2020/09/20 のログ
■神樹椎苗 >
青年の微笑みを向けられると、目をぱちくりとさせる。
そして怪訝そうな顔を向けた。
「――ロリコンですか?」
胡散臭そうなものを見る視線で、青年を見る。
目が細まり、じっとりとした視線。
なお、珍しくこの日は無防備に過ぎる服装。
ノースリーブからは、脇が見えて隙間からは肌着も見えるだろう。
脚もまた、屈みこむ姿勢になればほとんど付け根まで見えそうだ。
とはいえ、どこも包帯だらけだが。
■レオ >
「ぶッ…!!!」
噴き出した。
■レオ >
「いっ…いや、違いますけど…っ!
あ、あぁー…いや、あー……
す、すみません……変な事言ったかな…」
しょぼん、とちょっと小さくなった。
さっきまでのまるで感情のない、冷静な機械のような姿からうって変わって狼狽える姿は、先ほどまでの人物と同一人物だったのかと思うかもしれない。
ちょっと赤くなって、慌てて弁解の言葉をかき集める。
「そのっ、深い意味はなくて…
なんというか、いやっ、可愛らしいとは思いますけど…あぁいや、そうじゃなくて…
いきなり来たのに、邪見にしないでくれましたし、そのぉ……
この子の事も、気にかけてくれてたし…
あ、あー……ぁー……」
言葉に詰まって、うめくような「ぁー…」という声をあげながら、赤くなって沈黙した。
弱い。
■神樹椎苗 >
さっきまで静かだった青年が、突然狼狽え始める。
その様子がおかしくて、少しいたずら心が刺激された。
「――ふうん、可愛らしく思ってくれるのですか」
膝の上に乗るくらい頭を傾けて、下から覗き込むように意味ありげな表情で見上げる。
「しいみたいな身体つきでも――気になりますか?」
と、服のやや短い裾を、左手でひらひらと揺らして見せる。
姿勢的に、うっかりすれば見えてしまいそうな際どさだ。
■レオ >
「………………………‥‥‥‥‥」
あからさまに目を逸らす。
ちらりと見えそうになったものに注意が向きそうになって、強引に首を捻って視線を逸らした。
明らかに年下、というか5、6歳かそれ以上に下の女の子に、あまつさえいいようにされている16歳がいた。
情けない。
「い、いや……気になるというか、その……」
ひらひらしてる。風がふわっとこっちに来る。
なんでこの子はこんなことしてるの!?
「ぃー……」
年下の、それも傷だらけの女の子が何故かこっちに変な事をしてくる。
なんていうかその、こう……
誘ってくるような。
いや違うんです。
そんな風に、思ってなんていないです。
誓って違います。違うと思いたい。
「い、ぃやその……あ、うぅ……」
気になるかならないかでいえば、気になる。
いや、ロリコンという意味ではないです。ほんとです。
傷だらけだし。右手が動かないなんて言うし。
そういう意味での気になるです。
本当です。
ロリコンじゃないんです。
ないとおもいたいです。
兎に角目を逸らして、三角座りでどんどんちっちゃくなるしかなかった。
弱い。弱すぎる。
■神樹椎苗 >
あからさまに気にしていた。
視線が完全に泳いでいる。
顔も赤い。
なんだか、妙に楽しくなってきた。
自分の動作一つで狼狽える青年が面白い。
「――気にならないのですか?」
少しだけ寂しそうな声音を作って、三角座りの青年に一歩分近づく。
元々たいして離れていない、詰めれば肩も触れそうな距離。
袖のない服から、うっかり肌着も見えてしまいそうな距離。
「顔、赤ぇですよ」
そんな距離で青年の顔をのぞき込めば、目と鼻の先に互いの顔。
幼さの割に愛らしく整った顔に、淡く青い憂いのある瞳が青年の目を見つめる。
白く綺麗な肌に張られたガーゼも、痛々しさだけでなく、危うさと儚さを強調するエッセンスになるだろう。
■レオ >
「………‥‥‥‥」
近い。近い近いとても近い。
当たりそうになる。髪の毛が鼻にすこしかかってくる。
ちょっといい匂いがする。…じゃないよ。
まだ面識も薄い、名前も知らない、…可愛い女の子に
こんな近くまで近づかれると流石にどきどきする。
違う、これはこう、そういうアレじゃないんです。
色々、思うところがあるというか、思い出すものはあるけど。
見た目とかじゃなく、纏う気配みたいなもので、色々感じることはあるけれども。
色々なものが見えそうな服装。
傷だらけなのも非日常的で。
覗き込まれると、その青い目に吸い込まれそうになる。
青い目が、自分の顔を映す。
あぁ…すごい真っ赤になってる。
こんな小さい女の子に近づかれて真っ赤になってる。
今他の人が来たら言い逃れが出来ない。
本当に危ない人でしかない。
服、血まみれだし。
「………………………………………………………‥‥‥‥‥‥‥‥………」
そっと、両肩に触れる。
肩に触れて……
■レオ >
「……ね、猫の埋葬、しよ……っか…!!」
に げ た
■神樹椎苗 >
青年の葛藤が見て取れる。
視線も逸らせないでいるのがわかる。
顔を赤くして震えている。
その手が肩に伸びてきて。
ほんの少しだけ、何をされるだろうかと青年の行動を楽しみにして。
「――ぷ、ふふ」
続く言葉に思わず、息が漏れた。
「はあ――お前、なんだか、可愛いですね」
目を細めて柔和に微笑みかけながら、肩に触れた手に左手を重ねる。
触れればどことなく感じられる、自分と近しい気配。
それを感じつつも、必死な様子の青年が妙に可愛らしく見えて、愛らしいものを見るような視線になっていた。
「ええ、そうですね。
弔ってやらないといけませんからね?」
くすくす、と小さな笑みをこぼしながら。
一生懸命に話を逸らした青年を、上目に見つめた。
■レオ >
「………~~~~~~~~!」
負けた。完敗した。
目の前の10歳に満たないかもしれない女の子との間に、完全に上下関係が完成してしまった……気がする。
もう目の前の女の子に頭が上がらない気がする。
「かわ…っ
‥‥‥‥‥そ、う…です、ね……」
もう真っ赤になった顔は戻らない。
あぁ、なんでこんなに赤いんだろう。
水でも被りたい気分だ。
被ったらそれこそ笑われそうだけど。
「とも…っ、かく、そう…うん、うん……
ちゃんと弔ってあげないとかわいそうだから…‥‥うん…、…‥‥ぁ」
気を取り直そう、と、そういっていそいそともう動かない猫を抱えたとき。
気が付いた事が一つ、あった。
さっきまでの動揺が冷めていき、そっと猫の骸を寝かせなおす。
「…ごめん、ちょっと……待ってもらえますか?」
そう言いながら、救急セットから鋏がないか確認しだす。
■神樹椎苗 >
赤くなったまま目を白黒させて狼狽える青年。
それを見ているのが楽しくて、ついついからかってしまっていたが。
空気が変われば、頷いて椎苗もまた表情を変えるだろう。
「ん、どうしましたか」
救急箱には小さな鋏くらいは入っているだろう。
青年の様子から、何をするのだろうかと様子を窺う。
■レオ >
「‥‥…死の気配がまだする」
ぽつりと呟いて、鋏で塗った腹部の糸を切っていく。
傷は塞がってはいない。糸を切れば、腹部は再び開く。
その傷口に手を入れ、何かを探っていく……
「……ここ、か?」
そういって取り出したのは、掌に収まる小さな塊が4つ。
それのうち3つは、膜が破れて中身が出ている。
すでに動く様子のない、生まれてすらいない生命。
ただ、残った1つだけ。
膜の中で、小さく…注視しなければ気が付かないほど小さく『動いて』いるものがある。
「……他の3つは、駄目か」
その膜に、鋏を入れる。
つぅ……と膜が切れる。中で動いていた、それが出てくる。
青年の掌に収まる、ひとつの。
「……」
――――みぃー、みぃー……みぃー
命だ。
■神樹椎苗 >
青年の行動を見守る。
そして、猫――母猫から取り出されたのは、小さな、吹けば消えそうな命の灯。
小さすぎるその赤子は、まだ『寒く』なっていない。
「――っ、なにぼさっとしてるのですか。
今すぐ動物病院に連れていくのです!」
ばっと立ち上がって、青年を引っ張り起こすように。
今すぐにでも走り出しそうな様子で。
「その赤子は、まだ助かるのです。
まだ――『あたたかい』のですよ」
それでも、そのままではすぐにでも死んでしまうだろう。
まだ産まれるはずでなかった未熟な赤子なのだ。
助けるのなら、それは一刻を争う状況だ。
■レオ >
「――――」
命だ。
死の気配は漂っている。放っておけば、いずれ死ぬ。
でも、まだ『濃く』ない。
熱がある。
産声をあげている。
死体の中から、『生まれた』小さな命。
「…‥オレだ」
ぽつりとつぶやいた。掌にその命を置きながら。
そうしていると、ぐいっ、と少女に、引っ張られる。
青年ははっとしたように、直ぐに立ち上がるだろう。
「‥‥っ! あ、は…はいっ!!
……戻ったら、すぐに埋めるから」
眠りについた『母』に、そっと上着を被せ。
ハンカチで掌の上の命を包み、タクシーを呼ぶ。
ここからなら…走るよりも、タクシーで向かった方が、速く着く。
……ほどなくしてタクシーが付き、少女と二人でそれに乗り込む。
血まみれの青年にタクシーの運転手がぎょっとしたものの、小さな子猫を見れば、何も言わずに車を走らせてくれた。
■神樹椎苗 >
異邦人街に佇む動物病院までタクシーを走らせて。
子猫を預ければ、待合室に二人で並び。
獣医にしばらく預かる必要があると言われれば、依頼する事になるだろう。
カルテに連絡先を書いて、当面の入院費も手早く支払ってしまう。
獣医の話によれば、この島の技術であれば一週間もすれば安定するそうだ。
一週間後に椎苗か青年のどちらかが引き取りに来ればいいらしい。
「――よかったですね。
とりあえず、生き延びそうですよ」
簡単な手続きなどを終えれば。
そんなふうに、青年へ声を掛けるだろうか。
■レオ >
「……ふぅ」
動物病院の椅子に、二人して座って息をつく。
なんだかんだで…すごい一日になってしまった。
「そう…みたい、ですね。
よかった‥‥…」
ほっと一息したのか、疲れがすこし来た。
集中力がいる作業だったし、色々……目まぐるしかった。
でも…本当によかった。
心からそう思う。
「……色々、お世話になっちゃって…すみません。
そういえば、名前も名乗ってなかったな……なんか、ずっとドタバタで。」
思い返せば、名も知らぬのだ、こちらも、あちらも。
それにしては随分と濃い時間を共にした気がする。
「…レオ・スプリッグス・ウイットフォードです。
……君はなんていうんですか?」
■神樹椎苗 >
「別になにも世話なんてしてねーですよ。
お前が見つけて、お前が助けた命です。
誇っていい行いです」
そう言って少しばかり疲れている様子の青年を、励ますようにやんわりと小突く。
椎苗としては、考え事を吹き飛ばしてくれて、楽しくも慌ただしい有意義な時間を過ごせたのだ。
世話になったというのなら、お互い様と言ったところだろう。
「ん、かみきしいな。
好きに呼べばいいですよ」
そう名乗り返して、うっすらと笑いかける。
「一応、お前の連絡先も伝えておくと良いです。
というか、引き取り手はお前ですからね」
助けた以上は責任を取るべきだと言うように、青年を促した。
■レオ >
「あたっ……じゃあ……神樹さん、で。
……誇って、か。」
そう思いながら、病室の方を見る。
自分が見つけ、助けた命。
でもその命の母親を、殺した、殺そうとした。自分達の手で。
少しの、後ろめたさを感じながら。
それは言う事は、ない。
「引き取り、先か……
…よかったら、名前…つけてもらえないかな?なんて…
名づけって、あんまり得意じゃなくて…何かの縁と思って、お願いできないですか?
それと……
もしよかったら、あの子に会いに来てくださいね。
連絡入れてくれれば、何時でも歓迎しますから」
小さく微笑み、連絡先を交換する。
自分に、同居人か…
そういえば…
あの寮、ペット大丈夫なのだろうか。
そんな事を想いながら、これからもよろしく、と握手を求めるだろう。
■神樹椎苗 >
「名前、しいが、ですか?」
名前を付ける――名前で縛る。
その行為は、いつからか自然と避け続けてきた事。
誰かの名前を呼んだことは、これまでにない。
「――いつもなら、断るところですが。
あいつも呼び名くらいはないと、困りますからね」
少し考えながら、連絡先の交換はすんなりと応じるだろう。
握手もまた、拒むことなく左手を差し出す。
「名前――そうですね。
『マシュマロ』で、どうですか」
それはふと思い浮かんだ言葉。
口にするとなぜか、とても懐かしいような温かい気持ちになる。
手のひらに乗る、白い毛の子猫から連想したのか、それとも別の何かがあったかはわからないが。
「しいも、名付けるとかしたことねーですから、なんですが」
と、少し困ったように。
■レオ > 「ん…」
マシュマロ、と名付けられた子猫を見る。
真っ白の毛に、あおい瞳。
「よし、じゃあ……
マシュマロはとりあえず、僕の所で預かってみますね。
何かあったら、これも縁なので…神樹さんの方に連絡入れるかもしれないけど、大丈夫かな?」
そういいながら、ぎゅっと握手。
少女の手は小さく補足、青年の手は、分厚い皮膚と何度もできた血豆でがさがさしている。
しっかり握手して、手を離した。
「…それじゃあ、神樹さん。
そろそろ戻ろっか、お母さんをちゃんと、埋葬してあげないといけないし」
■神樹椎苗 >
「ええ、はい、構わねーです。
しいも協力しましたからね、手伝える事があれば手伝いますよ」
可愛げのある狼狽えっぷりと違って、握った手はしっかりと男らしかった。
こんな頼もしい手をしているのにと思うと。
先ほどの様子を思い出して、また面白くなってしまう。
「ふふ、そうですね、ほったらかすわけにもいかねーですし。
それじゃ、一度戻りますか――ロリコン」
また目を細めて、悪戯っぽく笑いながら青年を見上げた。
■レオ > 「うっ…‥‥」
ロリコンと言われれば、即座にナイフで刺さったかのように凹む。
何はともあれ、助かった命があるのである。
それを噛み締め、2人は修道院に戻るだろう……
ご案内:「宗教施設群-修道院」からレオさんが去りました。
ご案内:「宗教施設群-修道院」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群-とある修道院」にオダ・エルネストさんが現れました。
■オダ・エルネスト >
主不在の聖域に、土足で踏み込み清める男一匹。
古い建物は適度に人の手を入れねば、ダメになるのも早い。
であるからして、手入れは必須。
管理者が裏で育てている畑は雑草と害虫駆除くらいはする。
そんな修道院の表には今、表に『シスター不在中!現在のお話相手はオッダ神父!』と雑に紙を貼り付けた看板が出されている。
※悩み事、相談事は迷宮入りする可能性があります。
そんな修道院の中では、黒い祭服の男が―――
―――踊っていた。
ステップ、ステップ、ターン!リズムに合わせて伸ばした手に下ろして、カッと音がしそうな機敏な動きを魅せる。
■オダ・エルネスト >
しかし、これはただ踊っているだけではない。
イメージした通りに身体を動かす、一種の'''''''合気''''''である。
どれくらいの速度で、指の高さまで寸分違わず動かす訓練。
それは肉体を完全に熟知し支配するということ。
拳を作る動作一つとってもそれは脳内描いた『影』の後をトレース出来ているのか。
それをただ確かめながら動いている。
それがただのアイドルの踊りのようでも、これは苛烈な訓練である……!
「ふぅ……」
人差し指で天を指し、息を吐く。
完全にキマっていた。
■オダ・エルネスト > 少し離れたところに置いてあった携帯端末を手にして、
自分の動きを再確認する。
「ターンの後の腕周りの挙動が少し、ズレてるな……しばらく本格的な訓練をしてなかったツケか。
それにこっちは少し顔の向きが違うな……。
学園祭――常世祭――までに仕上げられるのか、この私を……いや、間に合わせてみせるさ」
祭服の男は録画した自分の踊りをみて握りこぶしを作る。
オダ・エルネストは日々進化中。
「さて、そろそろ夕暮れか……」
先日、お見舞いに行った後、暇そうだったので本を幾つか持っていったりしたが、
あの様子じゃ、直ぐに読み飽きてしまいそうだ。
だが、きっと彼女に必要なのは時間と彼女を求める『人』との繋がりだ。
―――私は、まだ彼女たちのようにはなれない。
自嘲めいた笑みを浮かべて、お茶を用意する。
これを飲み終えたら今日は店じまいとしよう。
ご案内:「宗教施設群-とある修道院」にカルマさんが現れました。
■カルマ > はてさて……
かの有名なる美しき聖女、なるものをこの目に入れようと思い……
更には、時勢さえ許せば戴き物をしようかと思ったのだが……
「『シスター不在中!現在のお話相手はオッダ神父!』……だと……?」
なんと、いうことだ……!?
私の神はどこへいってしまったというのだ……!?
しかし、此処まできて収穫なしというのは如何にも惜しい。
であれば……この、『オッダ神父』なる者にせめてもの去就を聞くしかなかろうか……
「失礼……」
ソレは静かに教会へ足を踏み入れた。
もちろん、紳士の証たる仮面にマントはそのままだ。
■オダ・エルネスト >
扉を開ければ、差し込む日差し、
其の先に一人の黒い祭服の男。
客人の到来に手にしていたティーカップをサイドテーブルに置くと
組んでいた脚を無駄に天まで上げて弧を描くようにして下ろした。
ターンッ!と音を鳴らして、勢いをつけて立ち上がる。
バッと両手を広げ、いつの間にか左手には黒川装丁の本を手にして笑顔で男が応える。
「ようこそ、薔薇の修道院へ」
誰も『薔薇の』などと呼んだこともないし、周囲に薔薇、生えてたっけかとかそういうレベル。
無駄に歯が輝く笑顔にて迎えることだろう―――……、
■カルマ > 「ほう……」
差し込む日差しは輝かしく。
そしてそこに座るは光を闇に染める祭服姿の男。
おお……そして、彼の男は……
美事な軌跡を描き足を踏み降ろす。
ターンッ
その音は静寂なる教会になんと美しく響くことか……っ
「なるほど……『薔薇の修道院』……
美しき聖女が守る修道院と聞いてはいたが。
よもや、代理を預かる男までもが美の体現とは思いも寄らなかったよ」
私はこの男に敬意を表そう。
この輝きを持つ男に。
であれば、まずは……
「お出迎えいただき、感謝の極み。
私はカルマ。通称『愛深きカルマ』と名乗るもの。
以後、お見知り置きいただきたい。」
ばさり、とマントを翻す。
腕をあげ、指を立てる。
差し込む日差しの粒子が私とかの神父の邂逅を称えることだろう。
■オダ・エルネスト > 「すまない……あなたが求める聖女は今、神の試練に挑んでいるところだ」
そう口にしながら一度目を閉じて天を仰ぎ見れば、今度は本を抱きしめるようにしてやや下を向く。
貴方が求めた聖女の事を思ってか男はそう苦しそうな顔をして答えたようだった。
彼女の宗教に修行ってあるの? 男は知らない。
でも、多分生きることが試練ならそれって大変だ、間違ってない。
「迷人を歓迎するのは、神父として当然のこと。
私はオダ。 オダ・エルネストだ。
愛部垣カルマ……その称賛、ありがたく受け取ろう」
中々奇抜なファッションセンスな人だな、と改めて確認する。
仮装パーティーの時期にはまだ早いが、ここは修道院その打ち合わせが今から来ていたとしても不思議じゃない、かと疑問は尽く滅却する。
「今日この日の出会いは恐らく善因善果による出会い、
神にもカルマ、貴方の来訪は読めていなかったに違いない」
こほん、と咳払いを一つ。
「それで、本日は何か悩み事か相談事でも?」
多分こういう確認でいいはず、これまで何故か迎えれば扉を閉じて去っていく近隣住民たちがいたが、
どうやら、何も間違っちゃいなかった。
このカルマの言葉を借りるならば、私が―――美しすぎたか……。
「フ……」
思わず、笑みを浮かべてしまった。
■カルマ > 「なんと……神の試練……!」
祭服の男はその端正な顔を歪め、天を見る。
そして下を向き……絞り出すような苦しみを込めた声で答えた。
なるほど、そういうことか。
『美しき修道女』ではなく『美しき聖女』と、私の耳には伝わってきた。
すなわち……かの女史は偉大なる神の試練に立ち向かうほどの、敬虔なる聖女!
おお……これぞまさしく私が求めるべき聖女であったはず!
今日この時、出会えなかったのは悔やまれる……
さぞや輝かしき宝を秘めていたのに違いないというのに
「オダ・エルネスト……それが貴殿の名か。
ほう……名前にすら、気品がある。」
思わず嘆息をする。
待て――考えてもみれば、このオダ神父。
かの聖女の薫陶を得たか、さもなければ聖女を導いた男に相違ない。
ここで帰っても良かったのだが……よかろう。
貴方の器も計らせていただこうか。
「ほう……神父、神にも分からぬことがある……と?」
男は言った。善因善果による出会い、と。
すなわち、因果と神の思惑は別の領域にある、と。時として、神に使える徒としてはあるまじき言の葉と言えるかもしれない。しかし、それを恐気もなく口にした。その、意図を……求めよう。
「フ……」
ばさり、とマントを再びはためかせる。
「生憎と、悩み事も相談事も私にはなく。
ただ、名高き聖女にお目見えしようと思っただけなのだが……
試練とあれば、帰りはまだ先かね?」
仮面の下で深い笑みをたたえる。
もちろん見えるわけもないが、魂で感じ取れるはずだ。そう、貴様なら!
■オダ・エルネスト > 「まだ、詳しい日程は分からないが此度の試練は、彼女にとって転機となったかと思われるところ。
彼女とはこの世にて地獄の苦しみを分かち合った戦友でもある。
私は彼女が一日も早くこの場所に帰ってきてくれることを願っているよ」
首から下げた十字架の装飾を手に小さく、十字を切って祈る。
……で、彼女の宗教って十字を切っても大丈夫なの?
でも、祖国で流行ってた宗教ってこんなんだったから、今度ちゃんと聞いてみるか……などと考えて。
仮面で表情は読めなくとも、伝わることはある。
それは声であったりその人の所作であったりする。
「……そろそろ閉める時間ではあったのだが、
どうだろうか、良ければ一緒にお茶でも」
そう言えば、先程までオダがいた場所にはティーセットがある。
淹れてる茶は、恐らく香り的に緑茶の類かと思われる。
■カルマ > 「ふむ……それほどの試練か……
戦友? 戦友だと…… かの聖女と共に戦場に立ったと?」
なんと、この男は……いや、聖女は戦場にすら立ったと……そういうのか。
ますます興味深い。
『美しき聖女』、ああ……君は一体、どのような人物なのか……ッ!!
十字を切る……
そういえば、異邦の聖女、という噂もあったが。
つまるところ、宗教の行き着くところは同じだということだろうか……
いやまて。彼女がこちらの宗教に感化されたということは……?
「茶……? なるほど、雅なことだ。
喜んで、その提案をお受けしようではないか!」
ばさり、とマントを翻して神父の対面に座る。
マントは椅子の背もたれへと美しくかかる。
片足をあげ、優雅に組んだ。
■オダ・エルネスト >
「あの地獄の中でも、彼女は美しかったよ……」
何処かはるか昔を思い出すかのように斜め上を見て、笑みを浮かべた。
真夏の海の家でのバイト。 水着姿で火照った肌の彼女は艷やかであった。
しかし、あのままでは焼けて大変なことになっていた。
まさに真夏の地獄であった。
「ちょっと私の使ってるティーカップは柄が違うのだが、先日割れていたのを生活委員会の方に頼んで修復してもらってな。
少々、美に欠けるところとは思うが、直ったものを使いたくなる心、理解していただければ幸いだ」
そう言われて、ティーセットを見れば、確かにテーブルの上にある他の皿を含めたものとは意匠が異なる。
「カルマは緑茶には砂糖は入れる方か?
好みで使ってくれ」
ポットから空いてるカップに緑茶を注ぎ、テーブルの上にある小瓶を開けると角砂糖が幾つも入っているようだ。
「しかし、マリー……ああ、ここのシスター・マルレーネのことだが、
彼女の名声が広がっている事は、我が事のように嬉しいよ」
そう言いながら、右手でカップを取れるように置く。
■カルマ > 「なに、形あるものはいずれ壊れるもの。ゆえに美とは、儚きものだ。
ソレを思えば輝く瞬間を封じ込めることが寛容ではある、が……」
そう、それこそが私の目的。
女性が美しく輝く瞬間に身にまとう薄布……これ以上の美があるとでもいうのだろうか。
そして、その輝く瞬間を圧縮し、手に収め、保管する……
これは、偉大なる所業であると自負している。
「しかし美が壊れるのもまた、必然ではある。
それを惜しむのであれば……如何にして修繕するか。それが肝であろう、と私は思う。
そして、その代償に些か趣が異なるものがあるというのであれば……それもまた、美であろう。
神父は如何思うかな?」
すっかり腰を落ち着けて自論を語る。
美――良いテーマではないか!
「緑茶に砂糖、か……ふむ、不勉強にして今まで試したことはなかったな。
この機会に試させていただくとしようか」
目の前に差し出された緑茶を一瞥する。
そして、迷いなく小瓶から角砂糖を入れていく。
ひとつ ふたつ みっつ よっつ いつつ……
「ほう!シスター・マルレーネ!
おお……なんと、可憐な響きであろうか……
神父、彼女がどのような人物か伺っても?」
ああ……空想が広がる。
我が内の聖女が更に輝いていく。
■オダ・エルネスト >
「詩的だな……だが、そう捉えてもらえる事に感謝の念は尽きない。
砕けた物が、再び無事だった頃の姿を魅せてくれる――修復技術が発展しているにも関わらず、手続きや費用がかかるのはカルマの言う通り形ある美の尊さを忘れない為か、とは考えさせられるところか」
顎に手を当てて、真面目に考える。
「……美意識、とは難しいなカルマ。
君がこれまで試したことがなかったように、ジャパンでは緑茶に砂糖というと顔を顰める人も居るという。
私からすれば普通でも、受け入れられないこともある」
であれば、私の口から語るマリーは誰かにとっては美しくないかも知れない。
「そうだな―――聖女たらんと見えないところでバタ足している人だ」
本人にその気はなくとも、
『宗教』という生き方を知らないのであればそうなるのは必然となる。
そういうつもりはなくとも、そうなっている。
「故に、シスターとしての彼女は美しい」
■カルマ > 「そう。我らは美を尊ぶがゆえに、美の損失を恐れ。
そして、美が損なわれてしまった時に如何にそれを取り戻すかに腐心する。」
私は謳うように語り上げる。
「それだ、オダ神父。人は、己と違うものを受け入れがたく思う。そういう生き物である。
特に、美については……だな。アレは、感性によって差が出てしまう。」
そして、受け入れられないものは時として否定、さもなければ排除の憂き目を見る。
実に嘆かわしいことだ。
「ゆえに、その不均衡を正すというのが君たち宗教家の役目ではなかろうか?
無論、全てを受け入れるなど不可能であろうが……理解を示すことは寛容であろう?」
そう、例えば……女性の身につける崇高な布を愛でる、この趣味も。
理解のない余人から見れば、蛇蝎のように忌み嫌われる。
芸術とは孤独なものだな……
「――聖女たらんと、か」
それは……実に、重い。
かの女史は、自らに重い使命を課し聖女として藻掻いているのだと。
なんと……なんと尊きことか。
そして……なんと悲しきことか。
それは……実に美しきことであろう。
「あぁ……それは……さぞや美しきシスターであろうな。
しかし……シスターとしての、か……」
それは……彼女という存在の重さか。