2022/10/15 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
■芥子風 菖蒲 >
常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)。
所謂この学園都市の裏側に位置するエリアだ。
常世渋谷の裏路地を抜けたらここに出てしまった、と言うのも珍しくはない。
元々学生街付近に比べれば、そもそも歓楽街と常世渋谷は余り治安のいい場所とは言えない。
無秩序、と言うよりは無軌道だ。皆自由に楽しんでいると言えばそうだ。
勿論そういうものは当然、"抜け道"との接点も大きくなる。
それがここ、黒街だろう。少年は整備もされてないひび割れた道を進んでいた。
「思ったよりも広いなぁ……」
夜の宵闇、わずかに壊れた街頭が照らす開けた路地裏。
昔はここも何かの店が連なっていたのだろうか。何処も人気を感じない廃墟ばかりだ。
宵闇に溶ける黒衣には、『風紀委員』の腕章が非常に目立つ。
事実、例のかぼちゃ頭がばらまいたチラシを此処中心にばらまかれたということで
それの調査兼、所謂"にらみを利かせ"に来たといった感じだ。
路地を歩くついでに、手に持っていた小さなチラシを一瞥した。
「ハロウィンかぁ」
催しものの季節だが、今年は随分と派手な事をしたいらしい。
■芥子風 菖蒲 >
チラシにはそれこそ随分と派手な事が羅列されている。
正直、少年は内容の詳細についてはそれほど興味が無い。
早い話、"どうでも良い"。但し、此処は学園都市であり
何も、無秩序な連中ばかりではない。善良な島民達が
何も知らずにこの黒街を通して、落第街の荒くれに巻き込まれる事件もあるほどだ。
島の奥地でならともかく、表に近しい場所でとなれば無視は出来ない。
自分の護りたいものが巻き込まれる可能性がある事だけは、避けたいからだ。
「どうせなら、個人でやれば良いのに」
個人で楽しむなら、どんな違法もバレない内は合法だ。
勿論それには、"他人に迷惑を掛けない"と言う高い前提がついている。
溜息交じりにぼやいた台詞は、聞く風紀委員次第では耳を疑うかもしれない。
歩きづらい瓦礫を踏み躙りながら、肩にかけた漆塗りの鞘を揺らす。
退屈そうにしている少年だが、青空の双眸は瞬きすることなく周囲に気を配っていた。
風紀の秩序、此処に有り。
如何なる理由であれど、秩序を乱すのであればそれは罰する。
この黒街を悠々と歩き、連中に睨みを利かせておく。
そこまでは考えていないけど、これで畏怖してライブの不参加者が少しでも減れば御の字だ。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に川添春香さんが現れました。
■川添春香 >
チラシを手にうろつく。
こんなだいそれたことを考えつくなんて。
Knowface……なんて恐ろしい人…!
どこかで関わりたいと思ってはいるけど。
生活委員会の自分がどうやって?
そもそも私が戦う理由ってなんだろう………
私は悪党には女伊達を見せたいだけであって、正義の味方…かというと違う気がする。
うーうー悩みながら歩いていると人にぶつかりそうになる。
「あ、すいませ───」
謝罪は中断される。
風紀委員の腕章、だった。
「のあー!?」
ビックリしすぎて3センチ跳ね上がった。
いや待て、悪いことしてないのになんで驚く私!?
■芥子風 菖蒲 >
それこそ、正面には出てこないが視線は感じる。
違反生徒の連中か、或いは裏側でしかいきれない人種か。
どっちにしろ、風紀委員なんてものは此処に来てほしくないと思う連中が大半だ。
尤も、向こうから手出しをされない限り何もしない。
武器を持ち、武術を得てしているからこそ、"暴力"を振るうのは忌避すべきだ。
「ん……」
そうこう瓦礫を蹴りながら歩いていると正面から誰か来る。
女の子だ。人は見かけによらないとは言うけど
どう見ても、黒街や落第街に住み着くような人種には見えない。
ぶつかる前に足を止めれば、此方を見ては驚いている。
なんなんだ、と思った少年は小首を傾げた。
「どうした?迷子?
それとも、ヘンな連中にでも絡まれた?」
そう問いかけるも、ふと気づいたのは少女の手元。
「あ、チラシ。アンタもソレ、興味あるの?」
■川添春香 >
迷子か何かかと言われると一歩下がる。
瓦礫に足を取られて転びそうになった。
「ああ、いえ、その………!」
なんだろう。何を言えばいいんだろう。
そもそもレイチェル・ラムレイ先輩並びに
負傷した時に風紀委員に大変お世話になってるのに
このリアクションは失礼すぎないか私ー!?
「興味………」
手元のチラシを見る。
体温と心音が跳ね上がった。また3センチくらい。
「ヴォー!?」
奇声を上げて。
「違うんですよ風紀委員さん……興味があるなんてそんな…」
「あ。怪しい生徒じゃないですよ私……全然…怪しくなんか…」
ダラダラと汗を流して。
涼しいのになんだこれ。
そもそも今の私の言動めちゃくちゃ怪しいー!!
■芥子風 菖蒲 >
少年は感情の起伏は乏しい。
だが、他人の機敏に疎い訳ではない。
明らかに焦って驚いて、怪しいと言えば怪しいけれども
確証はない。如何にも悪い人間には見えない。
「別に逮捕とかする気はないよ。結構ばらまかれてるみたいだし」
余程大きな祭りにしたいらしい。
主催者の目的が何かは知らないが
一般生徒が巻き込まれるのは勘弁だ。
「まぁ、焦ってるところは怪しいけど、多分違うでしょ。
そこのチラシに乗ってるものが欲しいとか思えないけど」
「ここに迷子になったんじゃないの?
常世渋谷から直につながってるし、そうなら珍しい事じゃないよ」
そして、そう言った生徒を保護するのも風紀委員の役割だ。
■川添春香 >
───逮捕する気はない。
と、その言葉にふと彼の瞳を見れば。
青空が広がっていた。
どこか落ち着いた私は、彼の言葉に少しずつ答え始める。
「それは……これの売ってるアイテムが欲しいわけじゃなくて………」
「そういうのを大っぴらに売買している……このKnowfaceを…」
どうしたいんだろう?
捕まえたい? 成敗したい?
どれも違う気がする。
「………邪魔したい? ような…」
ううん、と悩んで。
そして迷子になったのか、と言われれば。
ウソをつくのも違う。
「違います、人を探しているんです」
「このチラシの人とか………パラドックスとか?」
なんだろう。どれもしっくり来ない。
私はどうしてこんなこと始めたんだっけ。
■芥子風 菖蒲 >
「そっか」
返事自体は素っ気無い。
正義感からの行動かどうかはさておき
人がしたいことに文句を言うほど無粋ではない。
「邪魔したいのはオレも同じ。
仕事でもあるんだけど、アンタはなんで邪魔したいの?」
ただ、"ミイラ取り"オチになるようであれば見過ごせない。
実力のほどもそうだが、煮え切らない返事が返ってきた以上
それだけはハッキリさせなければいけない。
青空は静かに、彼女を見据えていた。
「人探し?パラドックス?アー、えっと。例のハゲ頭。
オレは見てないけど、アイツもどうにかすべきだよね」
既に風紀委員で犠牲者も出ている。
それを見過ごすことは出来はしない。
破壊者と自称するが、此方から見ればただの犯罪者だ。
制圧し、捕縛する。連中の好きにさせるつもりは毛頭無い。
とは言え、神出鬼没の破壊者は此方でも位置取りをつかめてはいないのだが。
「オレはまだ見かけてないけど、一緒に探し……ごめん、こっち」
少年は、言葉を止める。
不穏な空気が張り詰め始めた。
自然に少女の手首をつかんで、此方に引っ張った。
背に回すような庇う形だ。
彼女がいた場所の背後には大きな人影が三人。
ドクロ入りのフェイスマスク。
筋骨隆々に鉄パイプと光もの。
焦点の合わない三人の目は明らかに危険であった。
「薬物……?ついてないね。追いはぎだ」
つけられていたか、たまたま見つかったか。
どっちにしろ、お互い運がいいとは言えない。
■川添春香 >
なんで……邪魔したいのか…
どうしてだっけ…毎日、パトロール紛いのことして疲れて。
帰ったら夜になってて頑張って宿題して。
「なんでって………」
考え込む。
邪魔したい? そんなの女伊達となんの関係もない。
パパは……答えを出していたんだろうか。
「風紀でもパラドックスを追っているんですよね…」
それでもこの街は広すぎて。
目立つ存在でも追い詰めるには入り組んでいる。
その時。手を引かれて。
「えっ」
その時、薬物中毒者と思われるブレた目つきの男が三人。
それを見た時。
逆に私の視線は定まった気がした。
「せーのっ」
遠くから蹴りの構え。
蹴ると同時に足首が伸びて一人に蹴りかかった。
思考がクリアになる。
「私は……“悪”に消し去られる未来があることが我慢ならない!!」
一つ、言葉にしてファイティングポーズ。
■芥子風 菖蒲 >
「あ」
思わず呆気を取られた声が出た。
庇うつもりだったのに、よりにもよって真っ先に
足が出たのは他でもない彼女からだったのだ。
参ったな、とちょっと思ったが、蹴りは思ったよりいい感じに入ったらしい。
男の一人は体を大きくのけ反らせるが、倒れない。
ぶれた視界。どうやら薬物により反応か痛みを感じないらしい。
「思ったより手が早いんだな、アンタ。
もしかして、本当は黒街の住民だったりする?」
そういう頃には、男たちは一斉に獲物を手に飛び掛かってきた。
少年に油断は無い。真っ先に近かった鉄棒の男の喉仏を
素早く漆塗りの鞘が貫いた。男達よりも小さな黒い体躯は
まるで吹き抜ける突風のように力強く、そのまま一人を押し倒し根元をねじる。
流石にそこまですれば、蚊のような悲鳴が漏れた。
続けざまに一人は、足を引っかけてすっころばした。
勢いづいていたのか、良い感じに顔面から瓦礫に大分。痛そう。
もう一人は……。
「もう一人宜しく」
彼女に任せた。
職務怠慢ではない。
何となくだが、ちょっとは暴れさせたそうが彼女のためと思ったからだ。
残された一人は、コンバットナイフを逆手に持つ、少女の頭上目掛けて振り下ろす。
■川添春香 >
黒街の住人だったりする、と問われれば。
「まさか」
構えを解かずに冗談を返して。
心の中に火が灯る。
もう、寒くない。
振り下ろされるコンバットナイフ。
体を超軟体で上体を後方に大きく折り曲げて回避する。
漆塗りの鞘を器用に使う彼を見て。
「強いね、さすが風紀委員?」
上体を起こすと、拳を後方に引く。
「私は………」
拳を膨張させてナイフを持った追い剥ぎにブチ当てた。
鬼角拳。
「みんなの前に続いてる未来を守りたい!!」
そのまま拳を元のサイズに戻して。
「……そのために戦う」
■芥子風 菖蒲 >
巨大な拳を顔面に受け、大きく脳が揺れたのだろう。
痛みがなくても、ダメージしっかりと入っている。
男はそのまま崩れ落ちてしまった。
「そう?喧嘩っ早いからそう思った」
てっきり怯えるかと思ったけど、思ったより肝が据わっている。
少年は刃を抜くことはなく、瓦礫塗れの男が倒れる前に
思い切り頭部へと鞘を叩き落した。鈍い音がわずかに響き、男は動かなくなる。
殺したわけではない。全員に文字通り、気を失ってもらった。
「別に強いワケじゃないよ。強くなろうとはしてるけどね。
そうじゃなきゃ、オレは自分の護りたいモノを護れないから」
力がなければ届かないものだったからこそ、少年は力を求めた。
貪欲なのはそうだし、そこに手段は求めていない。
きっと、今までも危険な橋を渡ってきた。
そして今も、此処にいる。自分の目標を見失わずに
着実に強くなっているとは思う。
御覧の通り、二人がかりと言えど
異能者でなければ異能を使うまでもなく制圧は出来た。
伊達に単独で、多くの違反者と戦っていたわけではない。
それでも素直に頷かないのは謙遜と言うより、当人が強者と自負するに値しないと思っているからだ。
「……さっきまでヘンな返事だったけど、随分といい顔になったじゃん」
「悩み事はなくなったの?」
少年は、改めて問いかけた。
■川添春香 >
拳を握って開く。掌の上には何も乗ってはいない。
でも、なんだってできる。
そんな余白を残してもいた。
「喧嘩っ早いのは褒め言葉として受け取っておこうかな?」
「だって私は……不良ですからね」
周囲のガラの悪い人たちも視線を逸した。
次にちょっかいをかければ気絶するのは自分のほうだと理解したのだろう。
「はい、ちょっとスッキリしました」
大きく伸びをして。
「Knowfaceも破壊者も止めます」
「それが私の女伊達です」
「尖って、唸って、噛みついても青春ですしね」
そんな意味のわからない言葉で結んだ。
「あ、人食いの怪物はぶちのめします」
と、付け加えて。
■芥子風 菖蒲 >
「そっか」
また返事は素っ気無いものだけど
彼女がそう言うならそれに野暮なことは言わないだけだ。
トントン、と再び鞘を担いで、耳元に指を充てる。
耳たぶについたスイッチが起動し、目の前にホログラムが広がった。通信装置だ。
「あ、オレ。菖蒲。とりあえず、この辺でごろつきぶちのめした。
うん、三人。なんか普通じゃない感じだし、病院?とかその辺も宜しく」
勿論こういった住民を倒すだけが仕事ではない。
彼等を確保し、更生をさせるのも風紀委員の仕事だ。
そのまま回線を開いたまま、青空が横目で彼女を見やった。
「後、不良がいる。自称不良。……あー、うん」
「どうしよ、補導した方がいい?」
なんて不思議そうに少女に尋ねた。
本人に尋ねるような事ではない。
■川添春香 >
手早く通報を済ませる風紀委員の男の子。
私も暴力だけで終わらせる気はない。
「えっ」
補導!? それは困る!!
生活委員会でお世話になっている先輩方に迷惑がかかる!!
「私、実は一般生徒でしたぁ………」
口笛を吹きながら視線をそらした。ああ、茶番。
それから彼に連れられて常世渋谷に戻り。
あれこれと襲われた時の状況を説明することになった。
でも、私の心には。
確かに灯火があったんだ。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から芥子風 菖蒲さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から川添春香さんが去りました。