2019/02/08 のログ
■潤坂ノーコ > 「私はね。そもそもがそんな異能、『なかった』んじゃないかって思ってる。
もちろん預かっている間は私自身他人を好きになることが出来ない感覚を味わったけど、
そんなもの異能じゃなくて心の持ちようなんじゃないかと思ったよ。
実際預かっている間は自分に対して暗示をかけてしまっていたように、
女の子もそうだったんじゃないかな?
自分が他人を好きになれない理由を異能に押し付けて、
その異能を誰かに押し付けることで己を抑圧して、
結果その抑圧から解放されたら彼女の世界には
「彼女が好きになるに値する何か」が存在しなかった。
最初から彼女は誰かを好きなれなかったんじゃなく、
自分が誰かを好きになれない理由を異能に押し付けていただけなんじゃないかって。
それは、異能と見まがうほどの効果を自分に与える自己暗示で、
でも、そこまで自分の心を縛れるのならばそれはもう『異能』って呼んでもいいのかもね」
■潤坂ノーコ > 「ま、実を言えば嘘自体はそんなところにはなくて、
その後彼女が異能を返してくれって言ってきたときにさ、
私が『返して』あげなかったことなんだよね。
私はその異能を返さなかった。でも彼女は異能が返ってきたと言って平穏な日々を取り戻した。
つまりはまあこれが嘘だった場合でも、彼女は元々やっぱり人を好きにはなれなかったのさ。
どっちみち結末は同じで、どちらが嘘だった場合でもそこに罪があるとしたら彼女の心そのものだったわけさ。
まあ、私もよくわかんないけど、人を好きにならないでいいっていうのは、
もしかしたら幸せなことなのかもしれないしねぇ」
■潤坂ノーコ > 「それもそれも嘘で。
実はそんな女の子どこにも居なくて。
ただ単に、今日という日が暇で暇で暇で暇で暇で暇すぎて。
誰に話しかけても相手にしてくれないし、
私のことを知らない人は話し相手になってくれないし、
私のことを知っている人はさらに話し相手になってくれない。
退屈で退屈で退屈で退屈なので、逃げない君を相手に独り言を言ってみただけなのかもね。
そうだね。
それを嘘ってした方が。
きっとそんな不幸な少女がこの世にいないことで、幸せに過ごせる人がいるかもしれないしね」
■潤坂ノーコ > 男はすでに気を失っていた。
失血と激痛による気絶であり、それは恐らく命に別状はない。
やがてこんな場所に紛れ込んだ親切な誰かが助けを呼んでくれるかもしれない。
或いはこの場所に相応しく誰も優しさを持参してこずに、
彼が緩やかに回復するのを待つしかないのかもしれない。
運が悪ければ野犬なんかに襲われるかもしれない。
ノーコはふふんと小さく笑い。
「……どうにも、何故か何故だか、
『最近誰かを好きになれない』から。
助けてあげる気がしないんだよねぇ」
そう言って、膝を払って立ち上がった。
ご案内:「落第街大通り」から潤坂ノーコさんが去りました。