2020/09/08 のログ
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」に黒髪の少年さんが現れました。
■黒髪の少年 > 夜も更けてきた頃、それは再び現れた。
この前来たときは、参道に上がる前に引き返してしまったから。
…とはいえ、ここで得られる記憶は、ほとんどない。
実はあれから色んなところを回った後だから、大抵の記憶は取り戻した。
…残すは、後数か所だけ。
ここは、その数か所に含まれていないのだ。
「………んー……」
どちらかというと、迷い、だろうか。
気を紛らわすためにやってきたようなものだ。
相変わらず、人目を凌ぐための装束に身を包みながら、
彼は境内に続く参道を、じーっと眺めていた。
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」に月夜見 真琴さんが現れました。
■月夜見 真琴 >
「社の有りようを味わっている、というわけではなさそうだな」
その背後より、甘やかな声がかかる。
月明かりに長い影を伸ばすのはそう背の高くない女だ。
「ああ失敬。
参るというよりは、懺悔室を求むるような遅疑逡巡の後ろ姿。
いやその背を押すつもりはないのだが、
夜の散歩をしていても、そう会えなさそうな出で立ちだったから。
つい声をかけてしまったよ――何か、思うところでも?」
重たげな荷物を抱えた白髪の女は物怖じせずに、
白黒はっきりしない感じの色合いの姿に、ひそやかな足取りでちかづく。
対面、というよりは、横をゆっくりすり抜けていこうとする。
社のほうに用がある、ということだ。
■黒髪の少年 > 声を掛けられた。
どこか安心させられそうな、そんな柔らかさを持った声色。
…少なくとも、自分の記憶にはない。
「……まあ、ちょっとね。」
声をかけた先は、自分だろう。
別にこの姿で会う分には、構わない。
それに、自分に用があるというわけでもないだろうから。
…振り向く前の自分の真横を通り過ぎるその姿を見やれば、そうも思えたもので。
「……なに。
おめーもこの先に用があったわけ?」
奇しくも、自分も向かおうとしていたのは境内だったものだから。
…どうするべきか、逡巡する。
本当のところ、自分の心は決まっているが、少し整理する時間が欲しいだけなのだ。
■月夜見 真琴 >
「もののついでさ。神社があったから参っておこう、と。
高くから月を眺めにきた。鈴虫の音はまだきこえないな?
ああ、やつがれに"迷い"はないし」
自分も、と示された言葉に対して、肩を竦めた。
あくまで同じなのは目的地だけだと。
頑丈な鞄を提げながら、ふう、と僅かに暑気ばんだ。
「問うて応えぬ神にぶつけたとて。
"正義"はなにも返してはくれないが。
さて何を祈願したものかな――"家内安全"とか」
それでも愉快そうな笑みを口の端にのせたまま。
信心深いわけでもなく、本当についで。本当に偶然。
そうして参道に靴底をそっと乗せると。
くるり、と振り向いて、笑顔。
「とはいえやつがれも非力な乙女。
この先に何か居たらと思うと若干足が竦むところもある。
ついてきてくれないか? 祓われるようなものでもあるまい?」
■黒髪の少年 > 「…………。」
フードに隠れた、目を細める。
迷いはないと彼女は言った。
自分はそういう込み入った話はしていない。
食えないやつだな、と、蛇は睨んだ。
「そ。
まぁ、神社を来る奴の理由なんて、それこそそれぞれ違うもんだし。
僕はなんて願ったものかな。まあ、その内決めることだし。」
家内安全。
家族がいるのかな、なんて、安直に思いを巡らせる。
…そこに深い意味は、まだ持たせられない。
肩を竦めながら…一歩、参道へと近づいて。
「……どうせ、旅は道連れ世は情け、っていうわけ?
別にいーけど、それくらい。」
非力と自称するのはどうかと思いながらも、見れば自分でさえ重そうな荷物だと判断するものだ。
笑顔の質はどうであれ、行き先が同じであるのであれば、断る術を持つわけでもない。
…だが、実に、お誂え向きだったものだから。その流れでさえ作為的なものを感じるくらいに。
ゆえに、彼女が何を考えているのか分からない。そのことだけを胆に銘じておきながら。
「……ついていくだけでいーわけ?」
彼女の隣、僅か1メートル程空けたところに並んでついて行こうとする。
重心は前向き、何かあればそちらに転げるだろうと踏んでのことだった。
だが、流石に前を歩くことはできない。そう考えて、横に並んでいる。
■月夜見 真琴 >
「いいや。やつがれのような佳人に情けをかけたとなれば。
おまえの男に"好漢"の箔がつくというものさ。得しかない。
なんであれば、鈍色の衣のおまえの風評、嘯いてやっても構わない。
境内に迷い込んだ娘の身を守った名もしれぬ、おまえのな」
ころころと愉しげに笑いながら足をすすめると。
不意にかけられた問いかけに、にっこりと嬉しそうに笑顔を見せる。
「持ってくれるのかな? 折りたたみのイーゼルに椅子。
カンバス絵筆に絵の具の数々、それなりに大荷物だぞ?
さて、噂話にはどのような尾ひれをつけたものか」
彼我の距離は近くて遠い。それを一歩詰めて。
そして、ひとかかえの鞄を彼に差し出してみる。
断られれば引っ込めるだろう。何か言うかもしれないが。
「ああ――ところで。
社を参るときの作法については、存じているかな?」
と、その鞄のたわむ影から、鋭く手指が伸びる。
彼の目深にかぶったフード、それを急な突風のように払おうとした。
■黒髪の少年 > 「………。
僕は泡沫の夢のようなものだし。
救われたなんて思わずに、一夜の幻と忘れてしまえばいい。」
身元を詳らかにされたくない、そんな心理を擽られた気がする。
…それをおくびにも出さないように、言葉だけは軽くあしらった。
どうせ誰にも分からない…フードを目深に被り直して。
彼女の笑顔、彼女の笑い、…蛇は舐めるように観察するのみ。
「…………。
そんなの抱えたまま境内を上がらせるほど、男が廃れたつもりもないけど。
まさかそれを期待してたなんて。おめーも大概食えねえやつだし?」
肩を落とす。彼女にそれが伝わるよう、それはそれは、分かりやすいくらいに。
一歩詰められることくらいは、別に良しとしよう。
そうでもしなければ、荷物の受け渡しはできまい。
…そのまま受け取ってしまえば、そら、両手はもう効かない。
「……ほんとに重いじゃん。
なんでまたこんなところに……」
ふと、疑念を抱く。
ここまで彼女は、どうやってきた?
まさかこれを持ってこのまま歩いてきたのだろうか。
だとすれば、別に階段だって特に労せず登れるはずだろう。
だが、そう問う前に……
「…………ッ……」
そのフードは、向かい風に煽られた様に頭の後ろに払われた。
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」から黒髪の少年さんが去りました。
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」にレナードさんが現れました。
■レナード > 黒を基調として、黄色いメッシュが入った髪が露になる。
そして、目深に被って隠していた、その目元さえ…
「……なんのつもりなわけ?
別に、信仰に興味があるわけじゃないんだけど。」
睨む。
黄色い蛇の眼が、目の前の少女を。
両手は依然塞がったままだが、とぐろを巻いた蛇のような、そんな圧をかけんとしていた。