2020/10/28 のログ
ご案内:「浜辺」に焔誼迦具楽さんが現れました。
焔誼迦具楽 >  
 浜辺の空を、緩やかに赤い色が模様を描いていた。
 複雑に、何度も何度も往復を繰り返している。
 見上げる者が居れば、その赤い色はとても目立つことだろう。

 その軌跡は、右へ左へ、前後、上下へと自在に動く。
 早くも鋭くもないか、ひたすら同じ動くを何度も繰り返していた。
 
 直立状態からの左右ステップ、スウェーバックから後転、前進して横回転。
 背中を海面と平行にしてから、足を支点に振り子のように後転して通常姿勢に戻る。
 身体を起こしてブレーキを掛けながら、後ろに振り返り、最初の直立姿勢へ。

 エアースイムで基本となるコンビネーションに、背面泳法を混ぜ込んだ一連の動き。
 迦具楽のスイムにとって基点となる動きを、ただただ、無心に繰り返す。
 それは酷く機械的な動作の連続で、正確に、ほとんどズレなく同じ軌道、同じ動作だった。
 

焔誼迦具楽 >  
 ここのところ、迦具楽は浜辺に来るたびにこれを繰り返し行っている。
 基本とは言え高度な連携だが、そこにはまるで感情がない。
 無感動で、機械的だ。

 楽しいとは思えず、やる気があるわけでもない。
 ただ、何もしないわけにはいかず、惰性で続けているだけ。
 それでも、何も考えずに動いている分には、気は楽だった。

「はあ」

 数時間ほどソレをただ繰り返して、ようやく浜辺に降りる。
 そしてそのまま、つまらなそうに腰を下ろした。

 何をするでもなく、ぼんやりと海を眺めている。
 まるで、やる気のかけらも出てこなかった。
 

ご案内:「浜辺」にユラさんが現れました。
ユラ > (……あ)

飛びに来たら、先客がいることに気付いた。
帰ろうかなとか考えたが、よくよく見たところで首をかしげた。

「いや……え、あれプロ選手?
違うか……?」

どことなく見覚えがある……気がした。
前回大会をぼんやり見ただけなので確証は持てないが。

座っている姿を、地味に距離をとったところから見ている。
ちょっと行儀が悪い気がする。

焔誼迦具楽 >  
「――はぁ」

 自分の膝に頬杖を突きながら、深いため息。
 そして。

「私に何か用?」

 少年の方を向きもせず、声を掛けた。
 

ユラ > 「あ、いや、全然」

返答があまりに正直だった。
とはいえ認識されたなら、別に遠くにいなくていいかと横ぐらいまで近づいてきた。

「前見たエアースイムの大会の選手に似てるなって気がしてただけ。
あとなんか先客いると、飛んでいいのかどうかわかんなくなって」

ちょっと離れたところに、同じように腰を下ろして座った。

焔誼迦具楽 >  
「大会で?
 もしかして、前の大会でも、見に来てたの?」

 少年の方を見て、無気力な視線を向ける。

「べつに、私の事なんか気にしないで、飛びたいなら飛べばいいじゃない」

 少年をまじまじと眺めて、そう言う。
 

ユラ > 「なんかちょっと知り合いに推されて……
面白かったけど」

相手の視線に気付いてるのかどうか、大して気にしてない顔で立ち上がる。
とん、とジャンプと同時に浮き上がった。

「……なんか練習とか勉強って、見られてるとすげー緊張するんだよね」

空中で足を組んで座り、目を閉じる。
目を閉じたままなので、自分の三次元的な把握力が十分なのだろう。

「キミは何してたの?」

その状態のまま、微動だにせずに尋ねる。

焔誼迦具楽 >  
「そう、面白かったんだ」

 愛想のない反応。
 まるで自分は面白くなかった、とでも言うような。

「そうかな、あまり気にならないけど――」

 目の前で少年が浮き上がる。
 どうやらこの少年も、生身で自由に飛べるタイプのヒトのようだ。

「――別に、暇つぶしみたいなモノ。
 他にやらなくちゃいけない事が、あるわけじゃないし」

 宙に浮く少年から目を逸らすようにして、ぶっきらぼうに答える。