2022/01/17 のログ
アリス >  
「確かに言ってた」
「ごめん、帰りたくて仕方なくて気が逸ってる」

出た先もまた、無人の駅だった。
思えば、駅が無人である姿なんて映像でしか知らない。
ここもまた、異界なんだ。

「あっ……あれ」

常世渋谷駅と書いてある看板を指差して。

「わかった、けど……めらん子ちゃんは?」
「一緒に帰らないの?」

彼女の目を見て言う。
まるで私だけ行かせるかのような物言いだったから。

めらん子ちゃん >  
「皆が同じことを言うのです」
「『現実』に帰りたい、と」

そっと貴女の肩に手を置いて。

「私にとって『向こう側』は」
「画面の向こうの世界なのです」

「カメラを通して、伝えるのが精一杯」

めらん子ちゃんの背後には、無数の黒い手。
多目的トイレのドアの内側から叩いていたモノ。
追いかけてきて、今追いつこうとしているモノ。

「『現実』は帰る場所、いるべき場所」
「私の『現実』はそちらでは無いらしくて」
「目が覚めても、私は夕暮れのバス停にいる」

羨むように目を伏せて、呟いて。
改札の向こうへ、貴女を突き飛ばした。

「本日は、これでおしまい」
「おやすみなさい、どうか良い『現実』を」

気づくと、貴女は駅の構内に立っていた。

夜勤に向かうサラリーマンが行き交う常世渋谷駅。
さっきまでいたはずの改札の反対にも人が行き交う
『現実』の世界。

黒い手に飲まれた少女の姿は影も形も無かった。

ご案内:「裏常世渋谷」からめらん子ちゃんさんが去りました。
アリス >  
肩に手を置かれる。
その手は温かくて、彼女の実感が伝わってきた。

「めらん子ちゃん………?」

その時、彼女の背後から無数の黒い手が伸びていた。
声も出ない、手も出せない!!

羨むような彼女の言葉を、確かに耳に残して。

改札の向こうへ私は突き飛ばされた。

 
気がつけば。駅の構内に私は立っていた。
人が行き交う。『現実』の中で。

私は確かに一緒に居た人のことを、必死に考えていた。

ご案内:「裏常世渋谷」からアリスさんが去りました。