2020/08/04 のログ
ご案内:「異邦人街【闇釣具屋ダークフッシュ】」に霊山 市仁さんが現れました。
霊山 市仁 > 闇の釣具店。
釣り具に闇も何もあるかと言われるかもしれないがそれは確実に存在する。
自らの寿命、魂、そのほかの大切なものを代償にしてまで釣りに焦がれるそんな者達は存在している。

そんな者たちが集う場所、異邦人街の外れに佇む一見して普通の釣具店。

だが、そこに入っていく者たちは皆一様に昏い目をしている。

…霊山市仁もそんなうちの一人であった…。

霊山 市仁 > …一歩店の中に踏み入ると明らかに他の釣具店とは違う佇まい。
ツンとする薬品の匂いと甘い香草の匂いが混ざった独特の薫り、吊り下げられた名前も知らぬ草その様相はむしろ魔道具店に近い。

「…店主、例のモノは入っているか?」

浅黒い肌のエルフ(釣りによる日焼けだ…ダークエルフではない。)の店主は口元にニヤリと笑みを浮かべて。
一本の竿と、そして仕掛けを取りだした。

『まさかそんなものは邪道だと言ってたアンタがこちら側に墜ちるとは…。』

「仕方ないだろう…僕にはこの戦い負けられない理由がある…。」

『あとはアンタに合わせて【調整】を行うだけだ。それまで待っていてくれ。』

そう、闇釣り具は闇の釣り具なので持ち主に合わせて【調整】を行う必要がある。
この【調整】の際に相性が合わなかったり、闇釣り具師の実力が確かでない場合は反発を起こし最悪所有者も釣り具も消滅してしまう…。

それほどのリスクがある作業だ…。

霊山 市仁 > 霊山にはそこまでのリスクを背負う覚悟がある…それに見合った目的がある。
そう…彼は…。

「…釣り大会で凄い大きい魚を釣ってちやほやされたい…。」

 そして、叶うなら釣った魚を捌いて見せて…『キャー霊山クン魚捌けるの?そういうのマジカッコいいと思う!』とか
『魚捌けるとかマジ尊敬するっス!流石っス!』とか『流石でござるな幽霊殿!某もこんな魚捌きさえ出来れば簡単に仲直りできるでござるのに!』みたいな…。

「くくく…。」

愉快な想像に思わず笑みがこぼれてしまう。

霊山 市仁 > 愉快な気持ちはそこにおいておく、取ってない狸の皮を数えないのががっかりせずに生きるコツ。
いや、まあ、もう死んではいるのだけど。

…闇釣具屋に来たから闇釣り具を見るというのが正しい楽しみ方かと言えば全然そんなことはない。
むしろ、この闇釣具屋で見るべきなのは異世界由来の釣り道具。

実際に商品になっている物から、資料として展示してあるだけの貴重なものまで…。
釣り好きが高じて闇墜ちした末に闇釣り具屋を開いたこの店主ならではのコレクション。

例えばこの水魅石というものは、竿の気につけて水に垂らしたら最後、周囲の魚をすべて石の魔術による魅了状態にして陸に上がらせて捕獲する…。
…あまりに被害が大きすぎるので流石に釣り大会では使えないし売り物ではない。

霊山 市仁 > 『完成したぞ…完璧な調整だ…。』

調整が終わった闇釣竿を受け取ると対価を払う。
こう…なんとか頑張ったら…立つ…かも?
といったくらいのお金の束。

『少なくないか?』

「あの、いや、買うって決めた時はいけるかなって思ったけど…いざ払うとなるとちょっと心細いのでやっぱり…ローンでお願いしたい。」

店主は大きなため息一つ。
こうして霊山は学生で(しかも幽霊)でありながら釣竿を買うためにローンを組むことになったのだった。



「絶対釣り大会では勝ってやるからなあ!!」

ご案内:「異邦人街【闇釣具屋ダークフッシュ】」から霊山 市仁さんが去りました。