2020/10/06 のログ
ご案内:「落第街大通り」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
通り雨に濡れる大通り
その向かいに見える廃ビルからは黒い煙が上がっていた

既に鎮火は完了
計算し尽くされた定置爆破は周辺に余計な瓦礫による被害も残さない
周囲の住民は他の風紀委員の手によって避難済み、瓦礫の撤去も業者に連絡済み…と
今日も完璧な仕事を終える

「ふぅ」

厚手の外套を口元に引き上げて、一息

彼が朧車の掃討任務に引っ張られているうちは、少々"こちらの名前"を広めておこう、という算段
掃いても掃いても現れる聞き分けのない違反部活、おそらく普段は地下に潜っているのだろうけれど、
こういった状況になると好機と見るのか、表に姿を現す連中がちらほらといる

おかげで、噂を時たま現実にしておく…という仕事がうまくいくのだけれど

伊都波 凛霞 >  
ちょっと"彼"や"彼"が不在と見るや顔を出してくる
こうなると、武力誇示、畏怖・圧力による牽制はある程度必要なんだということを納得せざるを得ない
そもそも風紀、公安とあれだけの手練を有する組織が在る上でおそらくこの先も違反部活の根絶には至らない
学園、この島の…・覆い隠すべき闇の部分だろう

「…さて」

外套を翻し、歩み始める
狼煙を上げてからの警邏…こうやって格好で練り歩くことで黒い灰被り姫としての威容を示すこととなる

遠巻きにビルの倒壊を眺めていた落第街の住人
…おそらくは彼らの中にも違反部活に与する生徒は混じっているであろう

「ああなるから、あんまり悪いコトしちゃダメだよぉ。遅くなる前にちゃんと帰ろうね」

そんな彼らに笑顔でそう宣いながら、歩いてゆく
…あんまり威圧しないように笑顔で言っているつもりだけど、余計に怖い可能性はある

伊都波 凛霞 >  
練り歩きながら、黒い外套の隙間から目立つ赤色の腕章をチラ見せ
これで風紀委員であるということを見せつけられるし、噂は噂でなく本当にそんな風紀委員がいる…と、拡大を加速させることもできる
要は見せ方なので、やるからにはなるべく目立つほうが良い

「(ホントならもっと目立つ格好のほうがいいんだろうけど)」

かといって金色とか銀色のギラギラした格好をするのもなんだか、だし
赤もちょっと、キャラじゃないかな…なんて思ったりする。女心はややフクザツ

伊都波 凛霞 >  
そして、可能な限りは無血で行うこと…
先日のスラムでの出来事を思い出せば、"殺さなければ殺される"という状況を完全に回避することは難しい

あの報告書を書く筆は重かったなぁ、なんて思い返す
普段から二級学生や不法入島者の殲滅を辞さない彼らにとっても、その筆はきっと重いもの…のはずだ
同じことをやろうとして、自分だけがその重みから逃れるというのも虫のいい話だろう
それでも、可能な限りは…と思うことは無駄ではないのだろうけど

「…このへんの治安は、割と良くなった気がするね」

大通りの一角に足を止めて、周辺を見渡した
以前はこの辺りにも違反生徒を含む、柄の悪い生徒が屯する姿がよく見られていた
まぁ、おそらくは目立つ場所から移動しただけ、だろうけれど

それでも周辺住人にとっての環境は多少良くはなったのかもしれない

ご案内:「落第街大通り」に西村貫二郎さんが現れました。
西村貫二郎 > 「……いかん、迷うた」

顔をしかめ、唸りながら落第街を練り歩く青年一人。
その姿は、彼にとっての制服……浅黄色のだんだら羽織。つまり、新選組の隊服そのものだ。
周囲からは奇異の目線を向けられるだろうが、知ったことではないと堂々練り歩く。

「(それにしてもまぁ……京の都を警邏しとった時を思い出すわ)」

壬生狼と呼ばれ恐れられた新選組は、練り歩いての警邏をしているだけでも、様々な視線を向けられた。
おおよそは恐怖や畏怖、そして他にも嫌悪や憎悪まで。ほとんど好意的なものはなかったが、それでも「見せつけることが大事なのですよ」とは山南さんの言葉だったか。
そんなことを考えつつ歩いていたら、ふと、一人の女性が目に留まった。
黒い外套の目立つ格好だ。だが、それ以上に目を引いたのは。

「(……出来る)」

所作からにじみ出る実力。
思わず、思わず鯉口を切り。

「――何者か」

そんなことを、問いかけた。

伊都波 凛霞 >  
一角の治安がマシになったとはいえ、ここは落第街
風紀委員がこうやって歩いていれば、鋭い視線を差し向けられることもある…

そんな視線を感じて振り向けば…
うーん、正直言って怪しい風体の、男
此処、常世の島に限って言えば、どんな人がいてもおかしくはないのだけど

「見ての通り、警邏中の風紀委員ですけど」

黒い灰被り姫だ、なんて名乗る気にもならないし、今は正体はひた隠す
赤い腕章を手で引っ張り、見せつけるようにして

西村貫二郎 > 「うん?風紀委員?」

うん?と首を傾げる。
数秒考える。はて、それらしき言葉を聞いたことがあるような……。

「――ああ、あの妖が言うておったわ。この時代、この場所での新選組や見廻組と同じようなもんじゃと」

頷く。
そして、その妖……柊真白が、あまり逆らうなと言っていた相手だ。
漏れ出そうになる剣圧を抑えつつ、しかしその姿を見てさらに首を傾げる。

「しかし、ならお前は、何故一人なんじゃ。隊士はおらんのか。警邏と言えど一人は危険であろうが」

――新選組は、実は基本的に集団戦法を採用していた。
数の優位。個に対して多で当たる優位性を深く理解し、活用していた組織でもあるのだ。
逆に、だからこそ知っている。如何なる手練れも、複数名に一気に襲い掛かられれば危ういことを。
もちろん、池田屋の時のように立ち回りでなんとでもなる場合もあるが、この時代には『異能』というものがあると聞いた。中には鉄砲のような効果を持つものもあると。
ならば、孤立しての警邏の危険性は跳ね上がるはずだ。

伊都波 凛霞 >  
「…口ぶりからすると異邦人…もしくはジャンパー?
 単なるコスプレさん、ってわけじゃないのかな……」

その存在の浮きっぷりは兎も角、立ち振舞に不自然さを感じない
その隊服が示す組織を、当然教養の上でも知っているが…さて

「貴方の疑問に答える義務もないんだけど…」

今日の自分はただの風紀委員として立ち歩いているわけでもない
本来はツーマンセル以上で行うのがデフォルトである、が…

「まあ…一人のほうが、安全なので」

とりあえず、そう答えておく
──言葉の割に、相対するその男からは少々危険な"気"を感じる。こちらを警戒してのことか、それとも

西村貫二郎 > 「言うてる言葉はほぼよくわからんが……まあ名乗っておくのが筋か」

この世が先の世ならば、滑稽と笑われるかもしれない。
騙りと言われることもあろう。だがしかし、背負った誠に嘘を吐くつもりもなく。

「新選組六番隊隊士、西村貫二郎じゃ。さてしかし、一人の方が安全とは異なことを言う。他の隊士は足手まといになるようなのしかおらんのか」

本業を学問とする者達の中の有志がそれぞれの分野に力を発揮しているものが委員会と聞いた。
となれば、二足の草鞋。練度が及ばないということだろうか。
――それとも。

「それとも。お主が一等秀でておるのか。となれば、立ち合ってみたいものだが」

漏れる。
滲み漏れる。
剣圧が。剣気が。剣士としての、欲求が。
――貫二郎は、元々剣で名を挙げるために、壬生浪士組に参加した。
新選組が成立してからは、局中法度のこともありそういった獣性は抑え込むようにはなっていたが、元々新選組――否、壬生浪士組は、己が最強を示さんと、剣で名を挙げんとする狼の集まりだったのだ。
隊よりはぐれ、別の時代なんて言うものに流れ着き。
剣が死んでいく感覚を覚えつつあった貫二郎にとって、望外の強者との出会いは、眠らせていた獣を起こすに足るものだったのだ。

「無礼を承知で願う。俺と立ち合ってくれんか」

抜きこそしないが、完全に臨戦態勢で、そう口にした。

伊都波 凛霞 >  
はっきり、新選組の隊士であると男は名乗った
これで…その名乗りの通りの人物なのか、それとも狂人なのかのどちらか…ということになる
ちょっとしたそういったもののミーハーなら、テンションが上がってしまうところ、かもしれないが
というか凛霞でも上がってしまうかもしれないが
今はお仕事中故、ぐっと抑えよう

「風紀委員は粒揃いの優秀な警察機構ですよ。
 ──推察の通り、私が一等秀でているんです」

物怖じせずにそう応えるが、名乗りは返さない
風紀委員である…ということが伝わればそれで良い
そこに武の礼儀、などというものを持ち合わせてはいない故

「無礼かどうかは問いませんけど。仕事中なので…といって逃げたらどうします?」

既に相手は臨戦態勢
外套を口元をぐっと引き上げつつ、ダメ元で問いかけてみよう

西村貫二郎 > 「ほう、新選組と比べてみたいもんじゃ」

笑みを浮かべる。
――もしかしたら、ここに『誠』は生きているのかもしれない。
『誠』を受け継ぐに足る侍が、揃っているのかもしれない。
そんな期待が高まる。

「逃げれば、か……まあ、お主には関係のないことであろうが」

思えば、逃げの小五郎などと呼ばれていた長州藩士がいたのを思い出した。
危機が迫れば即逃げる。新選組ならば即切腹ものであるが、ついぞ捕らえることも、出来なかった。
そういう強さもあるのだろうとは思う。気に食わないが、それでも幕府は、そいつらに負けたのだから。
だが、敢えてここでは呼ばわる。
身勝手とわかっていても。関係のない話と分かっていても。

「士道不覚悟。斬る」

荒れ狂う己が剣気を解き放つために。目の前のもののふと立ち合うために。
そして。
――そこに『誠』があるのか、見定めるために。

伊都波 凛霞 >  
──なるほど
『士道不覚悟』ときたか~、と外套に隠れた口元を苦笑に歪める

「勿論。貴方が誰彼構わず刃を向けるような暴漢なら
 見逃して背を向ける…なんてこともしないんですけどね」

とはいえ、今ここで背を向ければ遠慮なくばっさりといかれそうだ

「…落第街地点N-41にて帯刀する自称新鮮組の剣士と接触。交戦の意思強く、已む無く応戦します」

小さな声で外套にした端末に向けて、そう呟く。──同時
その両袖から金属の旋棍──トンファーが現れ、その両手へと握り込まれた

西村貫二郎 > 「左様なことが出来るか。新選組は、京都守護職松平容保公の預かりじゃぞ。不逞の者やもののふならともかく、町民めらを斬るなんぞ出来るか」

等と言いつつ、刀を抜き放ち、刀を寝かせ、半身にとっての正眼構え……平正眼に取る。
そうして、ジリジリと間合いを詰めながら。

「見たことのない武器じゃ。大陸の武器か?」

ぽつりと問う。
大陸の拳法使いがそういった武器を使うことがある、と聞いたことくらいはあったが、それも風のうわさ程度。
どのような武器なのかはよくわからない。
そういう相手にはある程度待つべき、ではあるのだが……。

「(士道不覚悟と言って抜かせた相手に及び腰では、誠が廃る)」

そもそも、貫二郎の誠一心流は、元となった流儀の内の一つ天然理心流の影響により、相打ち狙いが多い。
引いた心構えで振るう剣ではないのだ。

「せやぁぁあぁぁぁ!!!」

強く踏み込み、突きを放つ。
と同時、そのまま歩み足……歩くような交互に足を出す歩法で間を更に詰めつつ、それに合わせて連続して突きを放つ。

それはそう、かつて一番隊組長、沖田総司が得意とした三段突き。
――天然理心流、陰撓『早足剣』。

伊都波 凛霞 >  
「で、あるならば貴方に背を向けることは士道不覚悟、足り得るか疑問ですけど」

くすり、口元を外套に隠したまま小さく微笑む

「──と」

新選組である、と名乗った以上、そしてその後の会話からも推察した通り初撃は突き
…というよりも、彼が真選組の隊士であるならば、武道の試合のような温い現場の剣を使う集団ではない
全ての攻撃が一撃必倒であって然りである
その口から吐き出された裂帛の気合、真っ直ぐな軌道

突きのスペシャリストと相対した時にしてはいけない回避行動
それは『横へ動くこと』…間合いも変わらず、必ず起こる制動の隙が次の攻撃を許すからである
故に、突きに対して前へ出る
反りの強い刀であるならば、その突きが内巻きに繰り出されることはまず有り得ない
骨格や筋肉の可動域も含めて算出された安全圏が必ず生まれる

「──伝聞に残る"神速"とは程遠いようですが」

旋(つむじ)を巻くように、突きに対する死角を転じて入身を行えば、そのまま下から腕を交差させるようにしてトンファーを回転させ、相手の肘を狙い跳ね上げ
うまく相手の姿勢が崩れたなら、その鳩尾を狙い同じくもう片方のトンファーにて突きを見舞う算段だ

西村貫二郎 > 「沖田さんほどは、早くは突けんわ」

そうごちながら、突きを変化。
――平突き。刀を寝かせてのこの突きは、骨に引っ掛かりづらく突きが通りやすい利点に加え、薙ぎへの変化が容易な利点がある。
突きで以て横の変化を誘い、抜けられる危険を冒しつつ薙いで斬る。
同じく天然理心流、陰撓『無明剣』で斬るつもりでいた……が。

「(ぬ、こやつ速い)」

突きに対して、交差の形で入ってくることが出来る勇気を持つ者は多くない。
それをして内に入られれば、通常突き使いは応答出来ない。
通常、はだが。
『見る』。
眼で捉える。凛霞の、動きの起こりを、見逃さず捉える。
内に入られるのを通常よりも早く察知し、無明剣への変化を捨てる。
そのまま、腰を捻り、身体ごと回りながら身を翻し。
凛霞の応手に先んじて、その動きの先にあるトンファーを遠心力を乗せた斬撃で『切落』し、それで崩せれば喉元に突きを放つ狙い。

伊都波 凛霞 >  
見られてるな──…ということを肌で感じる
こちらの得物をその剣で持って打ち下ろすならば…、と
スタンロッドも兼ねているこのトンファーのスイッチによって相手を感電させることが出来る
本来ならばでそれで勝負アリ───だった、が

バチッ…

「っ…!?」

ほんの僅かな時間の動揺、その一瞬を逃さず放たれた喉元への突きを思い切りその身を仰け反らせ回避する
間髪入れず後方へと転身し、刃を受けたトンファーの状態を見れば、成程──中程から半切断。内部のケーブルが絶たれていた

「…よく研がれてますね」

それだけでなく、なかなかの剛剣
本人の弁を信じるならば幕末の剣士達の実力が窺い知れる

…今は通常装備のみを身に帯びているわけではない、鎮圧のみを目的とするなら手段を選ばない戦闘も可能だ、が……
左手のトンファーを投げ捨て、どこからともなく取り出した──ジャラリと金属の連なる音

長い鎖の先に二対の鎌がブラ下がる、ただの鎖鎌ではない、いわゆる風神鎌──

「──貴方の時代においても、骨董品かもしれませんね。これ」

ヒュン…と軽く振り始めたそれは一瞬でその先端が消えて見える程の速度に達し、
まるで自身の周囲にバリアを張るが如く、轟音と共にその制空権を保ったまま、一歩、また一歩と前へと進み始める

西村貫二郎 > 「奇怪な、仕込み武器か。異人の作ったものか」

トンファーを斬った感触の違和感から単なる棒ではないと見抜き、投げ捨てられたそれの内部をちらと見て絡繰りの類と判断する。
そして、改めて平正眼に構え。

「当然じゃ。刀は武士の魂、加えてあの京の治安を守るなら鈍らなんぞ持ってはおられん。お前の武器こそ、鍛えが足らんわ」

そう呼ばわる。
それほどまでに、刀には自信があり、そして簡単に斬れる武器には思うところがあった。

「――全く。さっきの特異な棒と言い、この鎌と言い……服部もそうだったが、双つ武器というのはどれもこれも厄介じゃ」

二刀を遣ったかつての仲間……そして、敵対して殺し合った男を思い出しつつ、目の前に迫る黒鉄の暴風を見やる。

――『見る』。

先が消えて見えるはずの、風神鎌。その威容はまさに風神の怒り狂うが如く。

だが、貫二郎の眼は、それを、捉えていた。

「(速い……が、何とか、『見える』な)」

冷静にその鎌の動きを捉えながら、ジリジリと間合いを詰める。

伊都波 凛霞 >  
「貴方の時代からほんの僅か後、なんですけどね」
「人と刀剣が切り離されてから、こちらは長かったもので」

対面する相手が廃刀令などというものを知っているかどうかはわからないが
轟音を唸らせながら緩やかに間合いを詰める

「随分と『目が良い』ようなので」
「この武器をあえて選んだんですけどね」

振り回す鎌の先端の軌道を僅かに変える
先程まで一切地面に触れなかったソレが、火花を立てながら足元を小さく、小さく削り始める──と
粉塵──砂煙が巻き上がり、ほんの一瞬、少女の手元を含んだ全容が遮られる、刹那

「ふっ…!」

砂煙を突き破り、鎌の先端が貫二郎へ向けて発射される
鎌の先端には鋲が打ち付けてあり、それを受けるだけでも負傷は免れない
避けるにしても手元の操作によって巻き、薙ぎ、戻し斬りが可能──という、我ながら面倒な一手である

西村貫二郎 > 「――そうか。確かに、あのころから既に、刀より銃が流行りになっとったからなぁ」

思い出すだけで悔しさの滲む、鳥羽・伏見の戦い。
あの戦いでの敗戦は、真正面からでは、刀は銃に敵わないということを証明した。
それが発展すれば、人は刀を持つことはなくなるだろう。
より工夫された武器が発達するのは、自然なことだと納得できてしまった。
そう、あの時代は刀から銃への移行期であり、刀での戦いというものが一度の終焉を迎える時代でもあったのだ。

「ぬっ!」

そして、刹那巻き上がる砂煙。
一瞬視界が潰れ、その瞬間に飛来する鎌はまるで。

「左之さんの突きのようじゃ……!」

宝蔵院流槍術の達人、新選組十番隊組長原田左之助。
結局最後まで、稽古の中で完全に凌ぐことの敵わなかった名手の突きかと錯覚する速度、鋭さのそれはしかし、それ故にその稽古の記憶を思い起こさせる。

「(あの時は……!)」

横幅の広い十文字槍は、躱して入るのは難しい。
小手先の躱しは、全て穂先の変化で捉えられた。
故に、奇しくも先ほどと同じく、『斬落』す。
槍のように見えてもこれは鎖鎌の類、打ち落としてしまえばそこからの変化はない。
打ち落とせれば、そのまま一気に間合いを詰めようと。

伊都波 凛霞 >  
先端の鎌を狙い澄まし撃ち落とされる
その衝撃が手に伝われば、迷うことなくその手を"離した"
例え先端が叩き落され地へ向かおうとも、鎖全体に伝わるベクトルは真っ直ぐ、男へ向かうまま
まるで鉄の蛇が如く、手放された鎖が撓りながら寛次郎へと突き進む、その裏で

「ふぅ…───」

中腰に構えた凛霞がふぅっと大きく息を吐いていた

地を踏み、片手に残された鎌をも手放すと同時、放たれた蹴りが鎖を捉え、大きく旋回するように鎖の軌道が変わる
蹴り位置を支点とした、もう一方の鎌の飛来、そして───

「はッッ!!」

蹴りをそのまま踏み込みへと変化させ、目の前の空気の壁を掌底で叩く
いわゆる"遠当て"を放つ …まぁ直接打撃ではない故、ボーリングの玉が脛に当たったぐらいの衝撃で済むだろう、多分
ついでとばかりに鎖を踏みつけ、叩き落された方の鎌を思い切り引き寄せる

正面から遠当て、側面から鎌による襲撃、更に背後から鎌の戻し斬り
──正直に言うと、少女の胸は高鳴っていた。幕末を剣で生き抜いた武人が、これをどう凌ぐのか──と

西村貫二郎 > 「(草攻剣……いや、山攻撃破剣のようじゃ。まさか一人であれをやるとは)」

草攻剣。山攻撃破剣。
共に、新選組が得意とした、集団で一人を狩る際の連携攻撃である。
横から鎌、後ろから鎌。
そして、正面からは、はっきりとは見えないが、風圧が迫ってくるのが『見える』。
この中で致命的なのは二つの鎌。正面の衝撃は当たっても死にはすまいが、鎌は死ぬ。
その場でわずかに後退、攻撃の中心点から身を外しつつ、車構えに取りながら屈み込む。
そして、広い視野で横の鎌を捉えつつ、風切り音から後ろの鎌の飛来する拍子を読み……。

「ぜやぁっ!!!」

わずかに早く到達する後ろからの鎌を、車構えからの斬り上げで弾き飛ばす。
そこで手に生じる衝撃に逆らわず、袈裟斬りで横から飛来する鎌を叩き落とす。
そして、そこから流れるように左前の深めの平正眼に取り……。

「はあっ!!」

大きく踏み込みながら、衝撃破に向かって平突きを放つ。
もしそれで貫くことが出来れば、そのまま歩み足で間合いを詰め、突きを放つ。
最初に放った技と同じ……天然理心流、陰撓『早足剣』に繋ぐ。
違いがあるとすれば、先ほどよりも速い。
弾き弾き溜め込んだ反動を乗せている他、先ほどよりも構えが前傾になっている。
より速度と威力を増す代わり、回避を犠牲にした、文字通りの相討ち覚悟。
幕末を駆けた新選組隊士、その気組み……必死にして必殺の覚悟が、剣と足捌きに乗り、凛霞を襲う!

伊都波 凛霞 >  
神速に遠いなどと、よく言ったもの
狙いが単体とはいえ3つの波状攻撃をいなしてみせるとは

「すごい…さすが──」

必殺の覚悟を以ったその切っ先が、凛霞の胸を貫いた──瞬間

ぽむっ

やや気の抜けた音と共に白煙が舞う

──実戦に対する勘も、対応力も申し分ない
惜しむらくは、彼が恐らく頼りを置いている攻撃が『突き』であること
一部の変則的な『突き』以外は、踏み込みが肝要である

先程の風神鎌での砂煙の巻き上げを目眩ましだけ、だと思ったのが一つ過ち
凛霞の周辺、その足元のアスファルト舗装を削り巻き上げた、粉塵。一瞬でも視界を覆うほど、となれば当然
鎖鎌のリーチの半分程ではあるが、舗装は抉れ、凛霞の周囲は斜めに落ち込んでいる
つまりは、正面に向けて若干の前のめり…斜めに踏み込むことになる
ほんの少しの差でも構わない、その精密な狙いを崩すコト
それだけで、心の隙というものは空くものである

空蝉、と男が気づく時にはその頭上から

『断ち髄』

死角より落下しながら放つ全力の足刀
人体の急所である延髄に叩き込むことで一撃昏倒を狙う…伊都波の技の一つである

西村貫二郎 > 取った。
そう確信した瞬間、その感触が、消える。

「なっ……!」

一瞬。
ほんの一瞬、心に隙が生まれ、その上凛霞を見失った。
――その一瞬で、十分だった。

「がっ……忍びの、類か……!」

延髄に走る衝撃に、思わずそんな言葉が漏れる。
――侍の技ではない。これはまるで、忍びの技。
そのまま地面に倒れ込み、何とか、何とか動こうとするが。

「――負けたか」

出来ないと悟り、ガク、と力を抜く。

伊都波 凛霞 >  
地面に倒れ込み、それでも動こうとする男の周囲に無数の手裏剣、そして苦無が降り注ぎ──
降り注いだそれらはそのどれもが当たりはしないが、もし貫二郎が動いていれば…と思わせる位置へと突き立っている

そしてその眼前へと、少女は音もなく着地した

「…真っ直ぐな比武がお望みだったのかもしれませんけど、
 生憎…修めている技術がこういったものばかりでして」

少々申し訳無さげな言葉をかけつつ、口元の外套を引っ張って、その顔を晒す

「ちょっとこの場での携行白兵装備では手に余る、と判断した次第です。
 普段は逆に薙刀とか持ち歩いてるんだけど…今日はちょっと、持ち合わせていなかったんですよね」

黒い灰被り姫モードの時は主に広域制圧をメインとした装備を整えている
制服に忍ばせたトンファーや鎖鎌程度は出てくるが、長柄の得物なんかはさすがに出てこない

「…平気ですか?」

思い切り蹴り込んだ
鍛えていない一般人なら余裕の一撃昏倒である
気を失っていないのは流石だと言わざるを得なかったが…手を差し伸べるような真似はしない
それは故人を褒めて二度殺すのと大差ない振る舞いであるのを理解している故

西村貫二郎 > 「いや、いい。俺の刀に応えようとしたその心根と、俺を倒したその技術。ははは、生きておった。『誠』は、生きておったわ」

もちろん、痛くて苦しい。敗北の悔しさもある。
だが、それ以上に……命を賭けて張り続けた『誠』が、まだ生き残っていることが、嬉しかった。

「ごべっ……この……やってくれおるわ」

言いながら、刀を杖にして立ち上がりつつ、大きく息を吐く。
蹴り飛ばされた箇所が滅茶苦茶に痛む。さすがに、これ以上戦うとか、そういう状態ではなくなってしまった。そのつもりも、無いわけだが。
――そしてどうやら、本領を発揮はしていなかったようだ。強い。隊長格くらいの強さがあるのではなかろうか。

「なあ……不躾を承知で聞くが、流儀は何じゃ?当世の新しい流儀、にしては殺しの技が多く見える。当世では、殺しはあのころよりも厳しくご法度なのだろう?」

ご案内:「落第街大通り」から西村貫二郎さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に西村貫二郎さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「うーん…どうやら本当に幕末の人だったみたいでちょっと驚いてもいるんですけど…」

刀剣の時代にそれで生き抜いた人間の強さを感じた

「それは…お答え出来ません。表に出ることなく戦国の時代より受け継がれてきたものなので。
 でもいわゆる忍び、乱破のようなものだと思ってもらえれば間違いはないかもしれませんね」

ただし現代でも通じるよう『あっぷぐれえど』されているのだと、続けて答える
ようするに何でもやる、何でも使う…言ってしまえば流儀などない
力技を競う武に非ず、生き方にも非ず、対象を殲滅せしめる為だけの"力"であり、"道"ではないのだと

「ご法度、だからこそ。必要な時以外には爪先一つほども見せませんし使いません。
 そこに在るだけなら、罪にはなりませんから」

どうやら相手も動ける様子
しかし何も答えない、というのもやや気が引けるところがあり…

「折角名乗っていただいたのと、まぁ…多分異邦人の方かタイムスリッパーかのどっちか…だよね?
 私は伊都波、伊都波凛霞というしがない風紀委員です」
「名乗りついでに、ってワケでもないですけど、乗り気じゃない相手に刃を向けるようなら危険人物として今度は捕縛しますからねえ」

西村貫二郎 > 「幕末、幕末か……」

少し陰のある笑みを浮かべる。
――幕末。幕府の、末。自分らが、新選組が駆け抜けた時代がそう呼ばれているということこそが、守ろうとした幕府が完全に滅んだ証左。
分かってはいたが、知ってはいたが、やりきれない。

「そうか、無礼をした。影の流儀、そういうものもあったか」

もしかしたら同じ時代に、どこかですれ違っていたのかもしれないが。それは、今はわからない。
きっと、わからないような立ち回りを、していたのだろうし。
何でもやる、というやり方は、土方さんが気に入りそうだな、などとぼんやりと考えつつ。

「そうか、そうか。やはり、当世は刃の生きる世ではないんじゃな。そうか……」

それは、良いことなのだろう。
きっと、人の行き着く先にあるべき未来。人が争いをしなくなり、武が真価を発揮しない時代こそが、望ましい。
分かっていても……どこか、寂しい。

「ううむ、たいむすりっぱぁ、というのはよくわからんが……こちらで妖と会うた。俺らのことも知り、そして今に生きる妖と。それが言うには、俺は過去からここに迷い込んだ、ということらしい。俺からすれば、未来に迷い込んだわけだが」

ううんと首を傾げる。
が、その後の言葉には。

「それは困る、土方さんに怒鳴り散らかされるわ。重ね重ね無礼をした、以後慎もう」

頭を下げつつ、そう言った。

伊都波 凛霞 >  
「刃でのみ生きるのが難しい世ではあるかもしれませんけど」

やや落ち込んだような、寂しそうな顔をする男を見つめて

「手」
「足」
「目」
「口」

それぞれ指差しながら言葉を投げかけ…

「それとついでに刃、くらいなら多分悠々自適に生きれる世でもあるかと思いますね」

手に職を持ち、己が足で居場所を探し歩き、その目で新しき世界を見渡し、口と言葉があれば人の中では生きてゆけるのだ

「それに、そういった真っ直ぐな"力"が生きる場所もありますからね。
 ──貴方達の培った刀剣の技術が今も道場で伝えられていることがその証左かと」

励ますつもりもない。ただそう在る事実を伝えて、にっこりと笑った
敵意だとか、害意だとか、そういったものをこの人物からは感じない
力、そして刃に生きる者が常にそれを比較したいという気持ちは…わからないでもないからだ

「この島にも刀剣の技術を修める人は多いですからね。
 西村さん、でしたっけ。大手を振ってその力を試すことが出来る場所も、きっと探せばいくらでも。
 …このへんはー、ちょっと治安が悪いので事件なんかになるとあらぬ疑いなんかも…?ってことで、おすすめ出来ませんね」

西村貫二郎 > 「……そうか。この島で、誠一心流を広める。新選組の生きた証を刻む。それが、俺がここで果たすべきお役目、なのかも、知れんな」

目の前の笑みには、肩をすくめる。
正直、今直ぐ戻りたい気持ちはある。
散るとわかっていても、あの誠の旗の下が、自分のいる場所だから。
だが……それが叶わないなら、ここで生きることを考えなくてはならない。
誠の旗が折れた先に生まれた世の中で、誠を紡いでいくのが、役目なのかもしれない。

「ああ……それはそう、よな。そういう輩がおれば、新選組も捕らえておった」

そう考えると身につまされる。
少し居心地悪そうに頭をガシガシと掻いた。

伊都波 凛霞 >  
「今の世の中でもこの島はちょっと特別で、説明すると長くはなるので割愛しますけど。
 刀を納めたまま、その足で歩いてみることをおすすめしますよ」

どういう事情で彼が此処にやってきたかはわからない
けれどこんなところで刀を振るっているのであれば、現状で戻る術はないのだろう

地面に落ちた鎖鎌とトンファーを回収し、どこへともなく仕舞う
取り出した時もそうだが、まるで手品のようである

「それじゃあ私はお仕事もありますので、これで…───」

一礼し、踵を返して……視線を巡らせる
その視線は先程までとは打って変わって、何かを見据え射抜くような、鋭いもの

「…何人か気を窺っているみたいなので、ご注意を」

戦闘とあらば、敗北したものを狙う輩はあちこちにいる
それらの気配を感じはしたが…まぁ、彼らでは多少弱っているとはいえこの相手に敵うものではないだろう

一応の注意だけを促し、黒の外套を翻して、黒い灰被り姫は大通りを越えスラムへと向かっていった──

西村貫二郎 > 「そうか、すまんな。面倒をかけた」

もう一度頭を下げる。
そして、刀を収めながら、まるで手妻じゃなと内心思う。
忍びの類ならば、そう言った手妻はお手の物なのだろう。

「――応。感謝する」

そして、そのあとの言葉には、剣気をわずかに放ち応じる。
その剣気で、周囲を圧しながら。

「俺の首が欲しければ、かかってこい。散る覚悟で来い。その覚悟がなければ、去れ」

――案の定、多くの気配は霧散したが、数名は、虚勢とみて突っかかってきた。
それらを一蹴し、うち一人を捕まえ、無理矢理案内をさせてその場を後にした――

ご案内:「落第街大通り」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から西村貫二郎さんが去りました。