2020/12/02 のログ
■綿津見くらげ > 「イメージぴったり……。」
青い髪に瞳、確かに『水』を想起させる見た目。
だが、それを指摘されたのは初めて。
……何かが引っかかる。
自分は何故、今更この力に目覚めたのだ?
鈍い頭痛が、一瞬走る。
すると、その違和感はもう少女の頭からは消えていた。
「そう言われると。
気になる。
余計に。」
自身の異能について話すのを渋るユラ。
しかし、隠されれば余計に知りたくなるのが人の性。
……話したくない事はそっとしておくのがデリカシーというモノかも知れないが、
お構いなしに少女は踏み込んでくるのであった。
■ユラ > 「素敵だと思うよ」
一言で素直に褒めた。
けれど相手の様子のわずかな変化には気付くことも無く。
「……ん、まあ……わかった、教えるよ」
教えたところで別に悪いこともないだろうと判断して。
一呼吸おいてから口を開く。
「オレの異能は不幸を呼ぶ能力。
相手に不幸を与えたり……自分が勝手に不幸になったりする」
目を合わせないようにして、ため息と共に言い放った。
■綿津見くらげ > 「そうだろう。
素敵。
私。」
ユラの言葉に謙遜する様子も見せず、
悪びれもせず自賛。
「不幸。」
能力を明かすユラの言葉を反芻し。
「命運を操る異能。
結構、凄いと聞く。」
幸運をもたらすという物にはなんであれあやかりたいのが人の性。
逆もまた然り、確実な不幸をもたらすというのは恐ろしく、そして限りなく有用な異能だろう。
「しかし。
少年も不幸になるのか。
厄介。」
強力な異能であるが故に、やはり制御も難しいのだろう。
「ちなみに。
どんな不幸が?」
■ユラ > 「ん……うん、そうだね。
オレも父からはそう言われた」
けれど不幸を操るなどと言っても、まるで嬉しくないものだ。
好奇の目線も、悪意の目線も慣れたものだが、自分自身の納得からは程遠い。
「うん、その不幸を制御するっていうのが今の目標なんだけどね。
オレの場合は……さっきまで波が落ち着いてたのに、急に波が跳ねて足が濡れたり。
買ったものが不良品だったり、新しい服を買ったら数日雨が続いたり、服が急に虫に食われたり」
地味だがまあまあイヤな不幸が多い。
■綿津見くらげ > 「地味だな。
地味に嫌。」
怪我や重い病といった深刻な不幸では無さそうだが……
しかし、不幸は不幸、嫌なモノである。
不意に少女が手をユラの足元へ差し向ける。
先ほど異能を披露した時と同じように、
青い光が少女を包み……
ユラの足を濡らしていた水が、
ワックスで弾かれたかの様に染み出て、
気付くとすっかり乾いていた。
「ま、良い事もあるだろう。
たまには。
うまく扱えるといいな、その異能。」
■ユラ > 「……地味なやつしか話してないからね。
重たい不幸なんて聞きたくないだろ」
イヤな話になることもある。
今はのんびりした話で終わりにしたかった。
「……えっ、便利すぎない?」
びっくり顔である。
濡れた服まで乾かせるのは、あまりにもすばらしい異能だと思ってしまう。
今まさにいいことがあった。
「……誰かを不幸にするのは簡単なんだけどね。
自分を不幸でなく保つのはめちゃくちゃ難しいね」
嘆息。けれど少し未来は見えている。
■綿津見くらげ > 「そうか?
一興。
不幸話を聞くのも。」
なんなら、人の幸福を自慢されるよりも興味を引くものだ、不幸話という物は。
……決して人の不幸を願っているわけでは無いが。
「話した方が。
気楽になる事も、ある。
多分。」
独り心のうちに留めるよりは、
吐き出してしまった方が良い。
と、少女は考える。
特に、ネガティブなものは。
「そうだろう。
便利。
私。
何か濡らしたら、来い。」
得意顔の少女。
この力のおかげで、傘という物も不要になった。
「…………流石に、寒い。
そろそろ帰る。」
一際強い風が二人を吹き付ける。
身体を震わせ、そろそろ帰ると……一体彼女はここで何をしていたのだろう……。
「またな、少年。
日が暮れる前に、帰れ。」
羽織っていたカーディガンを脱いで、ユラに手渡し。
ふわふわと陸に向かって浮かび去っていくのであった。
ご案内:「浜辺」から綿津見くらげさんが去りました。
■ユラ > 「……まあ、そうかもね。
ちょっと聞いてもらえて楽になったかな」
軽く頷いた。
楽になったのもまた事実だ。
「……キミが普段海に居てくれるなら頼みに来るかな」
実際助かることがあるかもしれない。
その時に会えたら頼んでみよう。
「あー……風邪引かないようにね」
上着を受け取り、少女を見送った。
風を体で受けて、確かに涼しくなったなと思いながら、自分もまた陸へと戻り、歩み去っていった。
ご案内:「浜辺」からユラさんが去りました。