2020/08/01 のログ
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」に霊山 市仁さんが現れました。
霊山 市仁 > 浴衣というにはあまりに白く、死人に着せる左前。
頭の三角頭巾はこの場にあまりにそぐわない。

生きる屍。違うな…死んだまま生きている。
時は逢魔時、現実と魔が混ざり合う時間。

「…この時間こそ、僕にはふさわしい。」

神社の境内の端に一人たたずんでいる一人の幽霊。
屋台で買ったであろうかき氷が一口も口をつけられずにその姿を色のついた水へと変えていく。

霊山 市仁 > 祭りの喧騒とは少し離れたこの場所。
行きかう人々、時折こちらを見た人が二度見したり目をこすったりしているのが分かる。
だが、ほとんどの人々はまるで見えていないかのように祭りの日を楽しんでいる。

「当然だ…僕は異物。
 生きている彼らとは決して交わる事のない…。」

既に紙コップいっぱいに張られた色のついた水に変じたかき氷を口に運ぶ。

「薄い…まるで…まるで…あまりに薄い。」

イチゴ味、もう自らの中には流れていない血の色。
だが、それは紛い物…着色料と香料によって作られた偽りの赤。

霊山 市仁 > 「そう、まるで僕のような赤色だ…。」

先がスプーンのようになったストローで底の方にある氷をすくい口に運ぼうとするもするりと滑りおちて
真っ白の着物を汚してしまう。

「ふ…まるで血に濡れているようだ。僕にはふさわしい。」

薄いピンク色がじんわりと真っ白の服にしみていく。
先端の方だけ握って絞ったりするが冷たく、赤いその証が落ちることはない…。

「…シミになってしまったらどうすればいい…いや、それも僕の罪の証…甘んじてうけいれよう。」

霊山 市仁 > 「いや、これ本当に落ちなかったらどうすればいい…血…血ってごまかせばクールなキャラを保てるか?」

薄くピンクににじむ白装束。
何とかしようと絞られた跡。

落ち込む彼にかけられる声。

『あっ霊山君じゃん!一人で祭り来てたの?ウチらと回る?』

話しかけてきたのはいかにもリア充と言った雰囲気の男女のグループ。
クラスのカースト上位層に位置しているのは間違いないだろう。

「ふっ…偶には人と行くのも悪くない。僕の型抜きの腕前を披露する時が来たようだな…。」

そう言ってそのグループに自然に混ざって歩いていく。

「お供えした後の味の薄くなったりんご飴などをくれてやろう…。」
『イヤ、いらんしww』

そうして祭りの夜は更けていく。

ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」から霊山 市仁さんが去りました。