2020/10/10 のログ
ユラ > ひとしきり飛び終えて、再び砂の上に降り立つ。
地面を踏み、ちょっと満足そうな顔をする。

「まだ飛べるし……やっぱ練習続けよっかな……」

空を自由に舞える。それが出来なくなるのはイヤだなと感じる。
少しだけ兄を恨んだこともあったけれど、やっぱりその楽しみには抗えなかった。

また明日から練習しようと考えながら、砂場を歩き去る。
自由な空を想いながら。
自分に飛び方を教えてくれた兄の背中を思い出しながら。

ご案内:「浜辺」からユラさんが去りました。
ご案内:「浜辺」に焔誼迦具楽さんが現れました。
焔誼迦具楽 >  
 この日もまた、日が傾きだした堤防に腰掛け、迦具楽は水平線を眺めていた。
 その視線は遠くへ向けられ、海を見ているのか、空を見ているのかわからない。
 どこか無気力な様子で、何をするでもなくぼんやりとしている。

「はぁ」

 気の抜けたため息が零れる。
 何もない浜辺を潮風が抜けて、すっかり涼しくなった気候に所在無さを感じた。
 

焔誼迦具楽 >  
 大会が終わり、研究室への缶詰から解放されてからずっとこの調子だった。
 エアースイムが嫌になる事はなかったが、それでもしばらく、泳ぐ気分にはなれそうにない。
 かといって、他のなにかをしようと言うやる気もでなかった。

「なーにしてんだろ、わたし」

 全てが撤去された砂浜を眺めて、なおさら気分が落ち込んだ。
 あまりにも悔いが残り過ぎじゃないかと思い、またへこむ。
 ため息と一緒に、視線がまた遠い水平線に吸い込まれていった。
 

ご案内:「浜辺」に火光雷鳥さんが現れました。
焔誼迦具楽 > どうぞよろしくお願いします!
火光雷鳥 > そうだ――海に行こう。そんな事を思い立ったのは、何でだろう?よく分からない。
まぁ、偶には海を見たくなる時もある。そもそも本土で生まれ育った自分だが故郷は内陸部で海なんて無かった。

「まぁ、黄昏たり考え事するにはいいロケーションだよなぁ、こういう浜辺とかってさ。」

なんて呟いてみるが、悩みは多いし考える事も多すぎる。
そもそも、まだ島に来てたった1ヶ月程度なのだが――カルチャーショックが凄い!

(俺、この島で卒業までやっていけんのかねぇ?)

と、早くも気分的にちょっぴり挫折しそう。そう、だから海なのだ!!意味が分からない?俺も分からない。

「……お?」

そんな訳で、私服姿で浜辺をのんびりと歩いていたら先客さん、というか黄昏モードに見える少女の姿が。
挨拶くらいはしてみようか?と、思うのだが冷静に考えて俺は小心者だから度胸が無い。

(ま、まぁ別にナンパとかじゃねーんだし挨拶くらいは…!)

と、気合を入れる。丁度進行方向的に彼女の前を通る形だったからだ。
そのまま、ゆっくりとした足取りで近寄っていけば、挨拶をしようとして――


「……『まけいぬ』?」

彼女が着込むパーカー…の、下に着ていたシャツの言葉に思わずそう呟いてしまった。え?何で負け犬!?

焔誼迦具楽 >  
「んー?」

 ヒトの声が聞こえて、そちらを振り向く。
 ひらひらと手を振って力なく笑う。

「どーもー、まけいぬでーす」

 あはは、と笑って、はあ、と息が漏れる。
 振っていた腕も、振り向いた首も、カクンと倒れて肩を落とした。
 

火光雷鳥 > 「あ、あぁどーも…って、何で負け犬なんすか!?」

ただのデザイン的なアレだろうか?ファッションにはあまり詳しくないのでよく分からん!!
あと、挨拶は気さくに返してくれた少女だけど…あ、めっちゃ項垂れて肩を落としている。

幾ら凡人で小心者の傾向があるとはいえ、さすがにそのまま挨拶だけして素通り、は何か引っ掛かる、

なので、ここは頑張って足を一度止めて項垂れている少女と適度な距離を保ちながら軽く座り込んで。

「えーと、何か悩み事か落ち込む事でもあったんすか?」

初対面、かつ通りすがりの見知らぬ赤毛野郎からこう尋ねられても迷惑かもしれない。
むしろ、下手したら不審者っぽいかもしれないが流石に落ち込みモードっぽい少女を素通りする気にはなれなかったのだ。

焔誼迦具楽 >  
「まけいぬはね、まけいぬだからまけいぬなんだ」

 たはは、と笑うと、視線が水平線の向こうまで飛んでいく。
 少なくとも元気そうには見えないだろう。

「あー、まあねえ。
 落ち込む、そっか、落ち込んでるんだなあ。
 うん、落ち込んでるんだと思う」

 改めて、自分の精神状態を考えたら、落ち込んでいる事に間違いはない。
 なんにもやる気が出ないし、気分が暗いのは自覚できる。

「なんていうかなぁ。
 夢が砕け散ったというか、自分の力不足を痛感したというか」

 夢、そう夢だったのだろう。
 目指す目標だったモノが、遠く遠く、見えないところまで行ってしまったのだ。
 

火光雷鳥 > 「何か凄い哲学的っぽく聞こえるけど、要するに何かに『負けた』って事ですよね?」

少年は聡明でも利発でも天才でもない。彼女の言葉から読み取れる事は殆ど無い。
それでも、負け犬…つまり何かに負けてしまって、今こうしているのだけは理解できたから。

「ええ、初対面の通りすがりの俺が言うのも失礼と思うんすけど、普通に落ち込んでいる以外の何者にも見えなかったっすよ?」

だから、落ち込んでる彼女には申し訳ないが肯定するように貴女は落ち込んでいる、と同意しよう。
程度の差はあれど、自分だってしょっちゅう落ち込むし気分が暗くなるし、ついでに憂鬱になって投げやり気分にもなる。

(…あれ?これ俺って慰めの言葉とか全然なってなくね?)

彼女がそれを欲するかどうかは別として。何かフォローの言葉を!と、思うが直ぐには出てこない。
こういう時、気の利いた言葉一つでも出てくればまだマシだったものを。

「――ああ、それはやっぱ落ち込んでるんですよ。俺は貴女の夢の内容も、何に力不足を感じたのかも全然わかんないっすけど…。」

よっこいせ、と。少女の隣…あ、勿論ちゃんと節度は保った距離に腰を改めて下ろして海の方を眺める。

「まぁ、そういう時って…俺はそうなんですけど、何もかもどうでもよくなったり、何もやる気が起きなかったりするんですよねー…。」

たはは、と苦笑を浮かべる。ああ、自分も経験があるからよーく分かる。共感…は、彼女に失礼だが少し分かる気もするんだ。
だって、挫折も後悔も…多分大なり小なり誰だって味わうもので。そこで沈むか、立ち直るか、開き直るかは人それぞれだけれど…。

焔誼迦具楽 >  
「そのとーり、負けたの、唯一のチャンスだったかもしれないのに。
 もう一度そこまで行けるかって考えたらさ、何もかも足りなくて。
 なんかもう、だめなのかなあってさあ」

 大きなため息と弱音がぽろり。
 遠くを見たまま、憂いたっぷりに。

「そうそう、なんかほんと、やる気が出ないって言うかさぁ。
 こんなところでボケーッとしてても仕方ないのに、やる事だってない訳じゃないのにね。
 ほんと、なにしてるんだろうなぁ」

 そのまま、ぐたぁっと項垂れる。
 すっかりヘタレてしまっている様子だ。