2020/08/24 のログ
羽月 柊 >  
「はづっち。」

そんな呼ばれ方したのは初めてだと言わんばかりに復唱したが、
まぁそれはさておき。

「……まぁ、なんだ。
 "園刃"。君も出村も間違いなく俺にとっては意味があったとも。
 出村の遺体はその山本に処遇を任せた。彼なら悪いようにはせんだろう。

 彼には色々と縁があるが、背を預けて戦えるぐらいには信頼している。
 まぁ今は入院しているが機会があれば聞いてみれば良い。」

研究者ではあるが、出村の死体をどうこうしようとは思わなかった。
彼のデバイスについてはまた別の所へと行ってしまったが…。

いろんな縁が繋がって、再会を果たせたことを祝おう。

「……君の言いたいことはなんとはなしに分かるとも。
 俺もヨキには敵わん。『例え周回遅れでも走れ』と、言われたよ。
 彼には友人として世話になりっぱなしだ。
 だからこそ、こうして君の前に居て、俺にも拾い上げられる命があった。」

ヨキの事を言われれば頷かざるを得なかった。

園刃 華霧 >  
「ひひ、悪いネ。
 センセー、とかそウいうの得意じゃナいんデね。」

無遠慮な呼び方を思わず復唱している相手に笑う。
いい反応だ。こういうの好き。

「ァー……そッカ。出村パイセン、ちゃンと渡ったンだナ。
 そイつは良かっタ。どうセ死ねバ、肉の塊、タぁいえ……
 そのまマってのも、ナ。」

それは、わずかの心残りではあった。
それが解決されたのは素直に喜ばしい話であった。

「しかシ、そッカー。
 まさか、エイジとネー……変なトコで繋がッテ……
 背中を預ケて戦う? いヤ、ま……アレはそうイうタイプ、だけ、ド」

どうにも目の前の此の男は。
いや、戦う必要があれば戦うだろうけれど、積極的に戦うタイプには視えない。
だからわずかに違和感。
思わず、上から下まで眺めてしまう。

「ひひ、けードさ。
 はづっちの目指すトコは『共に歩む』、ナんだロ?
 あの、ヨッキーもその対象、ダーよナなァ?
 この先大変ダな?」

この先の相手の苦労を考えると、実に笑えてくる。
しかし、それは多分、無闇矢鱈に充実したものになるだろう。
それだけは確実だ。

だから、悪戯っぽい笑みを浮かべてそういった。

羽月 柊 >  
「まぁ、まだ先生と言われることにすら慣れんがな…。」

どっちでもこそばゆいことには変わらんといった態度だった。
息を吐いて、仮面を持っていない手で頬を掻く。

おそらく、これが男の素。
素直になりきれない、悲惨な過去は変えられない。
『それでも』と、再び走り出したのがこの男だ。

「……まぁ、共闘する場面があっただけだ。
 どうも俺が似たモノを呼びやすい質なのかは分からんがな。
 彼のことだ、きちんと家族に出村を対面させてやれたことだろう。

 彼は本当に、今にしては珍しいほど素直だからな。」

まぁ、ヨキはどちらかといえば真逆なタイプだが、
山本英治や日下部理沙、葛木一郎は己と似た所を少なからず持っている。
故に自分と縁を繋ぎ、互いに助け合うことも多かった。

「…この先大変? まぁ、同僚で友人だから対象なのは当たり前だろうが…。」

華霧の意図を読み切れず、男は首を僅かに傾げた。
なお、既にその充実の一部に巻き込まれていたりもする。
故に男はヨキだけは、旧友以外に素直に友人と呼ぶ。

園刃 華霧 >  
「そッカ。ひひ、先生、先生。
 ま、慣れテってよ。ヤでもたくサん呼ばれルさ。」

相手の素を見つけたようで、とても楽しい。
素直になりきれない、不器用な男。
それが正面切って進もうというのだ。
この先が面白そうでたまらない。

「ァー……素直。素直……うン、まあ……素直、ダな……」

つい先日のことを思い出してしまう。
彼が愚直に己の思いを告げたことを。
そしてそれに答えることのできない自分を。

……うん、ちょっと湿っぽくなるな。

「……あァ。ま、いずレわかルかも、ナ。
 まあ、しっかリな。」

意図をくめない相手。
これは真面目だからこそ、だろうか。

まあ、自覚もなしに苦労するのもいいだろう。
それはそれで楽しそうである。

羽月 柊 >  
きっとそんな不器用な男のこれからの『物語』に、
目の前の彼女の『物語』も重なっていくのだ。

「…君、本当にあの時とは態度が違うな……。
 悪戯好きなのが本性か?」

全くとわざとらしく咳払いをし、仮面を被り直す。

これは彼の裏の顔。
だから、これを知る華霧は、少しだけ他とは違う。

「…まぁ、君もしっかりやることだ。
 考え方は違うかもしれんが、戻って来たというなら、
 また道が重なることもあるだろう。
 俺が出来ることならば、導き、共に歩むこともあるだろう。

 …大事なモノは、取りこぼすなよ。」

園刃 華霧 >  
「ひひ、当然。さっキもいったロ?
 ドっちかっテーと、コッチがホントのアタシさ。
 よろシくな、はづっち先生?」

悪戯好き、と言われれば。
まあ、それはそう。
それこそが自分の本性と言われれば、まあ間違いはないだろう。

「そうイうアンタは……本性、だいぶ隠してルみたいダね?」

かぶり直された仮面を見ながら笑う。
しかし、もう本性らしきものは見た。
仮面には誤魔化されない。

「ごちゅーコく、いたミいりマす。
 ま……せいぜい、シっかりヤるさ」

真摯な忠告。
それはきっと彼の心からの思いであり、
そして彼自身の反省なのだろう。

だから無下にはしない。
素直に受けた。

羽月 柊 >  
金色のピアスが街灯でちかりと光る。

「……俺の本性など、見るモノではないさ。
 せいぜい旧友とヨキ相手の前ぐらいのモノだとも。」

正直なところ、カッコつけているのだ。
カッコつけていないと、崩れてしまうのだ。
そういう男だ。
このせいで怒られもしたが、
素で振舞うなんて気恥ずかしくてそうそう出来やしない。

らしきモノは見れただろうが、
それがまだ彼の本当の姿とは限らない。
目の前の彼女も、そうとは限らない。

"その場限り"の関係では、もう無いのだから。

「……あぁ、じゃあ…"またどこかで"な。
 慣れているやもしれんが、裏では気をつけろよ。」

園刃 華霧 >  
「かーッコつけチャってサ。
 ひひ。なルほど、そーいウのはエイジ寄りかモな。」

けたけたと笑う。
目の前の男は、まあエイジよりも更に年上だろう。
それでもカッコつけようというのだ。
まったく、面白い生き物だよな男って。


そして、此処でできた縁は……
また嫌でも続いていくのだろう。
面白いことだ。
せいぜい途切れないように、つないでいくさ。

「ま……気をつケるさ。
 そンじゃ、まタ。はづっち先生」

此処は、古巣。
ひょっとすれば目の前の男よりよほど詳しいかもしれない。
まあそれでも忠告はされたんだ。
聞くだけは素直に聞こう。

聞いて、手をふる

ご案内:「落第街大通り」から羽月 柊さんが去りました。
園刃 華霧 >  


――…大事なモノは、取りこぼすなよ。




「……簡単ナ話じゃ、ナいんだヨなぁ……ソれ」

一つため息を付き……


「っと、あンま遅いと微妙な顔さレんな。
 帰るカ……」

おとなしく帰路につくことにした。

あの男は大丈夫だろうか。
まあ、最終的には本人が決めて行動すること。

あとは、アイツ次第だ。

ご案内:「落第街大通り」から園刃 華霧さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
『御迷惑をおかけしました。本日から警邏に復帰します。
先輩こそ、くれぐれも御身体には御自愛くださいます様、お願い申し上げます』
To.伊都波 凛霞


落第街に『何時もの様に』響く、地響きの様な足音と、金属の軋む音。住民の安眠と、細やかな生活の糧と、夜闇に紛れた熱気を奪うモノ。
『異能殺し』との戦闘で負傷した、とまことしやかに囁かれていた、一人の風紀委員が、己の従僕を引き連れて、再び落第街へと現れる。周囲に従えるのは、巨大な砲身を背負った多脚の異形。破壊だけを齎す、醜い金属の化け物。
大概の住民が、舌打ちを零しながら忌々しい瞳を向ける。神代理央は、再び落第街に恐怖を植え付ける為に、風紀委員の制服を翻して現れた。

「……んー。先輩へのメールの返信って、こんなもので良いのかな。ちょっと堅苦し過ぎるかな」

尤も、今は携帯端末を悩まし気に見つめながら唸るばかり。警邏の足を止めて暫し悩んだ後――

「…まあ、フランク過ぎるのもあれだしな。よし、送信、と」

『黒い灰被り姫』の異名で呼ばれ始めた風紀委員の先輩へメールを返すと、さて、と言わんばかりに携帯端末を仕舞いこんで周囲を見渡す。
伊都波先輩を始め、多くの風紀委員の活躍あってか、今のところ目立った違反部活の活動報告は上がってきていない。
平和であるなら、それが一番なのだが。

ご案内:「落第街大通り」に池垣 あくるさんが現れました。
池垣 あくる > 「あら……そこの風紀の方。お仕事中でしょうか?」

従僕を引き連れて歩く風紀委員に、とててて、と駆け寄る一人の少女。
それだけならその場にそぐわない見た目だ。手に槍を持っていなければ。
しかし、恐れも気負いもなく、素直にとてててと、歩み寄っていく。

「だとしたら、お疲れ様でございますね」

――もしかしたら貴方は知っているかもしれない。こういうところで誰彼構わず襲撃している辻斬り槍使いを。

神代理央 >  
この落第街において、己に近付いたり声をかけてくる者がそう多くは――いや、そうでもない。大概風紀委員会を疎ましく思う者に声をかけられていた。
兎も角、此方に駆け寄ってくる少女には、引き連れる異形達が一斉にその砲身を向けるだろうか。自動防御として刻まれた行動故に、主の静止によってその砲火が放たれる事は無いが。

「……ああ。見ての通り、警邏の任務中だ。労いの言葉は、有難く受け取っておこう」

近寄る少女に、警戒心を見せる事無く穏やかに頷く。周囲の異形達も、砲身を向けてはいるが静止したままで――

「……それで?私にも戦いを挑みに来たのかね。落第街の槍使い。最近良く、報告書で貴様を見る機会が増えているのだが」

穏やかな口調で、警戒心を見せぬリラックスした姿の儘。
静かに首を傾げて、少女に尋ねるだろうか。

池垣 あくる > 「あら、そうだったのですが……お恥ずかしいです。ええ、破廉恥が過ぎましたでしょうか……」

報告書でよく見る、と言われれば、口に手を当てて驚きを見せる。
そして、向けられた砲身をちらと見つつ、小首をかしげて。

「それも、とっても、とぉっても魅力的、なのですが……と言いますか、受けてくださるのですか……?」

それならやってみたい、とちょっとウズウズしているのを隠しきれずに槍を構えかけ……少し深く呼吸をして、止める。

「いえ、いえ、本当に、本当に魅力的ですが、そのためではありません。ええ、ええ……風紀のお方。私は、ええ、戦ってみたいのは、やまやまなのですが……その、ええとですね。

――風紀のお仕事って、どんなことをなされているのか、ちょっと聞いてみたいなぁと。それと、よろしければ少し、くっついてみてみたいなぁと、思いまして」

神代理央 >  
「……破廉恥な話題であってくれれば、此方も色々と楽なのだがね。血生臭い話題ばかりでは、飽きが来る」

フン、と高慢な口調で言葉を返して。
砲身に視線を向けた後、首を傾げた少女を静かに眺めていたのだが。

「私は無益な殺生は好かぬし、無意味な闘争も好かぬ。だが、貴様には風紀委員襲撃の容疑がかかっている。大人しく着いて来ない、と言うなら――」

だがその言葉は。次いで投げかけられた少女の言葉と、槍を収めたその態度に一度打ち切られる。
ふむ、と思案顔を浮かべて、少女を値踏みする様な。その真意を図る様な不躾な視線を向け続けて――

「………構わんよ。それで大人しくしていてくれると言うのなら、同行を許可するし質問にも答えよう。少しばかり、此方の質問にも答えて貰う事にはなるだろうが」

小さく頷いて、少女の提案を受け入れるだろうか。

池垣 あくる > 「生憎、この槍こそ伴侶、と思っておりますので……その節はご迷惑をおかけしています」

申し訳なさそう……というわけでもない、どちらかと言えばご容赦くださいねと言う感じの表情で小首をかしげる。
不躾な目線にも、まあ当然のものだ、と言わんばかりに受け入れて。

「あ、連行されちゃうんでしょうか……?それなら抵抗したいのですが……ええ、警邏のお手伝いと、質問にお答えするくらいは致しますので。それで手を打っていただければと、思います」

そう言って、ぺこ、と頭を下げて、小走りで横に並ぶ。
そして、目をじぃっと見ながら。

「改めまして、池垣あくると申します。お名前、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

神代理央 >  
「貴様の伴侶が槍だろうが棒きれだろうが私の知った事では無い。面倒事を起こしさえしなければな」

反省している様には見えない少女の姿に、小さく溜息。

「此の場での連行はせぬし、今宵の貴様の望みも受け入れる。
しかし、風紀委員を襲った、という事が此の島においてそれなりに重罪である事は理解しろ。今のところ、被害届も重傷者も出てはいない様だから大目に見ているだけだ。本来であれば、此の場で逮捕されて然るべきなのだからな」

横に並んだ少女に、言い含める様な言葉。
実際、報告書は上がっており、注意勧告は出ているが――それだけ。まあ、それだけと言っても逮捕する理由にはなるのだろうが。
それでも少女を捕えようとしないのは、少女の言葉に僅かな可能性を見出したからに過ぎない。
――風紀委員会の戦力として、少女を迎え入れられないかと。

「…神代。神代理央、二年生だ。宜しく頼む」

此方の瞳を見つめる少女を見返しながら、何時もの様に尊大で傲慢な声色で。名前を名乗り返して、高慢な笑みを向けた。

池垣 あくる > 「まあ、私にとっては大事なことなのですよ?人の伴侶にそういうことを言うの、よくないと思います。ええ、嫌われちゃいますよ?」

ぷく、と頬を膨らませて見せる。
先日、ある風紀委員に言われたことを擦りつつ、その後の言葉には困ったように笑みを浮かべて。

「どうしても、実戦をしたければ、そう言った手しか思いつきませんでして……お恥ずかしい。重傷者も被害届も出されていないのもまた、お恥ずかしいのですが」

まだまだですね私、と微笑む姿はどこかズレている。判断基準が武に寄りすぎの危うさだ。
しかし。

「――でも、風紀の方を襲うのは、やめにしようと思うのです。ええ、とりあえずしばらくは。少し、考えてみたいことがありまして。だからこうして、ご一緒させていただきたいと申し上げているのですよ?」

反省アピール……というには、目に真剣さが宿っている。
かつて宿していた狂気は鳴りを潜め、その瞳は、落ち着いた、人間のものとなっている。

「よろしくお願いいたしますね。それで、今日はどのような用向きでこちらに?目立った事件はなかったように思いますが」

神代理央 >  
「私は別に、貴様の伴侶とやらも結婚観も責めるつもりも否定するつもりもない。面倒事を起こすな、と言っているだけだ。
それに、一々人に好かれようとする方が疲れるだろう。貴様に好かれたとて、私に何のメリットがあるのかね」

頬を膨らませる少女を一瞥しながら歩き出す。
静止していた異形達も、主に従って地響きの様な足音と共に動き出すだろうか。

「演習や訓練ではなく実戦、か。難儀な事だな。バトルジャンキーとでも評してやろうか。
……其処は幸運だと思う所だぞ。風紀委員会に本気で目を付けられれば、地下牢紛いの『補修室』に閉じ込められる事もある故な」

何ともズレた様な反応を見せる少女に小さく溜息。
やれやれ、と首を振りつつも、次いで投げかけられる言葉にはきちんと耳を傾ける。

「…ほう?どういう心変わりかは知らんが、その変心は歓迎しよう。私とて、貴様が襲うのが違反部活や犯罪者の類だけなら、目くじらを立てる事もせぬ」

その瞳に浮かぶ真剣な意志の色に、口調に灯る色合いは僅かに穏やかなものになる。
相変わらず高慢な口調ではあるが――少女の言葉を、一応は信用した、とでも言う様に。

「今日は単なる警邏に過ぎぬ。風紀委員会はそもそも『目立った事件』が起こらぬ様に尽力する組織だ。私の場合は特に――」

其処で、背後に続いてのしのしと歩みを進める異形達に視線を向ける。

「――ああいう、あからさまな武力と暴力の象徴を見せつけて、犯罪行為への抑止を担うのも目的にしている。
貴様の様な武芸者であればまだしも、普通の人間ならば、あの砲火に焼かれたいとは思うまい?」

池垣 あくる > 「まあ、そうですけれど……むー」

ぷくー。ちょっと拗ねて槍を撫でる。
そして、遅れないように歩き出しつつ。

「実戦を超える鍛錬はありませんから。ギリギリのせめぎ合いだからこそ、武の練達が早まるのです。型稽古だけでは身に着かないものもあるのですよ?
……ですのでええ、補修室は嫌、ですね……槍を持てないのは、とても、とても困ります」

今度は、ぎゅう、と槍を抱きしめる。
離れたくない、ずっと一緒にいたい、と言わんばかりに。
その姿はまるで恋する乙女のようだ。 相手が槍じゃなければ。

「そうですね……確かに、そう言った方を相手にすることは増えるかと、思います。そう言った方は本当に玉石混交で、ハズレも多いのですが……」

そう言った『稽古にならない雑魚』は、軽く転がして終わりにしている。
だからこそ被害届も重傷者もない現状であるのに、なぜか思い至っていないあくるである。
むーと少し唸りながら、視線を追って異形たちを見上げる。
その威容は確かに、あくるにとってはとても『楽しそう』だ。
つまり常人にとっては、末恐ろしいということである。

「確かに、普通ならアレを見れば、恐れおののいてしまいますでしょうね。そうやって威圧を振りまいておいて、抑止をするということでしょうか」

素直に感心したように頷く。
『目に見える脅威』は他者を抑止するのに有効だ。あくるが槍を持たなければ侮られるであろうように、ぱっと見でわかるわからないは大事である。

神代理央 >  
「……むー、じゃない。そんな子供みたいに頬を膨らませるのも止めないか」

呆れた様な声色で、ちょっと御小言めいた言葉をつい投げかけてしまう。
それだけ、警戒心が和らいでいるという事でもあるのだが。

「そう思うなら、少なくとも『表』の者に喧嘩を売るのは控える事だ。私は今、貴様の名前を聞いた。何かあれば、貴様へ逮捕状を出す事も出来るのだからな」

『喧嘩を売るのを止めろ』とは言わない。ただ、程々にしておけというくらい。こういう手合いは、言って『はい分かりました』と言うタイプではないと身を以て知っているから。
とはいえ、念は押しておく。恋する乙女の様に抱き締める槍と、引き離される可能性を、少々威圧する様な声で告げておくだろうか。

「……そういった連中の中でも強者、と呼ばれる者と戦いたいのなら。風紀委員会の門を叩くつもりは無いのか?違反生や違反部活のデータベースは大体閲覧出来るし、戦闘能力に秀でた委員とは模擬戦もし放題。落第街やスラムで違反生と戦うのは公務だから誰にも責められない。
風紀委員会は、何時でも貴様の様な武芸者を。強者を求めているのだが」

異形を見上げる少女に、ちょっと揺さぶり――というより、リクルート活動。前線職は幾らいても足りないという事は無い。
特につい最近まで、多少無理のある警邏のシフトになっていた事を思えば――少女を勧誘する言葉は、多少本気の声色が混じっていた。

「そう言う事だ。そして、私の異形を恐れず立ち向かってくる連中は、大抵唯の蛮勇を振り翳す阿呆だが――」

「――中には、手に負えない様な強者から挑まれる事もある。言うなれば私は、威圧と釣り餌を兼ねているのさ。群れる弱者を威圧し、抑止して。釣りあげた大物は、可能であれば逮捕。出来なくとも、情報を得る事は出来る。
風紀委員会にも様々仕事はあるが、今宵の私の仕事は、そういうものだ」

感心した様に頷く彼女に、訥々と言葉を続ける。
『目に見える脅威』は逆を言えば『挑みやすい表の権威』でもある。己に挑み、襲い掛かる者への対処も仕事の内だと、真面目な表情で歩みを進めながら答えるだろう。