2020/10/31 のログ
■刀々斬 鈴音 > 「えっ!?……えーと………箔がつくとか???」
ヤバいやつとしての箔が付いたところで何があるというのだろう。
……例えばそれが落第街であれば名前を知られることで不要に絡まれることを避けたりできるが……。
残念ながら落第街の常識はここでは通じない。
「もう!!鈴音知らない!
あなたなんてなんか危ない人にふらふらついて行ってなんか危ない感じの目に会えばいいんだよ!!!」
そんな曖昧な感じの事を言いながらブンブンと剥き出しの刀を振るとそれを鞘にしまってどこかに走り去っていってしまう。
その脅威を全く知られることなく終わってしまった通り魔刀々斬鈴音。
きっと明日はビビらせれる!負けるな刀々斬鈴音!戦え刀々斬鈴音!!
■雨見風菜 > 「え、ええと……??」
全くよくわからない。
落第街でなら通用する常識は、残念ながら出入りしているだけの風菜にはわからない。
なお、危ない人にフラフラついていって危ない目に合うのは性的な意味で経験済みではある。
寧ろそれを目当てに落第街に出入りしているのだが。
「え、ええー?
あ、あれー??」
よくわからないまま、相手を怒らせてしまったようだ。
呆然と、走り去る彼女を見送っていく。
とりあえず、彼女の名は鈴音というらしいことは分かったが。
果たして彼女が風菜をビビらせられる日は来るのだろうか。
ご案内:「常世渋谷 大通り」から刀々斬 鈴音さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 大通り」から雨見風菜さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 ハロウィンストリート」に焔誼迦具楽さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 ハロウィンストリート」にリタ・ラルケさんが現れました。
■焔誼迦具楽 >
ハロウィン本番、かなりの人数が集まったストリート。
このイベント用の臨時店舗だろう貸衣装屋から出てくるのは、二人組の少女。
赤と青の二人の内、赤い方が先に出て、ストリートを見渡した。
「うっわー、来た時よりもすごい増えてるね。
色々着せてたから割と時間使っちゃったしなあ」
と、通りを埋め尽くすようなヒトの波を眺める。
友人がなんでも似合うものだから、うっかりあれこれ着せ変えてしまった。
ヒトを着せ変えて遊ぶのは、これがなかなか、楽しい物なのだ。
「リタ、大丈夫ー?
ヒトに酔ったりしない?」
そんなふうに、後から出てきた友人を振り返り、声を掛けた。
■リタ・ラルケ >
今日は楽しみにしていたハロウィン当日!
リタが前いたところではなかった行事らしくて、街中がお祭り騒ぎになる日で、色々な人が仮装して。
何より――お菓子をくれない人には、イタズラしてもいい日なんだって!
そして、そんな日にリタは、友達の迦具楽ちゃんと一緒にお出かけすることになったのです!
「悪戯ならせっかくだし」っていうことで、精霊纏繞で水の子たちを取り込んで、準備は万全!
貸衣装屋の中にも色々な衣装があって、迦具楽ちゃんが色んな衣装を着せてくれて。その中でも、妖精みたいな衣装が気に入ったから、迦具楽ちゃんとお揃いで着ようってことになりました!
「わぁ……楽しそうっ!」
貸衣装やから、迦具楽ちゃんの後について出てみると、来た時よりもずっと人が増えた街並み。
こんなに人がいるのはなかなか見ないけど――何より楽しそうな街並みを見て笑う。
「大丈夫だよーっ、迦具楽ちゃん!」
そういって、前にいる友達に返事をする。普段の"自分"とは違うテンションで。
■焔誼迦具楽 >
いつもよりテンションの高い友人。
どうやら今日はそういうモードになっているらしい。
「そ、それならよかった。
うんうん、衣装も可愛いしばっちりね」
友人の衣装は水色のワンピース。
今日の髪色と揃っていて、見た目は清楚な雰囲気だ。
中身が無邪気で子供らしいところがまた、可愛らしい。
「さて、それじゃあ私たちもいこっか。
なにか面白そうな事あるといいけど」
そう言いながら、友人へ右手を差し出す。
はぐれないよう手を繋ごうと。
■リタ・ラルケ >
「ふふー、そうでしょそうでしょ」
なんていったって、妖精の衣装!
いつもはその辺りにいるだけだったり、今みたいに体に取り込んだりするだけな精霊の子たちに、今日はリタがなってるのだ!
迦具楽ちゃんの衣装は、赤色が基調のファンタジックな衣装。肩とかお腹とかが出てて……ちょっぴりセクシー。それが似合うのはやっぱり、普段の振舞いが大人っぽいからなのかな。
「はーいっ! ごーごーっ!」
差し出された右手を取って、ストリートを一緒に歩きだす。
こうしていると、友達というよりは姉妹に見えるかも?
色々な格好をした人がたくさんいて、色々なお店の人――もちろん皆が例外なく仮装をしている――が、たくさん呼び込みをしている。
その様子が珍しくて、ころころと表情を変えながら、ストリートにならぶ店の店先をあちこち見回していた。
■焔誼迦具楽 >
きょろきょろと視線があっちへこっちへと動く友人が面白い。
手を繋いで歩き出したら、すぐにイベントの空気に馴染んでしまった。
手を離したらどこかに転がっていってしまいそうで、目が離せない。
ハロウィンの店先は、オレンジ色で華やかだ。
そして客を迎えるヒトも、店を訪れるヒトも、普段は見れない姿をしている。
たしかに、この様子を見ているだけでもなかなか面白い。
「あ、ほら見てリタ、このカボチャでかい!」
店先に置いてあった、顔の彫られた大きなカボチャのオブジェ。
直径1メートルくらいあるソレをひょい、と持ち上げて見せてみる。
抱えると迦具楽の上半身はすっかり隠れてしまうほどだ。
「うわあ、これ作り物じゃなくて本物のカボチャだ。
トコヨカボチャってヤツかなー。
うちのカボチャも味なら負けないんだけど」
自宅で育てたカボチャも、大きさはまちまちだが、味はなかなかよくできているのだが。
もちろん種類が違うから仕方がない。
■リタ・ラルケ >
「わぁ、ほんとだー! おっきいー!」
話しかけられて迦具楽ちゃんの方を見ると、そこには……確か……ジャック・オー・ランタン……だっけ?
とにかく、顔のある大きなカボチャが、そこにどーんと置いてあるのを見つけた!
もっと言えば、それを迦具楽ちゃんが持ち上げてるのも!
「え、迦具楽ちゃん、重くないの!? 凄い!」
どう見たって、ただの人には持ち上げられないようなサイズのカボチャを軽々と抱えて見せる友達の姿に、ただただ驚くばかり。
……リタも、まあできないことはないけど――それは違う子を纏繞したときの話だし。今の状態だったら、絶対無理だなあ。
「え、しかも本物なんだ! っていうか迦具楽ちゃん、カボチャ作ってるの?」
さらにはそのカボチャが作り物ではなく本物だということにもびっくり。
しかもしかも、どうやら迦具楽ちゃんのお家でもカボチャを作ってるみたいな言い方をされて、そう質問する。
さっきから驚くことばっかりだ……!
■焔誼迦具楽 >
「ふふん、これでも結構力持ちなんだなー。
これくらいならよゆーよゆー!」
軽々と頭の上まで持ち上げて見せるが、それ以上はお店の人が苦笑してるので、そっと戻した。
しかし、このサイズのカボチャ。
食べたらどんな味がするのだろうか。
「ん、そうそう、私さ、家に畑あるからね。
小さいけど色々作ってるんだー。
今はカボチャと、芋と、後はナスかな」
なんて、家庭菜園で育てている秋野菜を並べて。
そろそろ採れたての芋で、焼き芋なんかをしてもいい頃合いだろうか。
「よかったら今度遊びにおいでよ。
カボチャとかお芋のお菓子、ごちそうしたげる」
そう、改めて友人の手を取りつつ、笑いかける。
■リタ・ラルケ >
巨大カボチャをそっと戻す迦具楽ちゃんを見て、
「へー……家に畑があるの、いいなー。リタは寮だから、そういうのできなくて」
自然というものに近づくことが他人よりも多かったせいか、こういうのにリタは結構敏感だったりするんだ。
特に畑は結構広い土地がいるから、寮住まいだとどうしてもプランターに収まるような小規模なものしかできないのが悩みどころ。
「あ、でも、リタだってお部屋で色々育ててるんだよ! お花とか、お魚とか!」
だけど、部屋の中で落ち着くという条件付きなら話は別!
プランターで季節のお花を育てたり、おっきな水槽でアクアリウムを作ったり! リタの部屋の中は、実は結構改造されて凄いことになってたりするんだ!
そのおかげで、精霊の子たちも部屋の中に集まってくることも多いし!
「うん、遊びに行きたいっ! お菓子、お菓子ーっ♪」
手を取って、迦具楽ちゃんに返すように、つられて笑う。
お菓子に釣られた――というのもなくはないけれど、お友達の家に遊びに行くのなんて今までそうそうなかったから。そう言ってくれたことが何より嬉しいのです。
■焔誼迦具楽 >
「そっか寮住まいなんだ。
そりゃそうか、学生だもんなぁ」
自分には縁がない世界。
学生生活とやらにも興味はあるけれど――今更、学生証を得るのは難しいだろう。
「へえ、お花かー。
私は食べられる物しかやらないからなー。
今度写真とかみせてよ、リタの部屋」
学生寮にもだけれど、友人の部屋というのにも興味がある。
きっとこの友人の事だから、センスのいい部屋模様になっているんだろうなあ、と。
「うんうん、おいでおいでー。
そうだなあ、今の季節なら焼き芋とかもできるよ」
そう話しながら、友人の手を引いてさりげなく、自分の位置と入れ替える。
通り側から、店側に。
迦具楽はいいが、小さな友人がヒトの流れに流されたら、ちょっと危ないだろうと。
「お、ほらリタ、あれ。
あのエイリアンみたいな怪物、本物だよあれ!
こう見ると、人間じゃないのもいっぱいいるなあ」
迦具楽自身もそうだが、通りを歩いていくヒトの中には、本物の怪異や異邦人たちも多くいる。
中にはやけにグロテスクだったり、巨大だったり、わけのわからないモノも歩いているが。
風紀委員が仕事をしているなら、とりあえずは害がないという事だろう。
■リタ・ラルケ >
「……う、うん。楽しみにしててね!」
一瞬、声が詰まる。……写真、かあ。
この前携帯の機能を色々試していたんだけど、確かその中にカメラ機能があった。
だけど、慣れてなくて。試しに一枚撮ってみたけれど、それはもうピントがあってなかったり、ブレブレの写真だったりした。
最終的にどこか変なところを触ったのか、インカメラになって戻らなくなった辺りで止めた。
……ちゃんとした写真、撮れるかなあ。
手を引かれて、通りの方から話されるように位置を入れ替えられる――が、それを気にするようなことはない。というより、お喋りだったり辺りを見回したりに夢中で気にかけることもない、というのが正しい。
「わ、ほんとだ! あっちの狐の人も本物だよ!」
はじめはよくできた仮装だと思ったけれど、確かに精霊の流れというか、ちょっとしたところが普通の人とは違う感じ。
そんなようなひとが、普通の人間に交じってちらほらいたりする。それがまたなんだか面白い。
「……イタズラしてみても、怒られないかなあ」
たまに――ほんとうにたまに、人間にイタズラして遊ぶことはあるけど、ああいうひと達にはまだやったことがない。
■焔誼迦具楽 >
「あ、もしかしてまたなんかやったなー?」
機械に疎い友人の事だ。
きっとちょっとした操作で、設定が戻らなくなったりしてるんだろう。
後でちょっと見てあげてもいいかな、なんて思い。
「おー、あの尻尾は柔らかそうだね。
いいなー、耳とか尻尾、私も生やしちゃおうかな」
常に維持するのは燃費が悪いが、たまーに戯れに生やすくらいなら遊んでもいかもしれない。
異邦人街でも常々思う事だが、異邦人たちを見ると、たまに真似をしたくなるのだ。
「あはは、なら一緒に行ってみる?
折角のハロウィンだしね、ほら、トリックオアトリート、ってさ」
今日はイタズラ好きな友人だ。
好奇心がそそられてしまうんだろう、と笑いながら。
今日はそう言う日なのだから、多少の事なら笑って許してくれるだろう。
■リタ・ラルケ >
「……にへへ」
「なんかやった」のは事実だから、否定できない。曖昧に笑ってごまかそうとする。また見てもらおうかなあ、なんて思ったりもして。
「生やせたりするんだ! 迦具楽ちゃんだったら……狼とか似合いそう! がおーっ、って!」
動物の耳を生やすのとかは、流石にリタにはできない。狼の耳と尻尾を着けた迦具楽ちゃんを想像してみて……うん、かっこ可愛い!
本当に生やすことがあったら、ちょっと触ってみたいなあ。
「あ、行きたい行きたいっ! あの人にとつげきだーっ!」
握った手を引っぱって、狐の人のもとへ行こうとする。
■焔誼迦具楽 >
「狼かあ、山に行けばいるかな。
資料でも捕まえられたら、ちょっとやってみようかしら。
まあでも今日は、ほら――羽もあるしね」
と、そう言って自分たちの背中を見るが。
羽、というときは少しだけ表情がぎこちなかったかもしれない。
「ああこらこら、飛び出すんじゃないよー」
そうたしなめつつも、引っ張られて一緒に人をかき分け、狐のヒトのところまで。
二人で前に回り込んで、通せんぼし。
「トリック・オア・トリート?」
そう声を掛けてみるのだ。
■リタ・ラルケ >
「狼……うーん、確か山にいた気がする! ね、できたら見せてね!」
友達が一瞬見せた表情の変化は――やっぱりちょっと、気にかけることはできなかった。
友達の声を聞いて、おっとっと、と少し減速。やっぱり急に走り出すのは危ないかな。
でも、いよいよハロウィンでやってみたかったことができるんだ!
二人で狐の人を通せんぼ。そうしてイタズラ妖精二人は目の前の人に唱える、
「トリックオア、トリートー!」
(この人はお菓子を……
1:持ってる 2: 持っていない) [1d2→1=1]
■焔誼迦具楽 >
声を掛けて見たら、狐のヒトは笑いながら、二人にお菓子を差し出してくれた。
手を出して、と言われて手を出せば。
手のひらに乗せられたのは、ちょっと大きな飴玉が一つずつ。
「あら、お菓子持ってた。
ありがとう、キツネさん」
そうお礼を言うと、狐のヒトも二人を微笑ましそうに見ながら、またヒトの流れに戻っていくだろう。
「ざーんねん、イタズラできなかったね」
もらった飴玉を見ながら、小さく舌を出して友人に顔を向けた。
■リタ・ラルケ >
狐の人が手を出して、と。
そう言われて手を出せば、手のひらにキャンディーが一つ!
「わぁい、キャンディーだーっ! ありがとっ、狐のお兄さんっ!」
迦具楽ちゃんに続いてお礼を言う。イタズラはできなかったけど、お菓子は貰えたからそれはそれで!
それを聞いて、狐の人はまたたくさんの人の流れに戻って行っちゃった。
「うーん、イタズラができなかったのはちょーっと残念だけど……でも、キャンディーだよ! ねね、そっちは何の味?」
リタが貰ったのは、リンゴ味のキャンディーだったけど。迦具楽ちゃんが貰ったのはなんだろうと、覗き込むようにそっちの手を見てみる。
■焔誼迦具楽 >
「んー、え、なんだろこれ。
何味とも書いてな――」
と、手の上で転がしてるうちに。
ぽんっと、小さく弾ける飴玉。
驚いて目を丸くしてると、わずかな煙は晴れて、手の上にはきつね色に色づいた木の葉が一枚。
「――あ、っははは!
うわー、やられたー!
見てこれ、枯れ葉になっちゃった!」
大笑いしながら、友人に残った木の葉を摘まんで、ひらひらと見せつける。
見事にイタズラされてしまったのは、迦具楽のほうだった!
■リタ・ラルケ >
「わぁっ!」
目の前で迦具楽ちゃんの持っていたキャンディーが弾けて。
煙が晴れたかと思うと、いつの間にかキャンディーは葉っぱに変わっていた!
「あはははっ! おもしろーいっ! 迦具楽ちゃんのキャンディー、葉っぱになっちゃってる!」
迦具楽ちゃんが枯れ葉をひらひらと見せつける。その様子を見て笑っていたら、リタの手からもぽん、という音。
もしかしてと思って見てみると、同じようにキャンディーが葉っぱになっていて。
「――わーっ、リタもやられてるー! あのお兄さん、すごーいっ!」
優しかった狐の人にすっかり騙されていたことに気付いて、また思わず笑いだす。
■焔誼迦具楽 >
「あー、そっちもやられてる!
あはは、やっぱり餅は餅屋ってヤツだなあ。
イタズラをさせたら、狐と狸にはかなわないって事だね」
見事に化かされてしまったというわけだ。
友人と二人で大笑いして、それから顔を見合わせる。
枯れ葉からは教訓と思い出をしっかり貰って、風に流した。
「――お、っと」
涙が出そうなほど笑って、立ち止まっていたからか。
ヒトの流れを止めてしまっていた。
大柄なクマのようなヒトに、ぶつかりそうになる。
友人の手を引いて、抱き寄せるように道を避けた。
友人は近くで見ても可愛らしい。
水色の髪からは、ほのかに清らかな水の香りを感じた。
■リタ・ラルケ >
「狐と狸……そっか、幻術が得意って聞いたことがある!」
日本の狐と狸は、リタの知るところの幻術が非常に得意であると。そう聞いたことがあって。
つまりはその十八番である幻術で、盛大に騙されたということになる。
うあー、なんだか悔しい!
「んぇっ、」
――そう思っていると、突然手を引かれて迦具楽ちゃんに抱き寄せられる。
何かと思えば、リタが元いたところを大きな人が通っていくのが見えて、ああそういうことかとわかった。
「……えへへ。なんだかお姉ちゃんみたい!」
元気の塊で、つい周りが見えなくなりがちな"リタ"を、そっと止めてくれる。
その様子がなんだか、無性にそう思えてならなかった。
■焔誼迦具楽 >
「えー?
まあ、リタみたいな妹だったらいいかなぁ」
抱き寄せた友人を見て微笑んで、匂いを嗅ぐように息を吸う。
「んー、リタ、いい匂い」
美味しそうな、人間の匂いが鼻をつく。
うっかり食欲をそそられそうになるけれど、今は匂いだけで我慢する。
その代わり、しっかり鼻を鳴らして匂いは嗅ぐけれど。
「さって、どうしよっかー?
またイタズラチャレンジしてもいいけど、美味しそうなお店もあるしなあ」
友人の手を引きながらそっとヒトの流れを外れて。
周りを見ながらどうしようかとたずねてみる。
■リタ・ラルケ >
「ふふー、迦具楽ちゃん、くすぐったーい」
匂いを嗅がれて、少し感じるくすぐったさに身を震わせる。
"木"の子を纏繞すればわかりやすく花のいい香りがするようになるんだけど、今の状態でそう言われたのは初めてで、ちょっと意外。
「うーん、どうしよっかなー……リタはもっとイタズラしてみたいんだけど――」
そういった途端、リタのお腹から小さくくぅ、と音が鳴る。
今まで楽しかったから忘れていたけど、けっこうお腹が空いていることにようやく気付いた。
「えへへ、お腹空いちゃった。やっぱり何か食べたーい」
なんだか恥ずかしくなってしまって、ついそんな言い方をする。
照れ隠しも込めて――どこがいいかな、と辺りを見回していく。
■焔誼迦具楽 >
「奇遇だねー、私も丁度、リタのせいでお腹減ったところなんだー」
そう言いながら、近くのお店を見渡して。
どこも満席なようだが――コウモリの装飾をして、客引きを置いていない店が一つ。
看板だけで、装飾も地味だが。
「お、カボチャパイだって!
入ってみる?」
看板を見れば、カボチャ尽くしの色んなメニューが書いてある。
どうやらカボチャパイが一押しのようだが、他にも色々あるようだ。
■リタ・ラルケ >
「……リタの、せい? えっと……ごめんなさい?」
思い当たる節が――まあ、なくはない。ストリートを歩くのが楽しくって色々振り回しちゃったところはあるし。やめないけど。
「カボチャパイ? 美味しそう!」
一見お店とはわかりにくい見た目だけど、よく見たら色々なメニューが書いてある看板が置いてあった。
カボチャパイだけでなく、グラタンやスープといったようなものもあって、見ているだけでもお腹が空いてきちゃう……!
「入ってみたい! 座れるかな?」
あいにく、外からは中の様子が見えないから何とも言えないけど。
でも、ちょっと隠れたお店みたいだし、もしかしたら大丈夫かも?
■焔誼迦具楽 >
店をのぞき込めば、店員らしいカボチャ頭が手招きしている。
席は空いているようだ。
「なんか静かだし、席も空いてるみたいだけど。
見るからに怪しいヒトが手招きしてる」
迦具楽がそう言うと、カボチャ頭が首を振りながら、体の前で手を振る。
ハロウィン仕様の仕事着なのだろうが、大変そうだ。
「それじゃあ、お邪魔しよっか。
二人です、おねがいしまーす」
カボチャ頭に声を掛けると、カボチャ頭はピョン、と跳ねてからさささ、と小刻みに足を動かして奥に案内してくれる。
なんだか動きが妙にコミカルだった。
店に入ると、通りの喧騒が嘘みたいに静かで、薄暗い店内はちょっと怪しい雰囲気だ。
ちら、と壁に貼られているメニューなんかを見るが、ぼったくりのような類ではなさそう。
それにしては客が少ないような気もするが。
「おお、個室席なんだ。
これなら思う存分食べられるね」
個室の中はデフォルメされたコウモリや悪魔の切り絵が貼られている。
クッションのしっかりとした椅子に、木目の綺麗なテーブル。
メニューはちょっと厚めだけれど、全部写真付きで見やすくなっていた。
メニューは通常メニューとハロウィンメニューがあるようで、カボチャ尽くしのハロウィンメニューのほかにも、普通の食事やデザートなんかも載っている。
■リタ・ラルケ >
「おねがいしまーすっ!」
迦具楽ちゃんに次いで、リタも挨拶。カボチャ頭の人がなんだか面白い動きで案内してくれる。
そうしてお店に入ると、そこは世界が切り離されたかのように静かで、なんだか別の世界に来たみたい! 薄暗いのって、なんだか不思議とわくわくするのはなんでだろう?
迦具楽ちゃんの体面に座って、一緒にメニューを覗き込む。
せっかくだからハロウィンメニューを頼みたいけど、でもなかなか普通のメニューも美味しそうなものがたくさん……!
迷って決めかねてしまう。
「迦具楽ちゃんはどうするのー?」
もし迦具楽ちゃんが食べたいものがあるなら、それとは別のメニューを頼んで、お互いに分け合いっこするのもいいかなあ。
そう思って、どうするのか聞いてみることにした。
■焔誼迦具楽 >
「んー、どうしようかなあ。
どれも美味しそうだし、とりあえず全部?」
なんて、メニューを捲りながら頷きつつ。
「あ、リタも遠慮なく好きなもの頼んでいいよ。
今日は私がご馳走してあげる」
今年は思ったよりも懐があったかいのだ。
今日は実質食べ放題。
「うわー、カボチャの煮物もある!
私これ、素朴で甘くて好きなんだよね」
ふかふかに煮込まれたカボチャは、口の中でとろっと溶けるのだ。
そんな話をしながら、思わずよだれが出そうで口元を押さえた。
■リタ・ラルケ >
「ぜ、全部っ!? そんなに食べられる……?」
迦具楽ちゃんが頼まないものを頼んでシェアし合おうかな、なんて思ってたら。まさかの回答にびっくり。
リタも、纏繞している子がリタ自身のエネルギーを持って行っちゃうから、結構食べる方だけど。でも、このメニュー全部を食べられるかと言われると、自信を持って無理だって思う。
「え、うーん……どうしよっかな」
そう言ってくれるけれど、リタは結構焦っていた。
計画が崩れた。まさか全部なんて思わないじゃん!
「煮物、かあ……リタも好きだよ! 甘くって美味しいよね」
ここに来てから初めて食べた時には、こんな料理があるのかってびっくりしちゃった。ただ野菜を煮ただけなのに、こんなにおいしいなんて、って。
……うーん、そう言ってたら、なんだか食べたくなってきちゃった。
「じゃあ……煮物と、グラタンとー……それから、カボチャパイがいい!」
食べたくなった煮物と、後は美味しそうなグラタンと。それからこのお店一押しのカボチャパイ。うん、決定っ!
■焔誼迦具楽 >
「いやー、私これでもわりと大食いでさ。
燃費がすごいわるいんだよねー」
本来必要な食料と違うものでエネルギーを補おうとすれば、こうもなろうという物で。
流石に人間が主食です、なんて友人とはいえ言えるわけもないのである。
「お、グラタンもいいよねー!
よし、それじゃあ――」
注文をしようと思って、店員を呼ぼうとしたら。
そのタイミングで、個室の引き戸がささっと開く。
そして、そこには首のない給仕服の店員、らしいヒト。
「――――」
さすがに一瞬、言葉を失った。
が、頭を振って気を取り直すと、注文を告げる。
さすがに全部と伝えた時は『え、まじで?』とでも言いたげな動きが見えたけれど。
「――うわぁ」
店員が去ってから、感嘆が漏れた。
「そっかあ、ここ、所謂人間以外向けのお店なんだ。
店員さんたち、みんな怪異とか異邦人だよ。
さっきのカボチャさんも仮装じゃないんだ」
鼻を鳴らして周りの匂いを感じ取って。
店の中には友人以外から美味しそうな匂いはしない。
つまり、店員にも客にも、人間と言える存在はいないのだ。
■リタ・ラルケ >
「ひっ」
いざ注文――といったところで引き戸が開いたかと思うと、首のない人がいた。思わずびっくりして声が漏れる。
コスプレにしてはいやに完成度が高すぎる。やっぱりこの人もさっきの狐の人と同じように本物なんだろうか。
迦具楽ちゃんが店員さんにメニューを伝えて――ほんとに全部って言った……――、注文を受けた店員さんが戻っていくと、迦具楽ちゃんから感嘆の声。
「――そうなんだ。それじゃあやっぱり、今来た店員さんも本物なんだ!」
つまりは空いていたのは、そういうことなんだ!
常世渋谷を行く人は、怪異が混ざっているとはいえほとんどは人間だから、人間以外に向けたこの店にはあまり入らないんだ。
そうなると一応リタは人間だから、このお店には合わなそうだけど――まあでもご飯は美味しそうだし、いっか!
■焔誼迦具楽 >
「ね、びっくり。
こんなお店もあるんだなあ」
そう、しみじみと。
「きっと私が居たのと、今のリタって妖精っぽいし、それで招いてもらえたんじゃないかな。
んー、いいお店見つけちゃったなあ」
周りに人間が居ないというのは、迦具楽にとって比較的居心地のいい空間でもあるのだ。
周りから常に美味しい匂いがしてくるというのは、それはそれで疲れるものなのです。
「んふふ、でもまさかデュラハンの店員さんはびっくりだなあ。
ねえねえ、頭がないのにどうやって周り見てるんだろうね」
そんなことを話しながら、料理が運ばれてくるのを待って。
運んでくるのはやっぱり、首なし店員さん。
パイにグラタンに煮物、他にも続々と料理が運ばれてくる。
あっという間に、テーブルの上はカボチャメニューに埋め尽くされてしまった!
■リタ・ラルケ >
「ああ、そっか」
このコスプレ衣装、妖精をモチーフにしているんだけど、魔力の羽根を発生させる仕組みがあるらしくて、見た目はすっごく妖精みたくなる。
それに加えて、今のリタは精霊を体に取り込んでいる状態。だから、意外にリタも違和感なく見てもらえたのかも。
「そうだねー……リタもびっくりしちゃった」
まさか首無し人間が来るとは思わなくて、思わず声を上げてしまった。怖くはなかったけど、ちょっと恥ずかしい。
そうして迦具楽ちゃんとお話していると、またさっきの首無し人間さんが料理を運んできてくれた!
「わー! 来たー……え、これ本当に全部食べるの……?」
次々と運んで来られる料理を改めて見ると、やっぱり、その。多すぎて。思わず改めて訊き返してしまった。
■焔誼迦具楽 >
「んっふっふ、大丈夫大丈夫!
この何倍かくらいまでなら食べた事あるしね。
あ、リタも食べたいのあれば食べていいからね?」
と、そう言いながら早速両手を合わせる。
「それじゃ、早速いただきます!」
やけに丁寧に言うと、ひょいひょい、っと次々に食べていく。
一口はそれほど大きくないのだが、手が全く止まらない。
「んーっ、この煮物やわらかくて、トロッとしてて美味しい!」
煮物の小皿は飴色で見るからに味がしみ込んでいそうなカボチャ。
しかし、少し見ているうちに小皿は空っぽになっている。
「うわっ、このパイ、生地がサクサクなのに、中のカボチャがクリームみたい!
甘いよリタ、これすごい美味しい!
ほらほら、リタも食べてみて!」
そして気づけば迦具楽のパイもなくなっている。
そう、迦具楽は早食いではないが、とにかく休みなく食べ続けるのである。
それでもしっかり味わっているのだろう、一つ一つにしっかり感想を付け加えていた。
■リタ・ラルケ >
「そうならいいけど……」
うんまあ、本人がそう言ってるなら大丈夫……かな?
とにかく一緒に両手を合わせて、
「いただきまーすっ!」
なんだかんだで結構お腹は空いているから、目の前の美味しそうな料理は、やっぱり楽しみ!
早速何から食べようかと迷うけど、ここは食べたくなった煮物から!
「ふわぁ……っ! 美味しいーっ!」
柔らかくてとろっとしてて、甘じょっぱくて美味しい……!
人間以外に向けたお店だっていうことだけど、味は人が食べても全然美味しい!
自分の分の煮物に手を付けながら迦具楽ちゃんの様子を見てみるけど……迦具楽ちゃんの手が止まってない。言うだけあって、本当に食べられるみたいだった。
「パイ……! やっぱり美味しいんだ! それじゃあ、いただきますっ!」
お店一押しの黄金色のパイを前に、フォークを入れて一口。
「ほんとだーっ、美味しいー!」
迦具楽ちゃんの言う通り、そしてお店がお勧めする通り! とっても美味しくて声を上げる。
■焔誼迦具楽 >
「ね、ね!
美味しいでしょ!
んーっ、このお店絶対に大当たりだよ」
『人間じゃなくてよかったー!』なんて声を漏らしてしまうくらい、料理はどれをとっても美味しい。
例えば、カボチャのポタージュは甘さが控えめで口当たりがよく、グラタンはカボチャの皮がそのまま器になっていて、コロコロとした具がチーズとクリームに包まれている。
デザートメニューのカボチャプリン、カボチャモンブラン、カボチャケーキetc
どれもが幸せな甘さを運んでくる、カボチャの甘さを活かした料理ばかりだった。
「んふーっ、こんなにカボチャ尽くしなんて幸せー!
こんな贅沢、中々できないよねえ」
なんて言いながら、次々と皿が空いていく。
迦具楽は頬に手を当てて幸せそうに頬張っていた。
「ほんと、リタを誘ってよかったぁ。
私さ、前はそれなりに友達もいたんだけど、みんな卒業したり島をでちゃったりで。
こうやって遊びに行ける友達っていなかったんだよね」
そう、カボチャのクリームパスタを頬張りながらそんなふうに話す。
ちょっとだけ、寂しそうな表情が見れるだろう。
「だからさ、リタと遊びに来れて嬉しいんだ。
ほんと、付き合ってくれてありがとうね」
と、ちょっと照れ臭そうに。
■リタ・ラルケ >
「ほんと、美味しいーっ! ここに来れてよかったっ!」
人間だけど、このお店の料理はとっても美味しくてっ! ハロウィンじゃなくても食べに行きたいくらい!
いいお店、見つけちゃった! まあ、いつもの姿で来たら逆にびっくりされちゃいそうだけど。
パスタを食べながら、迦具楽ちゃんは寂しげな顔。
付き合ってくれてありがとう、という言葉を聞いて、迷うことなく、
「それならリタだって、迦具楽ちゃんと一緒にお出かけできて嬉しいよ!」
それから、少し困ったように笑いながら。
「リタ、元々の世界だとね、その……あんまりお友達と一緒に遊びに行くなんてできなかったから。だからこうして誰かと一緒にお出かけするのって、初めてなんだ」
この世界みたいに、魔術が普通にあった世界だった。だけど、その中でもリタは『精霊纏繞士』という、周りからは特別視される存在だった。
でも、だからといって嬉しいわけじゃなかった。特別ということは普通じゃないっていうことで、周りからは避けられてたし、力を色々なことに利用されたことも幾度となくあった。
「だからね、今日はほんっとに楽しい! 迦具楽ちゃん、」
そうして一つ、息を吸って。
「"リタ"と友達になってくれて、ありがとうっ!」
■焔誼迦具楽 >
「ん、あはは、そんな事言われたら照れるじゃん!
そんなの、こちらこそって話だよ、あはは」
恥ずかしそうに笑って、笑って――笑い声は少しずつ沈んでいく。
手に持っていたフォークを置いて、テーブルに肘をついた。
「はは、は、ダメだなあ。
ああ、うん、ダメだよね」
両肘をついてうつむき、頭を抱えるようにして。
声はだんだん、力なく沈んで。
「リタ、私ね」
そこから次まで、少し間があった。
それはまるで迷うような、躊躇うような間。
そして。
「――エアースイム、やめようと思うの」
■リタ・ラルケ >
「――え」
一瞬、聞き違いかと思った。でも、そうじゃないって。迦具楽ちゃんの表情が、そう言っていた。
「……どうして?」
リタがさっきまで抱えていた、元気の塊がすっかり消えていた。
それほどまでに、友達の言葉が衝撃的だった。
「それは……負けちゃった、から?」
心境に変化があったとすれば、やっぱり大会でのことだと思う。そうじゃなきゃ、あんなにエアースイムを楽しんでた迦具楽ちゃんが――、
「それとも……何かやなことでも言われた、の?」
いつの間にか食事をする手は、すっかり止まってしまっていた。
■焔誼迦具楽 >
「どうして、どうして、かな」
答える声もまた、力がない物。
「なんだろう、面白くなくなっちゃったんだ」
重たい吐息は、いつもの楽し気で、自信ありげな迦具楽のものと似ても似つかない。
「楽しければいい、って思ってたけど、あれからさ、全然楽しくなくて。
私なら勝てるかもしれない、そう思ってたんだけど――思い上がりだったって思い知ったの」
少し上げられた顔は、友人から目を逸らすように、視線を外して。
「私は、さ、これ以上はきっと勝てない。
星島だけじゃない、他の選手にも、すぐに対策されて、勝てなくなる。
経験も、練習量も、追いつけないから、きっとすぐに、決勝にも立てなくなる」
悔しそうに歪んだ口元。
赤い瞳は、どこか暗く曇っているように見えるだろう。
「だからもう、いいかな、って。
だって私よりすごい選手沢山いるもん。
私じゃなくたって、いいじゃん、ね」
そう自嘲するように、口元が歪んだ。
■リタ・ラルケ >
「――それは、だって」
言いかけて――言葉が止まった。ううん、止めた。ここにいるべきは、"リタ"じゃない。
■リタ・ラルケ >
「――違うよ。『私じゃなくたっていい』なんてこと、ない」
――"自分"が、言う。纏繞を解いてくれたらしい。
「だって私は、迦具楽がいたからエアースイムを知れた」
海の上に描かれた、あの紅い軌跡を。
「迦具楽があの海にいたから、見てみようって思った」
夕暮れ空を駆け抜けた、あの人影を。
「迦具楽が大会に出たから、エアースイムを始められた」
並み居る選手を貫いた、あの稲妻を。
「――迦具楽がいなきゃ、こうして話すことなんてなかった」
今だって、鮮明に覚えているのだ。
例えば、あの海にいたのが迦具楽でなく――そう、【トップスイマー】であったとしたら。
そもそも自分は、エアースイムに興味を示したかすらもわからない。
「迦具楽、教えて。そのすごい選手は、何も知らない私を抱えて、一緒に飛んでくれる? 移り気な私を、一つのスポーツに夢中にさせてくれる?」
答えを待たずに、次いで言った。
「私はね、きっと迦具楽だからこうしているんだと思う」
根拠は、ない。
だけど。
そう思えるだけの自信は、ある。