2020/09/29 のログ
角鹿建悟 > 悪友、シスター、姐御、先輩――そしてあのトラウマ。折れて、そして失意の中での対話で少しは立ち直れただろうか?
結局、自分の根っこはまだまだ頑なかもしれないけれど――…。

(破壊に破壊をぶつける…なんて、少し前の俺じゃ絶対にやりたくなかっただろうけど、な)

心の中で呟く。自分と向き合う為にも―ー”誰かを救いたい”という根底の願いを思い出せ。
アレは許せない…ここで必ず”止める”。それが誰かを少しでも救えるならそれでいい。
結局は風紀の作戦への割り込みで、ただの身勝手な我侭でしかないとしても。
黒塗りの鉄槌を緩やかに構える…不思議と重さは感じない。むしろ軽いくらいで。
流石にこんな大きなハンマーを振り回した事は無いが…”大工”の端くれだったお陰か手に馴染む。

「――ああ、と言いたい所だが…俺みたいな非戦闘員は多少の無茶くらいしないとアレは止められないだろうさ」

これは、師匠からの叱責や説教が割り増しになるな、と漠然と思いながらも口にしつつ。
彼女が後退するのを確認してから、前だけを見据える――雷のような轟音。

だが、もう怯みはしない――…空間そのものを粉砕するような勢いと共に、朧車が真正面から全てを粉砕し、ひき潰しながら突進してくる。

「―――…。」

少年の銀色の瞳が見開かれる。狙いはただ一点――その”車輪”だ。
無論、高速で回転するソレを真正面から殴って壊す、なんていうのは無理な芸当なのだが…。

「――行くぞ師匠、トドメは任せる――!」

瞬間、思い切り鉄槌を構えながら一歩を踏み出して。素早く魔術により朧車の前に同じ形の列車を”再現”する。
勿論、それでもお構い無しに突っ込んで来る異形だが――僅かにその顔が動揺したのは見逃さない。そして、すかさず…先ほど拝借した閃光手榴弾のピンを口で引き抜き、その顔面へと投げ飛ばす――

瞬間、凄まじい閃光が朧車の眼前で炸裂し、一瞬だがその芽を潰す――速度が緩んだ。
少年の前には、”再現”された即席の壁。それにて閃光をやり過ごせば魔術を解除――そして。

「―――っっ!!!」

無言の気合と共に、更に一歩踏み込みながら鉄槌を振るう。最前列左側、その車輪の”ある一点”へと躊躇無く鉄槌を打ち込む!!
凄まじい音が響き渡り――どういう理屈なのか、その車輪が粉々に”砕けた”。

――同時に、少年の両腕から嫌な音が響くが…彼は気にしない。目を潰し、足を潰した――そのまま、少年は弾かれるように吹っ飛ばされる。
凄まじい衝撃だが、プロテクターのお陰か死にはしない――ああ、狙い通りだ。

――あの時にとある先輩に言われた言葉を、コイツに宣言してやろう。少しだけ笑いながら、少年は口にした。

角鹿建悟 > 「―――お前はここで”止まれ”」
不凋花 ひぐれ > 様々な人に助けられ、様々な出来事を経験した彼の事は――異能が使えない経緯も含めて、説教の段階で語ってもらうことになるのだろう。
それもまた織り込み済みで、己は何倍も怒らなければならないのだろう。
此度の件はそれで不問にするにせよ、その身勝手な我が儘を許容したのは、己でもあるのだし。
彼は怪我をしないだろうか、無茶をしないだろうか。
――心配をしてても仕方がない。

「任せなさい」

少しだけでも動きを止めてくれればいい。せめて怪我しないようにしてくれるのが御の字だ。
鉄槌から作り出された仮想の列車。仮初の鉄の箱に相対したソレに、ほんのわずかな揺らぎを検知した。
アレは暴走しているとはいえ、多少なりとも意志はあるのか。
フラッシュバンによる閃光が二の矢として放たれる。己には何の効力もない光の嵐は、アレにはさぞ聞いたことだろう。
車輪が一定の速度で『暴走』していた動きが弱くなった。悪くない戦果だ。
たかが一個人、されど一個人。徒党を組んで倒されることが推奨されるも、一個体ならばまだ戦える。

「……!」

大きな音が聞こえた。鉄槌によって放たれた一撃は、確かに車輪を砕けた音が聞こえた。
構えた状態で俯いていた顔を僅かに上げる。吹き飛ばされる風切り音と、激突音が響いてきたのだ。
それでも、振り返ってはならない。

――よく頑張りました。

言葉を紡がず、足を開き、深く息を吸って。

――鹿島神流にて御免。
是、裏太刀の殺人剣にて合い見える。
無機なれど意志持つ汝、ここで潰えよ。

不凋花 ひぐれ > 「シャァアアアアアア!!!」
不凋花 ひぐれ > 一気に踏み込み、黒塗りの刀が『射出』される。
決戦兵装として仕込まれた武器にはそれぞれに合った機構が用意されている。
身体能力の上昇にのみ特化した己には、人が扱うには過ぎた一品が手渡されることとなった。
ジェットの機構を組み込み、空気圧の差から爆発する射出装置からなる刀をしっかりと携えたまま、相手の面を一太刀で叩き折る。
異形の顔も、鉄の箱の一部に斬った痕を残す程の神速が、確かに相手を捉えた。

角鹿建悟 > お前はここで”止まれ”――その言葉を告げながら、最初の風圧の余波とは比べ物にならない勢いで少年は真横に吹っ飛んでいく。
プロテクターの恩恵でダメージはかなり抑えられているが、普通なら死んでもおかしくはあるまい。
意識も衝撃で半ば飛びながらも、その口元には笑みが浮かんだままだ。何故なら――…

(師匠なら必ずトドメは刺す――だから、後は任せた)

そして、瓦礫と化した建造物へと派手に突っ込んでいく。彼女の一太刀を見る事は適わずとも。
師匠なら必ずあの異形にトドメを刺すだろう、という確信があったから。

――響き渡る断末魔に似た声にならぬ声を聞きながら、倒れたまま勝利を確信する。
全く、何でこんな馬鹿な事をしているんだろうな…と、今更に冷静に省みる。

(両腕は…折れたかこれは。…む…あばらも数本イったかもしれないな…)

プロテクターは健在だが、それだけ凄まじい衝撃だったのだろう事は明らかで。
それでも、のろのろと瓦礫の山から身を起こす…少し身じろぎするだけで激痛が走るが、そこは持ち前の痩せ我慢。

「―――お見事…と、いうべきだな」

異形の顔が両断され、その車両部分にまで斬撃痕が残るほどの凄まじい一太刀。
仮に見れたとしても少年の目では追い切れない速度だっただろう。
車輪を片方破壊され、異形の顔を断ち切られた列車はその瞬間からただのガラクタとなる。

「……はぁ……まったく」

気が抜けたように瓦礫の一部に背中を預けて座り込む。変な世界に迷い込み、異形の列車と遭遇し。

(…挙句の果てに、風紀の装備を無断拝借して討伐に加勢……か。…アルバイト、探すべきかも知れないな)

少なくとも生活委員はクビだろうし、風紀からも厳重な注意などはされよう。
まぁ、それを覚悟しての加勢だったのだから悔いは無い。

不凋花 ひぐれ > 迷いなく振り上げた刀は確かな手ごたえと共に、打ち震える腕は衝撃の重たさを如実に感じさせる。
こんな下手な真似を打ったら、夜警や明日からの討伐に支障が出てしまう。
手のしびれだけで済んだから良かったものを……。
近接戦ばかりというのも改めねばならない。

「っぅ……っつう……ったぃ」

敵が完全に破壊できたことを確認して、残心を抱え込む暇もなく、額に脂汗を掻きながら剣を修めた。
放熱の為の機構が作動し、クールダウンを要する。剣を抜くには柄も鞘も熱すぎて触れたものではない。

まだこの程度で気を乱していては目指す道には程遠い。さらに修行を重ねなくてはならない。
外傷は見た限りはない。練習をしているとはいえ決戦兵装を実地で使う経験の少なさからヘンに力を加えすぎたかもしれないが、彼ほどの外傷はない。
痛みを感じなくする呼吸で一度体を落ち着かせて、ようやっと振り返る。
吹き飛ばされた彼の方へと一直線に。

「……大馬鹿。どうしてそんなになる前に逃げなかったんですか。
 下手したら死んでいたんですから。いえ、無茶を許容したのは私ですが」

腕を組みながら指で腕を叩き、大きく嘆息する。
また吹き飛ばされた彼を、今度こそ持ち上げんとする。
腕やあばらが折れているようだったから、最も都合が良いのは御姫様抱っこだったが、小柄な己にそこまで都合のいい態勢は取れず、仕方なく背負う形だった。

「いいですか。今回は非常事態でした。良く分からない場所に飛ばされ、あまりにやむを得ない状態で、あなた自身も逃げるには武装するしかなかった。
 自分の命を守るため、『偶然にも』居合わせた風紀委員の武装を拝借して自衛した。
 ……そういうことでも構いませんか?」

 精一杯の詭弁を捲し立てた。

角鹿建悟 > 師匠たる少女がこちらを振り返れば、「ああ…説教の時間だな」と、ぼんやり呟く。
昔から痩せ我慢は慣れているが、だからといって平然としていられる程度に強くはない。
痛みと疲労と緊張の糸が切れたせいか、ややぐったりとした面持ちで瓦礫を背に座り込みながら、彼女が近づいてくるのをじっと眺めていたが。

「――性分…とは違うか。上手く言えないんだが…許せないんだよ、ああいう”破壊するだけ”の奴は」

目的も願いも夢も何も無く、ただ我武者羅に破壊を撒き散らす存在。
直す、という真逆の方向性とはいえ自分も我武者羅に走ってきた者として。
同属嫌悪、というか兎に角、少年としては認められない存在だったのだ。

「…まぁ、生きてるだけマシだろう…朧車、とやらもちゃんと討伐できたようだし」

しかし、これはまた病院に出戻りなのでは…医師や看護師から微妙な顔をされそうだな、とやや遠い目になる。
が、直ぐに我に返りつつ
腕組みで己の前に立つ彼女を見上げる形だが、指でトントンと叩く仕草を見てご立腹だな、とぼんやり考えながら。

「……っと…悪いな、師匠…。」

小柄な彼女に半ば背負われる形になりつつも、自力で立って歩ける…筈だ。正直自信は無い。

「……?いや、ひぐれ師匠、それは――…。」

彼女の捲し立てる言葉に、最初不思議そうな顔をして訂正をしようとしたが…ふっと肩の力を抜いて薄く笑う。

「…いや何でもない。…じゃあ、『そういう事』にさせて貰うとする」

師匠なりの精一杯のフォローなのだろう。情けないし申し訳ないが、同時にありがたく思う。
だから、弟子としてもここは師匠の言葉に素直に乗っからせて貰おうかと。
討伐作戦が一段落したからか、他の風紀の隊員と思しき人影もあちこちに見えてきた。

不凋花 ひぐれ > 拳が震えればげんこつかビンタのひとつでもしていただろう。
腕がろくに動かせない現状ではそんなことも叶わないが。
ぐったりした状態の彼を見て、ほんのりと安堵を含ませた吐息を零し、肩を竦める。

「ええ、はい。そういう手合いが嫌いなことはよく分かります。なにも為さずただ破壊するだけの害。
 是を許諾することが許されないのは、人一倍、貴方が強く思っていることでしょう。
 それを悪いとは言いません。勇敢に戦った……とは正直言いたくありませんが、よく頑張りました」

はたとため息をつく。

「死にそうな顔をしてそういう事を言わないでください。ぶっ殺しますよ」

悪態をつきながら無理やり背負う。相手の方がずっと大きいから押しつぶされそうなほどの身長差だ。

「いいですか、あなたは生活委員で畑は違いますが、失うには惜しい人材です。
 私の独断であなたのすべての成否が決まるなら私が勝手に決めます。
 これは師匠権限で、罰ですからね。あとでお説教とオシオキも予約しておきますから」

ぞろぞろと風紀委員が現れたのを確認する。この周囲はひとまず安全らしい。

「特攻課の隊員一人が負傷、巻き込まれた人が一名。ここらを縄張りにしていた朧車は討伐を完了しています。
 主計隊に引き渡し、隊員と彼を病院に運んでやってください」

風紀委員の一人にそう伝達。隊員の一人に武器を一度預けて、二人そろって介抱して貰う。

「……本当によく頑張りました。あなたのお陰で私と隊員が無事に生き残れたんですから。ご協力感謝します」

角鹿建悟 > 仮に拳骨やビンタが飛んできたとして甘んじて受け入れたであろう。そのくらいのやらかしはしている。
…そもそも、迷い込んだだけの一般生活委員が精鋭揃いの風紀の特別攻撃課の作戦に割り込み参加、という形だ。
彼女がフォローしてくれたから良いものを、実際は相応の厳罰は下っていただろう。

「…戦った、という実感は余り無いし、俺自身が戦う人間側じゃないのは一番理解してる。
…けど、直す事に拘り続けて俺は周りが見えなくなっていたし…時には戦う事も避けられないと思ってる。
勿論、無闇矢鱈に戦う気なんてないし、こんなのは二度と御免だが…また同じようなヤツが立ち塞がるなら、俺は看過出来ない。」

元々が『直し』『創る』者だったせいか、『壊す』だけの輩はどうにも感情の抑制が効かない。
勿論、自分が正しいなどとは絶対に思えないが…まぁ、やっぱり感情的なものだろう。
正しさの是非ではなく――自分が許容できるかどうか。まぁ、エゴなんだろう。

しかし、この身長差だと流石に師匠に負担が掛かり過ぎでは、と思いつつ途中からは自分で歩こうとしていたりする。

「…説教はまぁ当然だがお仕置き…何をされるんだ…スパルタか…?」

まだ呼吸法と剣術の基礎中の基礎くらいしか出来ないが。一応、日課としてコツコツ合間を見てやってはいる。
周囲の風紀の人影に気付けば、そちらに会釈をしておく…よく考えたら、エリートに混じって何をやっているんだろうか自分は。

師匠が隊員の一人に伝達するのを黙って眺めつつ、そのまま先ほど負傷した隊員と共に身柄を預けられる。

ちなみに、プロテクターと例の鉄槌は勿論ちゃんと返却した。
閃光手榴弾一つは使い捨てなので、流石に弁償か何かするしかないかもしれない…。

「――いや、俺の我儘みたいなものだったからな…むしろ、こちらこそ感謝するべきだろう。
……ありがとう、助かったひぐれ師匠。」

感謝を素直に受け取れないのも直さなければな、と思いつつこちらも頭を下げて。激痛に顔を顰めそうになるが堪えつつ。

そのまま、師匠に見送られながら一先ずは先にこの異界を離脱する事になるのだろう。

――生活委員会への報告と、再度の入院…どうしたものかな、と思いながら。

不凋花 ひぐれ > それでもやはりどうしようもなかったというのは事実だったのだ。
そうするだけでしか身を守る術がないということであれば、特別攻撃課は多少なり目を瞑ったことだろう。
守る事より攻撃に転じることを至高とする己らには、都合のいい在り方なのだ。

「……たまの喧嘩も、良い発散になるでしょう。
 信念を持った戦いや激突であれば、我々とて多少は目を瞑るものです。大声では言いませんけど」
 
 詭弁やある程度の傘を作るのは、弁護士や己ら権力者が得意とするところ。
 反省文なり始末書なりで手合いが許されるのなら、人的資源を保持するには致し方なかったと言ってくれる。
 ……と思いたいところだ。

「……それはまたの機会に」

 一戦交えて疲れている頭では思考が回らない。
 鍛錬するにせよ、彼の今の状態ではどうしようもあるまい。
 ちなみに閃光手榴弾はひぐれが使用したものとしてこっそり帳簿に付けて貰ったそうな。
 金の通り道からしてその方が楽なのだ。無為に罰を与える必要もあるまいと。

「ともかく、今はしっかり休んでください。見舞いに行きますから、気を付けるように、建悟」

そうして彼がこの異界から去って行くまで、彼の身を案じながら思い馳せることになる。

――ここまでかっこつけたからには病院送りで鉢合わせにならないようにしよう。

本日の討伐:朧車一体

ご案内:「裏常世渋谷」から不凋花 ひぐれさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」から角鹿建悟さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
裏常世渋谷。
丑三つ時に逢魔が時。黄昏れの境界が入り混じるまやかしの境目。
現れた理由も、存在する理由も、その全てが不明瞭な幻魔の街。

その街は今――暴風の様な鉄火と、装輪の音が不協和音となって鳴り響いていた。

「……ちょこまかと逃げ回るだけは一人前か。全く、怪異とやらが聞いて呆れるものだ」

無数の異形から絶え間なく吐き出される砲弾の雨霰。
それらを必死に避ける様に、『無限軌道』と名付けられた能力を用いて線路を生成し地上を駆けずり回る朧車。

砲弾が命中し、燃え上がる建造物。
崩れ落ちる高架。
捲れ上がるアスファルト。

戦地さながらの光景が、本来異様な迄の静寂が支配する筈の裏常世渋谷を覆い尽くしていた。

神代理央 >  
『風紀委員会特務広報部』
本来は違反組織への武力行使の為に設立された下部組織ではあったが、折しも設立と同時に今回の怪異が発生した為、なし崩し的に初任務が怪異討伐と相成った次第。

とはいえ、此方の方が己の異能や戦い方からして"性に合っている"のは事実。
本来、対個人戦には向かない己の異能ではあるが――"こういった"手合いの敵であれば、十全の力を発揮する。

「まあ良い。幾ら壊した所で。幾ら被害が出たところで。
喧しい連中が出てくる訳でも、神宮司に小言を言われる事も無い。
好きなだけ逃げ回れば良い。幾らでも付き合ってやるとも」

傲慢に吐き出した言葉は、その投射火力に比例する様なもの。
破壊と業火を撒き散らしながら、街中を駆け回る朧車に砲弾の雨が降り注ぐ。

神代理央 >  
既に今回の討伐対象である朧車は、5両編成からなるその躰の半分が砲弾によって消し飛んでいる。
破壊された躰を引き摺り、小型の怪異を吐き出したり機銃を生やしながら此方へと攻撃を射かけてきてはいる――のだが。

「…相性が悪い、としか言い様があるまいな。
私の異能は、貴様らの様な相手にこそ本来の力を発揮する。
恨むなら、私の前に現れた事を恨む事だ」

小型の怪異は、異形の機銃で薙ぎ倒される。
放たれる怪異の銃弾は、大楯の異形が受け止め、防ぐ。
その間にも、己の周囲に展開した多脚の異形達は絶え間なく砲弾を吐き出し続け――

「…何事も無ければ、そろそろチェックメイト、ではあるが」

神代理央 >  
かくして、爆音と共に放たれた最後の砲撃によって、朧車は苦悶の悲鳴と共にその躰を鉄屑と化す事になる。
質量を武器にする怪異が、質量と火力を以て敵を滅する砲弾に敗れるというのは因果なものではあるのだが。

「…鉄道兵器など、所詮は旧時代の遺物に過ぎぬ事を理解する事だな」

投射できる火力量の差。
対人戦なら兎も角、線路という目に見えた軌道を走る巨大な物体など、己の異能の前では的に過ぎない。
結局は相性の差でしか無いのだが――有効活用できる間は、暫くの間"狩らせて"貰おう。

「……とはいえ、余り此方にばかり注力している訳にもいかぬのだがなあ」

物言わぬ鉄塊と化した朧車の残骸を眺めながら。
小さな溜息と共に、その場を後にするのだろう。

ご案内:「裏常世渋谷」から神代理央さんが去りました。