2021/02/09 のログ
杉本久遠 >  
 少しゆっくりと休むと、休憩を終えて腰を上げる。
 これから荷物の搬入だ。

「さて、もうひと頑張りしないとな」

 そうして久遠はまた、会場設営の仕事に取り掛かるのだった。
 

ご案内:「浜辺」から杉本久遠さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に杉本久遠さんが現れました。
杉本久遠 >  
 海岸、砂浜の上に設営されたテントの下。
 そこには大きな機材がいくつも運び込まれている。

 エアースイム用フィールド発生装置に、観戦用の映像空中投影装置。
 撮影用ドローンに各種スピーカー類。
 どれも大会を行う上で必要な物ばかりだ。

「ふう、これで大体揃ったか。
 しかし設置は明日だな。
 今日は人手が足らん」

 機材の確認を終えると、久遠は荷物を持ってテントの下から出ていった。
 

杉本久遠 >  
 エアースイム部に、単独で大会やイベントを主催する力はない。
 なにせ、これまで所属部員は部長とマネージャーだけだったのだ。
 その上、未だに顧問すら存在していない。

 そのため常世島で行われるエアースイムのイベントは、主催が運動部ではなく研究系部活だ。
 そして、商業、研究系部活からの協力と、学生以外の学園関係者や、島在住の職員らによるボランティアによって成り立っている。
 こうした協力者に恵まれて、ようやく開催できているイベントなのだ。
 
 だからこそ、人手はとにかく足りていないのだ。
 誰もが、本来の生活の合間に手を貸してくれているのである。
 人が集まれないときは、出来る作業にも限界があるのだった。
 

杉本久遠 >  
 久遠はこの日集まった人たちにお礼を告げると、また一人、堤防の上に上がって腰を下ろす。
 荷物から水筒を取り出すと、フタを開けて一口飲んだ。
 あっさりとした味のスープが、熱いまま身体に染みていく。

 妹が用意してくれた、たんぱく質とビタミンがたっぷりな、栄養のある特製スープだ。
 水筒によって保温されていたため、今も少しずつ飲まなければならないくらいに熱い。
 いつもそうだが、妹のこうした気遣いは、本当にありがたいと思った。
 

ご案内:「浜辺」にユラさんが現れました。
ユラ > 「大変そうだね」

ピーナツの袋を抱え、もりもり食べながら近付いてくる。
ざふざふ、重いブーツで砂を踏みながら。

「エアースイム部の活動?」

少し遠くに見える機材やらテントやらを見ながら尋ねた。

杉本久遠 >  
「はあ、暖まるな。
 さすがに海風はまだ随分冷たいもんだ」

 まだまだ、二月も前半。
 防寒対策の一つもしない事には、観客席にいるのも大変だろう。
 さて、そんなところに声がかかった。

「ん、おう。
 たしかに、部活動の一環ではあるな。
 大会会場の設営中だ」

 堤防から見下ろせば、砂の上に少年が一人。
 以前、秋の大会前にも顔を合わせた覚えがあった。

「まあ今日は終わるところだけどな。
 さすがに機材の設置となると、人手が足りん」

 テントの周辺には、数人程度。
 この規模の会場設営には少なすぎる人数だろう。

ユラ > 「大変だね、部長は」

大量のピーナツで顔をハムスターのように膨らませる。
ほぼ他人事である。

「……人手ねぇ……夜までかからないんなら手伝おうか。
 絶対あれ人数足りないでしょ」

時間かかりそうだなーと遠くを見ている。
さすがに公式大会ほどの大きさは無さそうだが、少人数でなんとかできるものでもなさそうだ。

杉本久遠 >  
「だはは、運営委員でもあるからな」

 ユラの膨らんだ顔を見ながら答える。
 そう、それだけの協力を受けているのだから、一人とは言えエアースイム部の部長が動かないわけにはいかないのだ。
 そんな事情だから、今回は新入部員の川添には何も教えていない。
 義務でもなければ、強制するつもりもないのだが、彼女はきっと、知れば手伝おうとするだろう。

「おお、それは嬉しい申し出だな。
 とはいえ、今日は丁度終わりにしようというところだったんだ。
 それに、手伝ってもらっても全部ボランティアだぞ」

 報酬は一切発生しないのだ。
 お礼もろくに出来るわけじゃない。
 さすがにそれで手伝わせるのは気が引けるものだ。
 

ユラ > 「そういう専門の人も居ないのはホント大変だな」

部長だから頑張っているのか、エアースイムがそれだけ楽しいから頑張れているのかはユラにはわからない。
準備も楽しめているのだろうとは思う。

「いいよ別に。ヒマだし。
 はやく終わらせて少しでも飛びたいだろ、部長」

やりたいことを我慢して、今後のために尽くしているだろう相手を見て。
知り合いや友人には手を貸したいものである。

杉本久遠 >  
「人も金も資材も足りないからな。
 毎年何とかやりくりしてやってるんだ。
 規模の大きい部活なら、また違うんだろうがなあ」

 残念ながら、これだけ規模の小さい部活となるとにっちもさっちもいかない。
 大きな部活ともなれば、完全に設営も外注出来たりするんだろうか。

「はは、そうか?
 それじゃあ一休みしたら、少し手伝ってもらうとするか。
 設営が進めば他の仕事も出来るしな」

 水筒を少しずつ煽りながら、ふうと一息。
 設営が終われば、それだけ早く大会期間の打ち合わせに入れる。
 運営委員としてやる事はなんだかんだと、まだまだあるのだ。