2022/01/17 のログ
■アリス >
「確かに言ってた」
「ごめん、帰りたくて仕方なくて気が逸ってる」
出た先もまた、無人の駅だった。
思えば、駅が無人である姿なんて映像でしか知らない。
ここもまた、異界なんだ。
「あっ……あれ」
常世渋谷駅と書いてある看板を指差して。
「わかった、けど……めらん子ちゃんは?」
「一緒に帰らないの?」
彼女の目を見て言う。
まるで私だけ行かせるかのような物言いだったから。
■めらん子ちゃん >
「皆が同じことを言うのです」
「『現実』に帰りたい、と」
そっと貴女の肩に手を置いて。
「私にとって『向こう側』は」
「画面の向こうの世界なのです」
「カメラを通して、伝えるのが精一杯」
めらん子ちゃんの背後には、無数の黒い手。
多目的トイレのドアの内側から叩いていたモノ。
追いかけてきて、今追いつこうとしているモノ。
「『現実』は帰る場所、いるべき場所」
「私の『現実』はそちらでは無いらしくて」
「目が覚めても、私は夕暮れのバス停にいる」
羨むように目を伏せて、呟いて。
改札の向こうへ、貴女を突き飛ばした。
「本日は、これでおしまい」
「おやすみなさい、どうか良い『現実』を」
気づくと、貴女は駅の構内に立っていた。
夜勤に向かうサラリーマンが行き交う常世渋谷駅。
さっきまでいたはずの改札の反対にも人が行き交う
『現実』の世界。
黒い手に飲まれた少女の姿は影も形も無かった。
ご案内:「裏常世渋谷」からめらん子ちゃんさんが去りました。
■アリス >
肩に手を置かれる。
その手は温かくて、彼女の実感が伝わってきた。
「めらん子ちゃん………?」
その時、彼女の背後から無数の黒い手が伸びていた。
声も出ない、手も出せない!!
羨むような彼女の言葉を、確かに耳に残して。
改札の向こうへ私は突き飛ばされた。
気がつけば。駅の構内に私は立っていた。
人が行き交う。『現実』の中で。
私は確かに一緒に居た人のことを、必死に考えていた。
ご案内:「裏常世渋谷」からアリスさんが去りました。