2020/10/14 のログ
ご案内:「異邦人街」に白い少女さんが現れました。
白い少女 >  
ふしぎな街に、女の子はいました。
そこにいる人はいろんなみためをしてて、おおきい人や、ちいさい人や、犬のような人、かにのような人、へびのような人が、それがふつうみたいに、歩いています。

街もいろんなところがいっしょになってるみたいで、いろいろな街をみたことのある女の子も、それがいっしょになってるようなこの街は、とてもめずらしいのかきょろきょろとしています。

「――――」

街の人たちは、女の子には気づきません。
たくさんの人がいるので、女の子がきょろきょろ、うろうろすると、女の子にぶつかりそうになる人もいますが、女の子が気が付いてそっとよけます。
でもぶつかりそうになる人たちは、女の子が見えていないのか、そのことには気が付きません。

女の子に気が付く人は、いるのでしょうか。

ご案内:「異邦人街」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
芥子風 菖蒲 >  
此処に一人、白紙の少女に気づく漆の風が一つ。
季節の涼風が黒衣を靡かせ、青空の瞳に白が映る。
少年は風紀委員の仕事で、この異邦人街へとはるばると警邏に罷り越した次第であった。

「ねぇ」

物珍しそうに青空を瞬かせ、白の少女へと話しかける少年。
一文字の感情をあまり感じさせない無表情は年不相応。
人込みの中でも、その黒は良く目立つ。

「人込みで立ってると危ないよ。迷子?オレが送っていこうか?」

白い少女 >  
「―――――?」

声をかけられたことに少し気づかずに、女の子はきょろきょろします。
あまり声をかけられたことがなかったから、自分に言ってるのだと気づかなかったようです。
でも気がつくと、きょとん、と女の子は声をかけてくれた少年の方を見ます。

「わた―――、見え――――ん――すか?」

女の子は、少年にききました。
ひさしぶりに女の子に気がつく人がいたので、びっくりしたようです。

でも、その女の子の声は、なぜか古いレコードみたいに、たまに声がぷつぷつとはずれるように聞こえません。

「あ、まい―――じゃ、―――いです。
 まちを見――――した。

 こ――は、どこ―――――か?」

こてん、と女の子は、少年にききました。
どうやら、どこなのか分からないようです。

芥子風 菖蒲 >  
「……?」

何とも独特な喋り方だ。
声が途切れる。何かに取り残されたような、不思議な間。
その違和感に小首を傾げるも、少年は特に気にすることは無い。

「見えるも何も……そこにいるでしょ?何言ってるの?」

要領を得ない、と怪訝そうな声を上げた。
見える見えない以前に、"そこ"にいるじゃないか。
確かに不思議な雰囲気は感じるが、彼女も何かしら特別なのだろうか。
この島の、特に此の街じゃ不思議じゃない。

「迷子じゃないならいいけど……街を見に来たって事は、アンタ。異邦人じゃないのか?」

「此処は常世島で、異邦人街って言う場所。見ての通り
 地球人以外の集まりで、文化の交差点……って、言うらしいよ」

「オレはあんまり興味無いから、人に聞いた程度。
 ここはここで色々ややこしいらしいけど……アンタは興味あるの?」

質問に答え、更に此方から質問を重ねていく。

「オレは菖蒲。芥子風 菖蒲(けしかぜ あやめ)。アンタは?」

白い少女 >  
「”いほうじんがい”…!」

ふしぎな街の名前が”いほうじんがい”というのだと知って、女の子はすこし目をかがやかせました。
むずかしいことばは分かりませんが、いろんな人が住んでいるところ、ということはわかったようです。

「わた―――、ひとによ―――て、みえ――ひと、―――ないひとが、いる―――です。
 
 ”いほうじんがい”…
 ”いほうじんがい”…おぼ―――した!」

とてもうれしそうに、いほうじんがい、ということばをなんども言います。
それは言えるようで、そのことばはほかのことばとちがって、ちゃんと少年のみみにもきこえました。

「いろいろな―――をみまし―――ど、どこ――も、ちが――、まちだったので。
 とても、――もしろい―――だと、おもって。

 ”あやめ”…?
 あ、わた―――、の、なま―――は、”クロエ”って―――ます。」

ぷつぷつと切れる声で、女の子もじこしょうかいをします。
どうやら”クロエ”というなまえのようです。

芥子風 菖蒲 >  
「そう、異邦人街。……そんなに嬉しいの?」

とてもはしゃいでいる。復唱するほどに嬉しい事のようだ。
見ているこっちもどことなく、心が"ほわほわ"する。
感情表現、口下手な少年もいつになく、僅かに口元が緩んでいた。

「人によって見える見えないとかあるの?そう言う異能かな……」

その手の異能で困ってる人もいるらしい。
所謂透明人間的なそれだ。
ふぅん、と相槌を打てば小さく少年は頷いた。

「クロエ、か。まぁ、この島自体色々あるよね。ごちゃごちゃしてるというか……
 そうだ。クロエは何処に住んでるの?多分、島にいるなら生徒だよね?何年?」

実に不思議な白雪の少女。
儚さを感じさせない明るい気配を感じる一方
目を離せば消えてしまいそうな不安感を何となく感じてしまう。
そう言う人間こそ、色々知りたくなってしまう。
少年は更に、質問を重ねていく。

白い少女 >  
「いろいろ―――みえ―――のは、たのしい―――す!
 そとはいろい――――って、――――るとき、こんなに、――ろいろ、み―――たこと、なか―――んです」

にっこりとわらって、女の子はいいました。
どうやら、まえはあんまりいろんなところにいったことがなかったみたいで、いろいろなところを見たりするのが、とてもたのしいようです。

そうしていると、少年に住んでるの?ときかれて。
女の子はすこしうーんという風にかんがえてから、そのしつもんにこたえました。

「いま―――、”とこよしま”にい―――す。
 ――――んで、うーん……
 
 ”おとうと”が、いて……”おとうと”といっ――――に、います。
 ”せいと”じゃ―――いです」

”せいと”では、ないようです。
でも、”おとうと”がいるようで、たぶん、いっしょにいるといってるのかな、と思うかもしれません。
でも、女の子のまわりには、”おとうと”にみえる人は、いません。
いまははなれているのでしょうか?

「…”おとうと”は、”あやめ”―――んに、ちょっと、にて―――きがします」

すこし女の子は、少年をみて。
そんなふうにいって、笑いました。

芥子風 菖蒲 >  
「そんなにかな……?まぁ、気持ちだけはオレもわかんなくはないかな」

少年は俯瞰的な物見をすることが多く
彼女程はしゃいでものを喜ぶことは無い。
だけど、感情がない訳じゃない。知らない事を知れる喜び。
学べる喜び、というのは学生本分として多少なり理解出来る。

「此処が特別ごちゃごちゃしてるだけだと思うけど
 クロエは、昔は普通な場所にいたの?……ん?おとうと……姉弟いるんだ」

如何やら一人と言う訳じゃないらしい。
ともすれば、弟と来ているのだろうか。
視線を右往左往として見るが……其れらしい人物はいない。

「弟っぽい人は見えないけど、一人で来たの?
 ……言っとくけど、俺は弟じゃないよ。一人っ子」

それはそれとして、ちょっとジョークが通じない少年だ。
笑う少女と対照的に、変わらない表情を不思議そうに傾けた。

「というか、生徒じゃないんだ。島に流れ着いてきちゃった異邦人……って、わけでもないか」

「困ってるなら、生活委員会とかを紹介するけど……
 そもそも、見えるとは限らないのか。困ったな」

生徒でないのであれば、不法入島者が良い所だが
少女にそう言う邪悪さは感じない。
至って無邪気で、可愛げがある。
少しばかり困った唸りを上げて、一つ付け加える。

「ねぇ、クロエは普段何処に住んでるの?」

白い少女 >  
「”ふつう”…?
 ”しゅうどういん”―――に、い―――した。
 そのあと”―――――”に、いくこ―――なって。
 それ――ら、”そと”にはでた―――――ないです。
 ”おへや”にずっ―――、いました。」

 だ―――ら、”そと”に―――――は、たのしい―――す。

 ふだ―――…うーん。
 
 …あっ。
 ”きがつくといろいろいろなところ”に―――ます!」

にこり、と女の子はわらいました。
どこにいたのかは、よく聞き取れなかったかもしれませんが、そとというだけで、女の子にとってはとてもたのしいと言ってるのは、なんとなくわかるかもしれません。

そうしてこまってる?ときかれると、女の子は「?」と、こてんとしました。
あんまり、こまったことはないみたいです。
気がついたらいろいろなところにいるらしいですが、たまに女の子に気がつく人も、みんないい人ばかりだったので、今のところ、こまったことになったことはありませんでした。

そんな風にいってから、女の子はまた、少年を見て。
少しだけ優しく、ふふ…とわらいました。

げんきとも違う、ちょっとふわりと、消えちゃいそうな笑顔でした。

「なんと―――く、にて―――きが、します。
 
 ひとり―――
 あ…
 ”お姉ちゃん”になって――――、い―――すよ?」

ふふふ、と少しだけ少年に、”お姉ちゃん”をやるようにせのびをしていいました。
でも、女の子より少年のほうがおおきいので、やっぱり少年をみあげてしまいます。

芥子風 菖蒲 >  
「修道院に……外……?部屋……?…………」

千々に乱れしふんわり声音。
気が付くと色んな場所にいる。
転移系の異能なのだろうか。
それにしては少し、雰囲気が違うと言うか……。

「……幽体離脱?」

少年は、思った事を口にするタイプだ。
もしかしたら、此処にいるクロエはクロエであってクロエではなく
体が別の場所にあったり、或いはこれ自体胡蝶の夢なのだろうか。
あな、摩訶不思議。少女への興味は尽きないばかり。

「不思議なんだね、クロエ。よくわかんないけど、クロエが楽しそうならいいかな」

悪い子じゃない。それだけはわかる。
だから、彼女が嬉々として笑顔を浮かべられるなら、それでいい。
殺伐とした価値観であっても、事泰平の空気を享受出来ない程、擦れてはいない。

「……?誰に似てるって?オレに似てる人なんて、そんなにいないと……え……?」

まさかのお姉ちゃん立候補。
ぱちくりと青空を瞬きし、少女を見下ろす。
何とも得意げに胸を張っているが、如何にも姉という雰囲気はしないので……。

「"妹"の間違いじゃない?」

はい、お口は正直なのです。

白い少女 >  
「    」

妹のまちがいじゃない?と言われれば、ほあ…とびっくりしたかおをします。
たしかに、女の子より少年のほうがおおきいし、おとなっぽいです。

「わた―――、”あやめ”―――んより、とし―――えです!たぶん…
 
 あ…!
 ”おとうと”は、”あやめ”さ―――、より、おっき――――――よ!」

ぷんすか。
女の子はすこしふふくそうにそういいます。
でも女の子が小さいのは、かわりません。

芥子風 菖蒲 >  
「…………」

じー。ぷんすこ怒った少女を見下ろす青空。
感情の抑揚はほとんどないけど、少女と同じく微塵も悪意はない。

「……そう言う所が妹っぽいよなぁ……」

お口が正直なだけなんです…!
困ったようにぼやけば静かに首を振った。

「わかったよ、クロエ"姉さん"。姉さん、行きたい場所とかある?」

とは言え、彼女がそれを望むならそうしよう。
他人の望む事を、命令を素直に実行する人間である。

白い少女 >  
むぅ…と女の子は、すこしふくれてしまいました。
でも”姉さん”と言われるとすこしうれしそうにして、ふふふ、とわらいます。
”姉さん”ということばが、とても好きなようです。

「いき―――いばしょ…
 
 …”おとうと”がいる―――――に、――きたいです。
 
 …あっ
 ”あやめ”さ……あっ。
 ”あやめくん”とち―――う、”おとうと”の――――ろです」

すこしよびかたをかえました。お姉さんなので。
かわいい”おとうと”はくんらしいです。

芥子風 菖蒲 >  
「……くん、かぁ……」

そう呼ばれるのは、もしかしたら初めてかもしれない。
ちょっとくすぐったい感覚にちょっとだけ肩を竦めた。
けど、悪くない。そう言われるのは、悪い気はしない。

「オレじゃない方の"弟"ね。一応、島は結構回ったりするけど……
 ねぇ、クロエ姉さん。心当たりとかはないの?少しでも情報があれば、手伝えると思うけど」

伊達に風紀委員に所属しているわけではない。
此の島の秩序を護る為、八面六臂、縦横無尽に黒風は吹く。
彼女の情報次第では、もしかしたら行けるかもしれない。
どう?と静かに尋ねる。

白い少女 >  
じょうほう、と言われれば女の子はうーんとして、かんがえます。

「”おとうと”…あ、”あやめくん”じゃ―――い”おとうと”も、いろいろな―――に、います。
 わた―――、”おとうと”の”いた――――に、いる”――――です。

 たぶ―――、とても、がんば――――いると、おもいます。
 たいへん―――ところ――――も、たくさん――――きます。」

ぷつぷつと声が切れながら、せいいっぱいせつめいします。
いろいろなところにいるみたいですが、どこにいるかは、あまりわからないみたいでした。
でも、たいへんなところに、よくいくみたいです。




そういって、ぺこりとすると。
あ…となにかに気がついたように、女の子は自分を見ます。

そして、少年にこういいました。

「”あやめくん”も、――――みたいなので。
 どこかで―――うかも、しれません。

 もし――――ったら、なかよく―――――てください」

そういって、にこり、とわらうと。

まばたきしたあとか、それともすこしだけ目をはなしたときか。
気がついたら、女の子は、いなくなってしまいました。

いったい、どこにいったのでしょう。

ご案内:「異邦人街」から白い少女さんが去りました。
芥子風 菖蒲 >  
「何処にでもいる?……活動範囲が広い、って事?」

かくも、文面通りに受け取ればそう言う事なのだろうか。
彼女は一生懸命教えてくれる。
その絶妙な情報不足感に此方も今一要領を得ない。
困ったように、唸り声を上げた。

「意外と難儀しそう。せめて、特徴というか……ん、まぁ、そうだね。
 向こうが余計な事をしない限り、俺は自分から襲ったりはしないよ」

それこそ、風紀に討伐を命じられるような悪人でなければ
その刃を抜く事はあり合えない。少しずれた約束に頷いたのもつかの間。
気づけば、霞の如く少女の姿は消えていた。

「……クロエ?」

思わず、訝しげな声が漏れた。
右を見ても、左を見ても彼女の姿は見えない。
白い白い、白昼夢だったのか。ただ、夢と呼ぶには余りにも現地味があり、何よりも。

「……俺は"此処"にいるからね。姉さん」

"夢で終わらせたくはない"。
届いたかわからない呟きは、風と共に消えていく。
少年の姿もまた、異邦の中へとまばらに消えていった。

ご案内:「異邦人街」から芥子風 菖蒲さんが去りました。