2020/08/26 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に宇津木 紫音さんが現れました。
宇津木 紫音 > 「ではこれくらいで如何でしょう。」

出された品物は満足が行く出来だった。
空の大量の注射器に、それを携帯するベルトにケース。
個人が手に入れられるものとしては最上級。

「ええ、ええ。この狭い島でこれだけのものが手に入るとは思っていませんでした。
 そういったものを用意できる人間とのつながりは金銭では代えられぬ価値があります。
 多少、多く支払うのもそれへの感謝だと思っていただければ。」

にっこりと微笑みながら、その注射器を手にして。

「………何に使うか、ですか?
 それはシークレットで。」

微笑みながら、注射器をケースに入れてお店を出る。

宇津木 紫音 > 彼女の"能力"を使えば、安く手に入れることも容易い話。
だが、彼女はそれを選ばなかった。

己の能力の危険性は自分が一番よく分かっている。
分かっているからこそ、それで誰ぞの"被害"を出せば、その恨みつらみが自分に跳ね返ってき易いことも、また理解していた。

あくまでも、他者に損失を与えないレベルでの利用に留める。
やるなら一気にやる、それだけの話だ。


「なかなかにいいものが手に入りました。
 これに詰めるだけでも、大変時間がかかりますね。」

何を詰めるかは当然口にはせぬまま、お嬢様は一人で街を歩く。
まだ日が落ち切っていないこの街は、それでもなぜか暗く感じる。

宇津木 紫音 > 能力者の情報を集める女。
欲しいのが、利用価値があるもの。根本的に代替できないもの。
例えば自身の能力は、当然同じにはならないにしても、莫大な金を積めば実行可能なものが多い。

だが、世間一般でどれだけ金を積んでも、どれだけ技術の粋を、魔術の粋を集めても実現できないことを一呼吸の内に起こしてしまう人間は存在する。

彼女が求めるのはそんな……もしくは、それに近しい人材である。


「………とはいえ、なかなか己の能力をあけすけにしている人はおりませんね。
 それが便利なものであれば、なおのこと。」

少しだけ溜息。

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
歓楽街第一分署――通称『常世渋谷分署』へ打ち合わせに訪れた帰り道。常世渋谷の中でも特に危険だ、と称されるエリアへと、足を向ける少年の姿。
此の街では、多くの風紀委員が私服姿で活動に当たる様だ。刑事部が多く詰める此の街ならでは、と言う所ではある。

そういった意味では、公然と制服を纏う己はさぞかし疎ましい事だっただろう。彼等の捜査方針や『街の中へ!』というスローガンを否定している様なものなのだから。
とはいえ、此方は刑事部の人間ではない。一々打ち合わせの為に私服に着替えるのが面倒なので『制服組』を気取らせて貰った。


さて、そんな事を思いながら『黒街』と呼ばれるエリアを闊歩していれば。一人で歩くには危険な場所を、一人で歩くには相応しくない服装の女子生徒が一人。
迷子、という訳では無いだろうが――

「……其処の君。此の辺りは、女子生徒が一人でうろつくのは感心しないな。せめてタクシーの類で移動して欲しいものだが」

と、彼女の背後から声をかけるだろうか。

宇津木 紫音 > ………。
なるほど、治安維持か。
よく声をかけられるものだと感心する。
島の外では、それこそ深夜でもない限り、声はかけられなかったものだが。
声をかけられ、相手の話を聞きながら並行して思考を走らせる。

「そうなのですね。少しばかりお買い物に出たのですが、道に迷ってしまいまして。」

振り向きながら、少しだけ不思議そうに視線を送る。
思ったより視線が下に行く。

「私、宇津木紫音と申します。まだ1年生で来たばかりなのですが………。」
「ここは危険な場所なのですか?」

相手に尋ねかける。少しだけ困った様子で周囲を見回す素振りをして。

神代理央 >  
自分より一回り背の高い少女。いや、己が彼女の事を少女、と評するのは体格差的に不適当だろうか。
兎も角。困った様な表情で『迷った』と告げる少女には、ふむと考え込む様な素振りを見せた後、口を開く。

「…成程。迷ったのであれば、致し方あるまい。入学したばかりの一年生であれば、尚の事か」

「私は神代理央。風紀委員会に所属する二年生だ。
君の言う通り、此処は治安の面でも危険な部類に入る場所だ。火急の用事が無ければ、安全な場所まで送り届けるが」

と、相手を見上げる様に視線を向けて。
名前を名乗り返しながら小さく首を傾げるだろう。

宇津木 紫音 > 「ありがとうございます。 風紀委員会のこと、聞き及んでおりますわ。」

まだ、疑っている様子はない。
それならば一つ二つ、動いてもいいだろう。
少しばかり逡巡した素振りを見せながら、視線を右に、左にと動かすような所作を見せる。

「一つだけ、失礼かとは思うのですが………。
 風紀を名乗る偽物にも注意するように、とは言われたので。」

「証拠と……、信頼に足る強さなのかどうか、能力や……武勇伝など一つお伺いしても……?」

お話ついでに、と少しだけ微笑みながら、相手の言葉を待ってみる。

神代理央 >  
彷徨わせる様に視線を左右させる彼女。
その後、尋ねられた言葉には少し困った様な。それでいて、理解の色を示す様な表情を浮かべるだろうか。

「…成程。確かに、名乗っただけでは信用するに足り得ぬものな。その気持ちも言葉も、分からぬでもない」

「証拠か。端末情報で悪いが、此れが私の学生情報だ。宇津木の端末で調べて貰っても、同じ情報が出る筈だ」

懐から取り出した携帯端末に、己の学籍番号と所属組織等が記載された学生情報を表示する。
此れで信用してくれれば、話が早いのだが――

「…異能や武勇伝?人に聞かせる程のものは、正直無いのだが…。
学園には『鉄火の支配者』として異能を登録している。能力としては、召喚系に類するものだ。
それ以上に語るべき事は余り無いのだが…」

己の二つ名や経歴等、語って聞かせる程のものでもないというのが少年のスタンス。
困った様な表情の儘、此れで納得してくれるだろうかと、微笑む少女に再び首を傾げて見せるだろうか。

宇津木 紫音 > 「………なるほど。
 召喚というと、どのようなものを召喚されるのでしょう。
 鉄火といいますと、………銃弾などを生み出すのでしょうか。」

恐れず、誤魔化さずに端末情報を出すのなら、それにはさほど目を通さない。
嘘であれば出せないものだ。
それに、真実であっても無用の長物ならば用は無い。

「………そういうことであれば、ぜひエスコートをお願いしますわ。
 折角ならば、お礼のお茶でも如何でしょう?」

笑いかける。そっとその手をこちらから取って。

神代理央 >  
「姿形を言葉にするのが難しいが…まあ、平たく言えば足の生えた砲台、と言ったところか。旧世紀の軍隊における『砲兵隊』を召喚出来る様なものだ。余り見栄えの良いものではないがね」

情報端末は一瞥されただけ。どうやら、信用はしてくれた様だ。
異能に興味を持っているのは、島に来たばかりからだろうか。

「…ふむ?別に構わないが、お礼をされる様な事でも無い。仕事故な。だから、島を訪れたばかりの新入生へ、私から御馳走させて貰えば、と思うが如何かね?」

己の手を取って微笑む彼女。
そんな彼女に社交的な笑みを浮かべてその手をそっと握り返すと、ゆるりと頷いて見せるだろうか。

宇津木 紫音 > 「なるほど。脚の生えた、が想像は難しいものですが。
 おそらく、逆にここを一人で歩けるのですから、腕に覚えがあるのでしょう。
 何、仕事だと思わずとも構いません。

 困っているところに声をかけて頂いたのですから、お礼をせねば。」

ほうほう、と少しだけ納得すれば、相手の様子を伺い。

「理央さんは、こういうところを見回る担当なのですか?」

相手の能力、実力を調べるかのように質問を続けて。
その上で、あえて身体を寄せて、ぺたり、とくっつけていく。
距離感の近い女。

神代理央 >  
「…まあ、或る程度はな。此れでも戦闘系の異能故、腕に覚えが無ければやってられぬ、というものだ。
…そうかね?であれば、御言葉に甘えようか。君の様な見目麗しい女性とお茶を共に出来る幸運を、喜ぶとしよう」

此方の様子を伺う様な素振りを見せる彼女に、変わらず社交的な笑みを。保護した生徒に向ける風紀委員として、接しようとしているのだろう。

「いや、私は歓楽街の奥にある治安の悪いエリアを主に担当している。今日は偶々、此の街の担当者達と打ち合わせがあったに過ぎないよ」

投げかけられる質問にも、素直に答えていく。
今のところ、彼女の質問や動向に疑問を抱いている様子は見受けられないだろう。
――しかし、身体を寄せ、距離を縮める彼女には。
僅かに目を細めて、唇はゆっくりと弧を描いて。

「……異性との距離感も、多少は気にするべきだと愚考するがね。
こういう街だ。むやみやたらな接触は、要らぬ誤解を生みかねぬぞ?」

宇津木 紫音 > 「あら、風紀の方は口もまた滑らかでいらっしゃる。」

微笑みながら、身体を近づければ………。

「なるほど。 そういうものなんでしょうか。
 危機に陥っていたところを助けて頂いたのですから、心惹かれるのも無理からぬというもの。
 誤解は別に気にはしませんが、……そうですね、噂を立てられて困らないのは、私の視点の話。
 短絡的でしたね。」

ごめんなさい、なんて囁きながら。
相手が身体を離さないのならば唇で頬を狙おうか。

体液全てが毒となる女は、まずは警戒心を解くための毒をその唇に載せて、肌に触れんと近づいてくる。
柔らかい毒牙。