2020/11/23 のログ
ご案内:「浜辺」にリタ・ラルケさんが現れました。
リタ・ラルケ >  
 シーズンオフの浜辺に、少女が一人。
 ふらふらと何かあるわけでもない場所に向かう姿は、まるで己の意思ではないかのように。ともすれば正気を失っていると表現してもいいだろうか。

「正気を失っている」という表現はといえば、ある意味では正しく、ある意味では正しくない。
 彼女が正常な状態であるかといえば、それははっきり違うと言えるし、かといって何か、気が触れたかというわけではない。よくない病気というわけでもない。

 だけれど、少なくとも――あまりよくない状態であることは確かである。

リタ・ラルケ >  
 午睡の最中、嫌な夢を見たらしい。
 らしいというのは、自分はその夢の内容をとんと覚えていないからである。

 起きてすぐの間は、覚えていたような気がするけれど。
 それから五分もしないうちに、何やら動悸がするのと嫌な汗をかいていたのもあって、自分が嫌な夢を見ていたんだという感触だけが残っていた。

 自分の夢見が悪いのは、まあそうだったのだけれど。それにしたってこのところ悪い夢を見ていなかったものだから、つい忘れかけていた。
 久しぶりの悪夢は――気持ちいいはずはないのだけれど――、言いようのない気持ち悪さと不安感を、自分に残して去っていった。

 そういうわけで、昼過ぎに起きてからというものの、自分は少しばかり心がざわついている。それを振り払うかのように今に至るまで放浪をしていたのだが――最終的にたどり着いたのは、ここだった。
 さほどとりたてて理由があるわけでもない。ただ心のままにさすらっていたら、ここにたどり着いたというだけのことである。

 何も言わず、砂浜に仰向けになって空を眺める。砂で服が汚れるが、さしあたってそれを気にしている余裕もなかった。

「……」

 波の音、風の音、時折鳥の鳴き声。
 それ以外の音は何もない、自然がつくる空間に、自分はしばし身を委ねる。

リタ・ラルケ >  
 何をするわけでもなく、ただ空を眺めるだけ。
 何もすることがないというよりは、何かをするような気になれない、というのが正しいだろうか。

「……今までこういうこと、たくさんあったはずなんだけどなー……」

 前までの自分であれば、不安だったりすることはあったけれど、ここまで気分が沈むこともなかった。
 どうやら今日の夢は、自分にとってひどく"刺さる"夢だったらしい。
 そうでもなければ――、

「……」

 目を閉じても、眠る気にはなれない。
 さっきまで寝ていたのと、それから未だに心がざわめいているのを感じているからだろうか。

 勿論、だからといってどうするというわけでもないけれど。

リタ・ラルケ >  
 ……しかして、時間は過ぎていき。
 腹の虫がどうにも無視できなくなったところで、自分はおもむろに体を起こす。
 それから十数えたところで、

「……帰ろ」

 心が追いついてなくとも、腹は減るものである。
 せめて美味しいものでも食べに行こうか、と。服についた砂をはたいて、ふらふらとまたどこかに消えていく少女がいたのだった。

ご案内:「浜辺」からリタ・ラルケさんが去りました。