2020/12/01 のログ
ご案内:「浜辺」にユラさんが現れました。
ユラ > 本日の空中に浮く少年。
海面少し上あたりで、あぐらをかいて飛んでいる。
目を閉じて集中する。
飛びながら、自分の異能の漏れを抑えるために。

数か月の講義と訓練で、集中しさえすれば自分への不幸を抑えることが出来るようになった。
海面から大きく離れていないのに、波が大きく跳ねて濡らされることが無い。

「……悪くないけど」

目を開けて一息つく。
その瞬間、波が跳ねて尻が濡れ、イラっとした顔になった。

ユラ > 異能の制御というのは人それぞれだろうが、ユラの制御は意識すれば、魔力でかなり抑え込めるらしい。
ただその抑え方が個人的に慣れないものであった。
普段使わない筋肉を使っているようで、ひどく疲れるし集中しないといけない。気がする。

「肩凝る……ずっと維持できないし」

空中で首を回しながらぼやいた。
もう少し強烈にモチベーションに繋がることがあればいいのだが。

ユラ > 「あーいや……そうか……」

記憶をたどる。いつも笑っていた兄の姿。
兄が空を飛び始めたのは、それこそ10年ちょっと前。
たしかちょうど、近くにいた女の子がかわいいとか言ってた頃。

多分、あれは恋だったのだろう。

そんなものでやる気が上がるとは、やはりというか単純な人だったけど。

「恋ねえ……」

全然ピンと来なかった。
それだけでやる気につながるかどうか……というと……

ご案内:「浜辺」に綿津見くらげさんが現れました。
綿津見くらげ > 「少年。」
海上で鍛錬に励むユラの背後から、突如声を掛けられる。


見ればそれは、締まりの無い笑顔を浮かべた青い髪の少女。
歳の頃は15,6程、制服姿からは常世の学生だろう。

少女もまた異能で宙に浮けるのだろう、
ユラと同じく海面すれすれをふわふわと浮かんでいる。

「少年。
 こんな所で、何を。」
表情を崩さず首だけ傾げて、ユラに問いかける。
傍から見れば、海の上で一人何かしている彼の姿は不審に映るのも無理かるぬ。
……それは、少女も同じく不審であるのだが。

ユラ > 「ん?」

くるんと全身が回転して、声のほうを見た。
海側から声をかけられるとちょっとびっくりする。

「え、オレ?
オレは空飛ぶ訓練ついでに、ちょっと異能の制御の練習も」

相手の顔を見て、なんでこの子笑ってんだとか思ってビビっていた。
言葉の内容と表情が全然一致してないんだけど。
とはいえ露骨な動きもよくない。距離を空けたりはせず、その場で停滞する。

綿津見くらげ > 「練習?
 異能の。」
警戒気味のユラとは裏腹に、
無警戒にすすすっと距離を詰めてくる。

「熱心で。
 よろしい。」
どこか間延びした様な、
奇妙なテンポで喋る娘だ。

「でも。
 寒くない?
 気をつけろ。
 風邪に。」
気が付けば暦は既に師走。
海上を吹く風は冷たく、容赦なく体温を奪う。

ユラ > 「近い近い近い」

詰めてくる距離の半分くらいを後ろにスライドしていく。
警戒とは別に、女の子との距離が近いとそれはそれで困る。

「オレは大丈夫、そんなに気温の変化感じないから。
ていうかそれはキミのほうが寒くない?」

まあまあ寒そうな相手の姿を見ながら訪ねる。
心配してるほうの格好が寒そう。
もうちょっとあったかい恰好をオススメすべきだろうか。

綿津見くらげ > 「………。
 ……寒い。当然。」
そりゃそうだ。
大して厚着もせずに、冬の海上に浮かんでいれば寒いに決まっている。

「少年。
 何故。
 海の上で。
 練習を?」
表情こそあまり変化は無いが、
寒くて堪らないのに信じられない、と言った声色。
……ならば何故、この娘も海上に。

ユラ > 「……もうちょっとあったかい恰好しなよ……」

自分のブレザーを脱いで差し出す。
今まで着ていたのであったかい。

「飛ぶことに緊張感がないと、練習なのに漫然と飛んじゃうからね。
落ちたら寒い、濡れるって気持ちで飛びたい。
……あと、異能の制御に失敗した場合にわかりやすいから」

この子が風邪引いたらオレのせいかなとか思ってる。
ブレザーを仮に受け取ったとしても足が寒いだろうし、早く陸に行かせてあげるべきかもしれない。

綿津見くらげ > 「うむ。
 検討する。」
そう言えば、冬物の衣服など持ってもいなかった。
今度、買いに行こう……と、今更ながら心に決める。

「……。
 着ろ、と?」
すると、少年が自分の衣服を脱いで差し出してきた。
不思議なモノを見る様な目つきでユラをじろじろ見つめ、
そして割と素直にブレザーを受け取り羽織った。

「……ふむ。
 悪くない。
 感謝。」
身体がぽかぽか……とまでは行かないが、
吹きすさぶ風も幾分和らぐ。


「同じ能力か。
 少年も。」
同じ飛行能力者に会ったのは初めて。
恐らく、それほど珍しい異能では無いだろうが。
ただ、少年はまだ制御が不十分の様子。

「私も。
 浮かぶのは、得意。」
ひらりと中空を一回転。
ただ、少女の場合はそれほど高度も速度も出せはしない。

ユラ > 「まあその……うん、ホント風邪引かないように」

カッターシャツとTシャツ姿になったが、まあこれくらいなら大丈夫でしょう。
なおTシャツの『もぶきゃら』という字がうっすら透けている。

「あ、飛ぶのは異能じゃなくて魔術のほう。
異能はまたちょっと違うやつ」

とはいえ、目の前で飛んでる姿を見て、ぱちぱち手を叩く。
浮かぶのは簡単でも、空中で回転行動をとるのは難しいのをユラは知っていた。

「……素敵だね、飛び方。
オレそんな飛び方出来るようになるまで、結構かかった」

相手の飛び方に惜しみない称賛を送る。

綿津見くらげ > 「……もぶきゃら。」
少年の胸元に透ける文字を読み上げる。

「イカしたシャツだ。」
……皮肉か?
いや、特にそういう意図が含まれた声色では無い。
純粋に良いシャツと思っているのだろう。

「私は、生まれつき。
 浮かぶのは、得意。」
そう言ったかと思えば、
今度は少女の身体が仄かに蒼い光を放つ。

「こっちは。
 最近、できる様になった。」
すると、海面が呼応して蒼く光り始める。
さらには水がゆっくりと盛り上がり幾つかの水球を形取ると、
少女の周りを浮遊し始めた。
……水を操る異能だろう。

「少年は。
 どんな異能?」
青い瞳を好奇心で薄っすらと輝かせながら、
ユラの異能は何かと訊いてきた。

ユラ > 「イカしてるだろ。
知り合いにもらった」

センスがある子だ、と嬉しそうな顔になった。

「生まれつき飛べるんだ……便利な異能だなぁ。
うわ、水も浮かんでる。
……なんかもう、イメージぴったりじゃん……」

青い髪のふわふわした子が、水を浮かべている。
似合ってるとしか言いようがない。
うらやましいにもほどがある。

「あーオレは……知っても面白くないよ。
キミみたいに人に言えるような異能じゃないから」

首を横に振る。
きっと教えてもいい顔はされまい。