2020/08/09 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にエルピスさんが現れました。
エルピス >  
「多少の情報は仕入れてきたけれど……
 ……予想以上に混沌としているね。」
 
常世渋谷。
時刻は昼。

"右腕が2本ある"義肢を持つ栗色の髪の少女のような少年の姿。
2本目の右腕で端末を操って現在地を確認し長歩き回っている。

「それに、思った以上に平和。
 場所が場所だからかな。……少し危ない匂いもするけれど。」

エルピス > 店先を見て回る。
ちょっとした飲食店からファッションビル、ブティック、
そして出所の怪しい"色々。"

「……平和なのはいいけれど、この辺が一緒に並べられているのは風紀委員さんからすると大変そうだね。あ、これ一個ください。」

落第街と違い、『無い』ことにはなってない区分。
"いや、扱いを決めかねているのかもしれないけれど。"
そんなことを考えながら道を行く。

「目的地はあっちだけど……もうちょっと周辺を見ておこう。」

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に月ヶ杜 遍さんが現れました。
月ヶ杜 遍 >  
「……あら、そちらにいらっしゃるのは。」

かつん、とヒールが鳴る。
鈴の音のような、しかし凛とした声が鳴る。

「……エルピスさんじゃありませんの。
 やはり目立ちますわね、その片腕……両腕?
 こんな胡乱な場所で会うなんて、偶然もあったものですねぇ。」

貴方は、この女に遭ったことがある。あるいは見た、聞いたことがある程度かもしれない。
月ヶ杜 遍。貴方と同業の『なんでも屋』、あるいは『便利屋』。
少なくとも遍の方はある程度貴方の存在を認知しているようだ。

エルピス >   
「あ、便利屋(どうぎょうしゃ)。」

 "便利屋《月妖(ストレンジマンデイ)》。"
 "元風紀委員。"
 "上品な何でも屋。"

 彼女のプロフィールを思い返す。

 ……エルピス自身もそれなり知っている相手なのだろう。
 慣れた具合で2本目の右腕を上げる。
 
「……まあ、この腕が目立つのは今更だから。
 そっちも調べもの?」

 思い返す限り、彼女とは仕事での付き合いが多い。
 と言うより、それなりに縄張りが被る。
 

月ヶ杜 遍 >  
「えぇ、便利屋(しょうばいがたき)です。
 ……なんて嘘嘘、今日はフリーですわよ。そちらは……お仕事で?」

口元を手で覆い、クスクスと笑みを零す。
その言葉に嘘はない。仕事をする人間のピリッとした感じは少ないようだ。

「半分半分ですわねぇ。多かれ少なかれ、この街に絡んだ依頼は増えるでしょうし。
 遊びがてら地理や人口の層なんかも見ようと思いまして。
 ……まぁ、落第街とそこまで代わり映えはしませんわねぇ。」

辺りをちらりと見渡す。
やはりと言うべきか、若者がとても多い。
これが再現された『渋谷』の街並みの一部なのか、それとも『こちら』から物見遊山に来た
胡乱な街を闊歩する物好き共の姿なのか、それは判然としない。
何にせよ、無軌道な若者と、それと同じくらい無軌道に無秩序な店が軒を連ねる
中々に厄介そうな街であることは伝わる。

エルピス >   
「僕程度の便利屋だったら、商売敵にするにはありふれているって。
 ……今日はオフだよ。オフだけど個人調査。下準備。」
  
 軽い会釈を返す。
 彼女のことはある程度知っているため、態度に違和感は持たない。
 油断もしない、と言うことである。

「そう? 『メインストリート』は落第街よりも歓楽街に近くて、
 下手すると歓楽街より治安が良さそうだけれど
 ……ああ、常世街と黒街に行くと危ないのかな。」

 視線を巡らせて、遠くを見る。
 治安の悪い場所はもっと悪い、と言うことは知っている。

月ヶ杜 遍 >  
「まぁそういう事にしておきましょう。
 此方が無関心でも向こうはそうは思わないかもしれませんけどね。」

便利屋、あるいは何でも屋というのは目に見える以上に多い。
規模もスタンスも請け負うテリトリーも千差万別だが、大別するとそれら全てが競合し得る。
故に、遍は特別に商売敵という存在を狙い定めていない。

「あら、それじゃあ私と一緒ですわねぇ。
 せっかくですし一緒に回ったりしましょうか?デートですわねデート。」

再びからかうように笑みを溢して、すぐに真面目な表情を作る。

「その『境界』がイマイチわからないのですよねぇ。
 どこからどこまでが安全で、どこからが薄っぺらな秩序の皮を被った危険地帯か。
 いかんせん実体のない蜃気楼のような街ですからね。治安は良さそうに見えますが…
 落第街のような『秩序立った混沌』ですらない、と言うべきでしょうか。」

言うなれば、先程まで子供が遊んでいた公園が暴力組織の抗争の場になるようなもので。
不安定かつ不確定要素が多い場所は、ステータスの変遷が非常に激しい。
故に油断ならない。どこからが地雷原か分からないからだ。

エルピス >    
「月妖の便利屋とのデート、
 普通に依頼したら高く付きそうだね。」
 
 苦笑しながらも承諾の意を示す。
 考え込む月ヶ杜を確かめれば……。
 
「そう考えると大分曖昧な所だよね。
 ……連日地上げ屋や落第街の住人が縄張り争いを繰り広げて、
 見かねた風紀委員や公安委員が介入するような事態になっていないだけ良いのかもしれないけれど……」
 

月ヶ杜 遍 >  
「ふふ、お相手にも依りますよ?
 紳士で素敵な殿方なら格安でも偽装デートして差し上げますが。」

苦笑いに更にジョークを重ねて返す。

「それは致し方無いと言えますわねぇ。なにせ常に変容と拡大縮小を繰り返していますもの。
 いくらテリトリーを欲しがる地上げ屋や無法者でも、昨日まで裏路地だった場所が
 後日来てみたら住宅街のド真ん中だった……なんて場所、いくらなんでも
 使い勝手が悪すぎますわよ。」

それさえなければ移転も考えたんですけどね、などと溢しつつ。
こちらはジョークではなく割と本気だ。
周囲に立ち並ぶ小綺麗なブティックやカフェを見て、少しばかり恨めしそうな顔をする。

「まぁその分、場所次第では『取引』しても足が付きにくいという利点はありますし……
 大なり小なり需要は出来るとは思いますわね。」

エルピス >  
「それもそっか。
 隠れ家にするにはいいのかもしれないけれど……」

 あっさり納得。
 つられるように小奇麗な街並みを見る。
 ……ほほぼぼ無法地帯とは言え、このような場所では"色々とやり辛い"。

 ある種、割れ窓理論のようなものも働いているのかもしえない。 

「もう少しは調査かな。
 取引するにしても合流に手間取る場所は『偶然』誰かに見つかる可能性もあるし……ああ、話は変わるけれど……。」


 先程買ったものを投げ渡す。
 一見すると動物を積み上げた意匠のアクセサリーのようだが……

「身に着けていると『ハイになる』アクセサリー。
 たまたまかもしれないけれど、こういうものも売ってたよ。
 精神高揚と精神強化、倫理抑制の装備かな。意図した魔道具と言うよりは、
 呪いか情念……天然物の類だと思う。」

月ヶ杜 遍 >  
「まぁ、場所を選ばないクリーンな事業なら欲しがるかもしれませんが、
 そんな事業がわざわざ隠れ家なんて欲しがるはずありませんわねぇ。」

隠れるということは後ろ暗い物があるということである。
とはいえこれも、メリットでもありデメリットでもあると言える。
こちらも、荒事の準備を整えていたら相手方のいた場所がカフェになっていた…等ということがあれば
市民を盾にされて突っ込みにくくなることもあるのだ。

「ですわねぇ。変容の周期や法則性なんかが分かれば張り込みも出来るんでしょうけど…
 まだまだ出来てから日が浅い場所ですから。……ん?」

唐突に投げ渡されたアクセサリーを片手でパシと受け取り、じっと見る。

「……何処にでも毒はあるものですわねぇ。今回はフグ毒みたいなものですが。
 露天商?それともそこらのジュエリーショップでしょうか。
 どちらにせよ、風紀案件ですわねぇ。動物じみたチンドン屋が増えるのは
 彼らも看過できないでしょうし……」

エルピス >  
「暫くすれば多少なりとも分かるかもしれないね。
 ……と言うより、その為の調査だし。」

 多少でも法則性が分かればこれほど都合のよいものもない。
 エルピス自身はそう思っているからこそ、常世渋谷の調査に乗り出していた。

 暫く街並みを進む。
 途中て美味しそうなミートパイ屋さんを見つければ、足を止める。

「……ちょっと買ってくるけれど、月ヶ杜さんも食べる?
 流石にこの位は出すよ。」
 

月ヶ杜 遍 >  
「ま、そこは同感ですわね。
 今の所法則性に関しては大した成果が上がってないのも事実ですけど。」

無秩序から秩序を掬い上げるのは労力がいるのだ。
一朝一夕で出来る事でもない。気長にやるしかないのだろう。
とりあえず、アクセサリーは後で風紀に匿名で送り付けてやろう。

かつかつとヒールを鳴らし進む。
その間にも、辺りのガラの悪そうな若者から視線が飛んできた気がするが、
顔が売れているからか、それともそれ以外かは気にしないことにする。

「あら、良いですわねぇミートパイ。頂いちゃいましょうか。
 ……うふふ、それじゃあお言葉に甘えてしまいますわね。」

遠慮も否定もしない。
立てるべき所は立てる、というのは大事な部分だ。

エルピス >    
「……たまには買い食いも悪くはないね。」

 さっくり二つ購入して一つを月ヶ杜へ。
 ちゃんとした牛肉で造られたミートパイらしい。

 シンプルながらもひき肉のうまみがパイ生地と絡んで美味しい。
 
 

月ヶ杜 遍 >  
「いただきま   ………… す。」

そういえばこれ、本当に牛肉か?

一口食おうとしてそんな考えが過り、少し悩み、改めて口に運んだ。
美味い。パイ生地はさっくりとしていながらバターの甘味と旨味をきちんと宿し、
そこに叩きつけるように肉汁を湛えたミートソースが旨味を流し込む。
おやつとして食べるにはズシンとした本格的な味わいだが、むしろ学生の身には
それくらいボリューミーで濃い味のほうが嬉しい。
あと、ちゃんと牛肉だ。よかった。

「むぐむぐ。……そうですわねぇ、行儀が悪いとよく両親には怒られましたが、
 やはりこうして買い食いするのは、なんだか非日常感があって楽しいものですわね。」

エルピス >   
「えと……珍しいね。両親の話をするなんて。
 月妖《ストレンジマンデイ》はあまり身の上を語らないイメージだったけれど……。」

 素直に驚く。
 そういうことは語らないと思っていたのか、
 両親や過去の話題が切り出されたのは意外な印象だったらしい。

「……ふー、ごちそうさまでしたっと。
 僕はそろそろ目的地の古物屋でモノ探し……『裏常世渋谷』へのチケット探しに向かうけれど、どうする?」
 

月ヶ杜 遍 >  
「あら、そうですか?
 あまり興味を示す方がいらっしゃらないので、こちらも大して話したりはしませんでしたが。
 空気や需要があれば、私もちゃんと話すんですわよ?
 別に話して減るものもありませんし。」

ミートパイを頬張りながら、口元に付いたパイ生地の欠片を親指で拭う。
割と明け透けだが、どうもイメージが先行しているところもあるようだ。

「ええ、ご馳走様でした。リピートしても良いかもしれませんわね。
 まぁ、あのミートパイの店が残っていればの話ですけど。」

諸行無常、一期一会である。少し切ない。

「……ふふ、やっぱりそちらも気になりますわよねぇ。
 こちらは別口で手に入れる算段が付いてますので、そちらに向かう予定もあったのですわ。
 私もちょうどそれを受け取りに行かねばなりませんので、ここでお別れですわね。」

デート楽しかったですわ、などと冗談めかしてにこやかに笑う。
その笑顔には、心底楽しそうな空気と……獲物を狙う獰猛な獣のような光が見える。
.                                にく
混沌に遍く需要あるところに便利屋あり。裏常世渋谷という巨大な『需要』の塊に、
一刻も早く喰らいつきたくてたまらないと言った表情だ。

エルピス >   
「じゃあ、これで。
 お互いに上手く行くと良いね。月妖《ストレンジマンデイ》。」

 ──路地の途中にあった脇道を向きを変え、奥へ進んだ。
 

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からエルピスさんが去りました。
月ヶ杜 遍 >  
「えぇ、それでは。
 また会いましょう、『数ある便利屋』。
 出来れば裏渋谷では会いたくないですわねぇ?」

くすくすと笑い、反対側の路地へと入っていく。
かつかつというヒールを鳴らす音が遠ざかり……

だん、とひときわ大きい音と共に、その姿はすっかり見えなくなっていた。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から月ヶ杜 遍さんが去りました。