2020/10/09 のログ
焔誼迦具楽 >  
 エアースイムをやめるつもりはない。
 けれど、もう二度と、優勝に挑めるチャンスは来ないだろう。
 次からは、精々下位に落ちないようあがくしかない。

「それに、随分叩かれてるしなー」

 SNSを選手名で眺めて見れば、出てくるのは八百長だとか反則だとか、
 そしてそれを擁護しようとするファンとの言い争い。
 星島のファンとの間にも随分と軋轢が生まれたようなのは見て取れた。

 色物は大人しく賑やかしだけしてろ、そう言う事らしい。

「ま、言われても仕方ないよね。
 あれで勝てたならともかく――負けたんだから」

 意外だな、と自分の気持ちを省みて思う。
 こんなに真剣に落ち込んだのは、いつ以来だろうか。
 この複雑な気持ちとは――しばらく、折り合いが付けられそうになかった。

 

ご案内:「浜辺」から焔誼迦具楽さんが去りました。
ご案内:「浜辺」にユラさんが現れました。
ユラ > ざふざふと砂を踏みながら歩き回る。
先日のエアースイムの大会を見て、なんだかんだで面白かったらしい。

「……まあ、たまには……訓練したほうがいいだろ」

ぴょんとその場でジャンプ。
そのまま重力に逆らい、宙に浮いた。

空中で座禅を組み、そのまま海の上。
目を閉じて頭の中で空を飛び回るイメージを始める。

ユラ > 父ほども空に卓越してはいない。
兄ほども空で自由ではいられない。
練習を重ね、頭の中でイメージトレーニングを重ねた。
本来地を駆けるはずの狼が、空を不自由無く動けるように。

平衡感覚を養うために兄から教わったが、まずゆっくりと回転すること。
座した姿のまま、空中でゆったり回る。
髪が重力に従って、ゆらゆらと動き回る。

そのまま自由に空を飛ぶ姿をイメージする。
どんな姿勢であろうと、空を我が物にできなければならない。
本来の居場所ではない世界へ踏み込む以上は、それだけの意識を持って進まねばならない。

ユラ > 大体のイメージを終えたら目を開き、足もほどく。
海に対して垂直に、天地逆さになっている。

「……イメージ通りじゃん」

しばらく離れていたとはいえ、体に染みつくまで練習した成果は残っていて、ちょっと不満な顔になった。
自由に飛び回る兄に憧れて始めた飛行魔法だが、ここまで自分のものになっていたことに驚きすら感じる。

ふらふらと空を飛んでいく。
速度も緩急をつけて、高度高めから海面スレスレを自由自在に。
海面を切り裂きながら高速で飛び、水しぶきをあげながら飛び上がる。

(……やべ、楽しい)

記憶にある兄ほども早くは飛べないし、高くも飛べない。
けれど自由な空間が楽しさを思い出させてくれた。