2020/06/21 のログ
ご案内:「異邦人街・ラーメン屋『永遠のティルナノイ』」に城戸 良式さんが現れました。
城戸 良式 > 仕事上がり。

「エターナルラーメンの楽園ニンニクマシ。モリアンの極み追加で」

とりあえずの注文を終えて、コートの内側を仰いだ。
そろそろ熱対策をしなければ、支給防刃コートが暑い季節になってきたな。
それでなくても仕事の種類が、大量に汗をかく仕事なのだから、
支給コートを黒にした公安の上層部にこのコートを着て会議をしてほしい。

城戸 良式 > 今日の仕事は、アンドロイド関係の仕事だった。

他に客が居ないことをいいことに、マスターに世間話を振った。
今日の仕事の内容を誰かに話したくてしょうがない。
迷惑な客だという自覚はあるが、他に話す相手がいないので仕方がないのだ。

「いわゆる、『トロッコ問題』なわけよ。
 現実でそんなこと起こるのかって俺も思ってたけど。
 
 とある成金が自分の購入した運転用人型アンドロイド、
 まあ風紀委員が使ってるようなやつとはかなり精密動作度が違うんだけど、
 運転に寄ってる性能だからいいやと思って買ったやつがさ。
 知覚できない遮蔽物の陰から子供が数人車道に飛び出してきたのを感知して、
 ハンドルを切って車を壁に激突させたんだよ。
 もちろん車は大破したし壁に突っ込んだことで主人である成金も大怪我。
 子供の方には怪我はなかったんだけど、ここで運転用人型アンドロイドのAIが議論に上がった」

城戸 良式 > ラーメンが運ばれてくる。相変わらず美味そう。
箸を割りながら続ける。

「曰く、AIの運転における優先度に『人命』が登録されていて、
 このまま運転を続けると複数の子供の人命が失われるため、
 主人を怪我させてでも壁に突っ込んだっていうのがそのアンドロイドの言い分なわけだよ。
 その判断から生じた結果として、緊急回避によって成金は怪我したんだけど、
 通常運転を継続していたらもちろん子供の命は奪われていた。
 差し引きすると判断によって二名の人命が救われたのだから、
 そういう観点からするとアンドロイドの判断は正しかったって話だよ。

 でも成金としては面白くないよね。
 壁に激突して自分が大怪我した上、損傷した壁の補修代金まで請求が来ている。
 結果成金の怒りの矛先は運転用アンドロイドのAIを組んだ技術者及び、
 その製造元に向くことになった。なんでこんなプログラムにしているのかと。
 ただ、製造元としては運転に置いて最も優先されるべきは人命であるっていう、
 妥当な判断をAIにさせてるだけだから、問題の所在はこちらにはないとしてる。
 今日はまあ、その仲裁と現場の検証を風紀と合同で行ったんだけど、
 この話どう思う……?」

城戸 良式 > 「で、ここからが面白い話でさ。
 製造元側の責任追及がのれんに腕押し状態になった後に、その成金の怒りの矛先が向いたのが、
 自分が購入した人型のアンドロイド自身だったんだよ。
 この運転用アンドロイド、風紀の物より性能は落ちるけど、
 ほぼほぼ人間と同じ反応を返す機種でさ。
 ある程度プログラムの追加さえすれば自己学習で日常生活を送れるくらいには、
 学習能力のある個体だったせいで、もう成金にとっては一つの人格を有した存在だったわけだ。
 つまり、成金の言い分としては、そんな学習能力を持った存在が、
 製造元のプログラムによる価値観のみで運転の優先順位を決めたことが気に食わなかった。

 おかしな話だと俺も思う。
 だってそれってアンドロイドに心を求めているようなもんだからさ。
 そしてその心が、合理的な数字の判断より自分を優先してもらえると思っている。
 可愛い女の子のアンドロイドだったからそう思ってしまったのかもしれないけど、
 これがもし武骨な機械むき出しの、話す機能もついてないアンドロイドだった場合、
 怒りの矛先ってこのアンドロイドに向いたのかなとか考えちゃうよなどうしても」。

城戸 良式 > 「でもこれって、程度の問題でもあるよな。
 実際風紀で使われてるような人と全く遜色ないようなアンドロイドを相手にしたら、
 俺もそれ相応の人間らしい対応をせざるを得ないから。
 主観で考えると客観で考える時よりも、
 対象が人間の形をしているっていうことが結構印象を引っ張るってことは往々にしてあるみたいだし。
 でも、そうは言っても彼らは人間ではないことも確かだし、例えば彼らと人命を同じように人間が天秤にかけたとき、
 考えるまでもなく優先されるのは人間の方だったりするから、そこに人間と同じ権利を担保するっていうのは難しいのかもしれない。
 ただ、そういう人型をしている存在が、与える影響についてちょっと考えさせられもしたよ。
 実際多分、目の前にいる人間が人間じゃなくAIによって動いているアンドロイドだと知ったら、
 人間に対してやるように相手を尊重したり大切にしたりはできないかもしれないしな。心のどこかで侮ってしまうとも思う。
 でもそれでいて完全に物のように扱うこともできないから、人間っていうのはいかに中庸的なものかって実感もしたな」

城戸 良式 > あ、やばい、ラーメンが伸びる。
急いで食わないと。

ご案内:「異邦人街・ラーメン屋『永遠のティルナノイ』」から城戸 良式さんが去りました。
ご案内:「異邦人街 大通り」にクゥティシスさんが現れました。
クゥティシス > 異邦人街の大通りの喧噪の中を歩く。
この街に来てから早何年経っただろうか。
当初こそアテのない放浪生活だったが、今となってはすっかりこの島の文化に溶け込んでしまった。

のみならず、実は此方の文化に引き込む側に回っている。
この島に転移してきて、生活基盤の無い異邦人たちを救いあげるため、こうして日課のパトロールをしているというわけだ。

「んー、特に変わった様子はない…のかな?」

周囲の賑わいは特に普段と変わりはない。
様々な文化の窓口となっているこの大通りは、隣接する落第街やスラムからの流入窓口でもある。

「ここ最近、スラムとか落第街が騒がしいからもしかしてーとは思ったんだけど…。
 気にしすぎなのかなぁ」

んー、と一人首を傾げつつ歩を進める。
何処かに自分の助けを必要としている人は居ないものか。

クゥティシス > いないものか、と考えたところで急に困っている人が生えてくるわけでもない。
というか、生えて来られてもそれはそれで困る。

「ま、平和ならそれが一番何だけどー、っと」

まぁいいか、と呟いて巡回再開。
何もないなら無いで、何も無いことを確認する何時もの巡回をすればいいのだ。

こんにちは、だの、元気にしてる?だの、とおりを行き交う見知った顔に声を掛ける。
彼女は積極的に異邦人達の救い上げに尽力してきた結果、やたらと顔が広くなったのである。
異邦人街を10歩歩けば大概知り合いに出会う。

ご案内:「異邦人街 大通り」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 > そんな異邦人街を歩く新米異邦人の男が一人。
男は普段、向こう側の落第街を活動拠点にしていたが
当てもなく彷徨っていた結果、気づけば此の異邦人街までやってきてしまった。

「…………。」

そこに住まう人達の事は、男は如何と思う訳ではない。
ただ、様々な文化圏が入り乱れる此処は、静寂を求める男にとって
喧騒のような場所で在り、腰を据えるには至らなかった。
しかしまぁ、此処でしか手に入らないような食材もあるかもしれない。
例の浮浪者の少女の為に、折角だし手土産の一つ位は何か手にしてみるか。
そう思って、大通りを静かに歩いていた。

何時もの仏頂面は何時になく険しく、無意識に憂いを帯びていた。
そして、くすんだ黒色の瞳が、偶然そこにいた狼少女と目が合った。
彼女にとっても、初めて見る顔だろう。

「……どうも。」

ぺこり。
小さく頭を下げて男は会釈した。

クゥティシス > 見慣れぬ顔と目が合い、向こうから会釈まで。
小さな驚きに耳と尻尾がぴくり、と逆立つ。

「はい、こんにちは!ね、見ない顔だよね。この辺はあんまり慣れてないのかな?」

ただ、驚きも束の間。子供のような笑顔を浮かべて駆け寄っていく。
左右に振れる尻尾はワクワクを抑えきれない少女の心を如実に表している。

「ふふん、良かったらー…案内しよっか?私、この辺顔利くからさ!」

男から返答が返る前に、少女は案内を買って出た。
その瞳はきらきらと輝いているかのよう。
男からきっと望む答えが返ってくるのだと、信じて疑わない純粋な視線が男に突き刺さる―

紫陽花 剱菊 > 人の耳ではない。
獣と思わしき尻尾と耳。
男の視線は自然と、物珍しいそれを交互に見た。

「…………もふ。」

そして、お口がとても正直だった────。
触り心地良さそうですね。

「……如何にも。幾何か前に、"門"より誘われた根無し草。
 ……私はそも、落第街に腰を据えている故、其方の言う通りではある。」

静かに頷いた。
土地勘も余りないが、何より空気に落ち着かない。
だが、少女の人懐っこい雰囲気に心の安寧を取り戻し始め
男の表情から徐々に憂いは消えていく。

「……宜しいのか?私の面倒を見て、有卦が巡るとも思えないが……。
 否、出来るのであれば……ご同行をお願い致したい。
 私は、紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)。如くも無い男だ……。」

今一男の声音は穏やかだが、言葉はどれも後ろ向きだ。
だが、少女の善意を甘んじて受ける程の器量はある。
深々と、頭を下げた。男は真面目なようだ。

クゥティシス > 「―う、け?とか、何か、よくわかんないけど!」

男の古風な言い回しに首を傾げはしたものの、後に続く言葉にぱっと笑顔を浮かべた
ぶんぶんと尻尾を大きく振って、こくこくと頷いて―

「うんうん、まっかせといてよ!何てったって私は生活委員だからね!
 キミみたいな困ってる異邦人を助けるのは職務のうちなのです」

えへん、と言わんばかりに胸を張り、尚笑う。
善は急げ、とばかりに紫陽花の前を歩きだす。
此処は飯屋、此処は服屋、等通りの店を指さしつつ案内をはじめた。
大きな尻尾が機嫌良さげにゆったりと揺れて―

「私はクゥティシス。呼びづらいだろうし、クゥでいいからね。
 ゴンはさ、落第街に住んでるんでしょ?危なくないの?」

何やら勝手なあだ名をつけつつ、案内の道すがら問う。

 

紫陽花 剱菊 > 「……性分故、許されよ。目下、此の島の言葉を修めている所ではある……。」

行く人行く人に似たような事を言われ続けたので
流石にこの男も気にし始めたようだ。
なまじ、意味が通じる分、それに甘んじていた自分が恥ずかしい。
申し訳なさそうに、少女に頭を下げた。

「……生活委員……もしや、其方はあの学園の生徒か……?」

その言葉を聞いた途端、男の表情が僅かに険しくなる。
なにせ、意図せずともこの島には歓迎されていない身だ。
余計な面倒事以上に、此の無垢なる彼女を巻き込みたくないという気が湧き出てくる。
後ろから追従する足取りも、やや重い。

「ごん。」

が、流石にそのあだ名には面を食らった。
ぱちくりと瞬きをする。

「……ごん……。」

なんだかその気になれば後ろに宇宙めいた背景が見えるかもしれない……。

クゥティシス > 「そうだよー。とは言っても、もうそろそろ卒業なんだけどねー」

紫陽花の心中など知る由もない少女は、けらけらと笑いながら歩を進める。
後ろの歩調が遅れ始めたのに気づき、振り返るとそこには呆気にとられたかのような表情の紫陽花。

「―?ゴン、どうかしたの?なんか気になるものでもあった?ゴン、聞こえてるー?」

連呼である。
最早彼女の中で紫陽花のあだ名はゴンに決定してしまったようだ。
訂正するなら早いうちが望ましいだろう。
彼女の出身文化では、愛称はごく当たり前に用いられるものであり、
例え初対面であろうが、フルネームで呼ぶのは拒絶ともとられかねないものであるからだ。
人間の文化に慣れたとはいっても、この辺りは癖が抜けないようだ―

紫陽花 剱菊 > 「……左様か。然るに、卒業するのであれば
 其れこそ私の様な人間と関わらぬのは、拙いのでは無いか?
 得も知れぬような男と関わっても、其方の経歴に傷がつくだけやも知れない……。」

だからこそ、少女の明るさと優しさが尾を引いた。
不法入島者であるこの身を変に匿って、彼女の卒業に泥を塗りたくはない。
男は、自らの価値を異様に低く見ていた。
静かに首を横に振り、暗に自らが"真っ当な人間でない"事を彼女に告げる。

「……、……あ、ああ……否、其の様に呼ばれるのは初めてでな……。」

やたらと連呼してくる。

「まさか……気に入ったのか?好きな様に呼んでくれて構わないが……そも、何を以て"ごん"、と?」

何ともむず痒い感覚だ。
困ったように眉を下げた。
自分の価値を低く見る男は、其れ位は許容する。
が、流石に名づけの由来は気になったらしい。
おずおずと聞いてみた。

クゥティシス > 「あはは、別に誇るような経歴なんて私には無いからさ!
 それにー、私も元は異邦人の不法入島者だし?気にしない気にしない」

重々しい告白に対し、あっけらかんとした顔で笑う。
どうやら本当に気にしていないらしい。

「いやさ、私も最初は此処の文化に馴染めなくてねぇ…。盗み、強盗、色々やってたんだよねー。
 でもそれじゃダメだーって、ある人が止めてくれてさ。んで、頑張ってこっちに馴染んで今に至るってワケ。
 だからさ、私がゴンの手助けするのは、その人への私なりの恩返し?みたいな?」

少し気恥しそうに自らの境遇を告げて、照れ隠しにピコピコと耳が動いた。
だから気にするなと、そう言外に言っているのだ。
この手助けは自己のためでもあるのだし―。

「え、あ!嫌だった?あちゃ、ごめん…私のとこの文化なんだよね。
 割と勝手に愛称つけて呼び合うの…。えと、コンギクでしょ?でも、コンだと可愛らしすぎるからー、ちょっと強そうにして、「ゴン」なワケ」

どんなワケだ。
と、突っ込みたくなるような理由だった