2022/10/11 のログ
ご案内:「歓楽街」に言吹 未生さんが現れました。
■言吹 未生 > 社会の成分は、大鉈を振るえば二つに別たれる。
無機成分と有機成分。
前者はそれの根ざす地。またはそれを安んじる法制。
後者はそこに息づく者々。市井の人々。
「――――」
前者の俯瞰は一段落着いたので、身近な後者の調査に乗り出したのが今日。
放課後、それぞれの帰路をたどる生徒達。
あるいは寮に、あるいは家に、あるいは“真っ当な”バイト先に。
上澄みとも言うべきそれらが掃けたのち、果たして残りの者が赴く先を尾けてみれば――。
「……盛況だなあ」
感嘆にも呆れにも取れる呟きは、嬌声その他のノイズに容易く打ち消された。
■言吹 未生 > 繁華街、と言えば聞こえは良い。
息抜きは大事だ。
労働の――学生の立場であれば、勉学の品質・士気を保つ為であれば、それには充分意義がある。
しかし、だ。
僅か鼻先をくすぐった酒精の香に一つ眼を巡らせば、
ガラス張りの向こう、外に面して設えられたカウンター。
スツールに腰掛け談笑する年若い生徒達――ご丁寧にも制服姿だ――の口を湿すグラスの中身は。
「……この島では、未成年者の飲酒は合法なのかね?」
後で確認する必要がある。
そう独り言ちていると、店内の女子生徒と視線が合った。
数瞬の空白の後、何やら機嫌を損ねたような面持ちで、隣の男子生徒を呼ばわって、こちらを指差しつつ何やら喋っている。
「――――」
読唇術の心得はあいにくないが、何ぞ不興を買ったようではある。
「見られて困るような場所で呑む方が悪いだろうに」
肩を竦めて、その場を離れる。そんな些事より、更なる実地調査だ。