2020/08/18 のログ
■ツァラ >
大人びた表情を浮かべていたが、
話しかけられるとそれは無邪気さに変わる。
「やぁーやぁ、僕はお散歩中のお狐様だよ。
通りがかっただけの"祟り神"さ。」
少女を見上げてそう答えた。
白くてもふもふな耳と尻尾がぴょこぴょこしている。
「キミは? 人間のように見えるケド。
なんでこんな危なそーな所にいるのかな?
ここはどっちかっていうと、"僕ら"みたいなのの領域に思えるんだけど。」
焦げ臭い匂いがまだする。
ただそれも、ちらほらと見える青い蝶が鎮火していく。
火の粉と共に蝶は躍り、それを背負う白狐の少年は、現実味が無く。
■高坂 綾 >
「祟り神………」
なんとも呆気に取られる答え。
「祟り神でも、勘違いして刃を向けたのは謝らないと」
「ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げて。
「人間よ……ただの異能者」
「それでも、この領域を調査して色んなものを……あれ?」
ふと、気付くと。さっきまで私の影身がいた。
そしてなにもなかったはずの空間に宝箱がある。
「……こういうものを持ち帰るのに入ってきている、みたいな?」
肩を竦めて見る。
私の影は、律儀だ。
■ツァラ >
「あっはははは、まぁ最初は愉しんでたし?
斬られても別に斬れる訳じゃーないからさぁ。
気にしないでよ。
助けたのも、もしかしたら僕の気まぐれかもしれないヨ?」
相手の誠意を茶化すように笑う。
気負われてもしょうがないのだ。ただの好奇心なのだから。
「なーるほどねぇ、お宝探しかぁ。
でも、あんまり無茶しちゃダメだよ?
少なくとも今日はネ。全部守りきれたって訳じゃないしさ。
帰り道分かる? 機嫌が良いから送って行ってあげるよ?」
言葉を転がしながら、箱の方へ近づく。
サイズはいかがなモノだろう。
手持ちに加えられるサイズなら、そのまま持って行くのもありなのでは、と。
まだ火は燻っているとはいえ、ここは安心できる所ではない。
■高坂 綾 >
口布を持ち上げるように顔を覆って。
「……あなたの本意がどうあれ」
「私は謝ることが筋を通すことだと思った」
「だからそうしたのよ」
相手の言葉に頷いて。
まだまだ周囲には瘴気が満ちている。
このまま道案内を頼もう。
「……っと」
大きめの箱だ、中身をさっと持ち帰ろう。
「手裏剣ホルダー? なんか、変な雰囲気ね……」
後で調べたけど。
これは気力の続く限り無限に手裏剣を取り出せるものらしい。
放った手裏剣は一時間ほどで消えたけど。
使い道は多そうで。
「あとは琥珀の塊と、古びた豆? なにこれ……」
後でわかったけど、琥珀はまんま希少品で。
豆は無限に空に向かって伸びる危険物だった。
「と、とにかく帰りましょう」
「帰り道の案内、よろしくお願いね」
「あ、私は綾よ。高坂綾」
手短に名乗って、その場を後にするだろう。
■ツァラ >
「ま、それでキミの気が済むなら任せるよ。
でも僕は狐。あんまり信用しちゃダメだよ?」
くすくすと笑いながら、
箱の中身を回収するのを見守り、スキップするように少女の前を歩き出す。
暗い暗い裏の渋谷に、カランコロンと下駄の音が軽快に響く。
白い狐は善の狐。
その尾は一定までは増えるほど力を持つ。
「僕の名前はツァラだよ。綾。
"幸運の祟り神"。今度逢う時は――…美味しいキミで居てね。」
きっと怪異に襲われずに出口へとたどり着けることだろう。
少年は、ツァラは去り際に綾にそう告げて、青い蝶となって、消えていった。
ご案内:「裏常世渋谷」からツァラさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」から高坂 綾さんが去りました。