2020/10/28 のログ
ご案内:「浜辺」に焔誼迦具楽さんが現れました。
■焔誼迦具楽 >
浜辺の空を、緩やかに赤い色が模様を描いていた。
複雑に、何度も何度も往復を繰り返している。
見上げる者が居れば、その赤い色はとても目立つことだろう。
その軌跡は、右へ左へ、前後、上下へと自在に動く。
早くも鋭くもないか、ひたすら同じ動くを何度も繰り返していた。
直立状態からの左右ステップ、スウェーバックから後転、前進して横回転。
背中を海面と平行にしてから、足を支点に振り子のように後転して通常姿勢に戻る。
身体を起こしてブレーキを掛けながら、後ろに振り返り、最初の直立姿勢へ。
エアースイムで基本となるコンビネーションに、背面泳法を混ぜ込んだ一連の動き。
迦具楽のスイムにとって基点となる動きを、ただただ、無心に繰り返す。
それは酷く機械的な動作の連続で、正確に、ほとんどズレなく同じ軌道、同じ動作だった。
■焔誼迦具楽 >
ここのところ、迦具楽は浜辺に来るたびにこれを繰り返し行っている。
基本とは言え高度な連携だが、そこにはまるで感情がない。
無感動で、機械的だ。
楽しいとは思えず、やる気があるわけでもない。
ただ、何もしないわけにはいかず、惰性で続けているだけ。
それでも、何も考えずに動いている分には、気は楽だった。
「はあ」
数時間ほどソレをただ繰り返して、ようやく浜辺に降りる。
そしてそのまま、つまらなそうに腰を下ろした。
何をするでもなく、ぼんやりと海を眺めている。
まるで、やる気のかけらも出てこなかった。
ご案内:「浜辺」にユラさんが現れました。
■ユラ > (……あ)
飛びに来たら、先客がいることに気付いた。
帰ろうかなとか考えたが、よくよく見たところで首をかしげた。
「いや……え、あれプロ選手?
違うか……?」
どことなく見覚えがある……気がした。
前回大会をぼんやり見ただけなので確証は持てないが。
座っている姿を、地味に距離をとったところから見ている。
ちょっと行儀が悪い気がする。
■焔誼迦具楽 >
「――はぁ」
自分の膝に頬杖を突きながら、深いため息。
そして。
「私に何か用?」
少年の方を向きもせず、声を掛けた。
■ユラ > 「あ、いや、全然」
返答があまりに正直だった。
とはいえ認識されたなら、別に遠くにいなくていいかと横ぐらいまで近づいてきた。
「前見たエアースイムの大会の選手に似てるなって気がしてただけ。
あとなんか先客いると、飛んでいいのかどうかわかんなくなって」
ちょっと離れたところに、同じように腰を下ろして座った。
■焔誼迦具楽 >
「大会で?
もしかして、前の大会でも、見に来てたの?」
少年の方を見て、無気力な視線を向ける。
「べつに、私の事なんか気にしないで、飛びたいなら飛べばいいじゃない」
少年をまじまじと眺めて、そう言う。
■ユラ > 「なんかちょっと知り合いに推されて……
面白かったけど」
相手の視線に気付いてるのかどうか、大して気にしてない顔で立ち上がる。
とん、とジャンプと同時に浮き上がった。
「……なんか練習とか勉強って、見られてるとすげー緊張するんだよね」
空中で足を組んで座り、目を閉じる。
目を閉じたままなので、自分の三次元的な把握力が十分なのだろう。
「キミは何してたの?」
その状態のまま、微動だにせずに尋ねる。
■焔誼迦具楽 >
「そう、面白かったんだ」
愛想のない反応。
まるで自分は面白くなかった、とでも言うような。
「そうかな、あまり気にならないけど――」
目の前で少年が浮き上がる。
どうやらこの少年も、生身で自由に飛べるタイプのヒトのようだ。
「――別に、暇つぶしみたいなモノ。
他にやらなくちゃいけない事が、あるわけじゃないし」
宙に浮く少年から目を逸らすようにして、ぶっきらぼうに答える。