2021/10/29 のログ
■リスティ >
自分が出てきた建物に手を向け、魔術を……使おうとしたが。
「ぅ……駄目だ……なにか食べなきゃ……血……」
おぼつかない足取りで建物に入っていき、
しばらくの時間の後。
「誰も居ない……食べ物もない……」
ふらふらとしながら通りまで出てきた。
この際誰でもいいから、食べ物が…血がほしい。
ついでに状況を知りたい。
周辺を見渡した。
ご案内:「宗教施設群」にイェリンさんが現れました。
■イェリン > 嫌な音が、聞こえた。
正確には音とも言えない、膨らんだ風船から空気の抜けるような、
感覚的な物。
しかしそれもすぐに消える。
(魔術の気配がしたと思ったのだけど、それよりも――)
居住区を抜け、異質な空気を纏う建物を見やる。
自分の領分とは別の毛色、チリチリと肌を焼くような異物を拒む空気。
「良い夜ね。
――あなたは随分辛そうだけど」
魔術師は金髪の少女の姿をした存在と行き逢った。
■リスティ >
どうしようかと考えながら辺りを見ていれば、不意に声をかけられる。
人影を探していたのに見つけられない程になっていた自分に驚きながら、
ゆっくりと振り向けば。
「あー……人間?」
うっすらと光る赤い瞳がそちらを見つめる。
「ねぇ…血、ちょっと分けてよ。
最悪、食べ物でもいい、から……おなか……すいちゃって……」
初対面の相手に言うセリフではなかった。
一応立っているが、ほとんど行き倒れに見えることだろう。
■イェリン > 「そ、人間。
そういう貴方は人では、なさそうね」
変に異文化を刺激しないよう、気配を薄めて動く事に務めていたとはいえ、その驚き様に拍子抜ける。
身構えたままコートの中に握り込んだルーンを刻んだ石を握る手が、少しばかり緩む。
「……血? ヴァンピールの類かしら。
無碍に祓ったり封じたりはしないように努めてはいるのだけれど、
勝手に死にそうなのは初めて出逢うわね…
そうね、あなたにとって血は食事? そうであるなら――あなたにとって人間は餌?」
本来怪異の類を祓う身として。
常世の島の中において、自分の為すべきこととそこにある物の線引きを護るために、少女の姿をした怪異に問う。
■リスティ >
「そう……ヴァンピール。類、というか。そのもの。
別に死にはしない、けど……」
警戒する様子にも気づけない。かなり弱っている。
飢える赤い瞳は、そちらの首筋を見ている。
「……血は食事。でも餌じゃない…そんな動物みたいに、言わないで……
吸血鬼は、高等なんだから」
ぐったりした様子にそのような高等さは無い。
■イェリン > 赤い瞳、かなり弱っているせいかくすんで見えるが、
それでもその引き込まれるような輝きから、目を離せない。
アイオライトのような蒼の瞳は吸血鬼を見据えるが、その先の赤の瞳と合う事は無い。
わざとか、無意識にか。
首筋に向けられた視線に、ゾワゾワと背筋が怖気立つ。
「……ん、まぁ良いわ。
飢えたヒトにお預けするのって、趣味じゃないもの。
ただ約束して頂戴。
力を取り戻した途端に人を襲ったりしない、と」
言いつつ、結局はルーン石はポケットの中に収めたまま。
腰よりも長くたなびく黒髪を纏めるようにして、自身の首筋を晒す。
「量は任せるけれど、高等な吸血鬼らしい慎ましさを忘れないでよね」
許容量を超えるような真似は、しないであろう。
会ったばかりの相手にそう思う理由等ありはしないが、相手の善性と悪性と見分ける自分の嗅覚を、信じての事だ。
あまりにも無防備な白い肌。
そんなシトラスの香りのするその首筋を、ぐったりとしたその小さな身体の眼前に差し出すだろう。
■リスティ >
承諾を得られれば、無警戒にふらふらとそちらに近寄っていった。
視線は変わらず、首筋に向けられたまま。
「それは…約束できる。
むしろ……飢えすぎて暴走、のほうがある」
さらけ出された首に、ごくりと喉を鳴らす。
長い眠りから明けての、ごちそう。
「……努力、する」
舌なめずりの後、少し乱暴気味に、かぷっとかぶり付く。
本来であれば手を添えてゆっくりと…なのだが、抑えられなかったようだ。
牙が突き立てられるのだが、痛みは感じないだろう。
最初は口付けのような柔らかい感触。
数秒ほどすると、こくっこくっと、少しずつ嚥下する音が聞こえてくるだろう。
その光景は、若干倒錯的かもしれない。
■イェリン > 「んっ……」
首筋に、柔らかい唇の感覚が触れる。
それからややあって、肌を覆う痺れ。
突き立てられたのであろう感覚は痛みを伴わず、
己が血潮を嚥下する音が耳朶をくすぐる。
熱に浮かされたように、頭がふらつく。
痛みに耐えようと食いしばったはずの奥歯は開き、緩んだ口からだらしなく舌が見え隠れする。
血を失った事による貧血感にぼやける視界。
ビュウッと、路地を吹き抜けた一陣の夜風がのぼせた意識を冷ます。
そろそろ、と言うように吸血鬼のほっそりとした肩を叩き、終わりを促す。
■リスティ >
「んくっ…ん……っぷはっ……」
肩を叩かれば、すぐさま行為を止め、頭を離す。
加減はしているつもりだったが、うまく行っていなかったのかもしれない。
手で口元を拭いながら、一歩下がった。
2つの牙によって出来た傷はすぐに塞がるだろう。
痕がどれぐらい残るかは、個人差がある。
「ありがとう、助かった。
えーと…大丈夫?吸いすぎた……?」
頬を少しだけ紅潮させた少女の目からは飢えは消え失せていた。
今度は目を合わせようとする。
■イェリン > 「らいりょ…だいじょうぶよ」
血を吸われるというのは初めてでは無いとはいえ、どこまで血を吸われても大丈夫かなど、判断の付くものでは無い。
指先で痺れの残る牙の痕に触れ、目立った出血の無い事を確認する。
元より髪に隠れて見える物では無いが、痕も目立たなくなるまでは隠そうとするだろう。
正常さを損なえば、人でなくともその在り方はらしくなくなる。
目の前の少女にとって飢えとは相応に異常を来たす物なのかもしれない。
生気を取り戻した瞳を見据えて、イェリンは問う。
「落ち着いたなら、良いのよ。
飢えて暴れられる方が遥かに危険だし。
で、貴方はここで何を?
食事を探すにしたって此処は場違いだと思うけれど」
そう言い、周囲の建物を指さす。
何処からともなく、視線を感じる。監視するようなネバついた視線。
吸血鬼や異邦の魔術師が歓迎されるような場所では、ないのかもしれない。
■リスティ >
「……そう、ならいいけど」
仮に不調でも一度飲んだ血は返せない。眷属化してしまうため。
マズかったら病院につれていくしか無い。
とりあえず大丈夫そうなので一安心。
「ああ、それなんだけど……ここ、何処?
目が覚めたら、そこの建物に居たんだけど……。
私どれくらい寝てたんだろ……?」
後ろの建物をを指差してから、大きくあくびをする。
「あ、名前教えてくれる?
私は……えっと……リスティ」
周囲から感じる視線、威圧その他諸々は意に介していない。
腰に手を添え、堂々としている。
■イェリン > 「何処かも分からない、って言う事はそもそもここに来たばかり?
というよりも、来たって感覚が無いのかしら」
異界から常世に直接流れ着いた人の中には、そういう人も多いと聞く。
自ら訪れたのか、連れてこられたのか。
本人の様子を見る限り、そもそもどちらという自覚すら無さそうだ。
「ここは異邦人街って呼ばれてるトコロよ。
いろんな世界や宗教から生まれたり祀られたり祀ったり、
そんな異界から来た人達で成り立ってる街」
中心街からは結構離れてるわよ、と補足するように付け足す。
「ん、リスティね。
私はイェリン。イェリン・オーベリソン。
通りすがりの魔術師よ」
やけに堂々とした立ち居振る舞いにややあっけにとられながら、
名乗りに対して素直に返す。
知られて困る方の名前ではないので、隠したりはしない。
「まぁ、私も足を踏み入れたのは今回が初めてよ。
ここって異文化同士で共生してるって聞いていたのだけど、
歓迎してくれてる、って感じじゃないのよね」
リスティの指さす建物から降り注ぐねめつける視線に辟易としたように、イェリンは言う。
「じきに夜が明けるけれど、宿の予定とアテはあるのかしら」
■リスティ >
「ちょっとした事情で長い時間寝てた…としか」
間に何があったのか知る由もない。
棺桶で寝ていただけだ。
「異邦人?世界?異界……?寝てる間に何が……?
何処かで調べに行こうかな……」
続けて、聞き慣れない言葉に目を丸くする。
主観では大変容も認識していない。
興味深そうに聞くが、直接探ったりはしないようだ。
「ありがと、イェリン。
お礼ってほどにはならないと思うけど、これ」
ポケットから小さな何かを取り出して投げ渡す。
小さな純金貨だ。通貨としての価値はなさそうだが、
純金なので換金ぐらいはできるだろう。
「宿のアテはないけど……元気になったし、このままちょっと動き回ってみる」
そちらが去っていくのなら、気をつけて、と見送るのだろう。
ご案内:「宗教施設群」からイェリンさんが去りました。
ご案内:「宗教施設群」からリスティさんが去りました。