2020/06/21 のログ
■フィスティア > 「こう言ったところでの生き方...ですか?
すみません。こういうところのルールをよく知らなくて...」
普段学生として生きる私たちにとって、ここでの生き方は管轄外です。
なんなら習得の必要もありませんが、あなたが案内してくれるというのであれば、お願いしたいです。
...もしかして白色のローブは目立つための装備でしょうか?だとすればもう警戒の必要もないかもしれません。
とは思いつつも警戒はつづける。
この男が案内してくれるというのであれば、その案内を受けてもいい、そう言ったスタンスである。
「美人局って...キッドさん口が悪いですよ...」
私からすればむしろ二人が辻褄を合わせて現れたという可能性もなくはない...ないですけれども。
本当にあなたは口は悪い人です。キッドさん。
「技工師...ですか?すみません、私はまだそこまでこう言った場所に詳しくなくて...その依頼、というのもよくわからないんです」
技巧師とは...何か作ったりしているのでしょうか?それについてはよくわかりませんが、普段は依頼を受けて動くような方なのでしょうか?
「って本当に口が悪いですよ!そろそろ怒りますよキッドさん!」
美人局だけ指摘しましたが、本当に口が悪いです。
私にだけだったら仲間ですしいいのですが、こんなところで知らない人に対してこんな物言いはよくありません。叱ってでも止めるべきです。
なんて、少年の方を向いて叱りつける。
それなりに怒っているようで、本気で言っていることが伝わるであろうか。
■キッド > ハルシャッハの言葉に軽く両手を上げる。
そのままその両手をフィスティアの方に向ける。
クローズアップ!的な意味合いだ。
「確かにな。天使様は愛らしいが、見ての通り平坦。色"仕掛け"の欠片も無い。」
まさに言いたい放題だ。
仕掛けと掛けた皮肉たっぷりのジョーク。
勿論味方を変えれば十分好みとなる少女の肉体を見て
此の言い草。場所が場所なら殴り飛ばされてもおかしくないが
借りに殴られても口が減る事は無いだろう。
「フッ、そりゃそうだ。"アメリカ流"じゃぁ、こそこそする前に核弾頭一つでお終いだからな。」
そう言う言い回しか出来ないからこその"ろくでなし"。
糞餓鬼<キッド>とはよくぞ、名乗ったものだ。
相変わらず口元を緩めたまま、キャップを目深に被った。
「要は技術屋。コイツは、自分が手先が器用って言ってるんだよ、天使様。」
キャップの奥で、まじまじとハルシャッハを見てる。
「こう言う場所で売る技術と言えば……自分自身か。或いは、そうだな。コイツの言い草からして"盗みの道具"って所かね。」
飽く迄、ハルシャッハの発言からの推察だ。
自称盗賊と信条を語ったのだ。
恐らく間違っては無いはずだ。
そうこう言っていると、ついに隣から怒声が聞こえてきた。
だが、キッドは何処吹く風と言った感じで耳から怒りは通り抜けていく。
「ソイツは悪かったな、天使様。それで?アンタが怒ったら、俺に天罰でもくだるのかい?」
■ハルシャッハ >
「――生き方なんざ規定できやしねぇよ。表の法でさえ、な。
有るのはマナーと倫理、それだけだ。」
そんな規定があったならもっと楽だっただろうさ。
気持ちがどこか滲み出る口調での否定形は、男の心理でもあっただろう。
盗み、奪い、殺すことさえ有りとされるこの場所において、
クズと外道を分けうるのはこの倫理とマナーしか無い。
優しくなければ生きる資格がなく、強くなければ生きられぬのが裏の街だ。
ある程度単独でも戦える武力と、最低限の情け。それは車輪の両輪だった。
時間を守れなかろうと、命に関わることはない。そういうヒトはごまんといる。
しかし、最低限の倫理、マナーさえ守れぬなら命はない。
そういう意味ではクズには優しい街でもあった。
寄せ集め、普通に生きづらい人間が寄せ集まるからこそ。そういうところには優しい。
「違いねぇ、違いねぇが……。 あのさぁ……。
――レッスン1だ。『容姿の類の揶揄はまじでヤメとけ。』
天分で変えられるもんでない事を揶揄するのは殺されても文句言えねぇ。」
ド直球のツッコミである。
やむを得ない理由がみな揃っている。 なんだかんだ事情を抱えた連中が、
肩寄せ合うのがこの裏通りだ。 それを言うのは野暮というものだった。
「まぁ、普通に異邦人街に住んでる身だ。
仕事を投げてくれれば対応するってだけのこと。」
盗賊ギルドではないが、職業安定所に仕事を投げる、それだけでいいのだ。
簡単に見つかるだろう、男の事は。
「――核弾頭がなんだか知らんが、
すくなくともお前みたいな単細胞な解法で済むほど、この街は甘くねぇぜ。」
少なくともアホに務まるほど盗賊は馬鹿ではない。
鍵の仕組み等もある程度理解せなばならぬのだ、そうゆるい仕事ではなかった。
男も屑だが、相応にツッコミを入れられる程度には頭は回る。
正直、手先が器用という分類ではない、が。
丁寧に仕込まれれば丁寧にこなす程度の腕は有る。
「――やっとマトモな人物評ができたもんだな。
盗賊ってのは技術屋だ。 正しく仕事をするなら変幻自在。
逃げ、隠れ、戦う技術でもある。 ――ナイフのようなものと思えばいい。
『正しく使え』。 そこらの棒切れよりは役に立つ。」
直球の説明だった。 コレ以上無いほどの。
■キッド > 「軽い男に見られる位が丁度良くてねぇ。その方は、ヘンな奴が寄ってこなくて助かるってモンさ。」
此の軽口も、キッドなりの処世術らしい。
言動も軽薄のろくでなしは、あっけからんと返した。
悪びれた様子も無く、真意もつかめない。
「ま、丁度良く天使様が弄りやすいもんでね。ついつい、饒舌になっちまったのさ。」
「さぁて、案内人を買って出てくれたんだ。天使様に、アンタの説く"ルール"とやらを教えてやってくれや。」
ともかく、ハルシャッハは信用出来る男だとはキッドも思っている。
どちらかと言えばアウトロー寄りの思考を持つ男だ。
彼の考えがわかるわけではないが、信念持って行動する人間は信用に値する。
特にルール、掟を重んじる人間なら、下手な事は起きないだろう。
後は、彼の案内のまま落第街を回って歩くだけだ。
■ハルシャッハ >
「ま、俺からすりゃぁ、軽いのは大変結構だ。
しかし一方でベラベラ喋ると位置を気取られるんでな。音は重要だ。」
位置情報という重要な情報を垂れ流すのは感心できない。
それを軽く男としても添えて。
「――ま、大事に思うなら丁重にな。道具に油差しとくようなもんだ。」
銃は潤滑が重要だろう。
少し聞いたことが有る位で詳しくない男でも、それくらいは最低限知っている。
注意はするべきだ。心象を損ねるのはどこでも良くはない。
「了解だ。 話すのは結構だが、少し声量は落とせ。
自分の位置を喧伝する必要はねぇ。 見て回るならなおさらだ。
――あと、表の人間ならわかりやすく、むしろ見た目はわかるようにしておけ。
裏の人間は逆に相応に目立たない状態から襲うんでな。」
安全則のみ最低限、伝えることを伝えれば、あとはすっと男は前につく。
ついてこい、と音もなく案内するのは、ルール無用の男が知るべき場所だ。
乞食に金を最低限恵めば、情報は腐るほど出てくる。
あとは、何を活かし、何を捨てるのか――。
それは、風紀のあなた達次第だ。 光と闇が、コインの裏表として、踊る。
ご案内:「落第街大通り」からハルシャッハさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からキッドさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に神鳴 壬さんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」にアリソンさんが現れました。
■神鳴 壬 > 「まぁ、金さえ払ってくれるならなんだっていい。とりあえず風紀に見つかって巻き込むのはやめてほしいもんだ。」
落第街の大通りでも人の少ないところはある。
大通りから少し裏に入った所にある小さなベンチでついさっきまで相手していた連中を思い出し一人愚痴る。
というのも、一般女子生徒を捕まえてドラック漬けにするという話だ。
誰が被害にあったのかまでは知る気もなくこちらも美味しい思いをしているため、むしろ楽しい部類には入るが如何せん、あのチームは最近行き過ぎている。
近い内に風紀の手が入り検挙されるだろう。
自分が関わった証拠が残らないようノートパソコンからネットワーク内に侵入し今日までの通信履歴や証拠を隠滅していく。
辺りに誰もいないと思っているせいか、旗から見るとその様子はヒドく無防備で誰かに声を掛けられるまで反応する気配はない。
■アリソン > 新月の夜にふらぁりふらふらと俯きながら歩く見た目黒髪の長いそこそこの綺麗なメイドが闇よりふらりと姿を現す。
落第街の大通りから少し裏に入ったいわゆるちょっと宜しくない噂しかなさそうな場所。
色々なお薬や色々な取引が行われ言えない商売から闇のお勤めまでタノシイ事が尽きないこの界隈。
ふらぁりふぁらりとゆっくりと歩く手ぶらに見えるそのメイドはとあるベンチに腰掛けている人影を見つけると。
ゆっくりと確実にじりじりと足音静かに神鳴の方へと近づいていきそして。
「…おにぃーさまぁ? おひま?」
にっこりと妖しい笑みを浮かべて妙な挨拶をしつつ じろじろと彼を見下ろすような視線を向けて。
■神鳴 壬 > 声を掛けられたが反応がない。
というのも、一部意識を電子の世界に走らせているために反応にラグが起きているからだ。
こんな所で無防備に一人でいる人間に声を掛けるようなのがいると思っておらず、反応するのに数秒を要してしまうのは致命的ではあるが。
「……、うわっ、なんだいきなり?客引きなら間に合ってるぞ。」
数秒遅れで反応しびっくりする。
意識は驚きで身体に戻り相手の方を見るがその格好からはこの辺りでもたまにあるコスプレ系の店の客引きにしか見えずこちらを見下ろす相手を見上げては軽く手を振り追い払おうとして
■アリソン > 反応が宜しくないご様子にメイドは戸惑った模様で、
あらあら、とすこぉし困ったような視線を何となく彼全体を観察する仕草をし続ける。
何かに誘われる様に彼の方へと寄ったはいいものの、客引きと間違えられて、
「え、違いますのにぃ…客引きではありませんのにぃ…」
落第街でちょっと言えない組織での闇系お仕事を紹介してもらえると来た筈なのに、
追い払われてしまうような仕草をされてしまい、あぁん、とか悶えるとそのまますごすごと去って行ってしまったとか…。
ご案内:「落第街大通り」からアリソンさんが去りました。
■神鳴 壬 > 「なんだったんだ…。」
すごすごと立ち去ってしまった相手を見送り、こちらも戸惑うがあまりココに留まっているのもよろしくないようだ。
パタリとノートパソコンを閉じてしまうとふらり立ち上がると周囲を見渡しつつ気を付けて帰ることにしようか。
幸い隠れ家は近くにあるのだから続きはそこですれば良いだろうと落第街の奥の方へと消えていき。
ご案内:「落第街大通り」から神鳴 壬さんが去りました。
ご案内:「崩落した家屋」にアーヴァリティさんが現れました。
■アーヴァリティ > 「はあ...これで終わりかなあ
もう来ないでくれるといいけど。襲撃者」
不機嫌そうにそう呟く。
家屋が崩落し、砂埃が立つ中、一番好んでいる尚且つ一番知られている姿で座り込んで空を見上げている。
何をしてるって、ここ1週間、僕が襲撃を受け続けた理由を今ちょうど排除したところだ。
先日それの疲れで倒れて、そろそろどうにかしないとな、なんて思っていたら、風紀が僕のことを指名手配していることを知ったわけだけど。
指名手配されたのは嬉しいけど、このままだといつまた体力を使い果たして倒れるやら...そんなのは困るから。
風紀の攻撃にちゃんと集中するためにも、依頼主を殺しに来たのだ。
「あーあ。適当に殺してるとやっぱり変なところで目付けられるなあ」
なんて、彼女らしくない、辟易のため息を漏らした。
取るに足らない雑魚の襲撃はもう飽きたよ、と。
■アーヴァリティ > 「にしても、まさか娘の仇を取る、だなんてなあ...
思わぬところで繋がってるものだなあ」
そう、依頼者が僕を殺す依頼を出した理由は、どうにも娘を殺されたから、だったらしい。
昼間に風紀と戦っているのを見ていた奴がいて、そいつはどうにも僕が弱ったところを狙おうだとか思っていたらしいけど、まあそんなこと考える奴は大したことなくて。ついでに言うと簡単に吐いてくれたよ。
それで、こうやって正面から襲撃して、護衛が数人いたから家屋ごと崩壊させて。
んで正面から行ったら「とうとう来たな!娘の仇め!」とか奇声を上げて...
そのあとは瓦礫の上で護衛とダンスだったけど、やっぱり大したことなかった。
■アーヴァリティ > 「あーあ。護衛もいたけど、やっぱり弱っちい奴が雇ってる奴は弱っちいなあ
一番強かったのあの魔術師じゃないかなあ」
あの全身刺青の魔術師、あいつが一番強かった気がする。
両腕持っていかれたり、一回は捕まりかけたり、痛覚遮断する羽目になったり。
しかも一回も納得できる勝ち方ができなかった。
苦手なタイプだし、2回目なんてもう殺す気で来てた気がする。
あいつが依頼で僕を襲撃してたなら、もう来ないだろうけど。どうだろうか。
「砂埃舞ってなかったら綺麗な空が見えるんだろうな〜
折角厄介ごと片付けた後だし少しぐらい綺麗な星が見たいなあ」
再び大きなため息を吐いて、砂埃がうっすらと覆う夜空を見上げている。
■アーヴァリティ > 「あー...夜空じゃなくて、何か美味しいものでも食べに行こうかなあ...」
襲撃の根源を片付け、すっきりした、と言うよりかはむしろこんなものに付き合わされていた、と言う倦怠感が勝り、力が抜ける。
砂埃ぐらい自分で払えばいいのだが...
それも億劫だ。
「あー...美味しいもの食べてこよ!うんそうしよう!」
思い立ったたが何とやらとか、それでは何か食べるべく、その場を後にするだろう。
後に残されたのは、崩れた廃屋と、いくつかの死体のみであった。
ご案内:「崩落した家屋」からアーヴァリティさんが去りました。
ご案内:「崩落した家屋群」に角鹿建悟さんが現れました。
■角鹿建悟 > つい数時間前に入った依頼――どうやら、落第街の一角にある家屋群で派手な”倒壊騒ぎ”があったらしい。
ならば、生活委員会傘下――第九修繕特務部隊【大工(カーペンター)】にも出動要請が来るのは当然だ。
先日出会った白髪の少女との『約束』もあり、自ら率先して一番被害が酷い区域を男は希望した。
そして現在。現場に到着すれば、事前に決めていた担当区域へと散っていく。
「―――この辺りか。…また、派手に壊されたものだな、これは」
一目見て、これが倒壊したのではなく外的要因で壊されたのだと悟る。
この辺りは経験則などもあるのだろう。ザッと頭の中で修復手順と優先順位を洗い出す。
(――正直、あまり時間を掛けたくはないが手を抜く訳にはいかないしな)
落第街でもこの辺りは少々物騒だった筈だ。他のチームの皆は自衛くらいは出来るだろうが…
己は違う。戦う力なんて持っていないし、自衛どころか逃げられるかどうかも怪しい。
「――まぁ…それはそれだ」
神だろうが悪魔だろうが、俺が直すと決めた以上はどれだけ妨害されようが必ず直す。
■角鹿建悟 > と、本気で思うが実際、そんなとんでも連中が現れたらただの人間でしかない自分など塵芥以下だろうが。
――くだらない事を考えてしまった。仕事にさっさと取り掛かろう。時は金なり、とかいう言葉もある。
「――っし!…やるか。」
パンッ!と、両手で己の頬を叩いて気合を入れる。まずは魔術による元の状態の仮想再現。
それを元に修復、というのが自身の復元作業の大まかな手順だ。
ただ、この魔術が曲者で精密な魔力操作を必要とするので地味に魔力だけでなく気力も削る。
「――回路起動・並列展開(サーキット・オープン。マルチタスク)――1番から6番まで。7番から13番は待機指定。…3,2,1…開始(スタート)」
詠唱のようにブツブツと呟きながら作業開始。魔力を回路のように展開し、周辺家屋に番号を割り当てて並列仮想復元開始。
……もうちょっと行けそうだが、この後の修復を考えると余力があるに越した事は無い。
手を抜く事は絶対に無いが、力の配分とペースを間違えたら仕事にならない。
(――このくらいなら…2…いや、1時間で行けるか?)
倒壊したそれぞれの家屋に重なるように、壊れる前の状態の家屋たちが立体映像のように浮かび上がる。
それを眺めながら、元の形状から修復手順を算出――内部構造をスキャン。
「―――腐食がやっぱり激しいな…ここは何とか補うか」
ご案内:「崩落した家屋群」に山本 英治さんが現れました。
■山本 英治 >
「失礼します、風紀委員です」
体のあちこちに包帯が巻かれたままのアフロの男が現場前に現れる。
表情険しく、瘡蓋のままの擦過傷もあちこちにある。
「今回、作業の立会いに参加してもよろしいでしょうか」
アーヴァリティ。黒蝕姫。あいつだ。あいつがやったに違いない。
俺があいつを止められていれば、こんな惨劇は防げた。
■角鹿建悟 > 「……構いませんが。俺としても風紀の護衛や監督が居てくれた方が色々と有り難い」
残りの7番から13番までの待機状態を稼動状態に――残った倒壊家屋にも重なるように倒壊する前の状態の家屋の仮想映像が浮かび上がる。
一瞬、彼へと視線を向けて軽く言葉と会釈をするが、仕事最優先なので直ぐに集中と目線を家屋へと戻し。
「――…派手に怪我をしているみたいだが、平気か…んんっ、平気ですか?」
一応、自分より先輩かもしれないので敬語で言い直す。それでも、ついぶっきらぼうになってしまうが。
あと、中々に目立つ髪形だが…人それぞれだ。気にしないし笑いもしない。
彼が望んでいないなら兎も角、仮に望んでその髪型なら笑うのは失礼に値する。
そうしながらも作業は抜かりなく、一通り検分と修復作業の道筋を立ててから魔術を解除。
仮想映像が全て消えて、また元の倒壊した家屋――都合、13棟。
「…さて、ここからか。すいません、今から修復作業に入るので、もし何か襲撃があったら、対処を頼めますか?」
と、包帯だらけの彼に頼むのは気が引けるが、そう頭を下げて頼み込む。
■山本 英治 >
「危険な地域ですので……」
会釈を返して、護衛に入る。
まだ病院で寝ていろと言われているが。
とてもじゃないができない。
あいつは……黒蝕姫、アーヴァリティはまだ活動している。
「一年です、言葉遣いは普通で構いません」
「……ここを壊したヤツにやられたんですよ」
奥歯を強く噛む。
自分の弱さが。迷いが。人を殺したも同然だ。
今の自分に明るい未来を目指す資格はない。
「わかりました」
ガリガリとこめかみの辺りを掻いて作業を見守る。
彼は集中している。
第九。常世を支える屋台骨。
彼の茶髪を流れて汗が一条流れた。
思えば。壊すことしかしてこなかった。
彼の行いを見れば、真の善行がわかるだろうか。
■角鹿建悟 > 「…まぁ、何処だろうと依頼があれば出向くのが俺達ですから。仕事にえり好みはしません」
そう、依頼が成立したならば後は簡単。絶対に直す、それだけだ。
彼に護衛を任せながら、手近な廃屋の一つに足を運んで…瓦礫の一つに手を触れて能力発動。
――すると、まるで映像の巻き戻しのように瓦礫が動き出し、寄り集まり、接着するように元の形状を取り戻していく。
その際、腐食している柱や土台付近もきっちりと”直して”補強は忘れない。
「――俺も1年だから…じゃあ、お互い堅苦しいのは無しで頼む。
……そうか。まぁ、壊れたなら直せばいい…それが俺達の仕事だからな。」
矜持もある、約束もある、そして……直す事が角鹿建悟の生き様だ。
覚悟はとうに完了し、迷いは無く、ただ直して直して直して――直し尽くす。
「――まぁ、正直言えば…壊した連中に言いたい事はあるさ。
けどな――言った所で改める連中ばかりなら苦労はしないし、俺達の仕事ももっと少ない筈だ。
――それに、文句や愚痴を言う暇があるなら自分の手を動かす…まだまだ直すべき物は多いからな。」
と、少しだけ肩を竦めてみせるが、あくまで集中は途切れさせずに…そうやって一つ目の家屋を完全に復元させる。
■山本 英治 >
「……そうか? じゃあ気楽に話させてもらう」
「俺は山本だ、山本英治。英語の英に、体を治すの治」
壊れたら直せばいい。
そう言い切れる彼らがいるから。
常世は崩壊と衰退から逃れられている。
割れ窓理論、という言葉がある。
窓が割れた建物を放置すれば、誰もこの地域に関心を持っていないと認識され、犯罪が増える。
彼も立派に、この島の治安を守っているのだ。
そう、歓楽街側に侵蝕をする落第街を。押し留める最強の力。
「あんた……良い職人だな」
「俺は………壊すことしかできない異能だが…」
「それでも今はあんたを守れる」
家屋は修復される。
風にアフロが揺れると、元通りになったそれを見聞して書類に書き込んだ。
■角鹿建悟 > 「…俺は角鹿建悟だ。角に鹿、建築の建に悟る、で建悟だ。」
こちらも律儀の漢字がどういうものかを交えながらの自己紹介を返す。
それでいて、視線は基本的に彼ではなく家屋に向けられているのは集中を途切れさせない為。
「――俺はまだまだ新入りだけどな。上には上が居るのは身に染みているし。
…自分の未熟さは自分がよく分かってる。あと、…壊す事にだって意味はあるだろう、きっと。
…それに、護衛してくれるだけで俺は充分有り難いさ。俺は直すことしか出来ないから、自分の身すらろくに守れない」
それでも、直す為なら鉄火場だろうが世界の果てだろうが行ってやろう。そして必ず直すのだ。
どれだけ時間が掛かろうが、命や体を磨り減らそうが――それが、己の矜持ゆえに。
「――あと12棟。流石に効率が悪いな…もうちょっと最適化を…いや、それより――」
ぶつぶつと呟いていたが、確実性を取る為か矢張り一棟ずつ確実に行こうと方針を固め。
彼に護衛と修復後の検分や記録を頼みつつ、2,3,4…と、次々に修復作業を敢行していく。