2022/07/31 のログ
ご案内:「常世島共同墓地」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
芥子風 菖蒲 >  
常世島共同墓地。
死ねば皆仏。墓石の下で穏やかな死後を過ごすと教えられた。
そこに善悪の隔てもないと少年は思っていた。
それが例え、自分を殺した相手でさえも。

「……ん」

誰もいない時間帯を狙ったつもりだったけど、人影が見える。
知らない女性の姿。隣に棺。もしかして……。

「ねぇ、何してるの?」

肩に漆塗りの鞘を担ぐ少年は、風と共にシスターに話しかける。

マルレーネ > ………腕で額の汗を拭うと、顔が半ばほど黒くなって。

「………? ああ、………埋葬です。……小料理屋を数か月前までしていたんですが、流石にちょっと身体が弱っていたみたいで。
 ちゃんと、本人にも管理者にも許可はもらっていますから。」

背後からの声に、振り向きながら。
その一瞬で足を引いて相手の声に対して正対しようとする所作は、やはりいまだに戦いの記憶が抜けないからか。
少年をじ、っと見つめて………。

「こんなところに……何か用事、かな? お墓参り?」

ぱ、っと明るい笑顔を作って、少し膝を折って視線を合わせる。

芥子風 菖蒲 >  
「埋葬……そっか。知り合いだったの?その人。
 ……料理屋さん?コックさん、には見えないけど。コックさんも埋葬するの?」

なんだかまとまりのない経歴だ。
不思議そうに小首を傾げながら、遠慮なく隣へと歩を進めた。
聖職者とはつゆ知らず、ヘンな勘違いが生まれている。

「一応そのつもり。あんまり人に見られたくはなかったけど……」

後ろ髪を引かれるような気持ちがあった。
自分が忘れないようにする為でもある。
償いとは思わないし、自己満足かもしれないけど
やることに意味があると思っていた。

見上げる青空と、シスターの青が交わると少年は空をぱちくりした。

「……ちょっとデカいな」

3cmの差はそれなりにある。
身長的な意味で少年にやましさはない(念押し)

マルレーネ > 「………うん、そうね。昔は大きなお店もしていたんだって。ここに来てから、ちょっとだけ小さなお店をやって。………少し休むって。」

変にどの教義なのか、どこの方式の埋葬なのか、など、執拗に聞かれる方が厄介だ。
素直に言葉を投げかけられると、ちょっとだけぼんやりした様子で言葉が流れる。

「いいですよ、私は後は埋めるだけですから。
 お参りをすることは、自分の気持ちに整理をつけることでもありますから。」

………見上げられて、相手の言葉に、ぽ、っと少しだけ頬を赤らめる。

「ちょっとです? 割と自信ありますけどー?」

少しだけ沈んでいたからか、ちょっとおどけてポーズをとって見せる。勘違い?
当然のように勘違う。

芥子風 菖蒲 >  
「そっか。大往生……って奴なのかな?」

元々宗教関係者ではあるが型式に興味はない。
人の終着。改めて目の当たりにすると何とも言えない気持ちだ。
この人は果たして、満足に死ねたのだろうか。
そんな事を、考えてしまう。

「オレ的には整理したつもりだよ。……自分が殺した相手だし
 正直オレ、墓参りの相手は資料でしか知らないからさ」

「整理っていうよりも、知らない事が多すぎて知りたい事ばっかりなんだ」

「不謹慎かな?」

その一枚につづられた味気ないインクの前生。
鉄火場で斬り合ったのは仮面(いつわり)である以上
少年なりに気持ちの整理は意外にもすんなりついてしまった。
だからこそ後から後から…と、解決しない疑問ばかり残ってしまう。
果たして、この無数の仏様達のように。

─────…彼は一体、何者だったんだろうか。

少年は感情の起伏に乏しい。
おどけるシスターを見て訝しげに首をかしげる。

「そうなの?アンタよりも大きい人、いっぱいいると思うけど」

女性でも男性より大きい人がいる。
少年にやましさはない。(二度おし)

「埋めるだけなら手伝うよ。力仕事得意だし。何処に埋める?」

マルレーネ > 「……そうですね、もう充分生きたとはいつも口にしていました。」

最期の心残りだけは、口にしない。
首を横に振って、表情が暗い。

「………………そういうことなんですね。
 なるほど。 私の知り合いにも、いるにはいましたよ。
 あの人はお墓参りには来たことはありませんでした。
 ………。………自分が不思議だと思うのならば、別に来たっていいじゃないですか。
 ここを使う人が困るようなことをしなければ、別に構いませんよ。」

相手の言葉に少しだけ言葉に詰まるが。
彼女だから、すぐに言葉を繋ぎ直して。
元々が死は身近なものだった彼女の世界だからこそ、経験で口を開くことができて。


「……え。そりゃまあ、確かにそうですが。
 え、そんな人とたくさん知り合いなんですか? というかそういうの、教えてもらってるんですか?」

ちょっと待ってこの子何、すごい進んでるんですが。
私だって同性なのにサイズから知ってるの数人なんですけど。

芥子風 菖蒲 >  
「そっか。なら、いいんじゃないかな」

本人がそう言うならきっとそれは満足のいく事だったんだと思う。
勿論、顔も名前も知らない人間だ。
勝手な推察と言えばそれまでだが、本人がそう言ったんだ。
残りは墓の下に持っていくだけ。後は野となれ、花となれ。

「……仕事でヘタ打った。オレはアイツに生きたまま罪を償って欲しかった。
 オレのせいなのは間違いないよ。だから、オレはアイツを忘れちゃいけないし、知る必要がある」

「……と、思う。多分」

異能者同士の戦いは簡単に生命のやり取りに発展する。
それが犯罪者と風紀なら猶のことだ。
よくあることだが、よくある事のまま終わらせてはいけないと思う。
考えることが得意じゃないけど、少年なりのケジメでもあった。

「ありがとう、アンタ優しいんだな」

言葉の節々に見える気遣いに、少年は素直に礼を言った。

「ん……まぁ、それなりに?でも、見知った相手だと多分アンタが一番大きい」

何故なら知っている限りの女性は皆自分でも見下ろせるから。
じ、と見つめる青空はなんと無垢な事でしょうか。実際無垢だから何も考えてない。

「オレ、芥子風 菖蒲(けしかぜ あやめ)。アンタは?」

マルレーネ > 「……………私は、そういった仕事をしたことが無いので。安易に分かるとは口にできませんけど。
 ……そう言った相手を知ることは、良いこともあれば、悪いこともある。

 ただ、迷いながら手をかけているわけでなければ、きっと大丈夫です。
 私が見ていた中で、迷いながら真実を調べた人は、後悔されている方も多かった。

 もし、迷うのならば。………触らないこともまた、選択肢でしょうけれど。」


「ふふ、聖職者っぽくなってました?
 そこの異邦人街の教会にいますから、何か困ったことがあればいつだって、ね。」

優しい、なんて言われてしまえば、おどけた仕草でウィンクして、聖職者であることを明かす。
まあ、この服装だから当然ではあるけれど。


「………。ふ、ふふ、そうですか。まあ、自信があると大げさに口にした手前、恥ずかしがっても仕方ないんですけど。」

一番大きいとの言葉で心臓がとくとくと早くなる。
純粋なストレートでそんなこと言われたのは初めてだ。まあ、確かにちょっと最近下着替えたけど。

「………マルレーネ。 シスター・マルレーネ。 マリーでいいですよ。」

頬を手で押さえて、ついでにこほん、と一つ咳払い。大人の余裕。

芥子風 菖蒲 >  
「……よくわかんないや」

彼女の穏やかな声音にはどこかで聞いたことある優しさが
そして、言葉の端々にはそういう正しさもあるんじゃないかと思えてきた。
彼女の言うことを全部かみ砕けるわけじゃない。
考えたうえでも、どうすればいいかと悩んでしまうから、"わからない"。

「けど、後悔しても迷っても足は動くから。全部知ったうえで、オレは止まったりしないよ」

ただ、それでも前に進むという強い意思はそこにある。
どうしようもなく後悔することでも、足は動く。
不相応な願いや思いだとしても、どうしようもなく突き動かすのだから。

「聖職者?……だから後の事頼まれたんだ」

成る程、合点が言った。
その黒衣は聖職者のものという事か。
愛想のいい可愛げのあるシスターとは対照的に
少年の表情は微動だにはしなかった。

「大きすぎてもとは思うけど、大きいことは良い事だよマリー」

身長が大きすぎても不便なだけだ。
まぁ勿論そっちが大きすぎても不便に違いない。
因みに少年少年の趣味は不明だ。当たり前だね。

「後、困った時はお互い様。マリーもオレを頼っていいよ。
 こう見えて腕っぷしだけは自信あるから」

少年は割と脳筋タイプではある。

マルレーネ > 「………違う景色をたくさん見ることです。
 いろんなものを見ると、分からないものが少しだけ、分かるようになったりしますからね。

 それは、多分きっと。」

相手の言葉を聞けば、否定はしない。
相手のことも良く知らない。…分かっていることは、何かをしてしまったということだけ。
懺悔を聞くのとはちょっと違うけれど、彼女はあくまでも聖職者だった。

「……ええ。後はこの棺を穴に入れるのを手伝ってもらえれば、それで十分です。
 きっと私に頼んだ彼女も、それくらいは許してもらえるでしょう。」

祈りを捧げる。これは、自分の知っている祈りでしかないけれど。
それでも、相手に届けと空を見上げる。


「……それは確かに大きすぎてもとは思いますが!
 が!
 大きいことはいいことってどういう意味で、あ、やっぱりいいです、趣味はそれぞれですからね!!」

恥ずかしさに慌てながら視線を外す。・
今は聖職者じゃないわ。もはや性職者だわ。
こほん。そうかー、いいことかー。いいことかぁ………。

芥子風 菖蒲 >  
「……それは、オレもそう思う」

少年は未だに発展途上だ。
それでも、進んでいる道に間違いはないと思う。
それだけ多くの人々に示された道。
青空はきっと、何処までも広がるはずだから。

「それじゃ入れようか。オレはコッチ持つよ」

その祈りが真である限りは、きっと青空に届くだろう。
失礼します、とまずは手を合わせて棺の隅に手をかけ……。

「……?え、だって。大きい方が便利なときもあると思うけど……?」

なんだか狼狽しているシスターに少年は首を傾げた。
そんなにおかしなこと言っただろうか。
高いほど高いものを取る時に便利だとは思うけど……。

「マリー。顔赤い?病気なら家まで送るけど」

少年は純粋なのである。

マルレーネ > 「………ありがとうございます。
 ふふ、それじゃあ………。」

とりあえず、心の底からガッチリとガードを固めて、棺を穏やかに収めた。
すみませんすみません、穢れた聖職者ですみません。

「………………。」

静かに、棺を納めて、土をかけて。
………ふう、っと一つだけ息をつく。


「………便利なとき。」

ぼしゅ、と赤くなった。聖職者out、性職者in。
便利なときってなんだろう。頭の中にいろいろな光景がぐるぐると浮かんで消えていく。

「大丈夫です! むしろ流石にそれはあれです一人で帰れますからね!」

ぴゃあ、っと赤い顔で飛び上がってしまう。

芥子風 菖蒲 >  
そうして一人また、根の底へと沈んでいった。
どんな人生を送ってきたか、少年には想像がつかない。
けど、埋葬されたその時も穏やかだったらいいな。

「これで良し……と。じゃぁオレ、そろそろ……」

ぼしゅ。なんかさっきより顔が赤い。
あからさまにこれはよくない雰囲気がすると少年は悟る。
少年は純粋であった。

「そうは見えないよ、マリー。いいよ、オレ送って行くから」

風邪でも引いたのだと思った。
少年の100%の善意である。
目的はとりあえず、送り返した後にしよう。

「ほら、行こうよマリー」

彼女の手をとろうと、少年は手を伸ばす。

マルレーネ > 「……お、送ってぇっ!?」

声が裏返った。いけない。
このままではいけない。
大人としてしっかりしなければ。間違っているのであればばしっと修正するのもまた大人の仕事だ。

「……わ、分かりました。では、教会までお願いいたしますね。」

こほん。

手を握られると、びくっとする。
いつもよりもやっぱり緊張した、ぎこちない歩き方で帰ることになる。

顔も服も泥だらけなのに気が付くのは、きっと帰ってからになる。

芥子風 菖蒲 >  
「うん、宜しく」

握った手を少し冷たく、少年相応の手で
ごつごつとしたその手は、既に少年のものではなかった。

果たして、この微妙なすれ違いが解けたどうかはわからない。
少なくとも少年は穢れも汚れも気にしない。
握った手が互いに泥だらけなのは、確かなことだろう。

ご案内:「常世島共同墓地」から芥子風 菖蒲さんが去りました。
ご案内:「常世島共同墓地」からマルレーネさんが去りました。