2020/12/15 のログ
ユラ > 「そう? おいしいのに」

食べさせようとしたそれを口に入れ、ばりばりかじる。
そして手のひらをぺろぺろ。

「オレも人間じゃないよ。人間なのは10%くらいだったかな。
 さすがに負担が無いってことはないんだけど、しばらく遊ぶくらいには全然」

全く意に介さないわけでもないらしい。
そんなことを話しながら首を回し、今度は相手を見る。

「悪くないよ、ココ。変だし、面白いし。
 姿がちょっと違うけど、久々に知り合いに会えたし」

改めてピーナツを差し出した。
前は一粒でも喜んで食べてくれたものだけど。

アーテル > 「知ってるさ。
 前に会ったのは確か……廃神社だったかね。」

忘れたわけではない。
ただ、姿は違えどあの時の自分だと分かって話しかけているという、その保証がなかっただけのこと。
自分を自分として見ているのなら、相応の歓待があって然るべき。
そう思ったから、今度は自分からあの時の話をしてみることにした。

「見えるものが全てじゃあないと俺の前で示してみせるなら、
 こちらも胸臆を開いて話ができるってもんだ。」

流石に二度目ともなれば、無下にもできない。
首を垂れるようにして……はぐ。唇で挟むように、一息に。
食べるというよりは、最早飲むそれに近かった。

「…………。
 まー、なんだ。久しぶりじゃあねぇか。」

遅れた挨拶に、つい気恥ずかしさを覚えてしまう。
無造作に乱立する建築物へと、ふいに視線を逸らすようにして、互いの再会を祝った。

その体躯に比べて、小さい小さいピーナッツ。味なんか感じる前に喉の奥に消えていく。
されども、彼からそれを受け取ったこと自体が、彼に対する関心を示しているようでいて。

ユラ > 「ぶっちゃけ気付くまで時間かかった。ごめんね」

ここまで近付いて、少しの会話を挟んでようやく気付いたのだ。
ちょっと悪いことをした気がする。

「最近はオレ、ずっと学生街のほうに居たからね。
 山とか行かなかったし、ここも初めて来たし」

対照的に、ずいぶんとあっさりした様子である。
ただ敬語(?)が無くなっているあたり、ちょっと気楽な接し方になったかもしれない。

「……なんか襲われるかなーとか思ってたけど、ここ案外平和だねぇ。
 少しくらい体動かさないとって思って来たのに」

次はピーナツを袋ごと差し出した。
口の中でひっくり返せば、結構な量の豆が入ってくるぞ。

アーテル > 「おぉ、喋ってて思い出した類かい?
 俺ってばそっちの方が嬉しいがよ。ちゃんと化けられてんだなーってさ、にしし。」

この姿でからからと笑う。
表情が豊かなのはどんな姿でも変わらないようだ。

「……ま、ここはニンゲンの居ていい場所じゃあないのは確かだ。
 今襲われてないのも偶然かもしれねぇしな?何度か俺も襲われることはあったしさ。」

辺りに目を配る。
そうすれば、建物の陰からこちらを舐めるように見やる気配が、点々と。
取るに足らない瑣末なものどもだが、あれも人間やただの獣のものではないだろう。
或いは、こちらに恐れをなしているだけのひ弱なものかもしれない。
いずれにせよ、人外とはいえ彼らの気持ちがわかるというものでも、ない。
元より、理解するつもりなどないのだが。

「俺も、この姿でのんびりしたいなーと思った時にぼんやり迷い込むくらいさ。
 ま、程々にしとけー? 深淵を覗き込むときまた深淵はなんとやらってーやつさ。」

ふいと顔を引く。
流石に、ピーナッツを袋ごとは遠慮した。

「ニンゲンでありたきゃ、あちらに居た方が穏やかでいいもんさ。
 ………まぁ、まつりごとの類はこっちの喧騒と変わらねぇくらいに泥沼かもしれねぇけど、な。」

人間の要素を少しでも持っているのなら、と。自分にはないものを持つ彼を少しうらやみながら。
言葉を交わして、ほんの数刻。止めた歩みを、ゆっくりと再開する。

「じゃあな。あんまり深みにはまって、迷うんじゃあねーぞー?」

言葉をかけながら、彼の傍を通り過ぎるようにして…のしのしと歩き去っていったのだった。

ユラ > 「……もうしばらくここに居たら、狙われるかな。
 ちょっとくらい動かないと、体はともかく勘が鈍る」

体も精神も浸蝕されないように、呼吸を整える訓練にはなるのだが。
運動をしたいと考えて来た以上、相応の運動がしたいものだ。

「人らしく生きる分には今まで通りでもいいと思うけどさ。
 ……でも人間じゃない以上、人間以上の何かを求められる日が多分来るから。
 少しでも出来ることは増やしておこうかなって思うよ」

ピーナツを手元に引き戻し、自分の口の中にざらざらと流し込んだ。
ばりばりかみ砕きながら、動き出した相手を見つめる。

「ん、迷わないように気を付ける。まあ帰れるでしょ、多分」

巨大な狐を見送り、再びこちらも別方向へ歩き出した。
そのあと一度くらいは襲われるでしょう……何事もなく切り抜けるかもしれないけれど。

ご案内:「裏常世渋谷」からアーテルさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」からユラさんが去りました。