2021/06/04 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に高坂 綾さんが現れました。
高坂 綾 >  
近頃、常世渋谷付近で子供が行方不明になっている。
私たち久那土会でも短期ミッションに子供たちの捜索が入っていた。
この日、私は裏常世渋谷に潜入。

雨が降りしきる中、頭上から薄く展開した影で雨粒を防ぐ。

太陽が出ている。けど雨。
日光は燦々。だけど暗い。
不自然を煮詰めたような場所は、慣れた今でも人の領域でないことを思い知らされる。

子供たちが無事見つかればよし。そうでなければ………
気分は重い。

高坂 綾 >  
しばらく、狂った色彩の常世渋谷を歩く。
その時、渋谷の街並みに。
沼のような腐った水溜りが存在していた。
大抵、こういう場合はフロアを統べるボスのような怪異がいる。

身構えたままゆっくりと歩を進めた。

ゲドガキ >  
『肉を千切ってやろかぁ………』
『骨まで食んでやろかぁ………』

異質な声が、響いた。
沼から這い出る、異形。
人のような胴体こそあれ、硬質な皮膚はぬめっている。
無残な死を想起させる四本の腕。

人で言えば顔に当たる部分からは、両の目玉が真上に不自然に突き出ている。

『美味そうな女だぁ……このゲドガキのバケモンに血の匂い、嗅がせろぉ…』

高坂 綾 >  
顔を顰めて、醜悪な怪物を見る。

「お前……人間の子供を見なかったか?」

手は手裏剣ホルダーにかけて。
いつでも相手の動きに対応できるようにする。

「“表”から数人、行方不明者が出ている」

ゲドガキ。確か、人を喰らう妖怪の名。
でも、名を知られていればいるほど強大な存在となるルール。
こいつ程度ならゲドガキのバケモンの名を借りた別の怪異……?

ゲドガキ >  
『子供だァ………へへへ、どうだったかな…』
『おお、そういえば、思い出した思い出した…』

女の前に子供用の靴を片方、もうボロボロの血塗れに鳴ってるやつを放る。

『美味かったぜぇぇぇぇぇぇゲヒヒヒヒヒヒヒ!!』
『子供の肉はよォ、柔らかくて甘くてよォ………』
『お前みたいな女の肉の味もきっとうんまいぜぇぇぇぇ!!!』

素早く、身を低くしながら襲いかかる。
身の丈にして2メートル、人など轢き潰して余りある威力の突進。

高坂 綾 >  
目の前に、子供用の靴が転がる。
頭に血が上るのを、必死に堪えた。

「外道が………!」

突進してくるゲドガキに、手裏剣を5連射で投げる。
同時に身を翻して回避、異能での撃退を目指しながら相手の正体を探る。

正体を暴かれた怪異は、弱体化することもある。
怒るのは後でいい、今は頭を回転させて相手の本質を見破れ。

ゲドガキ >  
『ケケケケケケーッ!!』

硬い肌とその丸みで手裏剣を防ぎ。
そして眼を狙う投擲された刃が、
異形の目の前で突然静止して両断、地面に落ちる。

『そんなもんがよう、この年経たゲドガキに通じるかよう!!』

追いすがり、相手の足を掴む……いや。
掴んだ勢いで体の一部を握り潰してくれようと迫る。

高坂 綾 >  
怪異との膂力の差は歴然。
だが馬鹿正直に零距離(キル・ゾーン)で戦ってやる必要はない。

走り続けながら両手で印を組む。
異能発動、影を操作して漆黒の巨刃を二連続で振り下ろす。
雨を防ぐ分の影がなくなり、土砂降りの雨に降られながら戦う。

『シャドウグラフッ!!』

セカンドステージの異能、これが通じない怪異はそうはいない。
無論、相手もただ受けるだけではないだろう。

眼に投げた手裏剣を防いだ鋭い攻撃。
あれを看破しなければ。

ゲドガキ >  
『バカがぁ!!』

背中の裏に隠し続けていた。
二本のハサミのような隠し腕を使い、影なる刃を切り払う。

『死ッ!!』

まず一撃。右の隠し腕で相手の足元を、大地ごと割り砕いて着地を妨害。
続いての一撃。左の隠し腕で斬り捨てんと迫る。

『ねえええええええええええええええええぇッ!!!』

高坂 綾 >  
「!!」

着地を狙われた!!
足元が崩れ、姿勢が!!

そして相手の隠し腕が迫る、その瞬間。
目を見開いた。

「四足八足両眼天に差す!! 貴様の正体は蟹だ!!」

そう叫んで印を組む。

ゲドガキ >  
正体を看破され。
動きが一瞬、止まった。

高坂 綾 >  
「影技(シャドウスキル)ッ!! 落影門!!」

私の影が、周囲の闇と接続された。
影から伸びる鋭利な棘が、ミキサーのようにゲドガキを………
蟹の怪異を粉砕した。

「地獄へ落ちろッ!!」

そう、短く叫んだ。

ゲドガキ >  
『く……そ…………っ』

粉々になって、地面に体のパーツがバラバラに落ちる。

『まだ喰いたりねぇよぉ…………』

それはただの、小さなサワガニの死体に変じた。

高坂 綾 >  
哀れむようにその蟹の亡骸を見ると。
子供用の靴を拾って、その場を後にした。

大人は信じてはくれない。
だから………子供たちは永遠に帰らない。
行方不明者のままなのだろう。

去っていく最中に、雨脚が強くなっていった。
もう、防ごうとは思わなかった。

ご案内:「裏常世渋谷」から高坂 綾さんが去りました。