
はらり
彼女の水着が、宙を舞う。
「……は?」
舞い上がる水着。
当然、目につくのは彼女の胸部。
健康的な白い肌に、しっかりとした"女性"を主張するほんのりとしたふくらみ。
女性の生の胸が、其処にあ──……。
「ヌワーーーーーッ!!」
カッ!!フラッシュだ!!
キッドは目がいい。
おまけにコイツ、ちゃっかり異能使って目に焼き付けたから想像以上にダメージが入ったぞ!
それこそなんか目にレモン汁をねじ込まれたかのような強烈なダメージに
情けない悲鳴を上げてその場で蹲る事になった……!
■修世 光奈 > 興味云々は別として。
今光奈に起こっている事態は…疑問や怒りを吹き飛ばすものだった。
「なに!?なんなの!?これがキッドの異能なの!?
へんたい!へんたい!へんたい!はやく、はやく水着拾えバカ―!!!!」
光奈からしてみれば、急に水着が無くなった、とも思える。
相手の異能に不名誉な勘違いが付与されたがそれどころではない
光の球を纏わせて水着の代わりとする。
うずくまっていることなど関係なく大声をあげる。
「う、ぐ……見られた……絶対見られた………」
どれだけの時間、相手にダメージを与えるかわからない。
しかし、乙女の柔肌を見たからにはそれくらいはしてくれないと、と。
羞恥で悶えながら待っている。
■キッド >
「ォォォォ……!!」
文字通り目が焼けた。
ただでさえ、自滅しない様に
閃光玉の使い方だって結構考えて使ってるのに
クソ、この女よくもやりやがったな。
胸中悪態をつきながら、プルプルしていた。
女は怖い。暫く蹲りながら、軽く呼吸を整えて目を慣らしていく。おかえり世界。
「ッつゥー……!あのなァ!?コッチの異能は"目"なんだぞ!?
視界情報てんこ盛りな所に光なんかぶつけやがって、死ぬかと思ったぜ!?
危うく失明したらどうするんだ!?ったく……。」
実際非常に目が良くなるのは、その分視界情報が増えると言う事であり
こういった"刺激"は常人の何倍もダメージを受ける。
今回は運が良かった、と悪態をつきながら水着を拾いに行った。
……キッドはまだ気づいていない。
己の異能をバラしたことにより、『ガン見していた』可能性を水から暴露してしまった。
怒鳴り散らした後まだちょっと震える体で水着を拾い上げた。
とりあえず、体は問題なさそうだ。やれやれ。
溜息交じりにパラソルに戻り、無造作に差し出す。
「ホラよ……。」
■修世 光奈 > 「……………ばーか!、異能何か関係ない!
わ、わた、わたしの…う――――!!!そ、そりゃ、キッドには別にどうってことないだろーけどさー!」
茹った頭では怒鳴り返すことしかできない。
あの痴話喧嘩いい加減にしろよと思われているようだが、それもまた夏。
そして、一度得た勘違いは中々晴らせるものでもない。
「…………………」
そして、近いとはいえキッドが水着を拾いに行っている間。
少しずつ、ようやく落ち着いてくる。
なんで私が怒鳴られるの、とかそういった考えも浮かんできたが。
「……み、見られたのは…ヤ、だけど…。……ごめん。眼が異能なんて知らなかった」
まずは、謝ろう。
自分の異能は殺傷性は最低ランクだ。虫も殺せない。
けれど、そういった異能を持っているなら、致命的な攻撃になり得る。
異能は使い方次第だと、学園で教わっていたのに。
後向いてて、と言って…少し落ち込みながら、水着を付け直す。
付け終われば、申し訳なさそうな顔で相手に向き直る
まだ、ガン見されていたことには思い至っていないが。
まるで地雷の様に、種は撒かれた
■キッド >
受け取った所で、隣に座り込んだ。
気まずい空気が流れ始める。
まぁ、それもそうだ。女性にとってはデリケートな問題だ。
幾ら興味があったからって、そう何度も踏みにじっていいものでは無い。
……少しばかり、胸の動悸が早くなり始める。
別に高鳴ってるわけじゃない。いや、気恥ずかしさはあるけど、そうじゃない。
……でも、まぁ、今は"無い方がいいか"。
「……こっち、こそ、悪かった……。
悪かったって、ちょっとからかい過ぎた。」
何時もの軽口とは違い、少し歯切れの悪い不器用な言い方。
少なくとも彼女を辱めた以上、謝るのがスジと言うもの。
何時もの様に吐き出す"煙"も無いから、何時になく真摯に聞こえる。
表情もいつになく、真面目。
額に汗が滲み出てくる。
暑さのせいじゃない。
まだ、もう少しだけ……。
「……どうってことないなら、こんな動揺しないよ。
光奈"先輩"は元気で、明るくて……普通に女性として、魅力的だし、その……。」
「"綺麗"だったよ。」
それこそ本当に光の様に眩しかった。
とても綺麗だから、見惚れてしまった。
この目にずっと、焼き付けてしまった。
でも、失礼なのはそうだよな。
申し訳なさそうに、麦わら帽子を目深にかぶる。
……少し、呼吸が荒くなる。
もう少しだけ。本当に、もう少しだけ。
「……だから、ごめんなさい。悪い事しました。」
おずおずと、ちゃんと謝った。
それはいつもの軽口とも違う、"キッド"としてではない。
其処にいる"少年"として、真摯に、彼女に謝った。
ケジメだ。
「目は大丈夫。まだ少しクラクラするけどね。」
■修世 光奈 > てっきり、また軽口で流されると思っていた。
水着を受け取って付けていると、隣に座り込む気配。
つい、びく、としてしまうが…それよりも。
「え…?」
聞こえてきた言葉に意識を持っていかれる。
素直に謝った?
確かに、見られたのは恥ずかしいし謝ってほしいと思っていたところはあるが…
こんなにあっさり謝られるとは思っていなかった。
「え、えと、その…、え、ええぇ…?」
しかも、何故か苦しそうにする相手から出る言葉は。
魅力的、元気、明るい、そして"綺麗"…そんな褒め言葉
とても嘘とは思えない、声音だった。
急なことにどうしていいかわからずに…逆に光奈の方がわたわたしてしまっている。
どういう表情をしていいのか、わからない。
「いや、えっと……、だ、大丈夫、だよ、うん。私も悪かったし…」
隠すだけなら、自分の身体を抱くようにすればよかった。
けれど、より隠せるから、と異能を使ってしまった。
それによって危険があったこともまた確かだ。
「大丈夫ならよかった。…けど、急にどうしたの。な、なんか調子狂う…それとももしかして、そっちが素…?」
それはそれとして。
煙草を咥えていないという違いはあるが相手の態度が違いすぎる。
隣り合って座れば、横からじ、と相手を見つめよう。
すっかり、毒気を抜かれてしまった。
■キッド >
動悸がまた、激しくなる。
視界が、ぐらつく。
息が荒くなる。
青い海に、ぼんやりとした"二人分"の輪郭。
ただの、幻覚だ。自分の弱い精神が見せる、輪郭。
徐に荷物に手を突っ込み、震える指のまま、煙草を咥えた。
カチッ。ジッポライターの音が小さく成れば、また白い煙が漂い始める。
「─────…いいや、幻さ。」
何時も通り……よりは、何処となく静かな声音だった。
吐き出す煙が、海に見える幻覚を隠していく。
そう、光奈が見たはずの少年さえ、其処には居ない。
「だが、"嘘"じゃねェ……。」
言葉は全部、本物だ。
紛れもなく、目の前にいる少年が光奈に告げた本当。
ちょっとした、夏の暑さが見せた少年<げんし>なんだ。
そう、此の島にあの少年はいない。今、光奈の目の前にいるのは……。
「……フ、やっぱり俺に酔ったかい?プリンセス。」
ろくでなしの、クソガキだ。
「さて、そろそろ行こうぜ?時間はたっぷりあるんだ。
今日は、俺の時間をたっぷりやるよ。プリンセス?」
立ち上がり、手を差し伸べた。
もう動機もすっかり治まった。
幻は全て、何もかも"煙"が隠してくれた。
吐き出す言葉もまた、"煙"と一緒に浮ついて
■キッド > ──────消えていく。
■修世 光奈 > 「………。……海でタバコって」
聞きたいことがまたできた。
そうまでしてタバコを吸う意味。
一瞬で変わる相手の雰囲気。
もしかすると、という予想は立つが、それを聞く勇気も、今は無い。
「そ。嘘じゃないんだ。へーぇ」
ただ少しだけわかったことがある。
この男は。
軽薄な口を叩きながらも、その内は自分と同じ青少年なのだ。
決して、"大人"ではない。
そう、感じた。
だから軽口にも、もう戸惑わない。
「はいはい。セバスチャンこそ…私の魅力にやられてない?」
なら、軽口で返そう。
やっぱり少し恥ずかしくて、声が震えるけれど。
わかっているよ、と伝える為に。
嘘じゃないと言ってくれた。誤魔化さずに…一瞬見えた幻も、相手自身なのだと。
男が"どっち"でも私は楽しいと、態度で表そう。
「もちろん、いっぱい付き合ってもらうからね!
まずは―――…煙草を消さないために、おっきい浮き輪…乗れるヤツ!借りてこよ!」
後はもう野となれ山となれ。
ビニールボートとでも言うべき、アヒルを象った大きなものを借りてきて。
二人で膨らませて遊んだり、かき氷を食べたりと。
煙が白く漂う海を、二人で堪能しよう。
終わったら、胸の事を盾に、寮の近くまでボディーガードしてもらおうか。
軽薄に見える相手のことを良く知れた、良い日だと…後に彼女はこの日を振り返る。
ご案内:「【イベント】海水浴場 浜辺」からキッドさんが去りました。
ご案内:「【イベント】海水浴場 浜辺」から修世 光奈さんが去りました。
ご案内:「【イベント】海水浴場 浅瀬」に金剛 経太郎さんが現れました。
■金剛 経太郎 > 夏の日差しがいよいよ勢力を強めて来たので、金剛経太郎は意を決して海に来た。
海の家で借りた浮き輪と、海水浴場へ至る道中に買った新品の海パンをきっちりと装備して。
星型のサングラスまでちゃっかり身に着け、ギリギリ足が届く深さの浅瀬を浮き輪で漂う姿は、到底男子高校生には見えない。
「せめてまともに泳げさえすりゃあな……」
忌々しげに海面を睨んだりもするが、星型サングラスで威圧感は皆無。
人の多さに愚痴を零したりもするが、それでも海水浴満喫中だった。
■金剛 経太郎 > 「寮の奴も誘って来れば良かったかなー」
波に揺られながら、この海水浴場へ来る前の事を思い返してみる。
帰省に向かう寮生が慌ただしく準備しているなか、実家に帰る予定も無かった経太郎。
何故か居心地の悪さを感じて、誰にも告げずに黙って海水浴へ来たこと。
こうして一人で水面を漂ってみれば、やっぱり誰か誘えばよかったと、小さく後悔。
「ま、夏休みはまだまだ長いし、そのうちまた誰か誘ってみるか。」
何となく見上げた太陽は、サングラス越しでも日差しが目に沁みた。
ご案内:「【イベント】海水浴場 浅瀬」に柏木凛さんが現れました。
■柏木凛 > 海開きとなればそこでは求人があり、ライフセイバーの造園依頼に飛びつき海水浴場での仕事。
最初は楽なものだと思っていたがこれが思っていた以上に大変。
迷子や質の悪い利用客が居ておちおちとや済む事が出来ない。
今も酔っぱらって問題を起こしていた一団を制圧して。
「割にあわねー…海に来れたのはラッキーだけど……あん?」
人が多いし問題も多い、それだけで海に来た喜びも消えてしまい。
もう問題はないよなと見回すと浮き輪で浮かぶ少年を一人見つけ、また迷子かと思い近づいていき。
「おーい、迷子か?」
その少年が以前にあった少年と思わずに声をかけていく。
■金剛 経太郎 > 寮に残っている奴らにお土産でも買って帰らないとなー、などと考えて居たら。
(へ……迷子?どこに?)
まさか自分の事を言われてるなどと全く思わずに辺りを見回す。
この海水浴客の多さなら、そりゃ迷子の一人や二人出てもおかしくないなー、とかぼんやりと考えるが。
「……え?」
こちらへと近付いてくる姿に、一瞬呆気にとられる。
まさか迷子って自分の事か、と自身を指さしてみたり。
■柏木凛 > 声をかけると周囲を見回している浮き輪付きの少年。
それが親兄弟を探しているように見えて突き進む速度が上がり、やがて海に踏み込んでいき。
「お前だよ、ボウス。親とはぐれたのか?
けどな、俺が来たからもう大丈夫だぞ」
近付いていく途中、自身を指している少年にお前だと言うように頷き。
足首から腰まで海に浸かる事には少年の元にたどり着き、流されないようにと浮き輪を掴んで笑いかけて。
■金剛 経太郎 > 「えっ、いや、迷子じゃないし一人で来てるんだけど……」
誤解です、と言う様に両手を振って否定する。
そもそも迷子だったらまず浜に上がるのでは?と前提から疑いながらも、浮き輪を掴んだ女性に見覚えがあるのに気付いて。
「──て、もしかして、凛……お姉さん?」
以前会った時の様な奇抜な格好では無いので一瞬誰だか解らなかった。
しかし、男っぽい口調と長耳は、確かに以前歓楽街で会った柏木凛その人であると確信する。
■柏木凛 > 「一人で?お前みたいに小さいのが一人で海なんて来ねーだろ。
迷子になったのバレて叱られるのがそんなに嫌か?」
両手を振って否定をする少年を呆れた目で見つめ。
自分たちで目を離して迷子にして子供を叱る親かよと小さく呟き。
「…あん?なんで俺の名前って……経太郎か?」
小さな子供の知り合いは少なく、その中でお姉さんと呼ぶ知り合いは一人。
まさかと少年をじっと見れば、よく見ればあの時の少年に漸く気が付き。
「今度は海で迷子か?」
以前を思い出しそう告げてしまって。
■金剛 経太郎 > 「だから迷子じゃないってば。」
なるほど、向こうもこちらに気付いていなかったのか、と納得しつつ。
それでも迷子か確認してくることに苦笑を禁じ得なかった。
水着着て浮き輪乗ってサングラスまでして迷子になれるほどの迷子センスは持ち合わせていない。
「暑かったから海水浴に来たの。
そういうお姉さんは?海水浴?」
改めて凛の姿を見れば水着である。
自分と同じ目的なのかと考えて訊ねてみたり。
■柏木凛 > 「そう言う事にしておいてやる」
知り合いと判れば釣りあがっていた眉は下がり笑みを見せ。
歓楽街で寮の方角へと送った時を思い出せば迷子と考えても仕方なく。
しかし水着に浮き輪は見た目に会うのにサングラスは大人のマネかと見てしまう。
「まあ……暑いのは認める。俺もこの暑さに参ってたしな。
いんや、仕事でライフセイバーってやってるんだよ」
少年の視線の先には前回の服装ではなくオレンジ色のビキニの水着と海水濡れ肌に張り付くパーカー姿。
問いかけには仕事と首を振って否定し、そこでいい事を思いついたとう顔になり。
「経太郎、丁度いいから俺と一緒にいろ。それで仕事をしてるになる。
一個言う事を聞いてやるから頼むよ。」
ここで少年と別れて仕事に戻っても面倒ごとの嵐、それなら迷子の相手という名目で少年といる方が良いと考えそんな事を告げて。
■金剛 経太郎 > 「水着着てまで迷子になるわけないじゃん。」
前回歓楽街で迷子になった時は制服姿だったし、と不服そうに口を尖らせる。
しかし今回は徹底して海水浴モードだ。一分の狂いも無く海水浴が目的だ。
サングラスは……水着買ったらおまけでついてきたのだ。
「ライフセイバー……
また何でも屋さんのお仕事なんだね。お疲れ様。」
果たしてお休みはあるんだろうか、と思わなくもない経太郎だった。
まあ仕事熱心なのは感心するし、仕事を選ばないところも以前聞いた仕事に対するプライドから知っている。
見た目に反して真面目に仕事するんだなあ、と思いつつ。
「……え?それって僕をだしにしてサボろうってこと?
うーん、まあ良いけどさあ。本当に迷子とか溺れた人とか出たら仕事しなよ?」
前言撤回。全然真面目じゃなかった。
柏木の申し出に仕方ないなあ、と言いつつも丁度一人で退屈してたし話相手が出来るのは有り難く思って。
■柏木凛 > 「そこはあれだ。家族で泳いでて流されたのかってな。
今日だけでそれで二人保護してんだよ」
不服そうに口を尖らせる少年に、それだと思ったと悪びれなく告げて。
むしろ水着に浮き輪だからこそはぐれて流されたと思ったと。
「そうそう、何でも屋の俺だからな。よっぽど変なのでない限りは引き受けるんだよ」
仕事がある時は働き、無い時はずっと休みな何でも屋。
なので犯罪や変な方向な仕事以外は出来るだけ受けては働いている。
どんな仕事でも真面目にが心情ではあるが……。
「休憩だ休憩。もうな……酔っ払いの相手も悪ガキの相手も勘弁だって。
そりゃ勿論だ、そう言うのが出るまで頼むわ」
もうナンパや水着を引っ張ってくる奴の相手は御免だと疲れた息を吐く。
そして少年の言葉には判ってると笑みを見せて浮き輪を引っ張り少しだけ沖に移動をする。
如何にも仕事をしていますと見せる為に。
■金剛 経太郎 > 「家族が居たら寮に住んでないってばー。」
ついでに迷子になったら親を呼ぶ方が丸く収まるでしょ、と。
まあ学生でも寮生でもない柏木に居ても理解を得られるかは分からないが。
「でも、ライブセイバーって資格とか必要なんじゃないの?」
詳しくは知らないが、人命救助が仕事の内に入るとなるとそれなりな知識が必要なのではと首を傾げる。
彼女がやるのは人員整理などの雑務なのかもしれないけれども。
それでも事実こうして仕事をしているのだから、必要な条件はパスしているのだろうか。
「ふぅん……そういうことなら、付き合ってあげない事も無いけどさ。
ところで、パーカー着たままで大丈夫なの?」
ずぶ濡れになってるけど、と柏木が羽織ったままのパーカーを見つつ引っ張られていく。
着心地、悪くなったりしないのかなあ、なんてぼんやり考えて。
■柏木凛 > 「あー…確かにそうだよな、悪い。うっかりしてた」
確かに少年の言う通り、家族がいるなら寮には居ないと今更に気が付き。
悪い悪いと誤魔化すように笑って。
「いるらしいけどな。俺は馬鹿の鎮圧と迷子を捕まえることがメインなんだよ。
溺れた奴の救命は資格持ちに丸投げだ」
同じことを仕事の時に尋ねたが専門以外と言われたとあっさり。
お陰で資格持ちは高台の椅子に座り、代わりに走りまわらされると雑用をやらされていて。
「本当に助かる!これで面倒事とはおさらばだ。
あー、そうだな……脱いどくか」
ズボンではないので濡れても張り付く程度であまり支障はない。
だが万が一もあるかと少年の指摘にパーカーに手をかけて脱いでいく。
ただ……濡れたパーカーは思いのほか脱ぎにくく、少年の前で四苦八苦しながらどうにか脱ぎ水着だけになって。
■金剛 経太郎 > 「もー……べつに、いいけどさあ。」
謝られたところで何が変わるというわけでも無し。
取り敢えず迷子疑惑さえ払拭出来ればそれで良い。オールオッケーだ。
「ふーん、やっぱり。
ホント、大変だねえ何でも屋さんは。」
やっぱり使い走りさせられてるんだなあ、と頷く。
まあ、有資格者でもないのに人命救助は流石に責任の所在やら何やらでややこしくなるのだろうことは、経太郎にも想像がつく。
柏木を労いつつ、何処まで行くんだろうと辺りを見回して。
「まあ、雑用するよりはマシかもね……。
濡れてる服って脱ぎ辛い……よねえ。」
流石に目の前で脱がれると目のやり場に困る。
ましてや相手は下に水着を着ていて、肌の露出度も前回の比じゃないわけで。
■柏木凛 > 「本当に悪い、うっかりしてたよ」
次は勘違いしないから許せと本当にほんの少しだけ悪かったと顔に出しながら謝って。
「俺も良いのかって思うんだけど雇い主がいいって言うからな。
大変だけど好きでやってる仕事だしな」
結果的に使い走りではあるが、それで感謝する人がいるのなら悪くはなく。
後で責任問題は出るかもしれないがそれは雇い主に丸投げと決め、そこまで面倒が見切れるかという事もあり。
そうして少年を引っ張り周囲に人が少なく、戻ろうと思えば直ぐに戻れる場所、ただ立ち泳ぎでなければ足も付かない場所で止まり。
「雑用は良いんだ……盛った馬鹿の相手よりはな…。
経太郎が流された迷子かと思って慌てたんだよ…ったく。
ん、どうした?」
パーカーを脱いでしまえば浮き輪に掛けるようにして置き。
上半身も水着だけになれば楽で良いと身体を捻って動かし。
何か少年の気配が変われば何かあったのかと顔を覗き込むように見つめて。
■金剛 経太郎 > 「い、いいってば。分かって貰えたなら、それで。」
別に家族と離れて住んでいるというだけで、家族がいない訳では無い。
だから謝られても困るのだけど、そう説明するのも中々面倒だ。
だからもう気にしないで、と笑みを浮かべる。
「ホント、ご苦労様。
でもまあ、あんまり無理して倒れたりしないようにねー。暑いし。」
燦々と太陽が照りつけるビーチで、使い走りなんて経太郎にはとてもじゃないが出来そうにない。
体力も無いもやしなので、1時間もすれば倒れてる事だろう。
そういう意味では仕事だからと割り切って動ける柏木は凄いと素直に思うのだった。
「盛った?……んー、何の事か分かんないや。
あー、そっか。僕のせいかー……って、お姉さんが勝手に勘違いしただけだよね……?
えっ、いや……別に……。」
柏木が濡れたパーカーに苦戦してる間、間近で色々見せられたというだけで大したことでは無い。
顔が火照るのも日差しの所為に出来るし、サングラスで視線は悟られない。
こちらを覗きこんでくる柏木の視線から逃げる様に顔を逸らした。
■柏木凛 > 完全な勘違いに何度も謝ってしまうが少年の言葉にありがとな、と告げて。
よく考えれば異邦人の自分とは違い少年には家族はいる、何かの理由で別に暮らしているだけだと納得して。
「そう言ってくれるだけで癒されるわ。
倒れたら介抱してくれてもいいんだぞ」
こうして海に浸かっているので大丈夫だが、炎天下を走り回ればいくら何でも2時間が限度。
ただその限界までは仕事だと動き、超えればきっちりと休憩は取っているのでまだ元気。
「経太郎はあんな大人になるんじゃねーぞ?
そうだけどな、あれはお前がって……この話はなしだ。
そうか?なら良いんだけどな」
顔を反らす少年を見れば赤くなっているように見え、日差しが暑いからなと可笑しな行動を暑さのせいと考え。
念の為と少年の額に海水で冷えた手を触れさせて温度を確認していき。
それが終われば浮き輪に胸を乗せるようにして支え、気持ちいいなと笑ってみせる。