2020/10/14 のログ
ご案内:「異邦人街」に白い少女さんが現れました。
■白い少女 >
ふしぎな街に、女の子はいました。
そこにいる人はいろんなみためをしてて、おおきい人や、ちいさい人や、犬のような人、かにのような人、へびのような人が、それがふつうみたいに、歩いています。
街もいろんなところがいっしょになってるみたいで、いろいろな街をみたことのある女の子も、それがいっしょになってるようなこの街は、とてもめずらしいのかきょろきょろとしています。
「――――」
街の人たちは、女の子には気づきません。
たくさんの人がいるので、女の子がきょろきょろ、うろうろすると、女の子にぶつかりそうになる人もいますが、女の子が気が付いてそっとよけます。
でもぶつかりそうになる人たちは、女の子が見えていないのか、そのことには気が付きません。
女の子に気が付く人は、いるのでしょうか。
ご案内:「異邦人街」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
■芥子風 菖蒲 >
此処に一人、白紙の少女に気づく漆の風が一つ。
季節の涼風が黒衣を靡かせ、青空の瞳に白が映る。
少年は風紀委員の仕事で、この異邦人街へとはるばると警邏に罷り越した次第であった。
「ねぇ」
物珍しそうに青空を瞬かせ、白の少女へと話しかける少年。
一文字の感情をあまり感じさせない無表情は年不相応。
人込みの中でも、その黒は良く目立つ。
「人込みで立ってると危ないよ。迷子?オレが送っていこうか?」
■白い少女 >
「―――――?」
声をかけられたことに少し気づかずに、女の子はきょろきょろします。
あまり声をかけられたことがなかったから、自分に言ってるのだと気づかなかったようです。
でも気がつくと、きょとん、と女の子は声をかけてくれた少年の方を見ます。
「わた―――、見え――――ん――すか?」
女の子は、少年にききました。
ひさしぶりに女の子に気がつく人がいたので、びっくりしたようです。
でも、その女の子の声は、なぜか古いレコードみたいに、たまに声がぷつぷつとはずれるように聞こえません。
「あ、まい―――じゃ、―――いです。
まちを見――――した。
こ――は、どこ―――――か?」
こてん、と女の子は、少年にききました。
どうやら、どこなのか分からないようです。
■芥子風 菖蒲 >
「……?」
何とも独特な喋り方だ。
声が途切れる。何かに取り残されたような、不思議な間。
その違和感に小首を傾げるも、少年は特に気にすることは無い。
「見えるも何も……そこにいるでしょ?何言ってるの?」
要領を得ない、と怪訝そうな声を上げた。
見える見えない以前に、"そこ"にいるじゃないか。
確かに不思議な雰囲気は感じるが、彼女も何かしら特別なのだろうか。
この島の、特に此の街じゃ不思議じゃない。
「迷子じゃないならいいけど……街を見に来たって事は、アンタ。異邦人じゃないのか?」
「此処は常世島で、異邦人街って言う場所。見ての通り
地球人以外の集まりで、文化の交差点……って、言うらしいよ」
「オレはあんまり興味無いから、人に聞いた程度。
ここはここで色々ややこしいらしいけど……アンタは興味あるの?」
質問に答え、更に此方から質問を重ねていく。
「オレは菖蒲。芥子風 菖蒲(けしかぜ あやめ)。アンタは?」
■白い少女 >
「”いほうじんがい”…!」
ふしぎな街の名前が”いほうじんがい”というのだと知って、女の子はすこし目をかがやかせました。
むずかしいことばは分かりませんが、いろんな人が住んでいるところ、ということはわかったようです。
「わた―――、ひとによ―――て、みえ――ひと、―――ないひとが、いる―――です。
”いほうじんがい”…
”いほうじんがい”…おぼ―――した!」
とてもうれしそうに、いほうじんがい、ということばをなんども言います。
それは言えるようで、そのことばはほかのことばとちがって、ちゃんと少年のみみにもきこえました。
「いろいろな―――をみまし―――ど、どこ――も、ちが――、まちだったので。
とても、――もしろい―――だと、おもって。
”あやめ”…?
あ、わた―――、の、なま―――は、”クロエ”って―――ます。」
ぷつぷつと切れる声で、女の子もじこしょうかいをします。
どうやら”クロエ”というなまえのようです。
■芥子風 菖蒲 >
「そう、異邦人街。……そんなに嬉しいの?」
とてもはしゃいでいる。復唱するほどに嬉しい事のようだ。
見ているこっちもどことなく、心が"ほわほわ"する。
感情表現、口下手な少年もいつになく、僅かに口元が緩んでいた。
「人によって見える見えないとかあるの?そう言う異能かな……」
その手の異能で困ってる人もいるらしい。
所謂透明人間的なそれだ。
ふぅん、と相槌を打てば小さく少年は頷いた。
「クロエ、か。まぁ、この島自体色々あるよね。ごちゃごちゃしてるというか……
そうだ。クロエは何処に住んでるの?多分、島にいるなら生徒だよね?何年?」
実に不思議な白雪の少女。
儚さを感じさせない明るい気配を感じる一方
目を離せば消えてしまいそうな不安感を何となく感じてしまう。
そう言う人間こそ、色々知りたくなってしまう。
少年は更に、質問を重ねていく。
■白い少女 >
「いろいろ―――みえ―――のは、たのしい―――す!
そとはいろい――――って、――――るとき、こんなに、――ろいろ、み―――たこと、なか―――んです」
にっこりとわらって、女の子はいいました。
どうやら、まえはあんまりいろんなところにいったことがなかったみたいで、いろいろなところを見たりするのが、とてもたのしいようです。
そうしていると、少年に住んでるの?ときかれて。
女の子はすこしうーんという風にかんがえてから、そのしつもんにこたえました。
「いま―――、”とこよしま”にい―――す。
――――んで、うーん……
”おとうと”が、いて……”おとうと”といっ――――に、います。
”せいと”じゃ―――いです」
”せいと”では、ないようです。
でも、”おとうと”がいるようで、たぶん、いっしょにいるといってるのかな、と思うかもしれません。
でも、女の子のまわりには、”おとうと”にみえる人は、いません。
いまははなれているのでしょうか?
「…”おとうと”は、”あやめ”―――んに、ちょっと、にて―――きがします」
すこし女の子は、少年をみて。
そんなふうにいって、笑いました。
■芥子風 菖蒲 >
「そんなにかな……?まぁ、気持ちだけはオレもわかんなくはないかな」
少年は俯瞰的な物見をすることが多く
彼女程はしゃいでものを喜ぶことは無い。
だけど、感情がない訳じゃない。知らない事を知れる喜び。
学べる喜び、というのは学生本分として多少なり理解出来る。
「此処が特別ごちゃごちゃしてるだけだと思うけど
クロエは、昔は普通な場所にいたの?……ん?おとうと……姉弟いるんだ」
如何やら一人と言う訳じゃないらしい。
ともすれば、弟と来ているのだろうか。
視線を右往左往として見るが……其れらしい人物はいない。
「弟っぽい人は見えないけど、一人で来たの?
……言っとくけど、俺は弟じゃないよ。一人っ子」
それはそれとして、ちょっとジョークが通じない少年だ。
笑う少女と対照的に、変わらない表情を不思議そうに傾けた。
「というか、生徒じゃないんだ。島に流れ着いてきちゃった異邦人……って、わけでもないか」
「困ってるなら、生活委員会とかを紹介するけど……
そもそも、見えるとは限らないのか。困ったな」
生徒でないのであれば、不法入島者が良い所だが
少女にそう言う邪悪さは感じない。
至って無邪気で、可愛げがある。
少しばかり困った唸りを上げて、一つ付け加える。
「ねぇ、クロエは普段何処に住んでるの?」
■白い少女 >
「”ふつう”…?
”しゅうどういん”―――に、い―――した。
そのあと”―――――”に、いくこ―――なって。
それ――ら、”そと”にはでた―――――ないです。
”おへや”にずっ―――、いました。」
だ―――ら、”そと”に―――――は、たのしい―――す。
ふだ―――…うーん。
…あっ。
”きがつくといろいろいろなところ”に―――ます!」
にこり、と女の子はわらいました。
どこにいたのかは、よく聞き取れなかったかもしれませんが、そとというだけで、女の子にとってはとてもたのしいと言ってるのは、なんとなくわかるかもしれません。
そうしてこまってる?ときかれると、女の子は「?」と、こてんとしました。
あんまり、こまったことはないみたいです。
気がついたらいろいろなところにいるらしいですが、たまに女の子に気がつく人も、みんないい人ばかりだったので、今のところ、こまったことになったことはありませんでした。
そんな風にいってから、女の子はまた、少年を見て。
少しだけ優しく、ふふ…とわらいました。
げんきとも違う、ちょっとふわりと、消えちゃいそうな笑顔でした。
「なんと―――く、にて―――きが、します。
ひとり―――
あ…
”お姉ちゃん”になって――――、い―――すよ?」
ふふふ、と少しだけ少年に、”お姉ちゃん”をやるようにせのびをしていいました。
でも、女の子より少年のほうがおおきいので、やっぱり少年をみあげてしまいます。
■芥子風 菖蒲 >
「修道院に……外……?部屋……?…………」
千々に乱れしふんわり声音。
気が付くと色んな場所にいる。
転移系の異能なのだろうか。
それにしては少し、雰囲気が違うと言うか……。
「……幽体離脱?」
少年は、思った事を口にするタイプだ。
もしかしたら、此処にいるクロエはクロエであってクロエではなく
体が別の場所にあったり、或いはこれ自体胡蝶の夢なのだろうか。
あな、摩訶不思議。少女への興味は尽きないばかり。
「不思議なんだね、クロエ。よくわかんないけど、クロエが楽しそうならいいかな」
悪い子じゃない。それだけはわかる。
だから、彼女が嬉々として笑顔を浮かべられるなら、それでいい。
殺伐とした価値観であっても、事泰平の空気を享受出来ない程、擦れてはいない。
「……?誰に似てるって?オレに似てる人なんて、そんなにいないと……え……?」
まさかのお姉ちゃん立候補。
ぱちくりと青空を瞬きし、少女を見下ろす。
何とも得意げに胸を張っているが、如何にも姉という雰囲気はしないので……。
「"妹"の間違いじゃない?」
はい、お口は正直なのです。
■白い少女 >
「 」
妹のまちがいじゃない?と言われれば、ほあ…とびっくりしたかおをします。
たしかに、女の子より少年のほうがおおきいし、おとなっぽいです。
「わた―――、”あやめ”―――んより、とし―――えです!たぶん…
あ…!
”おとうと”は、”あやめ”さ―――、より、おっき――――――よ!」
ぷんすか。
女の子はすこしふふくそうにそういいます。
でも女の子が小さいのは、かわりません。
■芥子風 菖蒲 >
「…………」
じー。ぷんすこ怒った少女を見下ろす青空。
感情の抑揚はほとんどないけど、少女と同じく微塵も悪意はない。
「……そう言う所が妹っぽいよなぁ……」
お口が正直なだけなんです…!
困ったようにぼやけば静かに首を振った。
「わかったよ、クロエ"姉さん"。姉さん、行きたい場所とかある?」
とは言え、彼女がそれを望むならそうしよう。
他人の望む事を、命令を素直に実行する人間である。
■白い少女 >
むぅ…と女の子は、すこしふくれてしまいました。
でも”姉さん”と言われるとすこしうれしそうにして、ふふふ、とわらいます。
”姉さん”ということばが、とても好きなようです。
「いき―――いばしょ…
…”おとうと”がいる―――――に、――きたいです。
…あっ
”あやめ”さ……あっ。
”あやめくん”とち―――う、”おとうと”の――――ろです」
すこしよびかたをかえました。お姉さんなので。
かわいい”おとうと”はくんらしいです。
■芥子風 菖蒲 >
「……くん、かぁ……」
そう呼ばれるのは、もしかしたら初めてかもしれない。
ちょっとくすぐったい感覚にちょっとだけ肩を竦めた。
けど、悪くない。そう言われるのは、悪い気はしない。
「オレじゃない方の"弟"ね。一応、島は結構回ったりするけど……
ねぇ、クロエ姉さん。心当たりとかはないの?少しでも情報があれば、手伝えると思うけど」
伊達に風紀委員に所属しているわけではない。
此の島の秩序を護る為、八面六臂、縦横無尽に黒風は吹く。
彼女の情報次第では、もしかしたら行けるかもしれない。
どう?と静かに尋ねる。
■白い少女 >
じょうほう、と言われれば女の子はうーんとして、かんがえます。
「”おとうと”…あ、”あやめくん”じゃ―――い”おとうと”も、いろいろな―――に、います。
わた―――、”おとうと”の”いた――――に、いる”――――です。
たぶ―――、とても、がんば――――いると、おもいます。
たいへん―――ところ――――も、たくさん――――きます。」
ぷつぷつと声が切れながら、せいいっぱいせつめいします。
いろいろなところにいるみたいですが、どこにいるかは、あまりわからないみたいでした。
でも、たいへんなところに、よくいくみたいです。
そういって、ぺこりとすると。
あ…となにかに気がついたように、女の子は自分を見ます。
そして、少年にこういいました。
「”あやめくん”も、――――みたいなので。
どこかで―――うかも、しれません。
もし――――ったら、なかよく―――――てください」
そういって、にこり、とわらうと。
まばたきしたあとか、それともすこしだけ目をはなしたときか。
気がついたら、女の子は、いなくなってしまいました。
いったい、どこにいったのでしょう。
ご案内:「異邦人街」から白い少女さんが去りました。
■芥子風 菖蒲 >
「何処にでもいる?……活動範囲が広い、って事?」
かくも、文面通りに受け取ればそう言う事なのだろうか。
彼女は一生懸命教えてくれる。
その絶妙な情報不足感に此方も今一要領を得ない。
困ったように、唸り声を上げた。
「意外と難儀しそう。せめて、特徴というか……ん、まぁ、そうだね。
向こうが余計な事をしない限り、俺は自分から襲ったりはしないよ」
それこそ、風紀に討伐を命じられるような悪人でなければ
その刃を抜く事はあり合えない。少しずれた約束に頷いたのもつかの間。
気づけば、霞の如く少女の姿は消えていた。
「……クロエ?」
思わず、訝しげな声が漏れた。
右を見ても、左を見ても彼女の姿は見えない。
白い白い、白昼夢だったのか。ただ、夢と呼ぶには余りにも現地味があり、何よりも。
「……俺は"此処"にいるからね。姉さん」
"夢で終わらせたくはない"。
届いたかわからない呟きは、風と共に消えていく。
少年の姿もまた、異邦の中へとまばらに消えていった。
ご案内:「異邦人街」から芥子風 菖蒲さんが去りました。