2020/12/30 のログ
モルガーナ >   
「ふふ」

自然と笑みがこぼれる。
人が生きるという感覚が最近少しだけ理解出来たような気がする。
昔は均衡や役割について考える事ばかりだった。
自由になっても結局何か大きなものに囚われていたといっても良い。
世界の枠を飛び越えて初めて目の前の事だけ考えて生きていけた。
ニルヤカナヤで食べたパフェがおいしくて何度か通ったこと。
百貨店で見た素晴らしい細工の数々、島の様々な場所で起きた”未知”への挑戦とその顛末。
ああそうだ、世界の改変事象や並列世界の妖怪騒ぎなんて言う事件もあった。

「”楽しい”とは素晴らしいな。
 惜しいと感じてしまうのはとても幸せな事なのかもしれん」

どれもとても切実な願いの顛末だったように思う。
とてもささやかな、幸せを求めた結果がどの物語にもあったのだろう。
こうしてこの島で生きた自分の感情と同じように。

「とはいえ……
 これも人と同じ時間を生きるからこそ、じゃな。」

種が入り混じったからこそ起きた悲劇もたくさんある。
しかし同様に種が入り混じっているからこそそれらは叶ったと言っても良い。

モルガーナ >  
「良き世界じゃな。本当にここは」

今年がそうであったように来年も、そしてその次もこうやって繰り返しながら人は進んでいく。
同じように泣き、笑い、様々な事件を起こしながら慌ただしい日々を駆け抜けていくのだろう。
大局で見れば些細な、取るに足らないものかもしれない
誰も顧みないような物語を紡ぎながら。

「嗚呼、楽しみじゃ。」

続く言葉を飲み込む。
それを口にすることは贅沢だろう。
正直な話、ここまで長い間持つとは思ってもみなかった。
未だ残り火は静かに揺れている。
いつ消えるかもわからないというのに、確かに燃えている。
これは必然ではなく、酷く幸運な事なのだから。

「さて」

あまり感傷に耽ってはいられない。
来る日に向けて準備された催しへの備えに向けて慌ただしい最中に潜んでいたが
もうこの場所にはいられないからだ。
早ければ明日には沢山の人族がこの場所に訪れることだろう。
祭自体は嫌いではないが、今の状態では干渉を引き起こしかねない。
静かな場所を探してそこで大人しくしておく必要がある。
そのためには移動を始めなければならない。

モルガーナ >   
重力術式を調整し柵を支えにしながらゆっくりと立ち上がる。
若干視界がふらつくがこの程度なら問題ない。

「霊力溜まりでも探すとするか」

幸いにもこの島にはある程度自然もある。
此処から少し離れているが登山道から離れた山中ならば人も来ないだろう。
洞窟のような場所が見つかればベストだ。
察知すれば見つける事自体は難くはないだろうが

「せっかく人らしい見た目なのじゃから……
 人らしく探すとするか」

クスリと笑みをこぼし歩きだす。
冷たく冷えた空気の中僅かな明かりを手に、しかしてその足跡に陽炎を残して
人のいない、静かな参道をゆっくりと、その時間をも楽しむように。

ご案内:「常世神社」からモルガーナさんが去りました。