2021/03/04 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に高坂 綾さんが現れました。
高坂 綾 >  
私、高坂綾にはいくつかの顔がある。
それは、常世学園の生徒だったり。
裏の世界を駆けるクノイチだったり。
裏渋を探険する組織、久那土会のメンバー…“ストライダー”だったりする。

そして裏渋に定期的に出入りしていると。

「あ……また」

ふとした瞬間に裏に紛れ込むようなことも、時々ある。
そして今がその時で。

参ったなぁ、手裏剣はともかく他の忍具の残りどれくらいあったっけ。
まぁ、メンバーに連絡を取ることも視野に入れつつ出口を探してみよう。

赤黒い影が伸びる、人のいない常世渋谷。
日没の具合にして、夕刻………危険な時間。

高坂 綾 >  
久那土会のメンバーだから裏が怖くないかというと、そうでもない。
恐怖感が麻痺した人はたいてい、碌でもない末路を迎える世界。
だから、恐怖を感じる心を上手く飼い慣らすことが肝要。

異界特有の脱力を覚える体を魔除けのポプリで奮い立たせつつ歩く。

今回はやや深い階層にいるらしい。
どんな異形が姿を表すかわかったものじゃない。

 
ふと、目の前に影が立ちはだかる。
それは………白いワンピースを着た、背の高い女性。
帽子を被っている。
ああ、何度か戦ったことがある。

八尺様だ。

しかしどうにもサイズ感がおかしい。
背が低いのだ。
これは……まさか………レアエネミー!!

「レッサー八尺様!?」

そして次に出てきたのは。
ゴロン、ゴロンと転がってくる正方形の組み木細工。
コトリバコ………!!
でも、異様に大きすぎる!!
これは……まさか………レアエネミー!!

「ジャイアントコトリバコ!?」

高坂 綾 > 「ってややこしいわー!!」
高坂 綾 >  
異能、シャドウグラフ・冥灯(アビス)を使って、
影から巨大な漆黒の拳を生み出して蹴散らす。
大きかったり小さかったりするだけじゃない!!

はぁ、はぁと肩で息をすると。
ふと気づけば。
周囲はどこか縮尺の狂った世界。

そうか、ここは怪異の大きさが違っているんだ。
不規則性の中に規則を見出す。

高坂 綾 >  
「……でもまぁ、これくらいなら許容範囲か」

汗を拭って歩き出す。
怪異のサイズが違う程度で怯む私ではない。
そもそも、以前の事件でセカンドステージに上がった私の異能は。
結構、強かったりする。

周囲を見渡しながら慎重に歩いていると。
全く慎重とはかけ離れた。
ドズン、という音が聞こえた。

うるさいなぁ。人が慎重に……して………

振り返ると。
ビルの合間から覗く巨人と目が合う。

「デ………!」

デイダラボッチ!! それも巨大な……ビルより大きな…!!
グレーターデイダラボッチとしか言い表せない異形が。
私を見ていた。

「………!!」

決死の形相で逃げ出す。
異能のステージがどうとか、忍具の残りがどうとか。
そんなの関係ない。

あのサイズ、指で突かれただけで死ぬ!!

デイダラボッチ >  
目の前の生き物が。逃げた。
巨大な瞳でそれを見据えながら追いかける。

無人のビルを崩し、蔦が繁茂して覆っている車を踏み潰し。

巨人は小さき者を追いかけた。

高坂 綾 >  
「あああああああああぁぁぁ!!」

可愛さとは縁遠い叫び声を上げながら必死に逃げる。
どこかに。どこかに。
違和感があるはず。

裏の世界の違和感は、表の世界に繋がる扉になっていることも多い。

違和感を探し………探し…
無理!! あの巨人に追いかけられながら何かを探すとか!!

絶対にむーりー!!

デイダラボッチ >  
特に害意があったわけではない。
ただ、逃げたから。
追いかけてみようと思っただけだった。

色んなモノを崩し、踏み潰し、破壊しながら。
イツワリの神は無人の世界を歩く。

高坂 綾 >  
死ぬ! 死ぬ! 今度こそ死ぬ!!
まさかこっちの世界で踏み潰されるのがオチなんて!!
両親にごめんなさい!!
友達にありがとう!!
そして全ての常世学園生徒に!!
お世話になりました!!

轟音。すぐ背後で巨大な足がドズンとアスファルトを沈めて。

ピャッと驚いた齧歯目のように一目散に逃げ出していく。
あああああああ。
こんなことなら昨日のフルーツ大福、最後の一個食べておくんだったー!!

混乱する思考の中、ふと流れる景色に。
鍛冶屋のような建物があることに気づく。

それは常世渋谷の街並みにある違和感。

デイダラボッチの語源はタタラ場にも源流があると聞いた。
慌てて駆け込む。今にも背後の巨人は私を捕まえそうで。

高坂 綾 >  
ふと。気がつくと。
私は汗だらけ、息を切らせたままコンビニ『アビスマート』に佇んでいた。

周りの客や店員が一瞬、私を見て。
そのまま無関心に視線を逸した。

どうやら帰ってこられたみたいで。
どうにも居心地の悪い視線から逃れるように外に出る。
どう足掻いても死ぬような局面で。
どういうことか生き残ってしまうのも、運命というもの。

しかし今回はヤバかった。
後は………帰ってフルーツ大福の最後の一個を食べよう。

ご案内:「裏常世渋谷」から高坂 綾さんが去りました。